2020年 06月 11日
原発仮処分裁判と「原発バックフィット制度」が次々と原発を止め始めた
原発を抱え、死に体の電力10社
小坂正則
伊方原発の仮処分停止が続いています
伊方原発仮処分裁判で2017年12月13日広島の住民が訴えていた仮処分を広島高裁は認めて、伊方原発は翌年の2018年10月27日に再稼働されるまで11か月以上も運転を止めました。そして今度は山口の住民が申し立てた仮処分で、1月17日に同じく広島高裁は運転差し止めを命じました。さて、異議審が始まればすぐに再稼働できると思っていたであろう四国電力を今度はコロナが襲ってきました。異議審が半年余り過ぎても開かれそうにないのです。現在は全ての裁判が止まっています。四国電力の原発が1カ月止まれば35億円の損失らしいので、これまでに16カ月としても560億円もの損失が出ているのです。
バックフィット制度で原発が次々に止まる
それだけではありません。原発の「バクフィット制度」とは、福島原発事故以後に作られた規制委員会の制度で、原子力発電所の電源の多重、多様化や原子炉格納容器の排気システムの改善など、最新の技術的知見を技術基準に取り入れて、すでに運転をしている原子力発電所にも、この最新基準への適合を義務づけたものです。最新基準を満たさない場合には、運転停止(廃炉)を命じることができるのです。
その1つとして、福島原発事故のような過酷事故が起きても原子炉が爆発しないようにするための施設として、「特別重要施設」の設置が義務付けられました。しかし、この施設は「再稼働の許可が下りた時から5年以内に完成できなければ、5年経ったら施設が完成するまで原発の運転を停止させる」と、規制委が決めました。そこで来年の3月には伊方原発はまたまた止まってしまうのです。四国電力は「特重施設」の設計図もまだできていないといことですから、いつ再稼働できるかもわからないのです。
九州電力は川内原発1号機が今年3月16日に「特重施設」の完成が間に合わなくて「バクフィット制度」により運転を停止しました。5月20日には川内原発2号機も運転を停止しました。九電によると今年の12月と来年1月の運転再開を目指しているそうです。コロナ禍により、計画通りには工事は進まないでしょうから、川内頑発1、2号機は少なくとも1年以上は止まり続けるでしょう。九電は川内原発の停止によって最低でも250億円の損失が出るそうです。
余命を削られる老朽原発
5月20日号朝日新聞に以下の記事「余命を削られる老朽原発」がありました。
バックフィットによる「強制停止」は原発の収益性を揺るがす。特に、残り少ない運転期間を削られる老朽原発は影響が深刻だ。▼福島の事故後、原発の運転期間は原則40年、最大60年に制限された。20年延長が認められた原発は4基あるが、再稼働はこれから。テロ対策施設の工事も期限に間に合いそうにない。関西電力は、運転開始から43~45年たつ3基を6月から来年2月にかけて順次再稼働させる計画だが、高浜1、2号機(福井県)は来年6月から、美浜3号機(同)は来年10月から1~2年ほど停止する可能性がある。▼41年が過ぎた日本原子力発電東海第二(茨城県)は、再稼働が早くても22年12月以降。23年10月にはテロ対策施設の期限がくる。原電は「間に合う見込み」とするが、いまだに設計も固まっていない。残り15年ほどしかない運転期間中に年単位で停止すれば、巨額の安全対策費を投じて運転を続けるメリットはさらに小さくなる。▼規制は今後も上乗せされる。安全対策費はますます膨らみ、基準を満たせず運転停止に追い込まれるリスクも抱え続ける。政府が強調してきた原発の経済性や安定性が揺らいでいる。(生田大介、小坪遊)
巨額の安全対策費が経営を直撃
バックフィットは電力会社の経営も直撃している。テロ対策施設の工事は原発の中枢機能をもう一つ造るような大規模なもので、1基あたり約500億~1200億円かかっている。各社の工事費は当初の想定の2~5倍に膨らんでいる。▼これに伴って安全対策費は巨額になっている。関電では総額で1兆円を突破。九電では9千数百億円に上る安全対策費の半分をテロ対策施設が占める。さらに、耐震規制の見直しで、追加の耐震工事が必要になる可能性もある。▼また、原発を止めれば、代わりに動かす火力発電所の燃料費が負担として重くのしかかる。1基あたり月に九電で40億円、関電で45億円、四電で35億円の負担増になると試算する。▼電力会社は東京電力福島第一原発事故後、全国で原発の停止を余儀なくされ、軒並み経営が悪化した。▼九電も一時は最終赤字に転落。このため、他社に先駆けて再稼働を進めた。18年には目標の原発4基態勢を実現した。利益率を向上させてきた矢先だけに、再び原発が一定期間の停止を強いられるのは痛手だ。▼今月14日には、九電社長として初めて池辺和弘氏が電気事業連合会の会長に就任した。業界の最重要課題である原発再稼働で先行した九電に委ねられた格好だが、今年の後半には川内の停止に加え、玄海の定期検査も重なり、4基中1基しか動かせない期間が生じる。全社的に経費削減の大号令をかけているが、「来期の決算は相当厳しい」(九電幹部)とため息をつく。▼それでも、九電は電気料金の値上げはしない方針だ。電力の小売り自由化で競争が激しく、「自由化の時代に電気料金への転嫁なんて無理だ。他社に攻め込まれる」(九電幹部)と危機感を募らせている。▼規制は今後も上乗せされる。安全対策費はますます膨らみ、基準を満たせず運転停止に追い込まれるリスクも抱え続ける。政府が強調してきた原発の経済性や安定性が揺らいでいる。(ここまで朝日新聞引用)
「電気新聞」追加工事数年も
伊方原発は2度の仮処分で2年間近くの運転停止という「司法リスク」(裁判によって運転ができなくなるリスクのこと)に見舞われました。関電も九電も多くの裁判を抱えています。いつ裁判所が原発を止めるか分からないのです。
2019年7月30日、電気新聞「追加工事に数年も」によると、今後の注目は「震源を特定せず策定する地震動」の検討チームが作成した新たな審査モデルだ。地震の専門家も入った検討チームは、近く規制委に報告書を提出する。規制委は新たな審査モデルを規制に取り入れ、地震動の再評価を各社に指示するとみられる。▼規制委の更田豊志委員長は7月10日の会見で、新たな審査モデルの影響を受けそうな発電所として、九州電力玄海、川内原子力発電所、四国電力伊方発電所に言及した。新規制基準適合性審査で地震・津波側の議論が一段落した東北電力女川原子力発電所2号機や中国電力島根2号機、日本原燃の使用済み燃料再処理工場なども、地震動の再評価を求められる可能性があり、規制委の判断が注目される。▼事業者は、仮に追加工事が必要になった場合の所要期間が「6、7年を超える可能性もある」とし、十分な猶予期間を求めている。許認可申請や審査にかかる期間を予見するのは難しい。今後、規制委が何らかの対応を求めるにせよ、経過措置については慎重に検討することが必要だ。(ここまで電気新聞引用)
原発を抱え、死に体の電力10社
原発「バックフィット制度」によって、追加工事が要求される電力会社に取っては、工事をやらなければ運転できないし、工事を行えば莫大な予算がかかる。しかもその間、運転ができないので、40年や60年の運転終了期日が迫ってくるという痛しかゆしの状況に追い詰められているのです。
特に九電と四電は「新たな耐震設計基準の見直し」を昨年7月に規制委員会が行うと発表しました。これまでの耐震設計基準が大幅に見直されることになったら、それこそ廃炉を選択するしか方法がないでしょう。既に「耐震設計基準の見直し」を求めると規制委員会が会見して1年が来ようとしていますが、電力会社は戦々恐々をしているのです。
原発1基の建設費が5千億円と言われるのに、既に新たな原発を建設する以上の追加工事を行って新規制基準やバックフィットに対応してきたのです。それでも穴の開いたバケツに水をつぎ込むように金を使い続けて原発を補修し続けなければならないのですから。それに電気料金で元を取ればよかった「地域独占企業」の電力会社も、今は「電力自由化」で、ガス会社など電力の競合他社との電気料金の値下げ競争に晒されてるのです。今すぐ電力会社に日本中の原発を止めてもらって、安らかに眠ってもらいましょう。
by nonukes
| 2020-06-11 17:42
| 原発再稼働は許さない
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