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小坂正則の個人ブログ

2024年3月7日大分地裁「伊方原発訴訟」全面敗訴の分析

大分地裁の武智舞子裁判長は四国電力のコピペ判決?
小坂 正則


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2024年3月7日大分地裁前で敗訴判決に怒りの人びと

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2024年3月7日に大分地裁で大分県民の569名の原告による「伊方原発の運転差し止め訴訟」の判決がありました。武智舞子裁判長は四国電力の主張を丸のみした原告敗訴の判決でした。まあ、これほど四国電力に寄り添った判決を書いた武智舞子裁判長は四国電力か被告弁護士に判決文を書いてもらったのではないかと疑うほど、四国電力の主張の1つでも批判的な主張のない見事なクソ判決です。最後に私なりの本判決への批判と感想を書きます。

伊方原発裁判のあらまし

2016年4月に起きた最高で震度7の熊本地震の後に大分地裁に仮処分を6月、本訴を9月に提訴して、それぞれ大分地裁で審議されてきました。「伊方原発の運転差し止め訴訟」は原発立地県の愛媛県に、近接県の広島県と大分県と山口県の4県で同時に1つの原発の運転差し止め裁判を行うという史上初の裁判です。また、本訴訟とは別に仮処分というものがあります。仮処分は2018年9月に却下されました。そして今回は本訴訟でも却下されたのです。

仮処分とは。そして
1つの原発を周辺の住民が提訴する意味

労働争議や自分の敷地の隣の地主が土砂を積み上げるような工事を無断でやっている場合、自分の土地に壊れ落ちてくる危険性を感じて、作業をやめさせるなどの決定です。裁判には長い年月がかかるので、裁判中に事故が起きては元も子もないからです。労働者が首切りされた場合、裁判で何年も賃金をもらえなければ生活ができないので、一時的に原状復帰や工事を差し止めしてもらう緊急措置です。今回の仮処分は原発裁判が終わるまで運転を止めてくれという仮処分でした。しかし、この仮処分の異議審(異議申し立てによる上告審)や本訴訟で原告側が負けた場合には仮処分で貰えた賃金を全て返すなど、被告の損失を請求されることがあります。今のところ電力会社は請求はしてきません。そして実際に広島高裁では2017年12月に仮処分が出て、異議審で逆転される翌年の8月まで8カ月間伊方原発は止められていました。山口の住民による高裁の審議で2020年1月に仮処分が出て12月まで運転が止まりました。この2年近くの運転停止で四国電力は500億円以上の損失を出したことでしょう。(100万㎾の原発が1日止まると1億円といわれていた)
このように原発裁判では仮処分で原発の運転が裁判所によって止められることが次々と行われることで、原発の発電コストが結果的に上がることによる経営リスクが高まります。そして何よりも国民の「原発は危険だ」という意識が高くなることの効果は絶大です。
また1つの原発を周辺の住民が、それぞれの県や市で裁判を起こせば、電力会社は膨大な訴訟費用がかかり、しかも全ての裁判で勝たなければ運転はできません。しかし、原告はどこか1カ所の裁判で勝てばいいのです。現在30件余りの原発裁判が行われているそうですが、これからは日本中で、本人訴訟(弁護士なし裁判は費用も僅かです)も含めて100件も1000件でも裁判を起こして、電力会社の経営を麻痺させて原発の運転を諦めさせましょう。
(松下竜一氏の著書『五分の虫,一寸の魂』を参考)

武智舞子裁判長の四電コピペ判決を読み解く

3月7日、武智舞子裁判長ら3名の判事が書いた判決文は370ページにも及び、専門用語の埋まった文章でした。こんなもの実際には弁護士や裁判官が読んだって分かるわけありません。その道の通の大学教授などでなければ、理解できないような内容が散りばめられています。
しかし、簡単に言えば争点は以下の3つです。伊方原発の基準地震動では南海トラフ地震や中央構造線断層帯が動けば伊方原発は大事故を起こすという原告の主張の否定。2点目は活断層を調べる二次元調査では不十分で、3次元調査を行えば、中央構造線の南側の原発近傍部分にも活断層が発見できるという原告の主張の否定。3番目が火山噴火の対応が不十分だという主張の否定です。

まず、2点目と3点目を先に読み解きます

2点目の「2次元調査では不十分で3次元調査ではなければ活断層がないとは言えない」とう原告の主張に対して、確かに規制委員会も「三次元調査が望ましい」とは言っていますが、「精密な二次元調査であれば問題ない」とも言っています。しかし、この理論だけで運転差し止めは不可能かとは思います。3番目の火山に関しては、これまで「新規制基準」では火山の基準がありませんでした。ですから広島高裁で2回も仮処分で原告は勝ったのです。しかし、この広島高裁での仮処分で電力会社が負けたことを受けて、2019年に規制委員会は新たな基準を付け加えたのです。「原発の運用期間中(約100年間を指す)、巨大噴火が差し迫った状況であることの明確な科学的根拠がない限り、巨大噴火による影響は社会通念上考慮しなくていい」としたのです。これで根拠ができたので裁判所としても堂々と電力会社側に有利な判決を出せるようになりました。
ただ実際に基準ができたので本当に考慮しなくてもいいのかどうかは全く別問題です。川内原発の周辺にはカルデラ火山が6つもあります。それにカルデラ噴火を起きたら九電の玄海原発も川内原発も伊方原発も火砕流や噴石や噴煙で送電線が切れたりショートして原発の運転が不可能になります。電力会社はその前に、使用済み核燃料を含めた核燃料を安全な場所に移動させると説明しています。しかし、問題はいつ大噴火が起きるかは誰も分かりません。地震に比べて火山噴火は火山性地震や山が盛り上がるなどの予兆がありますから、事前に分かるというのです。しかし、阿蘇山で火山性地震が続いて、山が盛り上がったとして、それから慌てて核燃料を移動させるとしても、千体以上もある核燃料をどこに移動させるというのですか。移動させるだけで1年はかかりますし、保管場所を作るのなら10年以上かかります。だから対策はゼロなんです。移動させるなら今から移設用の施設を準備しておく必要があのです。これも火山噴火は想定しなくていいという「社会通念」で逃げるつもりです。

活断層と地震の問題

さて、1番重要な活断層と地震の問題です。まず、私たちは活断層が何で、地震がどうやって動くのかという原理を少し学んだ方がいいですね。よく規制委員会の委員のみなさんは志賀原発の原子炉の下に活断層があるとかないとか議論をしています。さて活断層って何なのでしょうか。国土地理院によると活断層とは
私たちが住んでいる街の地面を掘り下げていくと最後は固い岩の層にぶつかりますが、この岩の中にはたくさんの割れ目があります。通常、この割れ目はお互いしっかりかみ合っていますが、ここに「大きな力」が加えられると、割れ目が再び壊れてずれます。この壊れてずれる現象を「断層」活動といい、そのずれた衝撃が震動として地面に伝わったものが地震です。そして「断層」のうち、特に数十万年前以降に繰り返し活動し、将来も活動すると考えられる断層のことを「活断層」と呼んでいます(第四紀(260万年前以後)中に活動した証拠のある断層すべてを「活断層」と呼ぶこともあります)。  現在、日本では2千以上もの「活断層」が見つかっていますが、地下に隠れていて地表に現れていない「活断層」もたくさんあります。(国土地理院「活断層とは」より引用)

活断層がないから地震は起きないと誰も言えない

さて、地下に隠れた活断層もたくさんあるのになぜ原発の運転は見える活断層だけしか議論しないのでしょうか。しかも国土地理院は260万年以降と言うのに規制委員会は12、13万年から15万年前までで打ち切っているのです。国土地理院のいう260万年までに動いた断層という根拠は不明ですが、要は今まで動いた断層が繰り返し動くことがあるので、これを活断層というのでしょう。それでは今まで一回も動いたことがない処は今後も動かないと言えるでしょうか。熊本地震でも新たな断層が各所にできました。能登半島地震でも活断層でもない場所が新たに隆起したり動きました。だから活断層という名称は単に「ここは頻繁に動く断層ですよ」という程度のもので、地上に活断層がないので、ここで地震は起きないという根拠にはなりません。
日本列島周辺には複数のプレートがあります。南海トラフ地震はフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んで、その反動でプレート型地震が起きるのです。そして日本列島の地下に沈み込んだプレートの歪エネルギーが解放されて起きる地震は断層型地震といいます。これは日本列島の直下で、しかも浅い場所で起きると小さな地震でも大きな被害が出ます。プレートによる歪にも一定の習性があるようですが、松田式や入倉・三宅式は「強震動予測式」と言うように、これまでの地震の統計による予測でしかありません。だから「大きな地震は起きない」と断言する四国電力や舞子裁判長の決めつけは科学ではありません。宗教的願望です。

四国電力も裁判長も地震予測を値引きしている

さて、四国電力と武智舞子裁判長は中央構造線のうち伊方原発周辺の中央構造線断層帯は5キロ~8キロの地点を通っていることは認めています。しかし、「中央構造線断層帯長期評価」(第二版)には佐多岬半島の北部における調査が不十分であり、今後も精密な調査の必要があると書いているそうです。しかし、活断層である可能性が高いという学者と活断層ではないという学者の意見の相違がある。そこで、当然ながら地震が少しでも軽減したいと願っている四電と舞子裁判長は神様にでもお願いしたのか、何としても、活断層ではないという学説に依拠して、屁理屈を捏ね繰り回して「中央構造線は活断層ではありません」と主張しているのです。四電は結論から根拠を導いているのです。四電としては何とか原発を動かしたいので「活断層ではない」と平気で嘘を言うのですが、裁判長は予断を持ってはなりません。「法と良心のみに従い、予断や偏見を持つことなく公正・公平な」判決を書く必要があるんじゃないですか。
四電側の中央構造線が活断層ではないという根拠は2次元調査を行ったが、活断層は見つからなかったというのですが、これも怪しいもんです。九電の川内原発の地質調査で岩盤をボーリング調査した結果、岩盤のコアがボロボロだったので、担当の社員がこっそりほかのコアと取り替えて、インチキ検査をしていたことが、内部告発でばれ国会で問題になりました。電力会社に調査させたら、そんなことは朝飯前です。電力会社にではなく、本当は規制委員会監督の下で、第三者による調査が必要なのです。
 
南海トラフの地震も過小評価

南海トラフ地震はM8.0~9.0の地震が30年以内に60~70%の確率で起きるというのが定説です。それに対して、伊方原発はどれだけの影響を受けるかとして、地震の想定としてはM9.0は過大すぎるとして、他でも値引きしてるのでわが社でも値引きして、M8.3として揺れを計算しています。9.0も8.3もほとんど変わらないのではと思うかもしれませんが、マグニチュードは対数計算ですから0.2が約2倍です。8.3は9.0の1/7になります。そこで伊方原発では南海トラフ地震が起きても基準地震動の範囲の570ガルを超える地震は起きないと主張しているのですが、これも値引きです。9.1の地震が起きるかもしれないのですから。
それから原告は熊本地震を例にとり、連続して地震に襲われたら、それこそ格納容器も原子炉も持たないだろうという原告の批判に対して、何の根拠も示さずに、「原告らの主張は抽象的な可能性を指摘するものに過ぎず、南海トラフ地震が発生しても伊方原発の重要施設は弾性範囲(地震力により一時的に変形しても地震力が取り除くと元道りになる範囲)にとどまるため、南海地震が時間的に近接して再び強振動に襲われると仮定しても、安全性が損なわれることはない」という主張を舞子はんは丸飲みですがな。
よく考えてみてくださいな。一次冷却水のパイプが震度7で激しく揺れて、亀裂が入るか入らないかで辛うじて持ったとしても、次に同じかそれ以上の揺れに襲われたら持つわけないじゃないか。基準地震動の計算は一度だけの地震に対しての計算だぞ! 四電は嘘をつくな! 舞子お前はそんなことは知らないだろう! このばかたれが!

避難問題が裁判の最大の争点へ

私の率直な意見として、電力会社が新規制基準に著しく違反している場合、裁判長は電力会社に対して厳しい判決を出せるでしょうが、著しい瑕疵がなかったら、厳しい判決を出すのは難しいでしょう。
やはり最終的には規制委員会の「新規制基準」が間違っているという行政訴訟で闘わなくてはならないような気がします。でも安保関連の裁判と同じで、国相手では、「統治行為論」を理由に「高度な国の政治的な判断に裁判所は立ち入れない」として裁判では勝てないでしょう。
しかし、規制庁が自治体に丸投げの「避難計画」なら話は別です。能登半島地震の前に最終弁論が終わった大分地裁では争わなかった「避難計画」で争えば、勝訴の可能性は十分あると思います。これからは志賀原発の周辺住民の避難が困難だったという事実を踏まえて「避難計画」が原発裁判の最大の争点になる可能性が高いと思います。

結論の代わりに

2011年3.11の後は原発再稼働反対が地元紙では8割もあったのに、直近の朝日新聞の世論調査では再稼働賛成が50%で、反対派35%と逆転しています。これは岸田政権による「原発が動いていないから電気料金が高い」という嘘のプロパガンダが成功しているのです。ですから、腐れ切った自民党政権を倒すしか原発を止めることはできないと私は思っています。
問題は原発だけではありません。少子高齢化と人口減少で30年間GDPも賃金も上がらない国の首相が、トランプに抱きついて武器を爆買いして太鼓持ちを演じた安倍晋三。次が異次元の少子高齢化対策と嘘をついて、予算も組まずに、バイデンの言いなりに防衛費だけ2倍にして、米軍の代わりに中国と戦争する気満々の岸田政治をやめさせるためにも政権交代が必要なのです。





by nonukes | 2024-05-06 13:21 | 脱原発大分ネットワーク | Comments(0)

  小坂正則

by nonukes