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小坂正則の個人ブログ

資本主義をやめなければ「脱経済成長」は実現できない

マルクス主義の再発見!斎藤浩平著人新世の「資本論」
小坂正則


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資本主義社会は拡大再生産を繰り返して剰余利潤を上げ続けなければ資本主義は成り立たたないのです。自転車をこぎ続けなければ倒れてしまうのと同じことです。ですから「脱経済成長」を目指すなら、社会システム(政治体制)を変えなければならないのです。自転車からみんなで引っ張るリヤカーのような社会へ。それがどんな社会かといえば、資本主義社会のままでは実現不可能で、だからと言って既存の社会主義国家などではあり得ず、全く新しい「剰余利潤を生まないでもいい社会」という協同組合やワーカーズコープや非営利NPOのような仕組みの社会体制に変える必要があると私は思います。そのヒントを私は斎藤浩平氏の「新人世の資本主義」の中に発見したのです。
多くの若者は就職戦線で正規雇用を確保するために汗水流して就活してもいい就職先はなく、ブラック企業か、非正規雇用しかない社会に放り込まれているからです。そんな中で分配の仕組みと格差の是正を実現できなくて「もうこれ以上成長しなくていいんだ」というスローガンは彼らに「お前たち若者は我慢をしろ」という、豊かな高齢者世代と貧しい若者世代との世代間の断絶と対立を生み出すだけで、何の解決策も生まないでしょう。

マルクス主義の再評価

斎藤浩平さんの「人新世の資本論」の新書が45万部も売れているのですから、今の資本主義のままではよくないという感覚や理論はインテリ層を中心に理解している一定の国民はいるのだと思います。そして斎藤浩平さんは社会ビジョンを提案しています。
資本論の中で「資本主義は物質代謝に修復不可能な亀裂を生み出す」と警告して、資本主義が持続可能な生産のための条件を掘り起こすことに警鐘をならし、資本主義は人間と自然の物質代謝を持続可能な形て管理することを困難にし、社会がさらに発展していくための足かせになるというのです。
マルクスの唯物史観は生産諸力(生産力の発展)と生産諸関係(分配など)との矛盾によって古い生産諸関係が桎梏となり、その関係を打ち破ることにより資本主義から社会主義や共産主義の社会へと変化するというのです。その源は生産力の発展だと言います。しかし、「資本主義がもたらす近代化が、最終的には人類の開放をもたらす」と「共産党宣言」などにみられるのですが、これは初期マルクスの「進歩史観」といい、「生産力至上主義」と「ヨーロッパ中心主義」だったというのです。ヨーロッパ以外のアジアやアフリカなどは近代化が進んで資本主義が発展した後に共産主義へと移行するという考えです。
しかし、晩年のマルクスは後進国のロシアの「農村共同体」ミールやゲルマン民族の「マルク共同体」などの「共同体」に大変な興味を持って研究に打ち込んだのです。そしてもう1つが環境問題から出てきた「エコロジー社会」です。晩年のマルクスは若きマルクスの「進歩史観」から方向転換しようと考えて、資本論第2巻と第3巻を未完で終わらせたのではないかと斎藤浩平氏はいうのです。実際に「環境問題」と「共同体」の研究したメモなどがたくさん残っているそうなのです。マルクスが唱えた資本主義の次に来る社会は既存の独裁国家の社会主義などでは決してなく、もう1つの公平で公正な社会政治システムがあるのではないでしょうか。

赤から緑へ

20世紀後半になって、資本主義のもとでの生産力の発展こそが、環境危機を引き起こしているという厳然たる事実から生産力至上主義のマルクス主義は環境運動などによって繰り返し批判されることになった。(P154)
私自身も20代の前半まではマルクス主義に被れていたのですが、環境問題が大きな社会問題となってクローズアップされてから、赤から緑へと考えが変わったものです。
しかし、「人新世の資本論」でマルクスは資本論第1巻で、自然の循環過程を、マルクスは「自然的物質代謝」と言い、そして人間もまた、自然の一部として、外界との物質代謝を営んでいる。呼吸もそうだし、飲食も排泄もそうである。人間は、自然に働きかけ、さまざまなものを摂取し、排泄するという絶えざる循環の過程のなかでしか、この地球上で生きていくことはできない。これは生物学的に規定された歴史貫通的な生存条件なのである。しかしマルクスによれば人間はほかの動物とは異なり、自然との関係を取り結ぶ。それが労働である。労働は「人間と自然の物質代謝」を制御・媒介する人間の特徴的な活動である。資本主義において資本は人間も自然も徹底的に利用する。人々を容赦なく長時間働かせて、自然の力や資源を世界中で収奪し尽くすのだ。(P159)と、マルクスもこのような認識を持っていたというのです。
そして資本の無限の運動と自然のサイクルが相いれない社会が現代資本主義社会であり、現代の気候危機の根本的な原因もここにあるとして、そのような人類の営みを「人新世」という地球の歴史区分として表せると斎藤浩平氏はいうのです。

赤と緑の共闘

地球温暖化や生物の絶滅や原子力発電の問題などの環境問題に私たちが個別の反対運動や環境保護に取り組んだとしても、私たちの運動は「もぐらたたき」のような終わりのない闘いの繰り返しで、いたちごっこです。環境問題を根源的に解決するには政治と経済の仕組みを変えなければ根本的な解決にはならないでしょう。資本主義から社会主義へと社会制度を変えたからといっても、収奪的な「経済成長優先主義」の思想では環境問題の解決に向かうわけではないでしょう。ですから私たちのたたかいは環境や暮らし方と政治という2つの解決策を同時に追求することが必要だと思うのです。
マルクス主義が中国やソ連の失敗によって、手あかにまみれてしまい、今更マルクスでもないだろうという考え方に一石を投じるヒントを斎藤浩平氏は与えてくれたのです。
「人新世の資本主義」141Pで、ソ連型の国有化を目指すのではなく、第三の道として<コモン>水や電力、住居、医療、教育などの公共財を自分たちで民主的に管理する社会を目指す、と提案しています。それを「コモン」といい、宇沢弘文氏の「社会的共通資本」と似ている。人が「豊かな社会」で暮らし、繁栄するためには一定の条件が満たされなければならない。そうした条件が自然環境や交通機関や社会的インフラ、教育や医療といった社会的な共有財産を市民が自主的・水平的に共同管理に参加することを重視する。そして最終的には「コモン」の領域をどんどん拡張していくことで、資本主義を超克する。(P142)とあります。


民主的で環境に配慮した市民自立社会

私たちの国で資本主義からコモン社会を作るためには憲法を改正する必要はありません。将来的には金融関係法令の改正が必要でしょうが、資本主義社会を段階的にやめることは社会主義革命を起こして一気に資本主義を倒す必要はありません。公的事業体や非営利法人や協同組合の拡大を進めればいいのです。水道事業民営化の逆バージョンです。民間企業がやっているガスや電力や鉄道など公共的な社会インフラ事業ははどんどん買収して公的機関かまたは協同組合所有にしていきます。私企業は労働者の自主管理企業化を積極的に進めます。そして自主管理企業は株主への分配を廃止します。その代わり法人税を割り引きます。そして電力会社の所有している電線は国有化または地方自治体所有にします。鉄道も地方自治体または国有化へ逆戻りさせます。介護職員や医療関係者などエッセンシャルワーカーは非営利組織の職員または地方公務員として地方自治体が運営する公的機関とします。私企業は存続しますが、法人税が大幅に値上げして、非営利企業化を進めます。非営利企業も利益を出すことはできるのです。減価償却後の再投資を行うためには利益がなければ企業は存続できません。配当ができないだけです。
勤労者の暮しや人生の豊かさを保障するために、労働時間の短縮や長期休暇などの余暇の充実を進めます。
そして化石エネルギーの消費と二酸化炭素の削減のために環境税を導入して石油や石炭や天然ガスに炭素の量に比例する税金をかけます。
経済格差の是正を行うためには貧困家庭のシングルマザーへ生活支援や非正規の若者への住宅支援や生活支援を積極的に行います。経済格差の是正のために最低賃金を段階的に1500円まで早急に引き上げる。LGBTQの人たちの差別の解消と入籍制度の法改正を行う。
子ども子育ては社会でおこなうものという考えと少子化から抜け出すために、子どもの医療費や保育費用など無償化します。非婚・結婚にかかわらず出産費用から子育て費用を公的に支援します。
その社会理念は「持続可能な循環型社会」「社会的公正と正義」と「多様性の尊重」「非暴力・平和主義」「参加民主主義」「環境中心主義」の実現をめざします。
自衛隊は災害復旧隊として非武装化して隊員は削減します。
そして最終的な社会保障としてベーシックインカムを導入のための協議を進めます。
このように一人ひとりの個人を尊重し、誰ひとり孤立をさせない包摂のコミュニティーで環境配慮した市民社会を作るのです。


by nonukes | 2022-02-11 18:02 | 小坂農園 薪ストーブ物語 | Comments(0)

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