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小坂正則の個人ブログ

「テロ対策の施設が未完成だけではなかった」九電の原発には「免震重要棟」もない

「特定重大事故対応施設」は第4層「過酷事故収束」の必要施設
小坂正則

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特定重大事故対処施設と免震重要棟の概念図

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東京電力福島第一原発の免震重要棟の内部

4月19 日の朝日新聞に「対テロ施設、建設間に合わない原発9基が停止の可能性」という以下の記事が出ていました。
再稼働した関西、九州、四国の電力3社の原発全9基が停止を迫られる可能性が出てきた。新規制基準で義務づけられている原発のテロ対策施設の建設が設置期限に間に合わないためだ。3社は期限の先延ばしを含めた対応を原子力規制委員会に求めているが、委員からは厳しい意見が相次いでおり、3社の見通しの甘さが露呈された形だ。
3社によると、九電川内(鹿児島県)や玄海(佐賀県)、関電高浜、大飯、美浜(いずれも福井県)、四電伊方(愛媛県)の6原発12基で建設工事が遅れ、設置期限を1年~2年半ほど超える見通しという。玄海の超過期間は精査中だという。最も早い川内1号機は来年3月に期限を迎える。
テロ対策施設は、航空機の意図的な衝突の際などに遠隔で原子炉を制御する。当初の設置期限は新基準の施行から5年だったが、2015年に、再稼働に向けた原発本体の工事計画の審査を終えてから5年以内に設置することになった。
建設が遅れた理由について、3社は「安全性を向上させた結果、高度で大規模な工事が必要になった」などと主張。関電の役員は17日の規制委の会合で、「見通しが甘かった」と陳謝しつつ、「土日なしの工事で最大限の努力をしてきた」と理解を求めた。(ここまで引用)
テロ対策がまだくらいまあいいか?

この記事を読んだ私も「たいしたことではない」と思ってしまったのです。だって、北朝鮮の脅威を安倍政権はことさら騒ぎ立てていましたが、ここ1年で随分おとなしくなったし、「航空機が墜落する可能性」といえば、それは地震が襲うよりも遙かに小さな確率でしかないかと思ったからです。でも、ちょっと気になったので九州電力のホームページを調べてみたのですが、どこにも「免震重要棟」という記載がないのです。川内原発1、2号も玄海原発3、4号も免震重要棟を建設することを条件に規制委員会から運転再開の認可をもらったのだけど、2016年に急きょ免震構造を耐震構造に格下げして、それで代用するとして、規制委員会の田中委員長に大目玉を食らったという記事がでていました。それでも電力会社の味方の田中委員長は「まあいいか」と変更を許してくれたそうなのです。
「免震重要棟」から「耐震設計棟」へ変更になったと、そこまでは確認できたのですが、その後この「耐震設計施設」が完成して稼働しているという記事が見当たらないのです。ですから、私は九電本店の広報課に電話で確認しました。

私「特重施設」の建設はまだだと言うことですが、福島原発事故で活躍した「免震重要棟」のようなバックアップ施設は完成しているのですよね。
職員「いえ、免震重要棟から耐震設計棟へ変更になりましたがその施設もまだ完成していません」
私「では耐震重要棟というのかは知りませんが、それがなくて運転しているのですか」
職員「原子炉の近くに耐震施設に代わるような建屋で事故時にバックアップできるようにはできています」(ここまでが会話)
ということは耐震重要棟でも免震重要棟でも、まあいいとして、いざ事故が起こって原子炉がメルトダウンしたら適当に建てたプレハブのような建屋であの過酷な事故対応を行う気なのかと呆れてしまったのです。

福島原発に免震重要棟がなかったら東日本は死の町になっていた

以下の文章は私の友人の松山の小倉さんのブログ「伊方原発の廃炉のために」の中からの引用です。
そもそも東電福島第一原発の免震重要棟は、06年の中越沖地震のおりに東電の柏崎刈羽原発の緊急時室が地震でドアが開かず機能を果たさなかった問題を受けて、新潟県泉田知事が東電に申し入れ、柏崎刈羽にも作り、福島にも311の半年前だかに完成したばかりの建物でした。あれがなかったら地震による被害も大きかったですし、放射能の上昇を受けて、ただちに撤退しなければ、となっていたかもしれません。東電の総員撤退をさせないで済み、結果的に東日本を救った、と言っても過言ではないのが、この免震重要棟建設という「過酷事故のための対策所」建設対策だったわけです。
 これはIAEA提唱の5層の深層防護の第4層である「過酷事故の収束・緩和策」の範疇の対策だった、といえるでしょう。311前には電力会社の自主的対応に任されていたこの第4層対策の法制化は、新規制基準の中で拡張された目玉商品なわけですから、規制委員会に対して、免震事務棟を(そのうち)作りますから許可をしてください、と九州電力が言っておいて、手のひら返しでお金が掛かるから作りません、を許しておいては、原子力規制委員会が骨なしだ、ということになります。
(もう原子力規制委員会はお手盛り委員会だということはみんなの共通認識になってしまっていて、今さらそんなこと言うな、と言われるかもしれませんが・・・)(ここまで引用)
つまり、それだけ重要な施設を作らなくてこの川内原発は2015年8月、9月から3年間以上の間運転をしていたというのです。「それがまだまだ完成しないけど運転させてください」と九電などの3電力会社9原発は動かし続けると言うのです。そんなことが許されるでしょうか。

「特定重大事故対応施設」とはどんな施設のこと?

マスコミの悪いところは規制庁や電力会社の説明をそのまま鵜呑みに記事にすることです。もっと、視聴者や読者に分かりやすくかみ砕いて説明し、九電が免震重要棟から耐震施設に格下げして、それでもいまだに作っていない理由を、掘り下げる必要があるのです。しかし、電力会社か規制庁は頭がいいと言うか、ずる賢いと言うか、規制委員会で決めた、特重施設の目的は、下記にあるように、テロ対策が1番の目的ではありません。第1の目的は大規模自然災害です。それをあたかも「テロ対策施設」であるかのように誤魔化して、マスコミに情報を流したのでしょう。マスコミの記者も、それを鵜呑みにして記事を書くのですから、記者魂を疑います。私のような素人でも、ちょっと調べたらすぐ分かったのですから。こずるい電力会社のエリートや規制庁の官僚に騙されるとは情けないことです。この記事の表題は「大規模自然災害の施設が未完成で原発を動かし続けている。福島原発事故で活躍した免震重要棟も出来ていない」に私ならします。
規制委員会の「特重施設等の設置に向けた更なる安全向上の取組状況について」というPDFによると、「特定重大事故等対応施設」というのはテロ対策だけではありません。「シビアアクシデントを起こさない対策に加えて、大規模自然災害やテロも含めて様々な事象により万が一シビアアクシデントが起きた場合の対策として必要な機能を全て備えることが求められている」と、その目的を謳っています。そして具体的には「緊急時制御室(免震重要棟)」に「電源」「水源と溶融炉心冷却ポンプ」「格納容器スプレイポンプ」など、原子炉格納容器や建屋内にある緊急時の施設が使えなくなった場合に、遠隔地からバックアップするための施設です。

南海トラフ地震が来て原発がメルトダウンしたらどうするのか
「特定重大事故等対応施設」という、この施設があって初めて第4層の「過酷事故の収束・緩和策」を取ることができるのです。ですから、これらは何も「テロ対策」などではありません。自然災害のために最も重要な施設なのです。特に日本は地震と津波と火山噴火という自然災害の危機が迫っている国に於いて、それへの対応施設がなくて、「原発を動かしていい」と考えること自体が異常なことです。この施設を完成させるために5年間の猶予が法律で与えられていますので、少なくともその日が来たら速やかに運転停止をしなくてはなりません。この国は法律に則って成り立っている法治国家だからです。
しかも、30年以内に70%から80%の確率で南海トラフ地震が襲ってきます。南海トラフ地震はユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込んで起こるプレート地震ですから、この地震の影響で中央構造線が動くかもしれないのです。そうなると、伊方原発や川内原発が影響を受ける可能性は限りなく大きいのです。一刻も早く原発の運転を止めるか、少なくとも5年を過ぎた時点で「特定重大事故等対応施設」ができるまでは運転を止めるべきです。


by nonukes | 2019-04-23 13:42 | 原発再稼働は許さない | Comments(0)