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小坂正則の個人ブログ

ドイツに学べば日本も原発ゼロで再エネ100%は夢じゃない

再エネ電力を次々止めて老朽原発を動かせば再エネ100%は永遠に無理
小坂正則


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2022年の日本の電源構成グラフ


日本の電力の22.7%が再エネ電力

 日本の2022年の再エネ電力の内訳は太陽光が最大の9.9%。水力が7.1%。木質バイオマスは4.6%です。風力0.9%で地熱は0.2%です。(出典:環境エネルギー政策研究所より)(注)自家発電は推定ですので、出典により微妙に違います。
 太陽光は昼間しか発電しません。だから不安定な電力として大手電力会社に嫌われますが、気象予報が発達した現在は、火力発電や蓄電池などによるバックアップの事前準備ができるようになりました。そして太陽光設置家庭の蓄電池や電気自動車が日本中の太陽光や風力の負荷変動を調整する揚水ダムの役割を担うようになるのです。

電気自動車が再エネ電力普及を支える

世界中で電気自動車の激しい開発競争が繰り広げられています。電気自動車の価格の三分の一が蓄電池と言われています。電気自動車の蓄電池は現在、リチウムイオン電池を使っていますが、「全個体電池」の開発競争が進んでいます。従来のリチウムイオン電池は液体の中でリチウムイオンの受け渡しが行われるので、火災が起きたり、エネルギーロスが大きいのですが、全個体電池は充電時間が短縮されて蓄電池の容量も安全性も格段に上がるのです。ですから電気自動車の普及による蓄電池の開発とコストダウンが起これば、それだけ太陽光のバックアップに寄与するのです。また、V2Hとは、電気自動車や蓄電池の電気を、夜間に自宅で使う装置ですが、太陽光設置の家庭ではV2Hがあれば昼間の太陽光の電力でだけで1日中暮らせるかもしれません。

電力ひっ迫は夏から冬場に替わった

3年前までは日本の電力ひっ迫は夏場の平日昼間に起きていました。その理由は工場やオフィスのエアコン需要で電力が足りなくなったのですが、太陽光など電力供給量も増えた結果、冬は太陽光の発電量が落ちて、暖房の電力需要が高まるので電力ひっ迫が冬場に移行したのです。実際、毎年のように冬に電力ひっ迫が起きています。特に九州電力管内では太陽光発電が日本一増えたため、春から秋には電力が余るので太陽光を強制的に止めているのです。


危険な老朽原発を動かすために
風力と太陽光のクリーンな電気を捨てている

昨年までは電力が余るようだと、風力とメガソーラーの出力調整制度により、輪番でメガソーラー発電や風力を一時的に止めていました。しかし、原発再稼働と太陽光が増えたために電力が余り過ぎて、今年4月から50kw未満の小規模太陽光も止めたと仮定して、その分の太陽光発電の電気料金を差し引く(代理出力調整)制度が始まりました。
私は50kw弱の太陽光発電を1基持っています。年間約200万円の売電をしていました。ところが今年4月から9月までの半年間に25%カットされました。冬は太陽光の発電量も落ちるので、あまりカットされないとしても年間にすると10%以上カットされ、年間20万円以上の損失見込みです。
九州電力の今年度カットする太陽光の電力は6.8%と予測されていて、その量は10.3億kwhなので、電気料金が1kw当たり20円としたら、200億円以上の再エネ電力を止めることになります。死の灰を生む原発を動かして、発電コストゼロでクリーンな再エネ電力をドブに捨てているのです。
関西電力高浜原発1号機が7月には再稼働しましたが、この原発は、現在動いている原発の中では日本最古の原発です。実に48年も経ったポンコツ原発を20年動かすと合計で68年も動かすことになり、事故が起こらない方が不思議です。これからは東電の柏崎原発6、7号や島根原発など、次々と古い原発を再稼働させようとしているのですから再エネ電力の運転停止はますます増えることでしょう。

太陽光を止めずに再エネ電力のフル活用を

日本政府は再エネ電力を2030年度に36〜38%に引き上げる目標です。これから7年で2倍にするのですから、再エネ電力をカットするなどもってのほかです。ドイツ政府は今年4月に原発全廃しました。そして2021年時点で再エネ電力が約42%だったのが2030年に80%到達を目指しています。原発に頼らず、再エネ電力を増やすドイツの仕組みと日本はどこが違うのかを比べたら一目瞭然です。
ドイツでは太陽光で最大6000kw、風力で最大18000kwまでの設備は市民主体のエネルギー組織(生協など)では優先的に系統に接続できます。  また、ドイツの大きな特徴として、徹底した送電線の効率化を進めています。日本政府も電力自由化により、送電線の運用を監視する独立機関として「電力広域的運営推進機関」ができましたが、実際の送電線の運用管理は各電力会社の子会社が行っていて運用の透明性が不十分です。動いていない原発の送電線利用の既得権があり、送電線が余っていても再エネ電力を流せない仕組みです。

接続優先順位を変えれば再エネ100%は可能

日本の送電線利用の仕組みは原発が最優先です。原発は止めたり動かしたりするのが苦手なので、ベース電源として最優先しています。その次が再エネ電力を優先しますが、春や秋のエアコンがない季節は九州では原発の電力だけでも余ることがあるのです。もちろん揚水発電や関西圏へ電力を送ったりして調整しますが、それでも電力が余るので、再エネ電力を止めるのです。
ドイツは原発が動いていた時でも、再エネが最優先でした。この「再エネ最優先」の制度が日本にはありません。政府は新規原発の建設も計画しているので、遮二無二原発を優先したいのでしょう。
もう1つドイツと日本の違いがあります。ドイツでは発電会社や売電会社ごとに完全に分離されていて、独立の送電線運営会社が送電線を運用しているので、発電会社や売電会社間の公平な競争が担保されています。それに比べて日本では送電線管理会社と発電会社や売電会社とは系列でつながっていますので、新電力の情報を送電会社が系列の売電会社に漏らして、顧客を奪い返すなどの事件が全国で起こりました。このように日本の大手電力会社では電力自由化への不正が繰り返して行われるのです。

ドイツは再エネ電力を止めたら補償します

ドイツはヨーロッパと陸続きなので、余った太陽光や風力の電気は他国へ輸出入できますが、それでも太陽光や風力が余る場合があります。その時は再エネ電力を止めざるを得ません。しかし、「再生可能エネルギー法」で、止めた分の電気代は政府が補償します。だから安心して再エネに投資できるのです。日本では太陽光の投げ売りが起きています。洋上風力など再エネ電力が増えたら発電停止の割合が増えて、投資が回収不可能の可能性があるからです。

ドイツのEEG法(再生可能エネルギー法)とは
環境保護や資源保全を目的に、ドイツにおける電力供給の大部分を再生可能エネルギーによる電力に転換するための法律。太陽光や風力など再生可能エネルギーによる電力を送電会社が固定価格で買い取り、優先的に送電線へ流すことが義務付けられている。また電力が余った時には火力発電を最初に抑制して、それでも余る場合は再エネ電力を有償で抑制するとありますから、これも日本と真逆です。

一般家庭の蓄電池の電力の売電を認めよ

九州管内でNTTが巨大な蓄電池の施設を作り、そこに昼間の余った電力を貯めて、電力市場で昼間の安い電力(昼間の電力市場価格はゼロ円など頻繁に起こっています。ゼロ円でも市場の手数料が必要で、実質1kwh当たり0.1円です)を購入して、蓄電池に貯めておき、その電力を夜の価格が高くなった時に、電力市場で売るという仕組みが認められました。伊藤忠商事は岡山で日産リーフのリサイクル蓄電池を利用した仮想発電所を今年度内に運転開始します。これは欧米では既に実施済みです。
しかし、日本では一般家庭の蓄電池や電気自動車の電気を夜に送電線に流すことは電気事業法違反です。昼間の太陽光の電気は売れるのに、なぜ夜は売れないのでしょうか。それは大手電力会社の既得権益を奪うから認めないのです。電力会社の一番の利益は一般家庭への電力販売と、「夕方~夜」の価格が高いときに電力卸市場にかけることです。
一般家庭の蓄電池の電力販売を認めれば、大手電力会社の電力需要は少し減ります。それに伴い新電力は一般家庭の電力も購入して、電力卸市場の高い電力を買わずに済みます。もちろん一般家庭の蓄電池や電気自動車の蓄電池だけで全ての電力需要を賄うことは不可能です。政府の計画では洋上風力を原発10基分以上建設する計画ですから、どのみち蓄電池とIOTによる電力需給調整が必要なのです。2040年頃には一般家庭はもとより工場やビルに電気自動車の屋根や窓まで太陽光が設置され、自然を破壊するメガソーラーは不要で、原発の新増設も老朽原発の運転も不要になるのです。



by nonukes | 2023-11-30 12:19 | 小坂農園 薪ストーブ物語 | Comments(0)

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