2021年 05月 20日
法務省は死亡したスリランカ人女性ウィシュマリさんのビデオを公開しろ
外国人労働者の使い捨てや移民・難民の人権が踏みにじられたままでいいのか
小坂正則
ウィシュマ・サンダマリさん入管での医療放置死
スリランカ人女性ウィシュマリさんは日本で英語を教えることを希望して2017年6月に来日し、日本語学校で学んだが、経済的な理由で学校に通えなくなり、留学生ビザだったために、学校をやめたらビザの更新ができず不法滞在者となった。その後、20年8月に同居男性からのDV被害を受けて静岡県内の警察署を相談したら、不法滞在容疑で現行犯逮捕され、名古屋入管に収容された。今年の1月下旬からは体調悪化を訴え、入院を求めていたが、入管側は許可しなかった。3月6日に搬送先の病院で死亡した。支援者の医師が彼女を診断して、飲み薬だけでは病状の改善は望めないから、点滴を打つように強く求めたが入管は受け付けなかった。また医師が「彼女は精神的に追いつめられた病状と思われるので仮放免すれば病状は改善する」と申し入れたが、その訴えは面談記録にが記載がなく、現場の入管職員にもみ消されてしまったのです。その後この事件は野党により法務省への追究調査が行われて、収監中の監視カメラのビデの公開を求めても法務省は頑なに拒否し続けている。「本人のプライバシーの問題」や監視カメラん位置が特定されると保安上の問題が生じる」などと言って。親族が死亡の原因を調べたいと求めても、国会議員への公開だけでもいいと言っても、上川法務大臣は頑なに拒否し続けている。この上川法務大臣は、2度の法務大臣就任期間に戦後2番目に多い16名の死刑を執行した反人権派の死刑推進派大臣です。
不法滞在でも、自ら入管に出頭したら、強制退去はできるようですが、不法滞在者が逮捕された場合は、帰国を希望しても簡単には帰国を許してくれないようです。ウィシュマリさんは不法滞在で逮捕されたので帰国がかなわなかったものと思われます。
また、2019年6月に不法滞在で収容されていたナイジェリア人男性が死亡。「日本人女性との間にできた子どもに会えなくなる」と帰国を拒んだ男性は、収容中の3年7カ月間で4回、仮放免を申請し、いずれも却下されていた。最後は食事を取らず衰弱して死亡した。その後、全国で入管収容者による抗議のハンストが広まりました。しかし、日本人の私たちは、この事実をどれだけ知っているでしょうか。良心的なマスコミはこの問題を取り上げてはいすが、テレビのワイドショーなどは全く取り上げていません。ゴミ屋敷やマスク警察など、どうでもいいような違法性の薄い、のぞき見事件は視聴率が取れるので、大騒ぎしても、移民・難民の人権侵害の国際的な事件など「固い事件は視聴率が取れない」から無視していいのでしょうか。
移民・難民の人権を踏みにじってはならない
日本の法務省が扱う「入国管理局」や「入国管理センター」は難民申請している収容者や不法滞在者を何年も収容してもかまわないのです。収容期間や難民申請を認めるか認めないかなどは入管が恣意的に判断するのです。しかも、2016年から20年までの5年間で難民申請した外国人は毎年4千人から2万人いるのにも関わらず、総数で50人に満たないのです。世界中の先進国で超最低の難民受け入れです。しかも入国管理センターに収容されている収容者には日本国憲法の基本的人権が一切与えられていません。入管では暴力や嫌がらせなどが日常的に繰り広げられているのです。第三者機関の弁護士などのチェックを受けることはないのです。
政府は「出入国管理及び難民認定法」の改正を今国会に提出していました。その主な改正案は「難民申請を3回申請して却下された者は強制送還が可能」という条文が加えられることに日弁連や野党が反対しています。また、収容者の長期収容決定や仮放免や難民認定などに弁護士立ち合いの下、裁判所で公正な審議が行わることを日弁連などは強く求めています。今回はウィシュマリさんの事件を受けて、自民党・政府は政権への支持率へ影響することを恐れて法案審議を取り下げました。
「入管法」改正案は国連難民条約違反
認定NPO法人「難民支援協会」によると、2019年、日本での難民申請者は10,375人、認定者は44人。各国の置かれた状況は違うため単純比較はできませんが、世界でも類を見ない極めて少ない認定数であることは事実です。例えば、シリア難民の認定率(2017年)は、ドイツでは38%、アメリカでは82%、オーストラリアでは94%ですが、日本では、2011年から2017年の間で81人が申請したところ、認められた人は15人(19%)に留まっています。(ここまで引用)
日本政府は欧米に比べて極端に少ない人数しか難民を受け入れていません。一時的な移民は受け入れていますが、それは期限付きの「技能実習生」や「研修生」という名の日本版奴隷制度で、狭いアパートに集団で閉じ込められて、低賃金で働くだけ働らかさせて、安い労働力を搾り取ったら、使い捨てのように自国へ送り返す「第三世界の労働者を搾取する」制度なのです。彼らは私たちと仲良くを暮らす隣人として受け入れられてはいないのです。
1951年に難民条約が国連で決まり、1951年難民条約の第1条で、難民とは「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」と定義されています。
難民条約には、難民の権利や義務についての規定があります。その中でも特に保障されているものとして
1.難民を彼らの生命や自由が脅威にさらされるおそれのある国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけない(難民条約第33条、「ノン・ルフルマンの原則」)
2.庇護申請国へ不法入国しまた不法にいることを理由として、難民を罰してはいけない(難民条約第31条)
難民の中には本国へ強制送還されたら逮捕されたり、死刑にされる難民もいます。そのような「本国に帰国したら生命の危険の恐れのある難民は強制送還してはならない」という「ノン・ルフルマンの原則」が難民条約の肝です。ですから今回の改正案は国連難民条約に違反しているのです。そもそも難民は戦争や独裁国家による民衆の自由や生存権が奪われる人々を国連が人道的な立場から救うための制度です。日本が自由主義国家として世界に誇るなら、戦争や反政府活動などで自由を奪われた人々を難民として受け入れることは国連加盟国の義務なのです。ましてや自由主義国家の欧米は何百万人という戦争難民を受け入れてきたのに、同じ先進国の自由主義国家を自認する日本政府はその義務を果たしていないのです。
日本政府は多くの移民・難民の受け入れを!
日本には170万人以上の外国人労働者が働いています。その大半は「技能実習生」や「研修生」という名の日本に都合のいい、最大で3年から5年間「働くだけ働らかせて、歳取ったらとっとと帰ってくれ」という制度で結婚も出産も許されなくて、最低賃金以下の収入で、労働基準法も適用されず、一度入ったら逃げ出すこともできないような「日本版奴隷労働」です。そんな制度で私たちの暮らしは成り立っているのです。大規模農業や漁業では彼らなしには産業は成り立たないのです。日本人の若者は3k職場(きつい、汚い、危険)には見向きもしないからです。
現行の移民や難民をほとんど受け入れない日本の現行制度では、外国人労働者が日本で一生懸命に働いても、日本では結婚や家庭を持つことを管理団体が認めてくれません。もちろん自国へ帰って家族を養うという目的の方は、それでいいのでしょうが、日本で好きな人ができて、この国が気に入ってくれた外国人は、私たちの隣人として一緒に暮らせたらいいではないですか。私たちの隣人に外国人がいたら、文化の違いや宗教や価値観の違いを体験できるのです。私の家には昨年からタイの留学生とベトナムの留学生が暮していました。彼女たちのお国の料理と私が作った日本の料理をそれぞれ作りあって、楽しい国際交流が私の家で繰り広げられていました。こんな楽しい時間を過ごせたのは一生の思い出になります。コロナ禍で外国旅行もままならない現在、自宅にいて海外旅行を楽しんだようなものでした。
欧米では多くの国から移民が地域に溶け込んで、異文化社会やコミュニティーを築いています。日本にもチャイナタウンなど刺激的な異国情緒の商店街があります。日本の少子高齢化や人口減少社会に限界集落などコミュニティーの崩壊が現実問題の日本社会では、外国人をたくさん受け入れて、それぞれの文化の違いなど多様性を認め合い、外国人の隣人と仲良くコミュニティーを一緒に築いていくべきなのではないでしょうか。それこそが21世紀の日本が生き延びる人口減少問題の解決策の1つだと思います。もう1つは日本の若者の非正規雇用を法的に禁止して、正規雇用を増やす政策を行うことでしょう。
by nonukes
| 2021-05-20 13:11
| 小坂農園 薪ストーブ物語
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