2020年 12月 12日
通常国会の始まる前に福島原発事故の汚染水の海洋放出を閣議決定か
東電はトリチウム以外の核種が残っている汚染水をこっそり垂れ流す気だ
小坂正則
菅政権がどさくさに紛れて海洋投棄を閣議決定か
2011年3月11日に起きた福島原発事故で核燃料に流れ入る地下水などの放射能汚染水が1日に140トン出ていて、現在原発敷地内で約1千基のタンクに120万トンの汚染水が溜り続けているのです。そして東電によると2022年には福島第一原発の敷地内には汚染水を保管するタンクの設置場所がなくなるという理由で、海洋投棄を行いたいというのです。そこで、政府は地元の漁協などの反対を押し切って、年内にも海洋投棄を閣議決定することを目指しているのです。それというのも、国会が始まったら野党の追究で政権支持率がまた下がってしまうから、「国会が閉じている時期に世論の批判をうける案件を強行突破する」計画と言われています。
この問題は10月にも閣議決定する計画だったようですが、世論の批判を恐れて、10月23日に梶山経済産業相は「今月中には結論を出さないが、適切なタイミングで政府として責任を持って結論を出したい」と語っていました。
それで、菅政権は遅れれば遅れるほど総選挙に近づき、選挙に影響を受ける可能性がある」という理由から、年末年始のしかもコロナ騒ぎのどさくさに紛れて閣議決定してしまおうと考えている可能性が高いのです。
放射性汚染水の危険性とは
フランス製のアルプスというセシウムを取る機器に汚染水を通して、保管タンクに溜めているのですが、ストロンチウムなど、そのほかの核種は除去できないのです。しかも、アルプスの故障などで、セシウムなどの除去ができていない汚染水が大量にあり、基準値以下に除去できているのは全体の3割に過ぎないのです。
トリチウム(三重水素)はそもそも除去できなくて、そのまま海洋に放出されるのです。「トリチウムは水素と結合して、細胞核の中に入ってタンパク質や糖などとくっつくと排泄されず年単位で体内に残留する危険性がある。実際にウインズケールや玄海原発の周辺では白血病の患者が数倍から数十倍の数に達している。トリチウムの危険性を忘れてはならない」と北海道がんセンターの西尾正道名誉院長は話しています。
また、九電株主の会事務局長の深江守さんによるとトリチウムの危険性を以下のように指摘しています。
「特に加圧水型原発によるトリチウム汚染は深刻です。トリチウムは白血病を誘発すると言われていますが、玄海原発の放出量は全国の原発の中で最も多く、2002年~2012年の11年間で826.0兆ベクレルが海洋中に放出されました。川内原発は413兆ベクレルです。その結果、玄海原発が稼働を開始して以来、周辺地域の白血病死亡率は激増しています。私たちは当初、佐賀県の情報しか持ち合わせいませんでしたが、昨年、壱岐新報が長崎県の情報を明らかにしました。そこには玄海原発から30キロ離れた壱岐市の白血病死亡率が記されていました。1969年~1974年の(対10万人数)白血病死亡率が全国平均3.5人、壱岐市3.9人、1997年~2011年が全国平均5.7人、壱岐市26.2人とあります。1975年に玄海原発1号機が運転を開始することを考えると、その原因が原発から放出される放射能であり、トリチウムである可能性は疑いありません。玄海原発から放出される温排水は、壱岐水道の流れにのり、あっという間に壱岐の島周辺海域に到達し、海産物を汚染してきたことが考えられます。川内原発周辺の海岸にも大型のイルカやサメが打ち上げられ、問題となりました。まさに食物連鎖お頂点に立つ生物にトリチウムが濃縮されてきたわけです。」(ここまで引用)
このように日本の原発からトリチウムは海洋に垂れ流されているのですが、それによる放射能被害は化学的には証明されていませんが、「危険が証明されていないから安全だ」というのは早計です。菅首相が「GoToトラベルで陽性者がでたというエビデンスがないから安全だ」というのと同じです。ICRP(国際放射線防御委員会)という原発推進の国際組織も「トリチウムの危険性は証明されていませんから安全です」というのは、福島県や東電が「福島県の子どもたちの甲状腺がんは東電の福島原発事故の放射性セシウムにいる影響でガンになったとは証明されていないから原発事故のせいではない」という詭弁と同じ論理です。
これまで多くの公害事件では「被害が証明されていないから安全だ」という考えから「安全が証明されるまでは危険性がある」という考えに立つべきなのです。それこそが国や企業など権力の側に立つのではなく、漁民や市民など弱者の側に立った科学者の良心的な立場なのです。
韓国ハンギョレ新聞も危険性を指摘
韓国のハンギョレ新聞10月17日号によると以下の記事があります。
グリーンピースなどの環境団体や専門家は、今年2月に日本が海洋放出を検討していることが伝えられた直後から「汚染水を保管するタンクの敷地をさらに確保するなどの代案があるにもかかわらず、日本政府は海への放出を急いでいる」と批判してきた。
最大の争点は汚染水の安全性だ。東京電力は「多核種除去設備(ALPS)」で放射性物質をろ過すれば、タンク中の汚染水には現行の技術で除去できないトリチウム(三重水素)だけが残ると説明してきた。しかし2018年の調査では、ALPSで浄化された汚染水の70~80%からセシウム、ストロンチウム、ヨードなどの人体に致命的な影響を及ぼす放射性物質が基準値以上含まれていることが分かり、日本政府の発表の信頼度にひびが入っていた。
東京電力は、総量123万トンの汚染水のうち、最近1000トンをALPSで2次処理したところ、主な放射性物質の濃度が基準値未満に下がったと15日に発表した。しかし、2次浄化の結果は汚染水のごく一部であり、具体的な情報も公開されていないため、検証が必要な状態だ。また、トリチウムが環境に及ぼす影響は不確実なため、日本のような長期間(30年)にわたる大規模放出には、特に厳格な管理が必要だ。
日本国内の反対世論も強い。日本の「全国漁業協同組合連合会」は15~16日、経済産業相、環境相らと会談し「(汚染水の海への放出が)日本の漁業の将来を壊しかねない」とし「(海洋放出に)絶対反対」と述べた。日本政府は4月から福島の関係者、関連団体などを相手に7回の公聴会を開いているが、反対世論が圧倒的だった。今年7月に終了した一般国民を対象とする「パブリックコメント」においても反対意見が多く、日本政府は結果を発表していない。(ここまで引用)
つまり、日本政府や事故を起こした当事者の東電の隠ぺい体質が国民は信用できず、安全性に不安があるから、あくまでも反対するのです。
海洋投棄しなくても土地なら周辺にいくらでもある
国も東電も「海洋投棄しかない」という論調で計画を進めようとしていますが、蒸発処理やこのまま保管し続けるという方法もあるのです。経産省は「ALPSで処理した水をさらに薄めて海に流すので安全だ」と説明していますが、いくら薄めても絶対量は変わらないので、そんな話は詭弁です。東電は処理費用の一番安い方法が海洋投棄だから海洋投棄しかないと主張するのです。
トリチウムの半減期(放射線が半分になる時間)は12.3年です。と言うことは100年間保管したら放射能は約1/1000になります。つまり100年間にわたって保管しているのが一番安全な方法なのです。ところが東電も規制庁も保管場所がなくなるというのですが、原発周辺の土地は立ち入り禁止ですから、100年間東電は地元の土地を借りて、その地主に借地料を支払えばいいことです。どうせ使えない土地がお金になるのですから、地主の皆さんも賛成することでしょう。タンクを設置する土地がないからではなく、早く海に流して知らん顔をしたいだけのことなのです。
この問題は原発の事故の後始末がどれだけ巨額になるかのを表しています。事故の責任は事故を起こした東電にあるのです。だから安易に海洋投棄を許したら、福島近海は大量の放射性物質で汚染されて、安全な漁業の再開が遠のくでしょう。この放射性汚染水の海洋投棄は「風評被害」などではありません。実被害を生じさせないためにも、最も安全な方法を事故を起こした東電に取らせるべきなのです。
福島県民や漁業者の不安の声を無視して、菅政権による海洋投棄の閣議決定を許してはならなりません。
事故を起こした東電と国は100年かかろうとも300年かかろうとも100兆円かかろうとも、一番安全な方法で元通りの福島の緑豊かな大地に戻す責任があのです。
by nonukes
| 2020-12-12 15:22
| 小坂農園 薪ストーブ物語
|
Comments(0)