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小坂正則の個人ブログ

枝野幸男代表への公開質問状と回答から見えてきた脱原発から大きな後退

立憲民主党はいつから原発容認派に寝返った?
小坂正則


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今年の2月14日の西日本新聞に311福島原発事故から10年目の特集記事として、立憲民主党(略称:立民)の枝野幸男代表へのインタビュー記事が掲載されました。(最後の頁にあります)
その中で、枝野代表は「無責任なことは言えない」として、「使用済み核燃料の行き先を決めない限り、少なくとも原子力発電をやめると宣言することはできない」と、立民の「原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現」という党綱領から大きく後退する発言を行いました。
なぜなら、「原発ゼロをめざす」とは自民党も公明党も謳っています。でも、彼らは永遠の彼岸(決して実現しない夢物語)という意味で「自分は思ってもいないこと」を謳っているのであって、現実的には原発をやめる気など微塵もないのです。これまで、民主党は「脱原発」を唱えていても、電力会社の組合である電力総連などの原発推進派を抱えている連合の顔色をうかがって、「原発には当たり障りのない対応」を一貫してとってきました。
しかし、「希望の党」に行けなかった枝野幸男氏が全国の市民から「立て枝野」の声に背中を押されて結党した「立憲民主党」は「反新自由主義」や「脱原発」を明確に掲げて立党したのではないですか。 これまでの野党第一党だった「民主党」とは大きく違う「貧しい労働者や市民に寄り添った政治」に多くの市民が期待して、立民を野党第一党へと押しり上げたのです。そして「国民民主党」(略称:国民)との吸収合併で、立民に行けなくて「国民」に残った政治家たち、玉木雄一郎や山尾志桜里、前原誠司などはどれも自民党に自分を売り込むことしか考えていない、隠れ自民の政治家に過ぎないのです。そんな「国民」など気にすることなく、立民は「国民」や維新と決別して、秋の衆院選を共産党と市民連合など健全な野党との間で「立憲主義」と「脱原発」の政策協定を結び、野党共闘を実現して、自民党を過半数に追いやるたたかいを1日も早く構築してほしいものです。
このような私の立民への批判は、立民に野党第一党として、この国を引っ張って行ってほしいから批判するのです。決して立民を嫌って、憎悪の念を持っているわけではありません。立民が「原発ゼロ」のたたかいの先頭に立ってほしいから、エールを込めての批判です。

トイレのないマンションに、核のウンコをこれ以上増やすな

西日本新聞の記事にある、枝野氏の発言に対して、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」会長 吉原毅(元)城南信用金庫理事長、顧問 小泉純一郎(元首相)、顧問 細川護煕(元首相)幹事長 河合弘之(脱原発弁護士)が枝野氏に対して、6月に公開質問状を出したのですが、その回答は7月6日の立民からの回答と再質問を掲載しています。
その中身は大きな認識違いがあります。1つ目は「六ヶ所村再処理工場」について青森県と電気事業連合会が作った日本原燃㈱との間で1998年に交わした協定書には「再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合には、青森県、六ヶ所村及び日本原燃株式会社が協議のうえ、日本原燃株式会社は、使用済燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずるものとする」とあるので、回答のように青森県から搬出することが義務とは書かれていませんし、協定を結んだのは日本原燃であり、電事連です。
政府には原発や再処理を推進してきた道義的な責任はありますが、直接的な全責任は企業にあるのです。再処理を行わないことを決めた後に、政府は電力会社を指導して、各電力会社ごとに核のゴミを返還させて保管するか、青森県に当分の間、保管をお願いするかなどの交渉を行えばいいのです。
国や電力会社は使用済み核燃料の再処理をやめることができない理由として、常に「再処理をやめたら、使用済み核燃料を青森県から持ち出す必要があるので、再処理が割高で本当はやめたくても、やめることができない」と言い訳の材料に使っているのです。
「原発はトイレのないマンション」と言われて久しいのですが、電力会社も政府もトイレの問題を解決しないまま原発を動かし続けているのです。枝野氏が、だからと言って原発を動かし続けるのなら、マンションのウンコは溜まり続けるしかないのですから、1日も早く、原発を止めて、まずはウンコをこれ以上増やすことをやめるべきなのです。

脱原発を願う8割の国民が絶対的多数派

六ケ所村再処理工場で、核のゴミの再処理をやめたら、各電力会社に使用済み核燃料がたまり続けるし、六ケ所村に保管されている使用済み核燃料の返還を求められるので、電力会社も国も、このまま「問題の先送り」をしてきたのです。枝野氏が「この問題を解決しなければ原発を止めることができない」といいますが、これは「卵が先か鶏が先か」という論争とよく似ています。
「原発を動かすから核のゴミが出る」その「核のゴミを再処理するから、再処理で出たモックス燃料は原発で動かさなければならない」のです。
再処理を最初に止めるか、原発を最初に止めるか、どっちも一緒に止めればいいのですが、「卵が先か鶏が先か」論争を行っていては、この先何十年もの間、原発も六ケ所村も動かし続けることになるのです。立民が国民の生命と安全と環境を守る側に立つのなら、原子力村の中の最弱点から攻めて、原発でも再処理でも容易に止められるところから止めるという戦略でたたかうべきなのです。
しかも、ここで枝野氏がいう「使用済み燃料の行き先を決めなければ原発を止めることはできない」というなら、ドイツのメルケル氏が2025年に全原発を停止すると言ったことは、無責任な政治判断だとでも言うのでしょうか。世界中で核のゴミの最終処分方法は決まっていません。ですから、当分の間は青森県六ケ所村に保管してもらって、電力会社はその間は保管料を支払って、適切な保管方法を国を挙げて議論すればいいのです。急いで決めることでもありません。枝野氏の説に従えば、核のゴミの最終処分方法が決まるまでは原発を動かし続ける必要があるのですから、この先何十年も自民党と同じように原発も再処理工場も動かし続けるのでしょうか。
私たちには残された時間はもう僅かしかありません。いつ巨大地震が日本列島を襲ってくるかもしれないのです。東電福島原発事故級の原発事故を二度と起こしてはなりません。その前に一刻も早く日本中の原発と六ケ所村再処理工場を止めなければならないのです。

立憲民主党による回答

原発ゼロ 質問1

貴殿が代表を務める立憲民主党の綱領(2020 年 9 月 15 日)では、「原子 力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現」するとされてます。貴殿の、原発の使用済み核燃料の行き先をきめないことには、原 子力発電をやめると宣言することはできない旨の回答は、立憲民主党の綱 領と矛盾するものと考えますが、この点について、貴殿のお考えをお示しください。

(立民回答)
ご指摘の通り、立憲民主党綱領において、「私たちは、地域ごとの特性を生かした再生可能エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会を構築し、あらゆる政策資源を投入して、原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現します」としているところです。その実現を目指していることに、何ら揺るぎはありません。
一方で、たとえば平成 10 年 7 月 29 日に電気事業連合会の立ち会いのもと 行われた、青森県、六ヶ所村、日本原原燃株式会社の覚書では、「再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合には、青森県、六ヶ所村及び日本 原燃株式会社は、使用済核燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ 適切な措置を講ずるものとする」とされているところです。
全ての原発を廃止すれば、使用済核燃料再処理事業は不要となります。そうなれば、使用済核燃料を速やかに施設外に搬出しなければならなくなりますが、その行き先は決まっていません。新聞インタビューの当該部分は、行き先を決めるための様々な政治調整が必要になること、政権を取った暁には、速やかに当該覚書の見直しを行うとともに、行き先を決めるための努力を惜しまない趣旨で申し上げたところです。
従いまして、立憲民主党が綱領で掲げる「原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現」することと、何ら矛盾はないものと考えておりますし、私も立憲民主党の綱領・基本政策に掲げる社会の実現に全力を傾注して参ります。
(質問2は質問も回答も省略)

立憲民主党への再質問

2021年8月2日
立憲民主党代表 枝野幸男 殿

原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟
会 長 吉原 毅
顧 問 小泉 純一郎 細川 護煕
副会長 中川 秀直 幹事長 河合 弘之

2021年6月14日付で当方が発した公開質問状に対し、貴党、貴殿より2021年7月6日に回答書を頂きました。
その回答は平成10年7月29日に電気事業連合会の立ち会いのもと行われた青森県、六ヶ所村、日本原燃株式会社の間の覚書(以下、本件覚書といいます)を根拠にしています。
しかしながら、この本件覚書には政府は関与していません。これは国の約束ではないのです。それなのにこれを「この約束を破ってしまったら、政府が信用されなくなります。」と枝野党首は言っているのです。政府の約束でないものを政府の約束であるかのごとく言うのは誤りであり、誤りをもとに「最終処分場が決まらない限り原発はやめられない」などというのは公党の党首として恥ずかしいことです。
この本件覚書の文言は「再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合には、青森県、六ヶ所村及び日本原燃株式会社が協議のうえ、日本原燃株式会社は、使用済燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずるものとする。」です。これにより義務を負うのは日本原燃株式会社だけです。国ではありません。
また、貴回答は「全ての原発を廃止すれば使用済核燃料再処理事業は不要となります」と述べますが、完全な誤りです。全ての原発を廃止しても膨大な使用済核燃料が残されますからその再処理事業は今後数十年継続されます。論理的に明白なことです。(なお、以上のように言うからといって私達が再処理を容認しているわけではなく、再処理はやめて直接処分をすべきだと主張しています。しかしこれは別の議論です。)
次に日本原燃が負う義務は、再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合に、「青森県、六ヶ所村と協議」することです。「使用済燃料の施設外の搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置」について協議すべきなのです。そこには硬直な決め事は記載されていません。施設外への搬出は「速やかに」とはされていません。また、必ず「搬出」しなければならないともされていません。「搬出」を含む「必要かつ適切な措置」(裁量・協議の余地あり)を協議により決定し実行すべきなのです。
その結果、直接処分場の開設や各原発サイトへの返送等があり得ると思われます。
「全ての原発を廃止すれば、使用済核燃料再処理事業は不要となり、使用済核燃料を速やかに施設外に搬出する義務が発生する」という貴回答書の見解が誤りであることは明白です。
以上のとおり、貴殿のインタビュー記事での見解(最終処分場を決めなければ原発廃止を宣言できないという見解)が誤りであり、貴党回答書の見解(本件覚書を根拠とする「全ての原発を廃止すれば、使用済核燃料再処理事業は不要となります。そうなれば、使用済核燃料を速やかに施設外に搬出しなければならなくなりますが、その行き先は決まっていません。」という見解)が誤りであることは明らかであり、その見解の撤回を求めます。下記質問1、2、3に回答欄に明確に記載することによって本年8月15日までに御回答下さい。

   記
 質問1.1998年7月29日付の本件覚書は政府が当事者でないことを認めますか。
 質問2.「全ての原発を廃止すれば使用済核燃料再処理事業は不要となります」との主張は誤りであることを認めますか。
 質問3.「全ての原発を廃止すれば、使用済核燃料再処理事業は不要となり、使用済核燃料を速やかに施設外に発生する義務が発生する」との見解が誤りであることを認めますか。

最後に申し上げます。現在の政治問題の中で最も深刻で重要なことは全原発を廃止して原発重大事故を防ぎ国の安全を守るかどうかと言うことです。そのことは東京電力福島原発事故当時に政権党であった民主党の流れをくむ貴党及び内閣官房長官であった貴殿は分かっているはずです。全原発の即時廃止もしくは可及的速やかな廃止を主な公約として選挙を戦えば圧倒的国民は支持をし、投票します。その数は原発容認の野党議員及びその支持者(労働組合)の数の比ではありません。それにも拘わらずそれらの者の意向を忖度していつまでも明確な公約を掲げないから政権奪取⇒脱原発が実現できないのです。
貴党及び貴殿の勇断を求めます。

2021年8月3日に立民より再回答
「…本年7月6日にご回答致したところであり、お示ししたご回答に尽きると考えております。」


「原発をやめるのは簡単じゃない」枝野氏に聞く
西日本新聞2021/2/14

 2011年3月の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から間もなく10年を迎える。立憲民主党の枝野幸男代表(56)は当時、菅直人政権の官房長官として危機対応に当たった。原発政策、行政のあり方…。未曽有の災害と政府の中枢で対峙(たいじ)した経験は現在、野党第1党の党首となった自身の考え方や政治姿勢にどう影響しているのか。枝野氏に単独インタビューした。(聞き手は川口安子)

◆「無責任なことは言わない」

 -今後、原子力政策をどう進めるべきだとお考えですか。

 「原発の使用済み核燃料の行き先を決めないことには、少なくとも原子力発電をやめると宣言することはできません。使用済み核燃料は、ごみではない約束で預かってもらっているものです。再利用する資源として預かってもらっているから、やめたとなったらその瞬間にごみになってしまう。この約束を破ってしまったら、政府が信用されなくなります。ごみの行き先を決めないと、やめるとは言えない。でも、どこも引き受けてくれないからすぐには決められない。原発をやめるということは簡単なことじゃない」

 -立憲民主党は綱領に一日も早い「原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会」の実現を掲げています。

 「使用済み核燃料の話は、政権を取ったとしてもたぶん5年、10年、水面下でいろんな努力をしない限り無理です。だから政権の座に就いたら急に(原発ゼロを実現)できるとか、そんなのはありえない」

 -原発やエネルギーに関する現政権の方向性をどう評価しますか。

 「(菅義偉首相が掲げる2050年までのカーボンニュートラル実現は)当たり前の話ですが、原発を活用して実現するのと原発に依存しないのとでは全然意味が違います。菅首相はそこをはっきりさせないので、原発を使いたい目的で言っていると受け取られても仕方がありません」

 -立憲民主党としては、カーボンニュートラルを原発を使わずに実現すべきだと。政権を取った時の道筋をどう示しますか。

 「皆さん道筋を示せと言うが、道筋を示すのは無責任だと思います。つまり使用済み核燃料の話もあるし、原油価格がどうなるかも分からない。カーボンニュートラルには技術革新も必要で、何年やったらできますなんて無責任なことは言えない」

 -では、野党として責任を持って言えるのは。

 「方向性です。原発に依存しないでカーボンニュートラルを進めていくという方向性は言えるけど、その道筋を言うのは無責任です」
 「無責任なことは言わない。それが多分、私と今までの野党のリーダーとの決定的な違いだと思います。分からないことは分からないと堂々と言う」
(一部を抜粋しています)


by nonukes | 2021-08-08 16:27 | 小坂農園 薪ストーブ物語 | Comments(0)

  小坂正則

by nonukes