2020年 11月 13日
日本学術会議6名の任命拒否が菅政権の墓穴を掘る結果にしてやろう!
小坂正則
杉田官房副長官と菅義偉とで、こんな会話があったはず
日本学術会議の推薦委委員の6名を菅首相が任命を拒否した問題が10月1日に日本共産党の機関紙「赤旗」に暴露されて、それから政権をひっくり返さんばかりの大騒動に発展したのです。以下の会話はフィクションです。
8月の終わりごろ、杉田官房副長官が菅官房長官へこう伝えたのです。
杉田官房副長官「官房長官。学術会議の山極壽一が推薦名簿を持ってきたのですが、これまでのように最終選考に漏れたメンバーの名簿も含めた推薦者を持ってこずに、105名の最終名簿しか持ってきませんでしたよ。官邸をバカにした態度にお灸をすえていいでしょうか」と話す。
菅官房長官「何だと、これまではちゃんと複数の名簿を持ってきて一応官邸に顔を立てていたのに、山極は官邸に歯向かうつもりんんだな。それなら仕返しをしてやろう」と。
杉田官房副長官「それなら前回持ってきた名簿と同じように6名を外して99名で行きましょうか」すると、
菅官房長官「いいけど何か問題になることはないだろうな」
杉田官房副長官「確かに奴らは何か文句を言ってきたりして、少しぐらいは騒ぐかもしれませんが、官邸は既成事実に流されることはない。日本学術会議の既得権益を打破すると言えば国民は官邸を支持します。マスコミの朝日と東京新聞は騒ぐかもしれませんが、読売とサンケイが奴らの論破してくれますよ」と。すると
菅官房長官「さすが和ちゃんだね。読みが深いよ」と、言って2人で笑いあったことでしょう。
この任命拒否事件の根は第二次安倍政権の時の2014年から生まれていたのです。朝日新聞10月28日号によると2014年の学術委員の交代時に首相官邸から最終段階で外れた人も含めた名簿を提出するように求められて、最終段階で洩れた12名を含む117名の名簿を大西会長が提出したら、学術会議の推薦者の105名ををそのまま任命したのそうです。そして16年には補欠人事をしたいと官邸に申し入れたら杉田補佐官が面会を拒否したままで、そして「17年交代人事では、大西氏が推薦候補決定の前段階で111人の名簿を杉田氏に示し、最終的に安倍首相が会議の推す105人を任命した」と伝えています。そして
学術会議の元幹部は「選考手続きの説明はすべきだが、個人名の入った名簿は、たとえ推薦決定の後でも示してはいけなかった。官邸に人事に立ち入らせるべきではないからだ」と指摘すると記事には書かれています。
そして今回の任命作業では学術会議側がこれまで出していた選考に漏れた会員の名簿を出さなかったことに怒り心頭した杉田と菅が、そのような学術会議に対して仕返しの意味も込めて前回の名簿の111人から6名を減らした99名しか任命しなったのです。
トラの尻尾を踏んでしまって慌てふためく菅官邸
ところが皆さんもご存じの通り、菅と杉田が仕組んだ仕返しが、知恵のない2人には予測不可能なことに、とんでもない事態に発展したのです。日本学術会議法には「学術会議が選出して、その名簿にもとずいて首相が任命する」とあるのですから、内閣総理大臣の天皇が任命することと同じことで、官僚の人事を任命する内閣官房のように恣意的に官邸が推薦者を任命しなくて別の人間に代えることなどできないのです。しかも安倍政権をほとんどそのまま引き継いだ居抜き菅官邸は、これまで官僚人事では、前川喜平氏を除いて、ことごとく官僚を言いなりにさせたので、今回もいいなりになると高をくくっていたのでしょう。しかし、官僚と違って学術会議のメンバーは官僚とは違います。彼らにはプライドというものがあるのです。戦前の特高警察のような公安上がりの杉田やたたき上げの菅なんかにバカにされてたまるかという学者のプライドに火をつけたのです。
菅義偉は官房長官時代は官邸記者会見で、東京新聞の望月衣塑子記者の鋭い質問に対して、木で鼻を括るような態度で「その指摘は当たらない」や「あなたの質問には答える必要はない」と言って高飛車に質問を無視しても官邸記者クラブの仲間が菅を守ってくれたが、首相による国会答弁はそうはいきません。野党には辻本清美さんや小川淳也さんなど鋭く追及する名人が手ぐすねを引いて待っているからです。
予算委員会でボロボロになる菅義偉首相
先週から始まった国会の予算委員会では共産党の志位委員長や立憲民主党の枝野代表や辻本清美副代表の鋭い質問にオロオロして壊れたテープレコーダーのように同じ発言を繰り返しています。「総合的俯瞰的」が論破されたら、今度は「多様性がないから任命しなかった」と理由を変えてみたり、その多様性も論破されたら、論点をすり替えて、「学術会議は10億円もつかうのだから、国が口を出すのは当たり前だ」と居直ったり、とにかく国会が早く閉じることだけを祈って、官僚のメモを読むだけで、同じ答弁を繰り返すだけの時間稼ぎの無能ぶりを発揮するだけの予算委員会でした。
ただ、それでもNHKは大したものです。そんなボロボロの菅首相答弁をご苦労なまでにつなぎ直して、NHKのニュースを見たら見事に正々堂々と首相が野党の追及に対して首相の方が野党を言い負かしているように見事に編集して流しているのです。NHKしかテレビを見ない視聴者には「さすがは菅首相だ」とまるで米国のトランプ大統領の御用ニュースの「フォックスニュース」のように見事に事実を捻じ曲げたフェイクニュースを垂れ流しているのです。
橋下徹などは学術会議批判のフェイクを垂れ流したまま
橋下徹元大阪市長は「英米のアカデミーは税金はゼロ」というデマをツイートしていました。しかし、実際には米国のアカデミーは予算の85%が税金です。英国王立協会は約50%が国費です。そのほか、フジテレビの平井文夫・上席解説委員(61)は10月5日放送の情報バラエティー『バイキングMORE』で「この(日本学術会議の)人たち、6年ここで働いたら、そのあと(日本)学士院ってところに行って、年間250万円の年金をもらえるんですよ。死ぬまで」と、全くのデマを流したのです。学術会員と学士院は別組織で学士院はノーベル賞など限られた人間しか会員になれない組織なのです。そして、それがデマだという批判が殺到したら、こっそりとその後の番組で「先日の発言は間違っていました」と訂正して何事もなかったかのように済ませているのです。これは公共の電波を使って意図的に学術会議の信用を貶める犯罪行為です。
その放送を見た視聴者がみんな次の番組を見るわけではありません。新聞やホームページやテレビなどで繰り返し誤報であることを告げて、なぜこのような誤報を流したかの原因と対策の説明を行う責任がフジテレビにはあるのです。このように悪意のあるデマやフェイクニュースを垂れ流す輩こを排除すべきなのです。
政府の法案や政策に反対する者は国益を損ねるのか
しかし、日本学術会議は戦前の日本の科学者が国家の命令で、無謀で負け戦の戦争に無理やり協力させられたことを敗戦後に反省して、1949年に国家から独立して「学問の自由」をまもるための組織として立ち上げたのが「日本学術会議」なのです。そこでは選挙によって会員は選ばれていたのですが、派閥的な対立などがの弊害ができて、1983年に総理大臣が任命する現在の体制に変わったのです。ですから、その出生時から学術会議は「平和と学問の自由」を守ることが組織の掟なのです。そして当時の総理大臣の中曽根康弘さんは「この任命は形式的なもので、学術会議が推薦した者を形式的に任命するものです」と国会で説明しています。ですから、その任命に首相の恣意的な口を挟む余地はないのです。
しかし、安倍政権から法律を無視してこれまでの政府が説明してきた「集団的自衛権の行使は憲法9条に反する」というような閣議決定を法制局長官の首を挿げ替えて、解釈改憲を行う安倍政権の無法ぶりに学者の多くが反対の声を上げることを自民党の保守的な政治家などは「日本の国益を損ねる発言」と決めつけます。
そして朝日新聞11月8日号の「任命拒否の学者が語った「核心」 軍事との根深い問題」の中で自民党PTの下村博文政調会長が「軍事研究否定なら、行政機関から外れるべきだ」を述べています。また、甘利氏は「日本学術会議は防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていますが、中国の『千人計画』に積極的に協力しています」と学術会議を敵視。事実誤認だと指摘され、後に「間接的に協力しているように映ります」と表現を修正していますが、訂正やお詫びはしていません。実際に学術会議は日本の軍事研究に参加することには反対声明を出していますが禁止はしていません。それぞれの自主的な判断に任せています。しかも防衛研究は認めています。
それでは自民党の安倍晋三や甘利や下村など歴史修正主義者やネトウヨなどが盛んに政府の政策に反対する学者へ投げかける「国益を損ねる」や「反日」や「パヨク」などと誹謗中傷する言葉を投げかけることばが本当に日本国の国益を損ねる行為なのでしょうか。まず、国益とは何なのでしょうか。安倍晋三や菅義偉氏は左翼の学者が大嫌いのようですが、果たして「国益」とは何なのでしょうか。
私は「モリ・カケ」や「桜を見る会」「公文書改ざん」の安倍政権を批判して来ました。そのほか、原発や自民党のエネルギー政策にも反対してきました。そしたら、ネット上で、「お前は反日だ」とか「パヨク」とかという誹謗中傷の書き込みをされたことがあります。しかし、私はその言葉をそっくり、相手側にお返ししてやりたいと思います。
「現政権や自民党政権をたたえることが国益なのでしょうか。戦前の軍部の暴走に従って、731石井部隊が中国大陸で行った毒ガスや細菌兵器研究のために多くの中国人を人体実験にしたことが国益だったのでしょうか。米国の科学者が広島長崎に落としたには原爆を作ることが国益だったのでしょうか。人類平和や人類の幸福などという高い理想の実現を求める社会真理は決して平坦な道ではありません。険しく困難な人類の努力によって達成できるものです。平和や人類の幸福という真理の実現こそがこの国益であり地球益です。そして、真理の芽は少数派の学者にこそ、その芽は存在するのです。ガリレオが「それでも地球は回っている」と言ったように。
だから、学問の自由とは、反対意見を言う自由や権利のことです。だから学問には自由が必要なのです。一国の独裁者のために働くことが科学者の使命でも学問でもありません。人類のみならず地球全生命が生き延びるための学術研究こそが学者や「日本学術会議」の探求する学問なのです。だから目先の損得で学問の自由を歪めてはならないのです。
by nonukes
| 2020-11-13 22:43
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