2018年 10月 22日
つゆくさ通信NO.151を発行しました
つゆくさ通信NO.151の目次
1.広島高裁仮処分棄却を受けて弁護団声明………(広島弁護団9月25日)
2.大分地裁は伊方原発運転差止仮処分を棄却……小坂正則
3.大分地裁仮処分棄却への弁護団声明…………(大分弁護団9月28日)
4.国の税金で東電の尻ぬぐいをするな………………甲斐美徳
5.北海道東部地震(M7)は日本中どこで起きてもおかしくない……小坂正則
6.情報交差点
7.少子化対策の偏重した価値観を教えるライフプラン教育………河嶋静代
8.電気自動車・人工知能・再エネが結びつく世界…………土屋芳久
9.情報短信
10.日本の独立を脅かしている日米地位協定の見直しを!………諌山二朗
11.おくら入り百人一首・編集後記
編集後記
▼今回もいつものように発行が遅くなってしまいました。9月28日の仮処分決定を受けて通信を出すために遅くなったのですが、沖縄県知事選の結果も遅くなった理由です。まずは翁長雄志知事のバトンを玉城デニーさんに受け継ぐことができて本当にホッとしました。この選挙を支えたものはオール沖縄の人びとと玉城さんに投票してくれた方々の「良心」のたまものですが、もう1つ大きな力がありました。それは自公推薦候補への創価学会員の謀反があったからです。9月30日の開票を待つ玉城陣営の選挙事務所には三色旗の創価学会旗がたなびいていました。表に出て玉城さんの選挙を応援した学会員は少数のようでしたが、実際には内部で相当数の学会員が幹部の指示に従わなかったのです。これまでの公明党と創価学会幹部による安倍政権べったりの政治に不満がたまっていたのでしょう。これまでは幹部が「選挙が信心の証だ」と言われたら、幹部の指示に従わざるを得なかったのですが、今回はその指示に対して造反が起こったのです。前回の県知事選では公明党は自主投票でした。それだけ沖縄の学会員にとっても「唯一の地上戦があった土地」で「国土の僅か0.6%の土地に70%の米軍基地がある」現実は、そんなに単純な問題ではなかったのでしょう。結果として創価学会票の3割は玉城さんに流れたそうです。その後、14日の豊見城市長選もオール沖縄陣営の山川仁氏が勝利しました。これまで負け続けていたオール沖縄が勝ったのです。そして、この通信が届く月曜日には那覇市長選の結果が出るでしょうが、ここでも現職の城間みきこ候補が有利に選挙を進めているそうです。なぜなら創価学会幹部から「選挙で動く必要はない」という指示が出ているそうです。「田中龍作ジャーナル」によると創価学会の幹部が自民党候補の応援演説をやっていても沿道には学会員らしき人は誰もいないそうなのです。今回の県知事選の反省からかどうかは分かりませんが、創価学会本部がまったく動員をかけていないのです。自民党候補の決起集会で、候補者は通夜のような表情だったそうです。だって、もともと那覇は現職が強いのに学会が動かなければ勝てっこないからです。このような公明党と創価学会の動きが、単純にこのまま本土にまで影響するとは思えませんが、少しずつ変化しているのかもしれません。安倍政権に公明党のありがたさを証明するために取った行動という説もあるでしょうが、創価学会も高齢化と若者離れで組織数も動員力も落ちてきているのでしょう。それに学会の女性部が「平和」だけは譲れないのです。私たちも創価学会の良識的な人びとと一緒に行動できるような「憲法」や「平和」と「脱原発」を進める必要がありそうです。▼九電が太陽光発電の買い取りを先週の土曜日から今週の21日と22日も一部遮断するそうです。これからは春と秋の電力需要が少ない日は次々と遮断することでしょう。太陽光発電は燃料も不要でCO2も出さないのに電気を捨てるのはもったいない話です。電気が余っているなら、核のゴミ捨て場もない原発こそ真っ先に止めればいいのです。▼ところでメガソーラーが大分県内各地に目立っています。10号線を別府から日出方向に進むと山の中腹が禿げ山になっています。ここもメガソーラーが建設中でした。私は太陽光発電をどこにでも作っていいとは考えません。そこで私が昨日見つけた記事を紹介します。▼原自連メルマガ10月19日号、加藤秀司さんのドイツ視察報告に次のような記事がありました。「日本でもメガソーラー批判がありますが、ドイツの太陽光に関して、農地の設置については鉄道及び高速道路から300メートル以内でないと設置不可。森林は不可。あとは産廃の埋め立て地に限るそうです」と。案内の方に「それで自然エネルギー200%とかって実現できるのですか?」と尋ねたら、「屋根の上で十分です」と。日本もこのようにやれば自然エネルギー100%へ大きく進むことでしょう。▼今月27日から伊方原発が再稼働されてしまいそうです。当日の13時から14時まで大分駅北口の中央商店街入口付近で抗議行動を行います。ぜひ皆さんご参加願います。 (小坂)
国民の税金で東電の尻拭いをするな
甲斐美徳
去る9月26日(水)の夜、日田市内で「環境白書及び環境基本計画を読む会」なるものが開催されました。これは、環境省が毎年ブロックごとに年1回開催しているもので、今年は九州では日田市が唯一の開催場所となったそうです。通常は県庁所在地で開くことが多いのですが、第5次環境基本計画では災害対応の観点が盛り込まれていることから、昨年の豪雨災害の被災地である日田市が選ばれたとのことでした。日田市環境課から日田市民環境会議のメンバーに案内が届いたのですが、かねてから環境省には言ってやりたいことがあったので聞きに出かけました。
私は正直言って、今の環境省に期待するものはほとんどありません。環境省は「日本は環境先進国」と思っているようですが、私の知る限り、少なくとも地球温暖化対策に関しては明らかに後進国と呼ぶべき存在です。ヨーロッパで二酸化炭素の排出削減に大きく貢献した実効的な政策、すなわち本格的な炭素税の導入や強制力のある排出権取引制度、そして再生可能エネルギーを基幹電源として飛躍的に拡大するための送電線への優先接続・給電原則。これらの制度政策が何一つ実施されてこなかったのですから、CO2の削減が遅々として進まないのも当然です。何しろ日本は産業界から政治献金をもらって代弁者として行動している政党が戦後一貫して政権を握ってきた国。環境政策も、産業界が反対するような政策は基本的に採用できない、産業界の許容する範囲内でしか何事もやれないというのがわが国の環境省の宿命であり、温暖化対策といえば家庭や企業に省エネを呼びかけるといった調子の実効性に乏しい精神論的な政策を掲げる程度のことしかできないのです。これはエネルギー政策も同様で、3.11の後に日本での再エネの普及に大きな役割を果たした固定価格買取制度(FIT)も、福島第一原発事故が起きていなかったら電力業界をはじめとする産業界の抵抗で現在も導入されていなかっただろうと思います。
その上、環境省は原子力規制委員会を傘下に抱え、「地球温暖化防止のためには原発も必要」と主張する原発推進官庁でもあります。今回もらった最新の環境白書も、「我が国の直近3年間の温室効果ガス排出量は減少しています」と記述する一方で、「今後の排出量の増加要因」の一つとして「原子力発電所の運転停止が長期化していること」をあげています。相変わらず、原発が再稼働しないと温暖化対策に支障が出ると言っているのです。
東電にかわって原発事故の後始末
何とも納得がいかないのは、環境白書の中の「東日本大震災からの環境再生に向けた取組み」の中で、「除染等の措置」「帰還困難区域における特定復興再生拠点区域の整備」「放射性物質汚染廃棄物の処理」「中間貯蔵施設の整備」といった項目が掲げられていることです。実際、これらのために昨年度で7,371億円、今年度で6,624億円の当初予算が計上されています。福島原発事故の廃炉作業でも、汚染水に悩む東電を助けるために、凍土壁による遮水工事(あまり効果はなかったのですが)に「新規技術の研究開発に該当する」とか何とか理屈をつけて国費が投入されていました。言うまでもなく、これらはすべて、原因をつくった企業である東京電力が全額費用負担すべきものです。
私はこの会場で次の2点の質問をしました。
①本日の資料にあるSDGs(持続可能な開発目標 2015年9月、国連で採択された国際目標)の7番目に「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」とあるが、それなら原発が次々と再稼働し、その影響でクリーンな再エネ電力が締め出されているという今の日本の現状を環境省はどう考えているのか。具体的にはここ九州では4基もの原発が再稼働し、供給能力が増大して秋には電力需要を上回る恐れが出てきたため、全国で初となる大規模太陽光発電設備の出力抑制が取り沙汰されている。私は今年の九電株主総会において、「需要が低下する春と秋には太陽光発電を止めるのではなく、原発の方を定期点検で休ませるべきではないか。」と提案したが、まったく聞き入れてもらえなかった。土地改良区の小水力発電計画が九電から送電線の増強費用を1億円もふっかけられて頓挫したという話がここ大分県で起きており、似たような話が全国各地で起きている。送電線の増強費用は電力会社が負担するのがヨーロッパでは常識だが、こういうことをいつまで放置しておくつもりなのか。環境省は再エネを拡大させようという意思を本当に持っているのか。
②福島県の除染等に環境省の予算が充てられているが、これは本来、加害企業である東京電力が全額負担して行うべきものである。なぜ国民の税金がこれに使われているのか。危険な原発を福島県に押し付けて安価な電力の恩恵に与ってきた東京電力のユーザー、すなわち首都圏に住む人々が電気料金という形で費用負担すべきものに、九州に住む我々が払った税金が使われるのは納得できない。過酷事故を起こしても最後は国が税金で尻拭いしてくれると思っているから電力会社は安易に原発の再稼働に走るのではないか。「事故を起こしたときには国はビタ一文出さない。最後まで全額事業者負担で後始末してもらうから、その覚悟でやれ」という姿勢を政府として示すべきではないのか。
これに対する当日の担当者の答えは、「本日は原子力を担当する者が来ておらず正確にお答えすることができないので勘弁してほしい」というものでした。環境白書に記述してあることなのに、「なぜ国がそれをするのか」すら答えられないというのはどういうことかと思いました。
後日環境省に問い合わせたところ(これも電話口で即答してもらえず、回答を得るのに2日ほどかかりましたが)、これらの費用は一時的に国が立て替え払いをしているだけで、後日、東京電力に全額求償することになっているとのこと。これまで累計で約3.9兆円の国費が使われ、東電にはこれまで21回に分割して請求を行い、請求額の累計は2兆3,400億円、このうち実際に支払われたのは1兆5945億円とのことでした。残る7,455億円の未収金は、帳簿の整理がつかないとか何とか言うので待ってやっているそうなのですが、国と電力との持ちつ持たれつの関係を考えると、厳しい取り立てをしているとは到底思えず、「あるとき払いの催促なし」の実態なのではないでしょうか。現時点では未請求分も含めると約2.3兆円もの放射能汚染対策費用を国が立て替えたままになっています。東電の方はこうして事故の後始末費用の一部を国に肩代わりしてもらって、それで浮いた資金を柏崎刈羽原発の再稼働(2017年12月、6・7号機が安全審査に合格)に向けて惜しみなく投入できているのですから、税金を使って原発の再稼働を進めているようなもので、何とも腹立たしい限りです。
原発の後始末費用は原発推進派に負担させよ
これは環境省とは別の話ですが、最近話題のトリチウムを含む汚染水の話です。福島第一原発にたまり続けるこれらの汚染水の貯蔵スペースに限界が来ているとのことで、原子力規制委員長は「希釈して海に流すのが最も現実的な解決策」と発言し、地元福島を含む各地で「意見を聞く会」が持たれています。福島県で漁業を営む人々は、最近やっと回復してきたこの時期にそんなことをされてはまた元の木阿弥になってしまうと猛反発しています。誠にもっともな怒りで、この問題でまたも福島の人々の気持ちを踏みにじるようなことはあってはならないと思います。
当局によると、こうしたレベルの汚染水は全国の他の原発でも日常的に海に流しており、環境的にはまったく問題ないとのこと。それならば全国どこの海に流しても問題ないはずであり、少なくとも福島沖に放流するということだけは絶対にやめてもらいたいと思います。
かつて藤田祐幸氏や槌田敦氏は、「原発の核廃棄物の処分場は東京につくるべきだ」と著書の中で主張していました。私は、どうしてもどこかの海に流さなければならないと言うのであれば、あの汚染水は東京に運んで東京湾に放流すべきではないかと考えます。除染費用の負担と同じ問題で、これも首都圏の人々が安い電力欲しさに福島に原発を押し付けて送電させたことが原因で発生したものであり、受益者負担(過去の受益者ではありますが)の原則に立って東京電力エリアの人々が危険負担すべきものではないでしょうか。「東京湾は内海で影響が残る可能性がある」と言うのなら、「三浦半島の突端や房総半島のどこかから太平洋に向かって放流する」でも結構。風評被害等でこれらの地方の漁業者の方々に経済的な損失が生じた場合は、当然東京電力が補償しなければなりませんし、その費用は電気料金として首都圏の人々が負担すべきものであります。
もっとも、東京電力の電気を使ってきた人々の中には、原発には反対だったけれども他に選択の余地がなかったから仕方なく使ってきた人も少なくないでしょうし、さらに言えば3.11以前は多くの人々が政府・電力会社・マスメディアにだまされて原発安全神話を信じ込まされてきたわけですから、責任を問うのは酷だという意見もありえるでしょう。今では安全神話の嘘は明白に暴かれ、電力の全面自由化も行われているわけですから、これからの日本に原発はいらない、東電の賠償にも付き合わされたくないと考える人は、東電とサヨナラして新電力に切り替えればよいのです。政府は姑息にも廃炉費用の不足分を託送料金にまぎれこませて新電力に乗り換えた人からも徴収しようと目論んでいますが、誠に理不尽な話です。福島原発事故も含めて、今後の原発の後始末にかかる費用は、フクシマの悲劇を経験したこの期に及んでもなお日本には原発が必要だと主張してはばからない経団連や読売・産経といった御用メディア、およびこれらの主張に同調する人々のみに負担していただく仕組みはできないものでしょうか。
日本の独立を脅かしている
日米地位協定の見直しを!
日米安保条約とそれに付随して結ばれた日米地位協定はさまざまな社会問題を引き起こしています。その最たるものは沖縄の米軍基地問題です。日米地位協定について沖縄国際大学の前泊博盛氏は「アメリカが占領期と同じように日本に軍隊を配備し続けるための取り決め」、もっと露骨に言えば「日本における、米軍の強大な権益についての取り決め」と述べています。
先日、政府がオリンピック開催による外国人観光客の増加を見込んで羽田空港の発着便増便を検討したが、アメリカの許可が得られず難航している、というニュースをNHKが報じました。これは首都圏の制空権がアメリカ軍横田基地にあるためです。今でも地方から羽田空港に発着する飛行機はアメリカ軍の制空権規制によって最短のコースを大きく迂回しなければなりません。首都圏の制空権を他国の軍隊が支配している国は世界中を探しても日本だけです。トランプ大統領が訪日した時も専用機で横田基地に入り、国内を自由に移動しています。大統領に限らずアメリカの軍関係者は手続きなしに自由に出入国していると推察されます。これでは独立国家とは言えません。
沖縄で行われている米軍の演習も日本の法律を無視して実施されています。2004年に起きた沖縄国際大学の米軍ヘリ墜落事件では、事故直後アメリカ軍が現場を封鎖し、警察、消防、学校関係者の立ち入りを禁止しました。これは日米地位協定による国内法を無視した行為です。日常的にも法律で禁止された超低空飛行や夜間訓練が行われています。腹が立つのはアメリカ本国ではできない危険な訓練を日本では堂々と行っていることです。米軍人による犯罪も多発していますが、国内法が適用されず起訴できないこともたびたび起こっています。安倍首相はことあるごとに「国民の命と暮らしを守る」とのたまうが、このような問題に対して根本的な改善を申し入れるようとする姿勢は全く見られません。
先日の沖縄県知事選挙で翁長さんの意思を継いだ玉城デニー氏が当選したのはうれしい限りです。相手側の露骨な経済的締め付けや汚いデマ、そして強力な組織選挙に打ち勝って大差で当選しました。ウチナンチュは日米地位協定の被害を肌で感じています。一方で私たちは日米地位協定の被害意識が希薄です。理由の一つは沖縄に米軍基地が集中しているためです。言い換えれば沖縄に不都合な問題を押し付けているからに過ぎません。そしてもう一つは、日米地位協定の真実が意図的に隠されているからです。例えば前述の羽田空港の増便の問題にしても、その原因が日米地位協定にあるという報道はありません。
北方領土の返還交渉において最もネックになっているのは日米地位協定です。以前、ロシアの高官が外務省に返還後の北方領土に米軍基地を置くことがないかという質問をしたところ、外務省は保証できないと答えました。これではロシアが北方領土返還するはずがありません。しかし、外務省の答えは間違っているわけではありません。アメリカは軍事施設を日本国内に自由に置くことができるという特権を持っているからです。日米地位協定は日本の利益を大きく損なっています。驚くべきことに日米地位協定によるアメリカ軍への特別の権益供与に加えて我が国は「思いやり予算」という巨額な財政支援まで行っています。世界中にこのような国はないと思います。
先日の自民党の総裁選に出馬した石破茂氏は地位協定の見直しに言及しました。玉城沖縄県知事も選挙戦で見直しに言及しました。注目すべきは全国都道府県知事会が全会一致で日米地位協定の見直しを提言したことです。これは翁長前知事が長年全国都道府県知事会で要望したことのようですが、ここにきてようやく動き出したと言えます。残念ですがこのような動きを阻害しているのは安倍政権です。
by nonukes
| 2018-10-22 17:51
| 小坂農園 薪ストーブ物語
|
Comments(0)