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小坂正則の個人ブログ

郵便局が土曜日配達を中止することを検討中?

人口減少とマイナス経済成長の時代が経済や地域社会のあり方を変えつつある
小坂正則

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昨日の日経新聞に下の記事「郵便配達、平日だけに人手不足対応で総務省検討」とありました。記事を要約すると、「人手不足と郵便物の激減で土曜日配達をとりやめようということを総務省が検討に入った」という内容です。グラフにあるように、郵便引受数が最高だった2001年から17年度には35%減だそうです。この数字は出版業界の売り上げ額や新聞購読数ともよく似ています。総じて紙媒体からネットへ情報伝達が移行する社会現象を象徴する現象のようです。新聞購読者数や出版業界でも、雑誌の売り上げはもっと急激な減少を示しているようですが。それにしても21世紀は情報や人びとの暮らし方や生活様式が20世紀では考えられなかったような激しい変化が襲ってきているのです。
たとえは、2000年までには携帯を持っている人は居ましたが、今のようなスマートフォンや携帯アプリで買い物やニュースを見たり聞いたりすることができる社会が訪れるなど誰が想像していたでしょうか。好むと好まざるに関わらず情報社会へと大きく変化しているのです。ですから、それに合わせて私たちの働き方や暮らし方も変わらざるを得ないのでしょうか。

郵便減は企業努力だけでは解決できない

郵便物が大きく減った1例を考えて見ましょう。3年ほど前までは電話料金の請求書がNTT西日本から郵送で送られてきていました。ところが郵送を希望する方は月額100円の郵送料を別途請求しますという1枚のお知らせで、個別郵送をやめて、メールで請求書が来るようになりました。ではNTTの郵送料がどれだけ削減されたかを試算してみましょう。大分県内の世帯数が48万戸だそうです。その内固定電話のある家が40万戸として、事業所が約2万戸ですから、合計42万戸の郵送料が削減されたのです。42万通×82円=3400万円ですが、これが年間では4億800万円が大分中央郵便局の売り上げから減ったことになるのです。(大分中央局から県内へ郵便が出されたと仮定した場合です)莫大な額です。NTTだけではありません。クレジットカード会社もメールによる請求へ次々に移行していますので、元郵便局職員としては体感的に35%減どころではないのではないかと感じます。それに郵便事業の売り上げの80%がチラシや広告物などメール便だと言われています。それらも、郵送からメールやネット広告へ大きく変化しているのですから、これからの郵便事業はメルカリの商品配達やアマゾンの書籍や小物の配達業務へと大きく事業内容が変化することでしょう。個人間の宅配事業は右肩上がりに増えていくことは考えられます。ただ、年賀状などの既存文化様式や手紙の需要はここ数年でもっと激しい需要減が想像されます。
ですから、それらを踏まえて、斜陽産業企業の対応や私たちの生活様式も合わせて変化せざるを得ないでしょう。

変えていいいものと変えてはならないものがある

社会が大きく変化することのもう1つ大きな問題があります。それは少子高齢化=人口減少です。これは女性が生涯に生む子どもの数(特殊出生率)が1.4を行ったり来たりする変化も下がることはあっても上がることはないでしょう。つまり、大分県のような過疎県では毎年子どもの数が大きく減っていくのです。これまで、大分県内でも佐伯市や豊後大野市など周辺市町村の人口は大きく減っていたのですが、その理由の1つが大分市が県内の人口を吸収していたことがありました。ところが、昨年度ついに大分市も人口が減ったのです。周辺市町村から大分市への人口移動がありながら、大分市から出て行く人口がそれを上回ってきたという歴史的な事態へと突入したのです。
しかし、この情況は県が見合いパーティーを公費で開催したくらいで解消できると考えているのなら、思い違いも甚だしい限りです。そんな対症療法的で場当たり的な取り組みで解消できるような次元の問題ではないのです。文明的な国家的な危機なのです。
まあ、この現象も悲観的に捉えるよりも、その現象を逆手にとって、少ない人口でもそこで人びとが豊かな暮らしを続けながら、楽しく安心・安全に暮らせるコミュニティーを築いていくことが最も重要なことなのではないでしょうか。
そこで、社会現象の変化に寄り添いながら、例えばウーバーのような乗り合い自動車事業や民泊事業に自動運転や再エネ導入などは積極的に受け入れるのです。しかし変えてはならない、これだけは守らなければならないことが何かを地域でしっかり議論して自覚し、行政は何でもかでも、予算をばらまくのではなく、重点的に限られた予算を費用対効果の大きな事業や人びとの暮らしに欠かせない事業を峻別しながら、長期的なビジョンで投資して行かなければならないのです。例えば大分県でいえば有機農業の拡大や観光と再エネと体験型の農業を取り入れたりして、若者がワクワクするような洒落たカフェや古民家を利用したお店など、都会の真似ではない、大分らしい個性的で魅力的な街作りを支援するのです。また廃校を利用して若者の起業を支えることだってできます。ネットで世界中に情報発信すれば、それこそ世界中から洒落たお店や起業した街に若者は集まって来て定住者も増える可能性があるかもしれません。
また、これからはコンパクトな社会へ移行することはやむを得ません。これからは限られた予算でインフラの保守などをしなければならないのですから、新しい道路や橋やトンネルなどを造るのはやめるべきです。逆に地方自治体では「どの橋やトンネルや道路は壊すか」などの議論が必要です。すでに米国のラストベルトと言われる斜陽産業の都市、シカゴなどでは30年前から、そんな取り組みが行われて来ました。そして各一定の大きさでコミュニティーには小学校や商店などの基礎的なインフラや文化の拠点は残さなければなりません。そのような議論を地域の人びとを巻き込んで自治体と住民が一緒になって、将来の自分たちの町や村をどのような形で引き継いでいくのかを議論しなければなりません。これまでのように住民は行政に橋や道路の整備を要求するだけではだめです。これからは自分たちで何ができるかを議論する必要があります。地方行政にはお金がないのですから、資金は自分たちで出し合い、行政には最低の負担だけをお願いして、地域のことはできるだけ地域で負担して運営していくという住民主体で、住民の自立と自律がこれからの住民自治の基本だと私は思います。それこそが住民自治の本来のあり方なんだと思うのです。
しかし、地域のことは地域で負担し合い自立するということと、社会的弱者にも負担を押しつけることとは別です。地域が包摂する社会とは、社会的弱者を皆で支え合いながら地域がそれぞれの個性や能力に応じて「できる人は自分でやり、できない人は支える」という公助と共助と自助がバランスの取れたコミュニティーで、人びとが豊かで安心して暮らしを営むことができる社会が、理想的な包摂社会だと私は思います。


郵便配達、平日だけに 人手不足対応で総務省検討
2018/9/11 18:00日本経済新聞 

 総務省は手紙やはがきなどの郵便物の配達を平日のみとする方向で検討に入る。今は土曜日も配っており、人手不足で配達員の負担が重い。郵便物数が大きく減り、土日の配達がなくても大きなサービス低下にならないとみている。早ければ2019年にも法改正する。人手不足による供給の制約が、公共的なサービスにも及び始めている。
 今の郵便法は全国どこでも週6日、月曜から土曜まで1日1回の戸別配達を原則としている。総務省は週休2日制を認める法改正を検討し、土曜の配達を取りやめる方向で調整する。速達や書留は毎日の配達が維持される見通しだ。

情報通信審議会(総務相の諮問機関)の委員会で利用者や事業者などからヒアリングする。

 配達減を検討するきっかけは、人手不足に伴う従業員の働き方改革だ。日本郵便は週休2日制だが、配達がある土曜日にも約14万6千人が出勤しているという。夜勤や深夜勤にあたる従業員も半数を超える。労働需給が引き締まる中で、新規採用も十分には確保できない。
 これまでは人手のかかる仕分け作業などの機械化を進めてきた。一方でドローン(小型無人機)や自動運転による配送も試みているが、実験段階だ。このため同社は「働き方改革に対応して土曜日や夜間の労働を軽減することが必要」との考えを総務省に伝えている。
 事業環境も大きく変わった。インターネットの普及などで郵便物数は減少傾向が続く。国内分は17年度に172億通と、ピークの01年度の262億通から35%減った。一方で単身の世帯が増えて配達先は拡大。配達先1カ所あたりの平均配達数は11年度以降、1日あたり1通を下回る。
 郵便事業は採算が厳しい。売上高に占める人件費の比率は6割を超え、国内郵便は14年度と16年度に営業赤字になった。関係者によると土曜の配達をやめれば、数百億円規模のコスト削減につながる可能性がある。
 日本郵政グループの収益構造から見ても、配達の見直しは避けられない。グループ全体の経常利益は18年3月期に9161億円に達するが、大半はゆうちょ銀行とかんぽ生命保険が稼いでいる。ただ、今は好調な両社も今後は低金利や人口減で収益環境が厳しい。
 郵便配達の見直しは、公共サービスのあり方を巡る議論にも影響を及ぼしそうだ。地方ではバスなどの公共交通を支える人も足りなくなるとみられており、自動運転やライドシェアを活用する試みが広がっている。(以下省略)



by nonukes | 2018-09-12 11:53 | 小坂農園 薪ストーブ物語 | Comments(0)

  小坂正則

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