2019年 08月 12日
国民が無関心なら憲法第21条の「表現の自由」は守れない
この「美しい国」の表現の自由は風前の灯火にすぎない
小坂正則
2014年さいたま市の女性の俳句が優秀賞を受賞したが「公民館たより」に掲載拒否され、東京地裁で勝訴
参院選真っ最中の7月15日の札幌駅前で安倍首相が演説している後ろの方で、1人の若者が「安倍やめろ・安倍帰れ」というヤジを言ったと同時に複数の制服警官と私服刑事が男性を取り囲んで、そのまま演説会場から数10メートルの会場外へ強引に排除する事件がありました。また「うんざり」と書いた小さなプラカードを掲げた女性も強引に排除され、「増税反対」と叫んだ女子学生は200メートルも腕を掴まれたまま排除され、レンタルビデオ店に逃げ込んだら、2時間もの間、女性警官が店頭で監視していというのです。
「なぜ自由を奪われたのか。日本でこんなことが起こるなんて」。大学4年の女性(24)は声を震わせたそうなのです。これまで警察の過剰警備が指摘されたことはありましたが、ここまであからさまに、憲法違反の弾圧を官憲が行うようなことはありませんでした。
これは明らかに安倍政権が指示して過剰警備をやらせたのでしょうが、憲法を簡単に無視して、自分の思うがままに何でもできると考えているのでしょう。今年3月6日、小西ひろゆき参議院議員が国会で安倍首相に「法の支配の対義語は何ですか」と質問したら、安倍首相は「そんなクイズのような質問はやめていただいたい」と、答えられなかったのです。いかにも安倍首相らしいが、対義語は人知主義で、まさに安倍政権は人知主義(独裁)政権なのです。この事件は私のブログの7月19日号に書いています。
ネトウヨが抗議すれば「表現の自由」は簡単に破壊できる
そして、8月1日から開催された、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、元従軍慰安婦をテーマとする「平和の少女像」などを展示した企画展「表現の不自由展・その後」が開幕から3日で中止に追い込まれました。その中には従軍慰安婦を想像させる「平和の少女像」や昭和天皇の写真を燃やしているような作品があったり、憲法9条を謳った俳句もあったそうです。開催2日に川村たかし名古屋市長が会場に訪れて、「どう考えても日本人の、国民の心を踏みにじるもの。いかんと思う」と話し、作品の展示を即刻中止するよう愛知県知事に求めると発表したのです。そのニュースが全国に流れてから、開催事務局へ抗議の電話やメールにファックスが殺到して、「ガソリンの携行缶を持って会場に行くから待っておけ」という脅迫文も届いたそうです。その後、美術監督の津田大介さんは8月3日に中止会見をして、翌4日から展示会は中止されたのです。75日間の展示会が3日で終わってしまったのです。
この展示について、菅義偉官房長官は5日の記者会見で「具体的な内容は承知していないためコメントを差し控えるが、一般論でいえば暴力や脅迫はあってはならない」と言い、「国の出す補助金については十分精査しなければならない」と述べたのです。本来なら政府は「このような暴力で表現の自由を脅かす行為は断固として許すことはできない。脅迫犯人には厳正に対応したい」と言い、憲法21条で保障された表現の自由への脅迫行為を厳しく批判しなければならないのです。それが「一般的論でいえばあってはならない」という人ごとの発言は「原則はそうですが、原則には例外もありますから、この場合の犯人の心情にはうなずけるものがあります」と言わんばかりの発言です。
また松井一郎・大阪市長や吉村大阪府知事や自民党の青山繁晴参院議員らが、公金が投入されていることなどを理由に展示内容を批判していました。しかし、大村秀章・愛知県知事は「公権力が表現の自由に介入することは検閲にあたる」と、不快感をあらわにしています。
朝日新聞8月5日によると「自民党の武井俊輔衆院議員は3日、自身のツイッターで「政府や行政に批判的な人でも納税している。政府や行政に従順、ないしは意向に沿ったものにしか拠出しないということは、決してあってはならない」と指摘。同党の保守派の一人も5日、「検閲以外の何ものでもない。これでは公的な芸術祭には『政府万歳!』の作品しか出せなくなる」と語った。」そうです。江藤祥平・上智大准教授(憲法)は「自分が見たくもない、大嫌いな表現をも尊重するのが『表現の自由』の核心」という。「日本人の心を踏みにじる」として展示の中止を求めた河村たかし名古屋市長の主張は、「『表現の自由』はいらない、と述べているに等しい」と解説する。(ここまで引用)
ただ、
いとも簡単に表現の不自由を許していいのか
これまで、「公民館だより」に憲法9条を詠んだ俳句(上の写真)の掲載を拒否されたり、(東京地裁で勝訴)多くの公的機関は「当たり障りのない」ことや「政治的な問題には触れないようにしよう」という逃げの発想で、何でも後からクレームが来そうなものは排除する傾向があります。一番無責任に逃げる手段として、今回のように「会場の安全が保たれる保障がないので中止する」や「他のお客に迷惑をかける可能性がある」という理由で、表現の自由が少しずつ犯されていくのです。この事件で一番の問題は警察が全く動こうとしなかったことです。「ガソリンの携行缶を持って行く」などは明らかに脅迫行為の現行犯です。しかし、官憲はコンビニで普通のコーヒー代金の100円を支払って150円のカフェオレを入れただけで逮捕です。コンビニはそれが嫌ならセルフサービスをやめればいいし、警察も「たった50円で逮捕するか」と私は言いたい。そんな暇があるなら、脅迫犯を追いかけろと、私は言いたい。
警察は県からの通報に「ファックスで個人を特定することは難しい」と消極的だったようですが、新聞報道などで、県警の消極的な対応への批判が集中したためか、犯人はすぐに逮捕されました。犯人はコンビニからファックスを送ったために送信電話番号が特定されたのでしょう。「8月7日トラック運転手、A容疑者(59)を威力業務妨害容疑で逮捕した」と伝えています。この犯人もまさか、こんな大事になるとは思ってもいなかったのでしょう。軽い気持ちでほんの「憂さ晴らし」の気分でファックスを送ってのでしょうが、その代償は非常に大きなものになりました。動機などは分かりませんが、このようなクレームをつける人間は、日頃の鬱憤をこんな形で晴らそうとする小心者が大半なのです。このような抗議電話をした者は、味を占めて、また次にも同じようなイベントがあれば潰しにかかるでしょう。このような卑劣な小心者は清々堂々と意見を言うのではなく、匿名性に守られた同調圧力に浸って一時の幸福感を味わうのでしょう。ですから、模倣犯を防ぐためにも警察は厳正な対応が必要なのです。
税金でやるからこそ表現の自由は守らなければならない
実行委員会会長の大村秀章・愛知県知事は5日の会見で「今回の河村さんの一連の発言は、私は憲法違反の疑いがきわめて濃厚」と言い、最近の論調で『税金でやるからこういうことやっちゃいけないんだ』『おのずと範囲が限られるんだ』などと、いろんな意見が飛び交っていますが、私は逆ではないかと思います」「行政、国、県、市。公権力を持ったところだからこそ、表現の自由は保障されなければならない。この内容は良くて、この内容はだめだと言うことを、公権力がやることは許されていないのではないでしょうか。国だけじゃなく、県も市も、公権力が、この内容は良くてこの内容はだめだと言うのは、憲法21条からして、違うのではないでしょうか」また、「税金でやるからこそ、表現の自由、憲法21条はきちんと守られなければいけないんじゃないでしょうか」と明快な発言をしています。
税金でやるのだから「政権の意に従う」というのでは、安倍政権が従軍慰安婦はなかったとかという国際世論を無視した考えを持っているなら、それに従わない映画も展示も全て政府や公的な補助を受けることはできなくなり、文化や芸術がそもそも成り立ち得ません。もちろん中国やロシアなどでは、そんなことは当たり前でしょうが、自由主義国家であれば、国家権力は文化や芸術に直接的にも間接的にも介入してはならないのです。そもそも税金は自民党政府が出すわけではありません。様々な考えのある国民全体の血税なのです。だから一政権の意向で税金の使われ方が決められることは「表現の自由」である、芸術や文化や表現全般に於いて、内容による権力の介入は許されないのです。
札幌ヤジ弾圧事件への反撃が実に素晴らしかった
7月15日の札幌ヤジ弾圧事件から1ヵ月が経とうとしていますが、その後に大きな動きがありました。19日には札幌の事件を重要視した「自由法曹団北海道支部」など札幌の弁護士団体と市民団体」が北海道警察に申し入れ書を提出しました。それから何の動きもなかったのですが、8月6日には札幌で拘束された女子学生が自分の腕を掴んで監禁した女性警官とのやり取りの動画を公開しました。その内容は実に酷いもので、猫なで声で、「お願い、ね、お願いだから」とか彼女が「どこに連れて行くの。私はあなたたちが信用できないから」と抗議すると女は「私たちもあなたが信用できないのよ。分かって」とか「ジュースをおごるから勘弁して」とか、奴らは自分たちの違法行為が分かっているから彼女の同意を取ろうと「お願いだから分かってもらえる」などと低姿勢で懐柔作戦にでたのです。しかし、官憲のやってることは「憲法違反」の犯罪行為なのです。
そして、その動画は全国紙に掲載されました。その中で、10日にデモを行うとい言う記事がありました。
国民が無関心なら憲法第21条「表現の自由」を守れない
17日に最初に弾圧された大杉雅栄さん(31)が「法的根拠なく、身体拘束して排除するのはおかしい」と8月10日に当事者やその支援者ら約150人が札幌市内中心部で「道警は説明と謝罪を」と訴える、抗議デモと抗議文を手渡す行動を行ったのです。その動画には、あの時弾圧された女子学生も参加していて、一緒に抗議を行っていました。
そして、警察官がパトカーの中からデモの若者たちをビデオカメラで撮影していました。それを発見した人権弁護士がそのパトカーの警官に対して、動画を取る根拠を問い質し、「最高裁判決で、事件性のある場合以外は市民のプライバシーを侵す写真撮影はしてはならない」ことを知っているのかと言い、ビデオの動画を消すように求めました。このことも取り上げてほしいものです。デモをすれば警察はさも当然のように日常的にデモ参加者の写真や動画を撮っています。これも最高裁判決で違反行為です。
8月11日の朝日新聞によると、「道警は現在も「事実確認中」という説明を繰り返し、明確な法的根拠を示していない。鈴木直道・北海道知事は5日、山岸直人・道警本部長に直接面会し「すみやかに事実関係を公表してほしい」と要請している。」とあります。
この事件は、ますます大きくなっていて、道警の監督機関である道知事が問題にしてる案件なのです。ぜひ野党はこの問題を国会で取り上げてほしいものです。
なかなか1人で抗議することは勇気のいることです。ですから札幌で抗議した大杉さんや女子学生の勇気には頭が下がります。ですから、みんなで力を合わせて権力の横暴に抗議することが重要なのでしょう。このように、警察などが行う、小さな憲法違反や法律違反行為を見過ごすことなく、徹底して潰していくことが民主主義や自由を守ることにつながるのです。国会でもぜひ野党各党は追及してほしいものです。
札幌デモの様子です↓
警察の動画撮影に抗議の模様です↓
女子学生が取ったスマホの動画です↓
by nonukes
| 2019-08-12 13:55
| 小坂農園 薪ストーブ物語
|
Comments(0)