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小坂正則の個人ブログ

日本は2030年にCO2を46%削減がなぜ必要なのか

「2050年実質CO2ゼロ」を達成するには2030年再エネ50%以上が必須
小坂正則



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CO2削減は「再エネと原子力は同列」が政府の目標

新聞各紙によると5月13日、「エネルギー基本計画法」に基づいて開催された経産省の諮問機関「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会長期エネルギー需給見通し小委員会」は、「エネルギー需給計画」の改定議論を行いました。その内容は「日本の2030年のエネルギーの構成比をどうするか」という議論です。これは2003年から3年ごとに出されているエネルギー需給計画で、2018年の「第5次長期エネルギー需給計画」では、原子力が20~22%で、再エネが22~24%だったのが、今年の「第6次エネルギー需給計画」では、原子力は据え置きの20~22%で、再エネ比率だけが30%以上とすることが決まったのです。
これまで再エネと原子力はほとんど同じ目標値だったのです。なぜなら、原子力村を構成する政治家や電力会社や御用学者の基本戦略が「再エネを増やすなら、同じようにCO2を出さない原子力も一緒に増やすべきだ」と主張して、ほとんど同じ目標値にさせていたのです。しかし、現実はこれとは違って、再エネは2020年に23.1%に達していて、何もしないでも2030年前に24%を上回る予定なのです。それに対して、原子力は3%~6%という再エネに比べて一向に目標達成など不可能な状態なのです。そもそもこの原子力の目標値が現実を無視した高い目標値なのです。

原子力村が生き残りの抵抗

このような原子力発電が増えないことに業を煮やした「原子力村」の「脱炭素社会実現には原子力発電が必要」と訴える自民党「原発の新増設を求める議員連盟」が4月12日に発足。今夏に策定する次期エネルギー基本計画に、原発の新増設やリプレース(建て替え)推進を明記するよう政府に求める。会長を務める稲田朋美衆院議員は、脱炭素に向けた動きは「エネルギーコストの意味で国力低下のリスクがある」と指摘。原子力は「わが国が誇れる国産の技術として重要だ」と述べ、今後も活用していく必要があるとの認識。顧問に就任した安倍晋三前首相も、「エネルギー政策を考える上において、原子力としっかり向き合わないといけないのは厳然たる事実だ」と語った。議連では、原発を安価で安定的なエネルギー供給と脱炭素の両立を実現する上で「欠かすことができない基幹的なエネルギー源」と位置付けた。しかし政府は、現時点では原発の新増設やリプレースは想定していないとの考えを示している。(Bloombergから引用)
そのほか「原発の運転期間を原則40年と定めていて、例外として20年延長もあり得る」新規制基準に定められているのですが、これまで例外規定の20年には運転していなくても運転期間としてカウントされていたものを動いていない期間を差し引いて20年間フルに動かすように自民党議員の中から声が上がっていると朝日新聞は書いています。

政府はバイデン大統領の顔色を窺ってCO2大幅削減へ

2015年に開催された「パリ協定」(2050年に実質二酸化炭素ゼロで地球の温度を産業革命前に比べて2度以内に抑える条約)に調印した時点では、米国のトランプ大統領がパリ協定から離脱したことなどから、日本政府は2030年に2013年比CO2を26%削減するというEUに比べて非常に低い目標を掲げていました。ところが昨年バイデン氏大統領が誕生したことで、温暖化対策に熱心な大統領の顔色を窺った菅政権は46%という思い切った目標を掲げたのです。この目標を決める政府内の議論で経産省は40%削減を主張し、環境省は50%削減を主張したそうです。その結果、その中間の46%削減に落ち着いたのだそうです。
この議論の中で経産省側と環境省の間で行われた綱引きの内容が日経新聞に載っていました。「菅政権の脱炭素狂騒曲」2021.05.11日経テックより
菅義偉首相は4月22日、2030年までの温暖化ガス排出削減目標を2013年度比で46%減にすると表明した。低迷する支持率の大幅上昇を夢見て、これまでの26%削減から大幅に引き上げたものの、肝心の支持率は一向に上がる気配がない。2030年46%削減は、菅義偉首相が就任直後の2020年10月に宣言した「2050年カーボンニュートラル」とは異なり、わずか9年足らずで実現しなければならない高い目標だ。政権内の不協和音は宣言当日から「46%削減」を発表した4月22日夜、政府の地球温暖化対策推進本部の会合が終わった後に、官邸内で重要閣僚が立ち話をしていた。麻生太郎財務相、茂木敏充外相、梶山弘志経産相、加藤勝信官房長官の4人である。

 麻生財務相「46っていうけど、(残りの)6%は積み上げなの?」
 梶山経産相「いえ、積み上げは40%です」
 麻生財務相「じゃあ、6%はどうするんだよ」
 茂木外相「それは環境省にやってもらいましょう」

こんな会話がなされたという。閣内でも46%減という高い数字に驚愕したことを如実に示し、50%削減を強く主張し続けた小泉進次郎環境相に責任をかぶせたいという思いがのぞく。梶山経産相は、4月27日の会見で「総理の政治決断だ」と述べ、経産省にとっては途方もない数字であることを言下に匂わせていた。
麻生財務相は4月27日の閣議後会見で記者から46%減と今後の財政支援について問われた際、こう答えた。「今後の対応ね、前にも言ったけれども、1970年、排ガス規制、マスキー法だけれども、あの法案を出されたとき、結果として世界中から技術を提供してマス年キー法の技術をクリアしたのはホンダ、2番目が日産だったかな、遅れてトヨタになったんだよね、あのときは。それでどうした、あの法案。廃案になったんじゃねえの。高額の金をかけてやった日本はどんな得があったんだねという歴史を若い人は勉強しておいた方がいいね。やったからといって世界中、提案したアメリカはそれを廃案にした。クリアしたのに、ドイツが最後に少しクリアしたかな。それが歴史ですよ」。
 マスキー法は、自動車の排気ガス中の一酸化炭素などの濃度を、わずか5年あまりで10分の1にすることを義務づけた法律だ。当時、「達成は不可能」との声が多かったが、日本メーカーが真っ先に達成した。「強い環境規制が社会を動かした好例」と認識されている場合が多いが、麻生財務相は「意味の無い投資を生んだ失敗例」ともいうべき真逆の認識を示している。 それに加え、発言全体は「パリ協定はマスキー法同様に消えるかもしれない」と暗示しているようにしか聞こえない。「若い人」は高い数値目標を公言してきた小泉環境相を指しているのではないかといった憶測など吹き飛んでしまう衝撃の発言である。麻生財務相はさらに続けた。だからそういった意味では今から2050年まで地球環境のためにやるというのはいいことなんだと思いますけれども、条件をよく考えておいてもらわないと、二酸化炭素は中国が28%、日本は3%ぐらいで、アメリカも十数%あったな、日本だけ頑張ったって3%なので、頑張らないかんところはどこなんだと、よくその辺も考えてもらわないと。

パリ協定は人類生存の最終手段であり、我が国の成長戦略でもある

麻生財務大臣や経産省など「温暖化対策」に消極的な政治家や官僚は二酸化炭素削減は経済にマイナス要因しかならない足かせだとしか考えていません。安部晋三など「原子力村」住民や経産官僚などCO2削減は「経済成長への足かせ」としか考えていないのです。だから、三菱や日立などの重工業産業は何とかして日本の高効率の石炭火力発電プラントの輸出をいまだに夢見ているのです。
麻生副総理が米国の1970年に改訂された「マスキー法」を取り上げて、米国が厳しい規制を日本に要求しても、自分の国が目標を達成できなかったら、その基準を引き下げたり、法律自体を反故にするようなことはよくあることだから、「パリ協定はマスキー法のように廃止されるかもわからない」という不信感を持っているのです。経済界にもそんな不信感を持っている経営者もたくさんいます。だから日本政府も企業も積極的にはやろうとしない大企業も多いのです。
自動車の排ガス汚染物質を1/10に規制する、「マスキー法」という大気汚染防止法という法律が米国にできて、真っ先にホンダのCVCCエンジンがこの規制をクリアーしました。その後、日本の自動車メーカーも次々に基準を超えたため、世界中で日本車が売れたのです。しかも大気汚染防止基準が厳しくなったことにより、エンジンの燃焼効率が上がり、燃費も良くなったのです。
このようなことは自動車だけではありません。日本の50~60年代は都会の工場は海や川には工場の廃液は垂れ流されていました。工場の煙突からは汚染物質や黒煙が大気中にばらまかれて、都会の空はスモッグで真っ黒でした。そんな東京の空や海や川を「元の美しい川や空を取り戻そう」という住民運動が全国で起こったのです。そのほか熊本県水俣市周辺で起きた「水俣病」事件などをきっかけに全国で反公害闘争が起きました。国民の環境問題への意識が高くなった結果、1968年に環境省が出来ました。現在の水質汚染防止法や大気汚染防止法などの厳しい基準の法律ができて、日本中の空や川や海が少しずつ甦ったのです。そして、日本の厳しい環境基準が「公害防止装置」や「省エネ機器」を世界に輸出するビジネスチャンスとなり日本の高度経済成長を支えたのです。
これと同じようなことが現在世界中で起きているのです。次世代の私たちの暮らしは再エネ100%社会です。石油や石炭やウラン燃料などの化石燃料から非化石燃料による水素や再エネ電力に取って代わるでしょう。「パリ協定」の取り組みは人類のピンチでもあり新たな産業創造のビジネスチャンスでもあるのです。

再エネ100%電力を世界的有名企業はなぜ使うのか

日経新聞2月8日号によると、通販の世界最大企業Amazonはオランダにある三菱商事子会社の電力会社エネコ(オランダ)との間で、アマゾンと供給契約を結んだ。電源はエネコがオランダ沖に新設する洋上風力発電所で、2023年の稼働後に13万キロワットを供給する。アマゾンが欧州に置くデータセンターなど、複数の施設の電力を使いという。また、5月13日の日経新聞によると秋田沖の風力が発電を大手商社が建設し、その電力をAmazonに売る計画。最大発電能力は数十万キロワット。大型データセンターは1カ所で原子力発電所0.1基分の10万キロワットの電力を消費するとされる。アマゾンは日本で7カ所にデータセンターを持ち、いくつかの拠点で今回の案件を含めた再生エネルギーを活用するもようだ。太陽光発電所の建設も大手を含めた電力会社などに持ちかけている。
そのほかグーグルやアップルなど、米国の多国籍企業は世界中で、自社で太陽光発電の建設や、他社から再エネ電力を購入してSDGs(持続可能な開発目標)のために企業の社機的責任(CSR)を担おうとしているのです。なぜなのか。1つは莫大な法人税を徴収されるくらいなら、その分を社会的活動に使うことで、企業の社会的信用度が増して、企業価値が上がるからです。2つ目は、太陽光発電などへの再エネ投資はやがて大きな利益を産むことが分かっているからです。EUや米国バイデン大統領は「グリーンリカバリーを積極的に推し進める」(再エネ投資で経済浮揚)と言うのです。残念ながら日本の経済連や菅政権は「日本の優れた石炭火力発電プラントは二酸化炭素削減に貢献する」や「低廉な原発は温暖化防止に必要であり、新規原発の建設が必要だ」などといまだにのためっています。日本がこれから人口減少とマイナス経済成長で若者の雇用がなくなるというダブルパンチに襲われる時代を目の前にしているにもかかわらず。
1日も早く、SDGs(持続可能な開発目標)を達成するための再エネ普及政策や、既存の9電力体制を解体して、送配電の完全分離で送電線の公共化を実現させなければなりません。送電線を公共機関に管理させて、誰でも自由に送電線に電力を供給できる「電力完全自由化」を実現させて、再エネ電力100%社会を実現させよう。


by nonukes | 2021-05-16 11:09 | 小坂農園 薪ストーブ物語 | Comments(0)

  小坂正則

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