2025年 03月 11日
東電子会社(JERA)の違法な価格操作で新電力が次々と倒産
この事件は新聞1面トップ三段抜で書かれるべき事件だった
小坂正則
このグラフは2020年12月15日から21年2月5日までの電力卸市場での電力取引価格の推移を表しています
電力1kwh当たり、1月15日には251円に跳ね上がり、1月22日まで推移しています。また2020年12月18日には50円を超えています
東電による悪質な電力相場の吊り上げ
昨年11月12日の朝日に新聞下のようなベタ記事が載っていました。しかし、テレビでは一切報道はありません。私が調べた限りでは、他紙でもほとんど報道がなかったようです。この記事の重要性は、新聞1面トップを3段抜きで知らせるような大事件なのですが、多くの国民の目には留まらず、まんまと東電は逃げ切ったのです。その東電の犯罪行為を説明します。
『卸市場に電力を出し惜しみ、発電会社JERAに業務改善勧告』
(朝日新聞11月12日号ベタ記事)
「電力・ガス取引監視等委員会」(略称:電取委)は11月12日、東京電力グループと中部電力が折半出資する火力発電会社JERAに対して業務改善勧告を出した。卸電力市場に出すべき電気の量を惜しんだため、一部の時間帯で価格がつり上がったという。社内からの指摘にも適切に対応していなかった。▼電取委によると、JERAは2019年4月から23年10月までの4年間、「スポット市場」に売り渡すべき電気を出し惜しみした。少なくとも約54億キロワット時にのぼり、21年11月のある時間帯の約定価格が最大で1キロワット時あたり50円超つりあがったという。▼JERAは「設定の不備によるもので、相場操縦を行う意図はなかった」とするコメントを出した。電取委は、JERAが遅くとも19年4月には不備を認識していたにもかかわらず、長期間放置していたと指摘した。」(ここまで引用)
中途半端な電力自由化で電気事業法違反が続出
2016年までの、九州管内では九州電力が独占的に電気を販売していました。しかし、2016年の電力自由化によって、九州電力は2分割され、発電と小売り部門が1つの会社で、送電部門は別会社に変わりました。もちろん送電会社も九電の子会社ですが、名目的には別会社となったわけです。なぜ別会社となる必要があったのかというと、新電力と九電の販売会社は公平は競争する必要があるからです。そのため独立した送電会社が九電の販売会社に顧客情報などを漏らすことは、電気事業法23条「情報の目的外利用・提供の禁止」として禁止されています。本当は発電・送電・売電という3つの企業に完全に資本分離(ドイツなどは3分割)すべきだったのですが、自民党政府は電力会社が送電会社を法的に子会社として分離するだけだったので、その結果以下のような「情報漏洩」事件が起きました。
東京電力グループ:2020年4月から2024年初めごろまで、親会社の東京電力ホールディングス(HD)などが新電力の顧客情報を不正に閲覧していました。最大で500人程度が閲覧し、1704件の不正閲覧が確認されました。関電など北海道電力・北陸電力を除く全ての電力会社が送配電子会社の顧客情報を盗み見ていたのです。経産省は業務改善命令を出しました。課徴金の徴収処分はありませんでした。
大手電力3社によるカルテル事件
2023年3月30日に「公正取引委員会」は、中国電力、中部電力、九州電力など大手電力3社に、企業向けの電力供給をめぐる独占禁止法違反(不当な取引制限)のカルテル問題で、総額1,010億円の課徴金納付を命じました。課徴金案は中国電力が707億円、中部電力が275億円、 九州電力が27億円です。大手電力は電力の80%の独占的な企業ですから、そこがカルテルを結べば、弱小の新電力は潰れてしまいます。
今回の「価格つり上げ」事件が起きた背景
電力自由化になっても大手発電会社の顧客は今までと同じように配電線(低圧送電線の意味)を使って電気は来ます。そして新電力と契約した顧客も大手電力会社の子会社の送電線を使て電力は供給されるのです。ですから配電線はいろんな電力会社の電気が一緒に1組の配電線によって各家庭に送られるのです。
それでは「電力自由化で何が変わったのかと」いうと、以前は地域独占の電力会社がそれぞれの地域の需要や供給を調整していましたが、自由化後は「電力広域的運営推進機関」という公的機関が日本全国の電力を安定供給するために、需給バランスの把握や調整、電力系統の整備などを行っています。そして各電気事業者から発電や需給に関する計画を受け付け、需給状況を監視しています。そして、需給状況が悪化した場合は、他のエリアの電気事業者に対して発電量を増やすよう指示しています。
そしてもう1つ大きく変わったことは「電力卸市場(JEPX)」という公的な卸市場ができたことです。そしてここが重要なことが、「発電会社は自分の配電会や長期契約の企業へ供給した電力などを除いて、余った電力は全て電力卸市場(JEPX)」という市場に売ることが義務つけられたのです。
そして卸市場では、10日前から入札にかけられるのです。1日を30分で毎に割って、48コマを前日までに入札します。1日前に入札することを「スポット価格」といいます。
ですから新電力会社で、自社で発電施設を持っている会社では電気で足りない分は、買いの札を入れて、余れば売りの札を入れるのです。しかし、発電所をもっていない新電力会社は長期契約している会社から直接買ったり、一般入札やスポットで買いの札を入れて買ったりするのです。
当然需要が入札になれば株の売買と同じで売りに対して買いが多ければ価格は高騰します。だから急な寒波などが来たら、電力需要が増えて価格が高騰するのです。逆に春や秋は冷暖房の需要がなく、太陽光発電が多い九州では太陽光発電が需要を上回ることが頻発するため、需要に対して供給が増えるので、太陽光の電気は売れずにゼロ円で売り買いされます。(実際にはゼロ円で入札されても手数料が0.1円取られますが)
公取委は1010億円の罰金で、電取委は注意勧告のみ
そこに目を付けた東電の発電子会社(JERA)は電力相場を引き上げるために不正な電力入札の出し惜しみをて価格を高騰させて4年間もの長期に渡って莫大な利益を上げたのです。これは誰が見ても違法行為です。3電力会社が闇カルテルで1010憶円の罰金を課せられたと言いましたが、なぜ闇カルテルで1010億円の罰金を取られたのに、4年間の長期にわたって違法行為を繰り返してきた悪質極まりない犯罪事件が勧告で終わったのでしょうか。闇カルテルの摘発は「公正取引委員会」ですが、公取委は内閣府の外局ですが、「電力・ガス取引監視等委員会」(略称:電取委)は経産省所属なので、甘々なのでしょう。
54憶キロワットの不正をやったのです。そこで10円の不正価格の利益を上げただけで、540億円です。そんな10円などの訳はありません。50円の不正価格の利益を上げたのなら、2700億円もの利益を上げたことになるのです。しかも電取委はこっそり、勧告の紙1枚で罰則なしです。公取委は1010億円の罰則は犯罪抑止のための懲罰です。電取委は仲間内への馴れ合い口頭注意です。公取委も電取委も不正抑止のための組織です。それが片方は1010億円の懲罰で、片方は紙1枚の勧告で済むわけはありません。重大事件です。しかし、朝日新聞の経産省記者クラブの仲間内では、ベタ記事にしかならないのです。
だから私は「日本のテレビや新聞は腐りきっている」というのです。「東洋経済」などネットニュースでは取りあげられていますが、多くの国民の目には留まりませんでした。
2020年暮から約1カ月電力価格が高騰
JEPXの市場では、2020年12月の暮れから翌2021年1月後半にかけて、過去に例のない価格高騰が生じたことがありました。冬季は太陽光発電の発電量も少なくて、「関東地方に大寒波が襲ったが、天然ガスの供給が間に合わなかったため12月から1月後半まで電力卸市場で電力価格の高騰が続いた」というのです。
電力卸市場では2021年1月15日夕方に1kwhが251円で高騰しました。その後17日から23日までは1kwhで最高200円と高騰が続きました。この間のスポット市場で、1日の平均価格が1キロワット時当たり約154円となり、平時の約10倍以上に跳ね上がったのです。10倍以上の電気料金によって新電力がバタバタと倒産しました。この価格高騰は(JERA)が吊り上げたという具体的な的証拠はありませんが、疑問もあります。当時、動かすことのできる発電所の発電能力(量設備容量)は十分間に合っていたのに、市場に供給された電力は足りなくなっていたというのです。その理由はいまだに解明されていません。
「電取委」は公正取引委員会の中に入るべきだ
「今回の件でJERAはルール違反を4年半も続けていながら、おとがめなしとなる可能性が高い。アメリカや欧州連合(EU)加盟国、イギリスなどで、相場操縦などの不正行為が発覚した場合に、電力会社に多額の罰金が適用されるのとは大違いだ」と東洋オンラインでは指摘しています。
私は経産省の中にある「電取委」の委員には東電などと関係の深い学者がいるのではないかと調べたのでっすが、皆さん立派な肩書のある学者でした。ただ、実際の事務を任されている職員は経産省職員などの出向者でしょう。そこでは「原子力ムラ」の影響がないとはいえません。なぜなら3.11福島原発事故以前は原発の運転を監督する「原子力保安院」は経産省の中にあったため、電力会社に忖度して監督や審査が甘くなって福島原発の大事故が起きたのです。
同じように、「電取委」も原発を抱える大手電力会社への忖度や審査が甘くならないようにするためや、国民からそんな疑念を持たれないためにも、内閣府の外局として公正取引委員会に集約されるべきです。
そして何よりもマスコミや国民の監視が必要です。監視の目を緩めれば3.11以前のように「原子力ムラ」の連中が跋扈します。いえ、既にその使用人の連合や玉木雄一郎がわが物顔で跋扈しています。
以下の東洋オンラインで詳しく書いています。
発電最大手JERAが、電力取引で「相場操縦」。4年半もルール違反続け、電力ユーザーの利益侵害も
2024/12/5
東洋経済オンライン
公正な市場なくして公正な資本主義はあり得ない: JERAによる電力市場の相場操縦で新電力100社以上が倒産・撤退の憂き目に
2024/11/19
記事のポイント電力・ガス取引監視等委員会が今回、JERAに業務改善勧告を出した。それによると、JERAは2023年までの5年間で市場操作を行った。このため電力スポット市場は急騰し、新電力100社以上が倒産・撤退した
https://news.yahoo.co.jp/articles/1b6a9ac1b3ddf7d0d2746e7ca57950d53c6bbf3e
by nonukes
| 2025-03-11 13:35
| 小坂農園 薪ストーブ物語
|
Comments(0)




