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小坂正則の個人ブログ

伊方原発運転差し止め訴訟 第9回口頭弁論 意見陳述

5月24日大分地裁で行われた口頭弁論で私の意見陳述

今年の5月24日、136名による第3次提訴で原告が514名へとなりました。この500名を超える原告は、大分地裁始まって以来の最大の住民訴訟です。24日の裁判後の記者会見で、徳田靖之弁護団共同代表は、「県民がどれだけ伊方原発を止めよう思っているかの「想い」を、裁判所に形として示す意義は大きい」と語っていました。9月中には仮処分の決定が出ます。広島高裁決定によって伊方原発3号機は止まっていますが、10月からは運転再開の予定です。もし、大分地裁の仮処分で「運転禁止」命令が出れば、伊方原発3号機はこのまま運転停止が続くことになります。それに平行して行われている本訴でも、勝利して伊方原発の運転差し止めを勝ちとりたいと考えています。


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大分合同新聞5月25日号より

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当日街頭で撒いたビラです

意見陳述書

2018年5月24

 原告 小坂正則

 私には尊敬する中津の作家、松下竜一センセがいました。私にとって、松下センセは反原発運動の同志でもありました。2004年に亡くなりましたが、もしセンセが生きていれば、ここで意見陳述をしていたことでしょう。松下センセは1974年に『暗闇の思想を』という本を出しました。その本の中で「冗談でなくいいたいのだが、『停電の日』をもうけていい。月に一夜でもテレビを離れ『暗闇の思想』に沈みこみ、今の明るさの文化が虚妄ではないかどうか、冷えびえとするまで思惟してみようではないか」と書いています。ですから、私は、照明など電気にしかできないことは電気を使いますが、電気じゃなくてもできる暖房は薪ストーブを使っています。

使い捨てから循環型社会へ

 私は19859月まで川崎市の郵便局で働いていました。

 当時の川崎市は「日本一の住民サービス」を掲げて、家庭ゴミは可燃物も不燃物も毎日収集して焼却場で全て燃やしていました。生協組合員だった私たち夫婦はゴミを少しでも減らそうと、生協のトラックを私が運転して廃食油を回収し、石けんを作る活動をしたり、妻が無認可保育所で働いていたので、保育所の資金稼ぎのために古紙回収をしたり、リサイクルバザーなどをやっていました。そんな時、1984年、「乾電池などに含まれる水銀がゴミ焼却場から放出されている」という問題がマスコミで話題になりましたが、私の働いていた郵便局と保育所のすぐ近くには川崎市のゴミ焼却場があったのです。

 私たちは、ゴミ焼却場周辺の住民にアンケートを取ったりして、住民を巻き込んだ清掃局長との交渉で、分別収集を始めるきっかけをつくることができました。

私はゴミ収集の問題に関わる中で、「大量生産・大量消費の使い捨て社会は、そんなに長続きはしないだろうな」と強く思うようになったのです。

 人間以外の生物もウンコは出しますが、処理できないゴミは出しません。糞や死体は、それを餌とする微生物などが食べて生命を循環させます。なぜ人間だけがプラスチックや、ビニールなど腐敗しないゴミを大量に使い捨てるのでしょうか。ゴミの中でも一番やっかいなゴミが、原発から出る放射性廃棄物です。これは科学の力ではどうにも処理できません。

 

なぜ再エネNPOを作ったか

 私が1985年に大分に帰ってきた翌年の4月26日に、ソ連のチェルノブイリ原発事故が起こりました。8千キロ離れた日本まで放射能が降ってきたのです。連休明けの5月中旬に「伊方原発3号機の設置許可」というニュースを見ました。そこで、トキハデパート前で「伊方原発見学ツアー参加者募集」というビラを一人で撒きました。そのツアーに参加した12名の仲間と大分の地で伊方原発反対運動が始まりました。

 あるとき街頭で「原発反対」のビラを撒いていたら、「お前は原発がそんなにいやなら、九電の電気は使うな」と言う人がいました。その時考えたのです。「自分で電気を作って、『私は原発の電気は使っていません』と言うのが一番分かりやすい」と。

 2001年に再エネNPOを立ち上げて、大分県や大分市や生協の屋根などに「大分県民共同発電所てるてるちゃん」という名前の太陽光発電を10年間で10機作って、電気の産直運動を今でもやっています。NPOの目標は「市民電力会社」を作ることでした。でも電力自由化で新電力がたくさんできましたので、今は薪を作って販売したり、ヤギやニワトリを飼って、自給自足をめざす生活をおくっています。

電力会社の公益性と原発の必要性

 2年前の2016年4月1日より、一般家庭の電力の自由化がやっと始まりました。これまでの電力会社は地域独占と総括原価方式に守られて販売競争もなく、価格も安定している殿様商売だったのですが、これからは自由市場の競合相手の多い普通の商品に電気も変わったのです。だからスーパーでキュウリやナスを買うように、消費者が自分好みの電気を自由に選んで買うことができるのです。

 昨年末の一般家庭の電力の新電力への乗り換え率は、関西電力が最高で18%。東京電力15%。全国平均10%です。それに工場などの高圧電力は12.1%(昨年4月経産省発表)で、全電力の22%以上が乗り替えていて、新電力は着実に増えています。

 これまでの地域独占の電力事業は「電力の安定供給の義務」もあり「公益性」もありました。そして原発は電気の30%を賄っていたので、原発が止まれば電気が足りなくなるという理由から国民生活のためには原子力発電の必要性も一定程度あったかもしれません。しかし、福島原発事故のあと何年も全国の原発は止まったままで電気は足りていましたし、「電力地域独占」も終わり、電力会社の占有率もどんどん減っているのですから、電力会社の「公益性」も原発の「必要性」もありません。いま四国電力が伊方原発を動かす唯一の必要性は一私企業の収益のためだけです。

原発の「公益性」や「必要性」が、これまでの原発裁判の判決にも何らかの影響を与えていたのではないかと、私は思っています。しかし、電力自由化で、原発の「公益性」も「必要性」もなくなったのですから、この裁判では私たち住民の声が正当に反映されることを願っています。

企業モラルが問われる

 養豚業をやっている私の知り合いから最近聞いた話です。養豚場はハエと匂いがすごいので、人家の少ない土地で養豚を始めたそうですが、その周辺にも家が建ってきて、住民から「出て行け」という声が起こり、仕方なくもっと田舎の方へ引っ越したそうです。今はまだ家が少ないのでいいのですが、またいつ引っ越さなければならなくなるか不安だそうです。こんな零細企業の社長が周辺住民に配慮して商売を行っているのです。しかも、前からそこに居たのに、後から来た人に、「くさいから出て行け」と言われて、出て行くのです。

 四国電力社員のみなさん、私は伊方原発が出来る前から大分に住んでいるのですよ。原発を建てるとき電力会社は「事故は絶対に起こりませんが、万一起こっても周辺8~10キロまでしか放射能は漏れませんから大丈夫です」と言って建てさせてもらったのでしょう。それが真っ赤なウソだったことを福島原発事故が証明しました。それなら契約は白紙に戻すのが当たり前でしょう。

 福島原発事故から3カ月後の2011年6月18日に、福島から350キロ離れた静岡のお茶が大量の放射能によって汚染され、フランスから茶葉が返品されたことがありました。伊方原発がメルトダウンしても、大分まで放射能が来ない場所、350キロ以上離れた場所まで伊方原発は引っ越してください。私の知り合いの養豚業者のように。それが日本国憲法の下に与えられた私たちの権利です。私たちの要求は、憲法13条の「幸福追求権」という人格権の最低限の行使です。四国電力の「伊方原発再稼働」の主張は福島原発事故後の、私たちの受忍限度を遙かに超えています。

再エネと電気自動車の流れは止まらない

昨年1217日のNHKスペシャル「脱炭素革命の衝撃」という番組で、中国や中東では太陽光発電のコストが3円とか2円だと話していました。再エネ電力は原発の発電コストをとっくに下回っているのです。

また、日本は「地球温暖化防止パリ協定」に参加したので、2050年には温暖化ガスはほとんど出せなくなるのです。すると、石炭火力がいくら安くても発電所は動かせないし、発電コストでも太陽光発電が石炭火力を抜く、と同番組は話していました。つまり将来有望な電力は再エネ電力しかないのです。だから世界中で再エネ投資に火がついたのです。

 「パリ協定」の実施で2050年にはガソリン車が動かせなくなる、とEU諸国では電気自動車への転換が計画されています。中国は再エネと電気自動車を国策として奨励しています。カリフォルニア州のZEV規制という電気自動車を促進させる法律により、世界中で電気自動車の開発競争に火がつきました。トヨタ自動車も慌てて電気自動車を販売するそうです。

 普通は電気自動車が増えれば電力需要が増えるので、むしろ原発は必要になるのではないかと思うかもしれませんが、電気自動車は再エネと相性がいいのです。というのも、電気自動車が車庫でコンセントにつながれていれば、不安定な再エネ電力の出力調整とバッテリーの役目を果たしてくれるのです。

 また、3月29日の朝日新聞によると、ソフトバンクの孫正義氏がサウジアラビアで2030年までに200ギガワット(100万キロワット級の原発200基分)の太陽光発電を21兆円かけて建設するそうです。太陽光発電の発電効率が15%として、総発電量でいえば100kw原発40基分というとんでもない発電量なのです。

これから世界中で再エネ電力はますます増えるでしょう。それに対して原発は事故防止対策費の負担に迫られて発電コストはどんどん上がっています。ですから世界中の原発メーカーはどこも虫の息なのです。フランスの国営アレバも赤字倒産の危機。日本の三菱も日立も東芝ももちろん、大赤字です。

次世代へ私たちの責任

 米国のトランプ大統領は「パリ協定」からの脱退を表明しましたが、米国の大企業やカリフォルニア州など大きな州の大半がパリ協定にとどまって、温暖化対策を行うと表明しています。米国政府が「パリ協定」から脱退しても、大手企業や州が「パリ協定」にとどまれば、温暖化対策は実行できるのです。

選挙で政権を変えれば政治を変えることができますが、選挙以外でも米国のように、政治を変える方法はあるのです。私が川崎市で体験した、ゴミの収集方法をみんなで変えたように。そのためには、私たちひとり一人が「何が正しくて、何を将来世代のために今、選択すべきか」を自から考え、自らが行動することだと、私は思います。そして、「私たちがどこの電気を買うか」ということや、この裁判も、私たち市民の具体的な行動の1つ1つなのです。これは誰かから指示されたものでもありません。私たちが自ら考え、自ら自主的に行動していることなのです。

 ところで、今年のゴールデンウイークの5月5日はすばらしい晴天でした。私は九州電力の「でんき予報」という電力消費速報を一日中注視していました。例年、日本の電力消費は5月の連休中が最も少ないのですが、その5日は、昼間の電力消費量に対して、太陽光発電の割合が最大で83%を賄っていました。ということは、風力発電や地熱やバイオマスや水力などを合わせると、昼間の2、3時間は再エネ電力が九州電力管内の全電力全消費量を賄っていたことになるのです。私たちは再エネ100%社会に向けて、少しずつですが、着実に前へ進んでいるのです。そんな希望が持てる5月5日の「子どもの日」でした。

 ですから、かわいい私の孫が平和に安心して暮らせるためにも、この裁判に負けるわけにはいかないのです。だから私は裁判所の中でも、裁判所の外でも、40名を超える大弁護団に支えられながら、514名の原告と200人を超える応援団と、この裁判に関心を持ってくれている多くの県民や国民と一緒に、日本中の原発を1基残らず止めるまで、たたかい続けることを決意して、わたしの意見陳述とします。


by nonukes | 2018-05-26 22:02 | Comments(0)

  小坂正則