2018年 11月 09日
東海第2原発は再稼働前提で1740億円の防潮堤工事をやらせてはならない
30キロ圏内6市村は今すぐ再稼働賛否の住民投票を
小坂正則
「原発40年廃炉」なし崩しの規制庁
原子力規制委員会は今月7日に東海第二原発の60年運転延長の申請に許可をしたとマスコミは伝えています。今月末に稼働から40年を迎える老朽化した東海第二原発は9月には再稼働の許可が下りて、その後20年延長のための許可申請を出してたのです。規制庁では、審査が11月中に終わらなければ東海第二原発は廃炉になることから、他の原発の審査を後回しにして、東海第二の延長審査をやって来たそうです。もともと、民主党政権時の2012年に規制委員会ができて原子炉等規制法では「原発の運転期間は原則40年で、例外的に20年延長もあり得る」としてきたものが、実際には電力会社が延長申請した全てが許可されているのです。関西電力美浜3号と高浜1、2号が特別検査で延長が合格しています。
40年で廃炉となった原発も10基以上ありますが、それは原子炉が小さすぎて採算が合わないから電力会社が経済的な理由から廃炉にしたものです。規制委員会への延長申請が拒否された原発は1件もないのです。現在動いている九電の川内1、2号や玄海3、4号に伊方3号などは全て20年延長を前提にして動かしているのです。
防潮堤工事をやれば「再稼働」が既成事実化へ
東海第2原発は原電にとっては唯一の再稼働可能の原発です。しかし、この原発を動かすことなどできるわけはないのです。東京から僅か130キロしかなく、周辺30キロ圏内には96万人の人口が住んでいるのです。しかも東海村の立地自治体だけが運転同意が必要なのではなく、周辺5市も再稼働に同意権を原電は認める「安全協定」を結んでいます。ですから、「運転同意」しない自治体がでれば、実質的には「運転できない」はずなのですが、協定の解釈にズレがあるのです。11月8日の大分合同新聞によると、再稼働に反対を表明している那珂市の海野徹市長と常陸太田市の大久保太一市町は「1市町村でも反対すれば再稼働はできない」と主張していますが、東海村の山田修村長は「拒否権はない」と主張しているのです。当事者の原電は「協定どうりに対応する」と言って言葉を濁していますが、締結時に公表した文書には「6市村がそれぞれ納得するまでとことん協議する」とあり、不同意を想定していないのです。記者の質問に和智副社長は「拒否権という言葉は協定にはない」と発言したが、広報担当が割っては入り、それ以上の言及はなかった」(ここまで引用)とあります。
原電は防潮堤工事など全てを2021年3月までに終わる予定だとしていますが、それまでに1740億円以上の建設費を使ったら、再稼働を拒否できなくなる可能性が増してくるのです。ちょうど沖縄の辺野古基地埋め立て工事のように、違法性が高い工事でもどんどん工事を進めて基地が完成すれば既成事実化させて住民を諦めさせることが政府の狙いなのです。もちろん沖縄では玉城知事があらゆる手を使って埋め立て阻止のためにたたかっていますが、東海第2原発の再稼働を阻止するためには、工事をさせないことが何よりも重要な「再稼働反対」のたたかいなのではないでしょうか。
6市村で再稼働賛否の住民投票を行おう
東海第2原発周辺住民のみなさんは「市長が同意しなければ再稼働はない」と考えているかもしれませんが、市長を再稼働反対から賛成に陥落させることなど安倍政権にさせてはなりません。そのためにも、防潮堤工事などの再稼働のための工事を進める前に住民の意志をハッキリさせて、再稼働に同意させない「住民投票」などで歯止めをかけて、原電に再稼働を諦めさせることが重要なたたかいなのではないでしょうか。東海第2原発の運転禁止仮処分裁判も準備されているそうです。ありとあらゆる手を使って、首都圏に一番近い原発で、福島原発事故の同型の原発を再稼働させるなど絶対に許してはならないのです。
原電には東海第2原発を動かす資格はない
原電とは原発だけの発電専門会社で、電力会社へ電気を卸している企業です。福島原発事故以後2012年から6年間も一切の発電をしていません。それなのに社員1100人以上いて、黒字を叩き出している不思議な会社なのです。東電や関電が基本料金という形で毎年1000億円以上も無駄なお金を支払い続けているのです。この間原電に支払われたお金は2012年から2017年まで総額7,350億円にもなるのです。しかもこの会社は廃炉積立金など1千数百億円ものお金を敦賀3号、4号機の建設費として使っていてるのです。ですからこのままでは、この会社には1740億円など、工事費さえないのです。東海第2の工事費は東電が債務保証しいて銀行団から借り受けるというのです。東電は債務超過で国が管理している電力会社ですが、国が管理している会社が他の債務超過の企業を支援するなどあってはならない話です。
原電は東芝のように廃炉専門企業へ業態変更すべき
原電をこのまま安楽死させてもいいのですが、1100人以上の社員が路頭に迷わせないためにも、原電は東芝と同じように廃炉専門の企業になって、これから続々と出てくる廃炉を請け負う企業へと業態変更すべきなのです。廃炉専門企業になればこれから50年間は仕事にあぶれることはないでしょう。
東芝は米国のウエスティングハウス社を破産させて、残ったイギリスの原発建設会社ニュージェネレーション社を韓国に売却しようとしたのですが、交渉が決裂したので、ここもWH社と同じように破産させる予定だそうです。そして、東芝は原発建設から完全撤退を決めたのです。ただ、福島原発事故後の廃炉作業には大勢の社員を投入してロボット作業などで利益を叩き出しているのです。このような福島原発の廃炉作業はこれから50年も100年も続くことですし、これから50兆円も100兆円も費用がかかる予定なのですから、決して食いっぱぐれのない事業なのです。
原発立地自治体は廃炉作業で町は潤う
原発立地自治体からは「原発再稼働してもらわなくては町が潰れてしまう」という声がよく聞こえてきますが、廃炉作業には原発運転以上に大勢の労働者が投入されて、しかも現地の建設会社にも下請けの仕事が回ってくることもあり得るのです。原発が運転中は労働者は運転員の30名そこそこと、下請けの社員が数十名そこらですが、廃炉作業では数百人の労働者が町に来てこれから何十年にも渡って仕事をするのです。その間に町では風力発電や太陽光発電などの再エネ事業に投資すれば、原発立地交付金よりもきれいなお金が町に落ちるようになるのです。国は廃炉作業中にも新交付金を出すことを決めました。伊方町でも2017年度に最大2億5500万円の交付を受けたそうです。チャッカリしていますね。でも、原発誘致自治体は麻薬中毒患者のようなものですから、薬物治療には長い年月がかかるのです。仕方ありませんね。それでも原発がなくなれば事故の危険性はなくなりますから、住民の皆さんは安心して暮らすことができるのです。
東海第二原発を原発再稼働させる理由
「原子力ムラ」が経営破綻の日本原電
by nonukes
| 2018-11-09 21:01
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