2014年 12月 31日
「東電が放射性粉じん飛散防止剤を薄めて散布」この会社にはモラルなど微塵もない
この会社には放射性粉じんはあっても、モラルなど微塵もない
小坂正則

福島原発4号機の瓦礫撤去で粉じんをまき散らしていた映像を見たことがありますが、今朝の朝日新聞によると、3号炉の瓦礫撤去の際に、メーカーの指示では原液を10倍に薄めて毎日散布し続けるようにということだったそうですが、実際には2012年8月から行った散布は100倍に薄めて、散布回数も数日おきから数週間ごとの散布へと回数を減らして散布していたそうです。
それどころか、2013年に入ってからは6月中旬と8月13日の計2回散布しただけだったというのです。メーカーの担当者は「100倍希釈では水と同じ効果しかない。粉じんを防止剤で湿らせている間に作業をするのが原則。何日も経てば飛散するのは当たり前」と話している。実際に昨年の8月12日と19日に作業中の放射性濃度が上がり、作業員12人が被曝したという。19日の放射性物質の放出量は普段の6700倍に。東電も「飛散防止剤の散布不足が原因」と、認めている。これが原因で3キロ先のモニタリングポストの空間線量がこのとき上がったという。
そして、2013年の10月からは10倍希釈へと改め、毎日散布するように改善したという。規制庁は「このような結果、飛散防止効果が落ち、昨夏の放射性物質の飛散が起きたとみられる。安全な使い方をしなければならない」と、そして「今後は希釈濃度まで監視を強めたい」と、話しているという。
しかし、その事実がなぜ1年以上も隠されていたのか。これは朝日への関係者による告発か、朝日のスクープなのかもしれません。ただ、東電と規制庁がこんな重要な事実を隠していたとしたら、それは大きな問題です。
東電のブラック企業体質は一向に改善されていない
東電は2012年のブラック企業大賞を受賞しています。その理由として、「以下の社会正義の観点から看過できない非人道行為と人類の歴史においても類を見ない恥ずべき行為に対して①原発建設現場で被曝労働②福島第一原発事故の復旧作業で被爆労働③外注した下請け会社の原発労働者たちの健康を守る責任の放棄④反社会的勢力による中間搾取の認容⑤被曝線量の偽装工作」というのが受賞理由です。しかし、その後も一向に改善されることもなく、ますますそのブラックさに磨きがかかって来つつあるように思えてなりません。東電は史上最悪の原発事故を起こしておいて、放射能を「無主物」と言って、誰のものでもない持ち主のない空気や雲のような存在と主張して、福島のゴルフ場経営者の除染要求を拒否したものです。結局裁判は東電の勝訴となりました。政府も裁判所も東電の味方だからです。
会社再建のために補償金打ち切りを強行する東電
南相馬市の一部などでの避難区域に指定されている人々を強制的に故郷へ帰還させて、生活補償費1人月10万円の支払いを来年3月で打ちきることを決めたといいます。国の言い分は「年間20ミリシーベルトを下回った」からというのが理由です。しかし、そんな高濃度の汚染地帯には実際には住むことは困難です。しかし、帰還を呼びかける行政と国と東電が一体となって、避難している人々をもとの故郷へ帰して原発事故が解決したかのように見せかけたいのでしょう。しかし、実際にはそんな汚染地帯では住民が安心して暮らせる場所では決してありません。しかし、帰還を拒否している家族に対して、東電は慰謝料として支払っていた月10万円を3月で一方的に打ちきるということは、帰還を強制することになり、避難を続けるなら自主避難者と同じように勝手にしてくれということなのです。福島や千葉県の一部や茨城県などホットスポットから自主避難している母子たちの生活補償も一切ない中で、彼らも保障がないのだから、これからは特定避難緩衝地点だった人たちに対しても、東電は「もう故郷に帰っても大丈夫ですから、それでも避難を続けるのなら自力で避難を続けてください」と、彼らを見捨てるのです。
ブラック企業の東電もブラック政府の安倍政権も原発を再稼働する資格などない
東電によるこれまでの一連のブラック企業を支えているのは、「福島の放射性汚染水は半径300平方メートル以内にコントロールされています」とウソを言って、「世界一厳しい安全基準に合格した原発」とウソを付く安倍首相率いるブラック政府です。
こんな企業や政府が人々の健康や生命を第一に考えて企業活動や政治を行うわけは絶対にありません。だから私たちは何としても東電の責任を追及していかなければなりませんし、福島の被災者の皆さんに寄り添って、「残る自由も避難する自由」も認めて、とどまる人には少しでも放射能被曝を低減するような暮らしを提供しなければなりませんし、避難者や、特に母子避難者の生活を支えることが求められています。
そして原発再稼働をさせないたたかいを来年も精一杯進めなければならないと、私は決意も新たにしました。

住民不在の住宅が点在する大谷地区。道路脇の空間線量は毎時0.8マイクロシーベルト=南相馬市原町区

避難勧奨、最後の解除・南相馬
河北新報2014年12月29日
南相馬市内の152世帯が指定された東京電力福島第1原発事故に伴う国の特定避難勧奨地点が28日午前0時、解除された。福島県内の勧奨地点は全てなくなった。市によると、指定世帯の約7割が現在も避難を続けている。国の決定を「一方的だ」と非難する声も強く、地元ではさらなる環境改善を訴えている。
勧奨地点はもともと往来の制限が無く、解除時に、バリケードの撤去作業などはなかった。
国は全世帯が指定基準の年間20ミリシーベルト(毎時3.8マイクロシーベルト相当)を下回り、「健康に影響ないレベルになった」(高木陽介経済産業副大臣)として解除に踏み切った。指定時に平均毎時2.4マイクロシーベルトだった線量は、除染で同0.4マイクロシーベルトに下がった。しかし、同1マイクロシーベルトを超える世帯もあり、地域には原発20キロ圏内より線量が高い場所が散見される。
勧奨地点があった行政区長は、再除染と住民の被ばくを管理する健康手帳の発行などを国に求めてきたが、実現しないまま解除を迎えた。解除に伴い、慰謝料は来年3月で打ち切られる。避難の継続は家計の負担増にもつながる。
地区30世帯の半数を超える17世帯が指定されていた同市原町区の大谷行政区の場合、指定世帯だけでなく、非指定世帯の避難者もいる。藤原保正区長(66)は「まだ空間線量が高く、特に若い住民の不安が消えない。解除は納得できない」と憤る。
藤原区長は、国の対応次第では法廷闘争も辞さない構え。住民らと解除差し止めの訴訟についても検討しているという。
原町区の自宅が勧奨地点になり、子ども3人と新潟市に避難する杉由美子さん(45)は「子どもに不必要な被ばくはさせられないので、慰謝料がなくなっても戻れない。解除で周囲に『戻れるんでしょ』と思われるのがつらい」と話した。
[特定避難勧奨地点] 福島第1原発20キロ圏外の比較的放射線量が高い地域で、世帯ごとに指定。避難区域のような強制避難ではなかったが、国が避難を勧奨したため、避難区域と同様に1人月額10万円の慰謝料の対象。伊達市と福島県川内村の計129世帯は2012年12月に解除された。