2018年 11月 10日
情報革命・モビリティ革命・エネルギー革命が目の前まで来ている
世界のトヨタがソフトバンクに喰われてしまう日!?
小坂正則
EVへの流れは急加速している
昨年の7月に私は「世界の流れに取り残されたトヨタが倒産する日はくるか?」というブログを書きました。それを読んでいただけたら一番いいのですが、簡単に説明すると、「トヨタは世界一の売り上げで正に飛ぶ鳥を落とす勢いのような絶好調を極めているようなのですが、それは砂上の楼閣のように足下では大きな波が押し寄せようとしているのではないか」というような記事です。
トヨタはハイブリッド自動車がまだこれから5年以上は市場を制覇し続けることができると読んでいたようです。そしてその間に燃料電池自動車がハイブリッドの後に出て、10年以上後にならないと電気自動車の時代は来ないと読んでいたようです。しかし、時代はEV車へと急加速しつつあるのです。
「地球温暖化防止パリ協定」がEV化を加速させた
2015年12月に第21回気候変動枠組条約の国会議(COP21)が開催されたパリにて、12月12日に「パリ協定」が採択され、16年9月には中国と米国が条約を批准しました。昨年6月に米国トランプ大統領はパリ協定から脱退しましたが、世界192カ国が批准したパリ協定です。「パリ協定」は今世紀中に地球の気温上昇を1.5~2度以内に抑えることを目標にしています。そのためにEUは2030年までに1990年比で二酸化炭素を40%削減する計画です。このように二酸化炭素削減目標達成のためと、もう1つ大きな要因があります。それは自動車産業界がハイブリッドではトヨタに対抗できないし、燃料電池自動車莫大なは開発コストがかかるため、EUや中国などは一気にEVへと移行する方が、世界の自動車産業でトップシェアを取ることができると考えたのです。
もう1つの大きな理由があります。それはカリフォルニア州の環境規制です。自動車会社は一定数のエコカーを販売しなければガソリン車などの普通の自動車を販売できなくするというZEV規制という条例です。そこではエコカーの範疇にハイブリッドが入っていなかったのです。もはやハイブリッド程度の燃費ではエコとは言えなくなったのです。
このZEV規制をソックリ真似した法律を中国も導入しました。中国の北京や上海では大気汚染が深刻な状況であることもエコカー規制導入理由の1つでしょうが、本当の理由は別にあります。それは「日本の自動車メーカーを追い抜くためにはEVしかない」と考えたからです。中国はEVには補助金をだすのですが、中国で作ったバッテリーでなければ補助金はもらえません。ですから自国のEVメーカーか中国との合弁企業でなければ実質的に中国ではEVは売れないのです。米国テスラも中国との合弁企業でEVを売るそうです。中国は合弁企業が全ての特許や製品技術をコピーして自国製のコピー製品を売り出す計画なのでしょう。そのような世界のEV化はドイツでも英国でもフランスでも表面化しています。ドイツのフォルクスワーゲンはディーゼル車の燃費偽装がバレてディーゼル車を諦めて一気にEV化を推し進める計画ですし、EU各国でガソリン車の販売規制を打ち出したのです。インドでも2030年には全自動車を電気自動車へシフトさせると伝えられています。
トヨタも一気にEV化へシフトすると発表
トヨタ自動車も2019年代には既存のEVを遙かに超えるEV車を販売すると昨年発表しました。これは日産リーフを超えるEV車を出すことを意味しています。それから今年の1月9日にラスベガスで開催された2018 International CESにおいて、移動、物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービス専用次世代電気自動車(EV)、“e-Palette Concept”を発表しました。これはこれまでのトヨタの発想を180度変更するほどのものです。
豊田社長は、「これまで物作りのトヨタは誰からも気に入ってもらえる“愛車”を作ってきましたが、これからは物作りから“移動サービス”を売る企業へと変身します」と告げたのです。それは「物作りの企業をやめる」ということです。「これからはAIとEVとモビリティーに徹する」と言うのです。そこで出てきた想像の車がeパレットです。これは電気自動車でAIで動きます。そしてその車の空間では食事をしたり、ホテルになったり、移動という手段に付加価値を追加した新しいサービスを提案するというのです。
トヨタはソフトバンクに喰われてしまわないか
10月4日に世界中に衝撃が走りました。株式時価総額日本1位と2位の、日本を代表する異業種の巨人トップ同士が歴史的な握手を交わしたのです。「トヨタとソフトバンクが資本を出し合って『モネテクノロジーズ社』を設立し、2018年度中に事業を開始する」と二人が握手して記者会見を行ったのです。しかも、この話は豊田社長から孫正義さんに話を持って行ったそうなのです。世界のトヨタがソフトバンクのような新興企業に頭を下げたのです。トヨタがこれから物作りからサービスを販売する企業に生まれ変わるには、まずウーバーなどの移動サービス企業と業務提携する必要があるのですが、豊田社長は話していました。「私が業務提携の話を持って行く企業の行くと、必ず先にソフトバンクが大口の資本関係を築いていたのです」と。中国でもソフトバンクが先手を打っていたのです。ですから、豊田社長はソフトバンクと業務提携して、そこから先端情報を学ぼうとしているのでしょう。ただし、そう簡単に孫正義氏がトヨタを仲間として対等に受け入れてくれるでしょうか。ソフトバンクはM&A(合併と買収)で大きくなった企業です。ですからソフトバンクはトヨタを飲み込むのではないかと私は危惧しています。
以下は「トヨタとホンダに「二股」かけるソフトバンク孫社長のしたたかな戦略」ダイヤモンドオンライン2018.10.19より引用です。
一方でソフトバンクは、かねて情報革命・モビリティ革命・エネルギー革命を「ゴールデントライアングル」と名付け、その中でプラットフォーマー(基盤提供者)になることを経営戦略の核と位置づけている。
その一環として自社で運営するソフトバンク・ビジョン・ファンドを通じて積極的な投資を展開している。米ウーバーや中国滴滴出行など世界の大手ライドシェア企業に出資、今年6月には米GMの自動運転子会社クルーズにも22億5000万ドル(約2400億円)を出資して約2割の出資比率を持っている。
折しも、トヨタとソフトバンクの提携発表の前日、ホンダがクルーズへの出資と事業資金投入を発表し、ホンダとGMの提携拡大にソフトバンクが絡む構図となった。
ソフトバンクは既にホンダと提携関係にある
ソフトバンクは、日本の自動車メーカーとの提携に関して、トヨタに先行してホンダと提携関係にある。すでに2年前から両社は人工知能(AI)の共同研究で提携し、昨年には提携第2弾として第5世代移動通信システム(5G)の共同研究提携を開始している。
つまり、ソフトバンクの孫流経営戦略は、トヨタとホンダの日本を代表する自動車メーカー2社との連携という、したたかな展開を示しているのだ。先述した通り、ホンダとGMの協業発表が、トヨタ・ソフトバンク提携発表の前夜だったのも何かの因縁だろうか。
ソフトバンクが自社で運営するファンドを通じてGMのクルーズに約2割出資したのは今年6月だが、それに際してソフトバンクは7年間、出資を維持することで合意している。一方、ホンダは、GMとの自動運転の協業に踏み込んでクルーズに出資するとともに、今後12年間にわたり事業資金を支出することになった。(ここまで引用)
自動車産業なしに日本の雇用はない
これから10年や20年先には自動車も液晶テレビやパソコンのように、部品を寄せ集めて商品を作るような企業がたくさん出てくることでしょう。戦後70年間に培ってきた物作り企業のトヨタがソフトバンクにあごで使われる日が来るかもしれません。でも、日本の自動車産業は400万人以上の雇用を生み出しているそうですし、自動車に関係する鉄鋼生産やガソリンスタンドに修理工場などを含めると関連雇用者は1千万人になるとも言われています。そのような裾野の広い産業はこの国にはなくてはならないものです。
これから激動の自動車を巡るめまぐるしい動きにトヨタも日産もホンダもダイハツもスズキもスバルも振り回されることでしょうが、オールJAPANで雇用を守ってほしいものです。パナソニック(元はサンヨーですが)もバッテリーでは世界をリードしています。
世界のトヨタがこの先10年も20年も素晴らしい自動車を作り続けて、若者の雇用を守り育ててほしいものです。
最後に孫さんが10月4日のトヨタとの合弁企業発足式で以下のように話していました。「これからの社会は情報革命・モビリティ革命・エネルギー革命の“ゴールデントライアングル”だ」と言うのです。つまり「AIとEVと再エネ」が世界を大きく変える社会が、もう私たちの目の前まで来ているのです。
by nonukes
| 2018-11-10 01:15
| 小坂農園 薪ストーブ物語
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