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小坂正則の個人ブログ

河野太郎外務大臣が官邸に反旗を翻したか?

有識者会議は「原発は高リスクで競争力のない電源」と安倍政権のエネルギー政策を切り捨てる
小坂正則
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昨日、外務省の「気候変動に関する有識者会議のメンバー」が河野太郎外務大臣へ「これまでの原発依存の外交を改め、原子力発電への依存度を可能な限り低減させて、再生可能エネルギー外交を行うよう」提言を手渡したものです。
この有識者会議は今年1月9日に初回の会合が開かれて、第1回会合では,河野大臣による冒頭挨拶に続き,自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長から,「エネルギー転換」に向かう世界と日本について,黒崎美穂ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス・アナリストから世界の電力市場見通しについてそれぞれ報告がありました。その後,それらの報告で提供された情報やデータに基づき,メンバーが活発な意見交換を行いました。
外務省のHPによると、「次回以降の会合については,鈴木秀生地球規模課題審議官と有識者に加え,企業等において再生可能エネルギーの導入や気候変動対策に積極的に関与する関係者の参加を得て,1月中旬から2月上旬にかけて複数回にわたり開催予定」とありましたので、複数回の会合を開いたあと、19日の「提言」となったのでしょう。
よく調べたら、8回も有識者会議を開催して下記のような提言を行ったのです。1月9日から2月19日の提言までには1週間に1回の会合では7回しか開かれませんので、そこかで1週間に2回会議を行ったことになります。ハイスピードで立派な提言をまとめたことに、私は最大の敬意を表します。大林ミカさんは元原子力資料情報室のメンバーで現在は孫正義氏が作った「自然エネルギー財団」の事務局長だと思います。要は河野太郎氏の肝いりで集められた方々だから、こんなすばらし提言ができたのでしょう。
この提言を世間に広めて、外務省の名誉挽回を図りましょう。河野太郎外務大臣は、近ごろ世間では人気がた落ちのようですが、ここに来て一気に名誉回復ができるかどうかの瀬戸際です。秋の総裁選にこの勢いで突っ走って、安倍内閣をぶち壊してもらいたいものです。頑張れ外務省!頑張れ河野太郎新首相!

詳しくは外務省のHPへ


気候変動に関する有識者会議のメンバー

末吉 竹二郎 国連環境計画 金融イニシアティブ(UNEP-FI)特別顧問(座長)
大林 ミカ 自然エネルギー財団 事業局長
加藤 茂夫 日本気候リーダーズパートナーシップ 代表代行
 (株式会社リコー 執行役員サステナビリティ推進本部長)
黒崎 美穂 ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス アナリスト 日本及び韓国リサーチ責任者
鈴木 達治郎 長崎大学 教授
鈴木 悌介 鈴廣かまぼこ株式会社 代表取締役副社長
 (一般社団法人エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議 代表理事,小田原箱根商工会議所会頭)
高橋 洋 都留文科大学 教授
山岸 尚之 WWFジャパン 気候変動エネルギー・グループリーダー
吉高 まり 三菱UFJモルガンスタンレー証券 クリーン・エネルギー・ファイナンス部 主任研究員
 (慶應義塾大学大学院政策メディア研究科 特任教授)





外務省 気候変動に関する有識者会合 エネルギーに関する提言
気候変動対策で世界を先導する新しいエネルギー外交の推進を
 この提言は、外務大臣の諮問による有識者会合が、国際的な状況を分析し、日本の新しいエネルギー・気候変動外交の方向性について議論をし、とりまとめたものである。今回はエネルギーに関して、また、4月には気候変動全般についての提言を行うこととする。

はじめに
 世界がエネルギー転換に向かう中で、日本の立ち遅れが顕著になっている。
 日本は、東日本大震災以降、固定価格買取制度の導入や電力システム改革の推進などのエネルギー政策を進めてきた。一方、気候変動の影響が年々厳しさを増す中で、各国はパリ協定が求める脱炭素社会の実現に向けて、産業・経済・社会の変革を強く推し進めている。その速度は、日本を遥かに上回っており、世界との差は拡大している。
 気候変動をひきおこす温室効果ガスの9割を二酸化炭素が占め、そのほとんどが化石燃料の燃焼から放出されるエネルギー起源である。もっとも鍵となる気候変動対策は、エネルギー分野の脱炭素化、すなわちエネルギー転換であり、近年、エネルギー効率の向上とともに、再生可能エネルギーの拡大が、ますます重要となってきた。
 今、日本は再生可能エネルギーの拡大で先行する諸国に水をあけられ、また、二酸化炭素の排出が天然ガス火力に比べ2倍程度大きい石炭火力の利用を進める政策が、国際社会の厳しい批判を受けている。
国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)等の国際交渉の場で日本外交の隘路ともなり始めている。
 このまま脱炭素化をめざす世界の努力と齟齬ある政策を続ければ、エネルギー・環境分野での遅れにとどまらず、カーボンリスクを重視する世界市場でビジネス展開の足かせとなり、国際競争力を損なう一因となる。
 他方、日本の豊かな自然に根ざす再生可能エネルギーの活用を中心に据え、海外からの化石燃料やウランへの依存を減らせば、エネルギー安全保障に貢献し、国内に新しい経済を呼び込むことができる。もっぱら化石燃料資源の確保を目指してきた従来のエネルギー外交は、これからは、諸外国とともに、持続可能な未来の実現を希求する再生可能エネルギー外交を柱とするべきである。脱炭素化をめざす流れのなかで、まず、世界の現実を正しく伝えるデータと情報に真摯に向き合い、日本の置かれた状況を謙虚に受け止めることが必要である。その上で、国も、企業や自治体などの非国家アクターも、他国から信頼され、枢要な役割を果たすことのできる日本を目指して、エネルギー・気候変動政策のあり方を議論すべきである。
「エネルギーのことをエネルギーだけで考える時代」は終わった。この提言はそうした議論を進めるための第一歩である。

提言:気候変動対策で世界を先導する新しいエネルギー外交の推進を
 1.再生可能エネルギー外交を推進する
  1)気候変動対策で世界に貢献し、日本の経済・社会の発展につなげる
  2)持続可能なエネルギーで途上国の未来に貢献する
  3)多様な非国家アクターの国際舞台での活動を支援し、協働する
 2.エネルギー転換の実現へ、日本の道筋を確立する
  1)エネルギー効率化と再生可能エネルギーを脱炭素化の中心におく
  2)パリ協定と調和した脱炭素社会へ
  3)「原発依存度を可能な限り低減する」、この原点から出発する 
 3.脱炭素社会の実現をリードし、新たな経済システムを構築する
  1)日本の潜在力を引き出し、世界の最前線へ
  2)脱炭素化へ責任ある投融資の推進
  3)地域分散型エネルギーモデルで世界に貢献する

日本を取り巻く世界の状況

1.エネルギー転換に向かう世界
1)加速する再生可能エネルギーの導入
 今、世界は、産業・経済・社会の変革を促すエネルギー転換の最中にある。今まで、欧州や米国を中心とした一部先進国が享受してきた再生可能エネルギーが、中国、インド、アフリカや中南米諸国など、世界規模で拡大している。
 再生可能エネルギーの中でも、急速に伸びているのは太陽光発電と風力発電である。2000年にはわずか1.3ギガワットだった太陽光発電は、2017年には400ギガワット近くまでと300倍の伸びを見せ、風力発電は2000年の17ギガワットから、2017年には540ギガワット近くに伸びたとみられている。

2)急激に下がる再生可能エネルギーのコスト
 こうした動きを促進しているのが、世界各地で加速度的に進む再生可能エネルギーのコスト低下である。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、太陽光のコストが過去7年間で7割以上低下し、さらに2020年までに半額になること、また、2020年には、条件の良いところの太陽光や陸上風力は、キロワットアワーあたり3セント以下が主流になり、世界平均ですべての再生可能エネルギーが化石燃料より安価になるとしている。これまで再生可能エネルギーの中でも、高価と言われてきた洋上風力発電も、相次いで最安値を記録しており、過去5年で、7割のコスト低下が起きている。英国、デンマーク、オランダ、ドイツなど各国が、ビジネスリスクを低減した市場環境作りという政策競争を行い、次々に入札価格の下落記録を塗り替えている。

3)変わる電力市場の主役
 国際エネルギー機関(IEA)の最新予測は、これから導入される電源で際だって大きな割合を占めるのは、太陽光や風力を中心とした再生可能エネルギーであるというものである。一方で、ブルームバーグは、2040年までの電力市場の見通しとして、再生可能エネルギーへの投資が6割以上を占め、電力容量も6割以上となり、世界全体の発電量の中で石炭が占める割合は2020年代半ばにピークを迎えるとしている。
 世界の総発電量に占める原子力発電の割合は、1996年に最大の17%となり、次第に低下、現在は10%前後である。新規の開発も勢いを失っている。開発が減少している最大の要因は建設費の高騰である。欧米では、新しい原発の建設コストが、キロワットあたり100万円近くにのぼっている。原発は、すでに気候変動対策の切り札ではなくなっている。
電力の安定供給のために、「ベースロード電源」として原子力や石炭が必要だという考え方は、すでに過去のものになっている。電力市場の成熟した各国では、限界費用の安い再生可能エネルギーをまず最大限に使い、残りの電力需要には、気象予測を統合した電力取引や系統の広域化、需要マネジメントとともに、天然ガス火力などの柔軟な電源を活用するというシステムに移行している。柔軟性に乏しい原子力や石炭の役割は次第に限られたものとなってきた。エネルギー市場の主役は入れ替わり、エネルギーを考える出発点が変わったのである。

4)新しい経済を後押しするエネルギー転換
 経済成長を維持しながらエネルギー消費や二酸化炭素排出を減らしていく「デカップリング」は、すでに世界規模で起きており、石炭からガス火力への転換を行ってきた英国や米国、再生可能エネルギー導入先進国のドイツなどで、長期的な傾向となっている。
 再生可能エネルギーやエネルギー効率化など、エネルギー産業を脱炭素化するために必要な投資は、2050年までにさらに約29兆ドル以上にのぼるが、世界全体の国内総生産(GDP)に占める比率は0.4%に過ぎない。そして、むしろこうした投資が新しい経済成長を促し、2050年に世界全体でのGDPを0.8%押し上げていく。世界全体のエネルギー転換が進むにつれて、再生可能エネルギー産業における雇用は2016年時点で1,000万人近くに達し、日本でも30万人以上が雇用されている。気候変動への投資は経済成長への投資である。経済だけではなく、エネルギー転換により、大気汚染が緩和されるなど、環境面や健康面でのメリットを通じて、人類の幸福度が向上していく。
 このような新しい経済は、地域社会の仕組みを大きく変える可能性も秘めている。再生可能エネルギーは各地域に分散する地域に根ざした資源であるため、関連事業による地域経済への波及効果は大きい。

2.脱炭素社会構築に疾走する世界

1)パリ協定が加速するエネルギー転換
 パリ協定は、2015年12月にCOP21で合意された、脱炭素社会を実現するための国際協定である。先進国も途上国も一体となって「産業革命前からの地球の気温上昇を2℃より十分低く保つ。1.5℃以下に抑える努力をすること」、「そのために、21世紀の後半に世界の温室効果ガス排出を実質ゼロにすること」を約束している。
 このパリ協定の目標を確実に達成するために、各国は2050年を展望する2030年のより具体的な政策目標を示している。欧州は90年比で2050年に80-95%、2030年に最低で40%の温室効果ガスを削減する目標を掲げている。電力分野の再生可能エネルギーは、2030年にドイツは50%以上、フランスは40%、欧州全体では45%程度の導入を目指す。米国でも、カリフォルニア州やニューヨーク州では、2030年までに50%の再生可能エネルギーの導入を目指している。中国やインドなどの新興国も、再生可能エネルギー電力の最大限の活用を、脱炭素社会への移行を実現する中心的な戦略として位置付けている。
 2017年11月のCOP23では、国内の石炭火力を廃止し、国内外の全ての石炭火力に対する投資を止めることを宣言する「石炭火力からの撤退連盟」(Powering Past Coal Alliance)が発足した。12月のパリ気候変動サミットの時点で、26の国と8地方政府、24企業等が参加している。カナダ、英国、フランスなどの先進工業国が石炭火力の全廃を目標として掲げるだけでなく、中国やインドなどでも、新規電源開発の中心は石炭火力から再生可能エネルギーに移ってきている。
 
2)世界に広がる金融の脱炭素化
 金融業界では、脱炭素化という創造的破壊が進みつつある。世界銀行や欧州投資銀行などの国際投融資機関や政府系投資ファンド、機関投資家は、石炭など化石燃料への新規出資の停止や、投資そのものを引き揚げる「ダイベストメント」を次々に宣言し、実行に移している。例えば、96兆円を運用する世界有数の政府系投資ファンドであるノルウェー政府年金基金(GPFG)は、気候変動や資産運用の観点から石炭関連への投資はリスクが高いと位置付けている。ノルウェー国会は、2015年6月、GPFGの石炭関連株式の売却を正式に承認、GPFGは9,000億円以上の株を売却し、2017年3月までに日本の企業を含む世界の石炭関連77社からのダイベストメントを実施している。
 一方、投資先企業に積極的な気候変動対策の実施を求める「エンゲージメント」という取り組みも広がっている。例えば、全米最大の公的年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)など世界の主要な機関投資家は、2017年のCOP23において、温室効果ガス発生量の多い世界の大企業100社を対象に、気候変動対策の強化を求める「クライメートアクション100+」を開始している。

3)脱炭素化を先導するビジネス
 政府や金融だけではない。世界規模でビジネスを展開する企業こそ、脱炭素社会の構築の先頭に立っている。グーグルやアップル、マイクロソフト、アマゾン、GM、バドワイザーなどの世界的企業が、自らの消費電力やバリューチェーンで消費されるエネルギーを再生可能エネルギーに転換するための取り組みを始めている。
 こういった企業の再生可能エネルギーへの転換は、気候変動問題への対応だけが理由ではなく、ビジネスと一体となったものである。従来型の化石燃料への投資や、化石燃料を利用し続けること自体が事業リスクになっていること、価格が安定した再生可能エルギーの長期購入は、企業のエネルギー費用を下げるなどの実際の利益をもたらすことが、明らかとなってきたためである。

エネルギーから見た世界の中の日本
1.遅れる脱炭素への取り組み
1)偏る再生可能エネルギーの導入状況と低い目標値
 日本は、東日本大震災以降、固定価格買取制度の導入や電力システム改革の推進などのエネルギー・環境政策を進めてきた。固定価格買取制度により、太陽光発電の導入量は拡大し、わずか5年で、5%程度の電力を供給するまでに成長した。2017年までには合計で50ギガワット程度が導入されたとみられている。一方で、太陽光以外の再生可能エネルギーは導入速度が遅く、特に、世界的には高い価格競争力を持つ陸上風力発電の拡大はまだ本格的に始まっていない。地熱や小水力も伸び悩み、バイオエネルギーの拡大が輸入に依存しているように、日本に存在する豊かな再生可能エネルギーを活用できていない。
2030年に電力の22-24%という日本の再生可能エネルギー目標は、市場に対して今後も再生可能エネルギーを拡大していくというメッセージを発信できていない。

2)依然として各国よりも高い再生可能エネルギーのコスト
 太陽光発電の拡大につれ日本でもコストが次第に低下し、固定価格買取制度導入前に比べ、事業用太陽光も住宅用太陽光も6割から7割もコストが下がっている。ベストパフォーマンスの太陽光は、すでにガス火力とも競争力を持つようになった。しかし、海外ではそれを上回る速度で急速にコスト低下が実現しているため、日本は、太陽光も風力も平均では世界でもっとも高い国々の一つにとどまっている。
 近年、多くの国々が、良好な競争環境を政策的に用意し、入札によって再生可能エネルギーのコストを低下させている。しかし、日本では、系統連系や優先給電の保証がなく、目標設定が低いことなど将来的な再生可能エネルギー拡大の展望に欠けるため、事業者がコスト低下に踏み込める環境が整っていない。
 こうして、再生可能エネルギーのコストが高止まりすることにより、日本では企業が再生可能エネルギーを十分に活用できずにいる。こうした状況が続けば、国際競争力を削ぐ一因になることが懸念される。

3)効率化の求められる熱利用
 石炭火力や原子力発電では、投入されるエネルギーの3割から4割しか電力にすることができず、高効率のガス発電でも5割程度にとどまる。残りのエネルギーは、熱として環境中に捨てられている。一方でエネルギーの消費サイドでは、熱需要が全体の三分の一を占めている。これまで日本では、電力に力点を置いた政策がとられてきたため、大きなポテンシャルが存在する、太陽熱、バイオエネルギー熱、地中熱などの利用は進まず、地域熱供給やコージェネレーションの導入も限定的なままである。国内に大きなポテンシャルのあるこういった熱エネルギー源の徹底利用の推進が必要である。

4)大きな改善の余地がある省エネルギー・エネルギー効率化
東日本大震災前に比べて、日本では電力消費量が年間10%程度減少した。電力の使い方の見直しや、高効率のエネルギー機器の導入が大きな効果をあげた結果であるが、すべての分野で効率化が進んでいるわけではない。国内には、日本の産業は先進的な対策をやりつくしているため「乾いた雑巾」のような状態だ、という神話がある。確かに、1970年代の第一次石油ショックの直後は、一気にエネルギー効率化が進められ、エネルギー効率大国となったが、80年代から90年代にかけて効率化は停滞し、国の統計でも製造業のエネルギー生産性は足踏みを続けている。特に、日本のGDPの半分を生み出す中小企業・小規模事業者での省エネルギー・エネルギー効率化は、まだ進んでいない。建築分野のエネルギー消費性能基準の義務化も始まったばかりで、多くの住宅・建築物が対象とされておらず、既存の建築物の対策も進んでいない。一方、欧州各国では、すべての建築物に省エネルギー基準を課して、需要側でのエネルギー消費削減を促進し、同時に、電力だけでなく再生可能エネルギーの熱利用にも目標値を設定している。日本にも、IoT技術などの活用で、仕事と暮らしの場で快適な環境を維持し、質を高めながらエネルギーの消費量を減らしていくことのできる大きな余地が存在している。
 
5)高まる石炭火力発電への依存
 パリ協定の発効以降、日本国内で計画されている約17ギガワットもの石炭火力の増加や、日本政府による途上国への石炭火力の輸出支援の問題が、国際会議の場でもたびたび取り上げられるようになってきた。
 国内の計画が実行されれば、現行の「エネルギー基本計画」にある2030年に26%を石炭で賄う目標を大きく上回る可能性もある。再生可能エネルギーの増加とエネルギー効率化により、日本の温室効果ガスの排出量は、2013年度以降低下傾向にあるが、石炭火力が増設されることで、削減目標の達成が著しく難しくなる。そして、エネルギー消費の低下や再生可能エネルギーの増加による設備利用率の低下などで、大規模な投資が座礁資産となっていく可能性が高い。

6)原子力発電の役割の低下
 東京電力福島第一原子力発電所の事故から7年が経とうとしているなかで、事故前には54基あった原発のうち、現在稼働しているものは4基である。
世界的には、原子力は、高リスクで競争力のない電源であることが明らかになっているにもかかわらず、日本では、原子力が他の電源よりも安価であるという試算がそのまま使われている。新規の原子力発電に巨額の公的支援を必要としている海外の事例を見ても、日本での原発新増設は経済的な現実性を欠いている。また、原子力発電は、石炭火力と同様に需要追従性が低く、系統に対する柔軟性に乏しいため、世界が進める再生可能エネルギー中心の電力システムとの整合性に問題を抱える。
 投資リスクが高く柔軟性に欠けるエネルギー技術への固執は、再生可能エネルギーの拡大を阻み、日本のエネルギー転換を妨げてしまう。

2.日本不在のまま進むグリーンビジネスのルールメイキング 

1)バリューチェーン参加に求められる再生可能エネルギーの利用
 脱炭素化が企業評価の基準になる中で、エネルギー産業以外のビジネスアクターが、再生可能エネルギーの利用などのビジネスの脱炭素化にむけて大胆に動き始めている。そういった中で、世界と足並みを揃えられない日本の製品やサービスが、バリューチェーンへの参加条件を失うリスクが生じている。
 例えばアップルは、世界全体での100%グリーン化を視野に入れて活動し、中国に500メガワット近くの再生可能エネルギー施設を自ら建設し、生産業者も再生可能エネルギー電力の購入に取り組むよう働きかけている。また、世界最大のスーパーマーケットチェーンであるウォルマートは、2017年に、商品を納入するサプライヤーに対し二酸化炭素排出量削減を求める「プロジェクト・ギガトン」という取り組みを開始した。
 これらの動きは、脱炭素化が新たな商業ルールになったことを意味している。日本の再生可能エネルギー導入率が低い水準にとどまれば、日本企業の世界でのビジネス展開を困難にする恐れがある。

2)世界で進む脱炭素化のルールメイキング
 製品評価の基準や企業活動のルールを脱炭素経済への転換と整合するものに改めていく動きが広がってきている。例えば、欧州では、ライフ・サイクル・アセスメント(LCA)によって蓄電池を評価する
動きが出ている。今後、こうした評価が導入されれば、国内で再生可能エネルギーからの電力供給率の高い欧州各国で作られる製品が、化石燃料依存の高い日本製品より有利に評価される可能性が高い。再生可能エネルギー導入に立ち遅れ、化石燃料に依存したエネルギーを使い続けることは、日本で生産される製品の評価を下げてしまう。
また国際的には、EU、中国などで排出権取引制度や実効性のある炭素税がすでに導入されており、米国でもカリフォルニアやニューヨークなどの主要な州で排出権取引制度が導入されている。しかし、日本では、地球温暖化対策税で設定された炭素価格は低いレベルにとどまり、排出権取引制度も東京都以外では法制化されていないなど、国際的な炭素市場の議論や制度設計に大きく出遅れている。
 脱炭素経済のルールづくりが日本不在のまま続けば、世界的に活動する日本の企業にとって、大きなマイナスとなりかねない。

提言:気候変動対策で世界を先導する新しいエネルギー外交の推進を
1.再生可能エネルギー外交を推進する
1)気候変動対策で世界に貢献し、日本の経済・社会の発展につなげる
 気候変動は地球規模の危機であり、人類の存続をも左右する。この課題に真摯に立ち向かうことを抜きに、日本の国家としての品格を保つことはできない。また気候変動は地域紛争の一因ともなり、安全保障上のリスク拡大を招く。
 今日の日本は、パリ協定で合意された2℃目標達成に向け、主導的な役割を果たしているとは言い難い。
この状況から脱却するために、脱炭素社会に向かう世界で急速に役割が高まっている再生可能エネルギーを、日本が内外で強力に推進することにより、国家としての信頼を高める「再生可能エネルギー外交」を展開する。
 再生可能エネルギー外交は、化石燃料資源の確保を中心とした従来のエネルギー外交を、尽きることのない自然のエネルギー資源の活用により、世界とともに持続可能な未来を希求する外交へと発展させるものである。気候変動の危機回避の取り組みは、脱炭素ビジネスの成長機会を生み出しており、日本外交がこの課題で世界をリードすることは、新たな経済成長への道である。

2)持続可能なエネルギーで途上国の未来に貢献する
 世界で未電化地域に住む12億人の人々へ電力アクセスを提供することは、国連持続可能な開発のための2030年アジェンダ(SDGs)の重要課題である。広域的な電力系統の整備がなくても分散型電源として電力を提供できる再生可能エネルギーは、未電化地域への最も迅速な解決策である。
 途上国の経済発展にともなうエネルギー需要の拡大への対応として、日本の有する優れたエネルギー効率化技術の活用とともに、途上国の再生可能エネルギー資源を活用する技術の供与や投資を促進していく。持続可能なエネルギー開発を支援することが、途上国の未来への真の貢献であり、日本は、途上国の新しい経済を共に築いていくパートナーとなる。

3)多様な非国家アクターの国際舞台での活動を支援し、協働する
 脱炭素社会をめざす世界各地で、企業や自治体、NGOなど非国家アクターの役割が高まっている。非国家アクターの活躍が、パリ協定の実施を支え、加速している。「企業版2℃目標」とも呼ばれる「サイエンスベースドターゲット」には、すでに42社の日本企業が取り組み、2017年には、使用電力を全て再生可能エネルギーに切り替える「RE100」に3社の日本企業が初めて参加を表明した。また、全国各地で、地域に根差した中小企業が共同し、再生可能エネルギーの電力や熱の利用を活発化させており、国に先んじたエネルギー政策を進める自治体も存在感を高めている。
 率先して脱炭素化に取り組む非国家アクターを支援し、これらの世界でのプレゼンスを高めることも、日本外交の新たな役割である。国内の先駆的な企業や自治体、またNGOとのネットワークを形成し、市民社会と連携して、世界に向けた発信強化を進めていく。

2.エネルギー転換の実現へ、日本の道筋を確立する

1)エネルギー効率化と再生可能エネルギーを脱炭素化の中心におく
 脱炭素社会への転換は、経済、地域のあり方の根幹に関わるものであり、速やかな実現には強い政治的意思の発揮が必要である。
 脱炭素化に向け、省エネルギー・エネルギー効率化と再生可能エネルギーが中心的な役割を果たすことは、今や国際的な共通認識になっており、日本でもこれまで以上に高い目標の設定が必要である。野心的な目標値は、企業と地域への明確なメッセージとなり、エネルギー効率化技術、再生可能エネルギー拡大の長期的で安定的な市場の形成、公正な競争を成立させる土壌の醸成、規模拡大によるコスト低下を可能にする。

2)パリ協定と調和した脱炭素社会へ
 石炭火力発電は最新のものであったとしても、パリ協定の2℃目標と整合しない。日本は石炭火力発電所の廃止を覚悟し、その基本姿勢を世界に公表していく。国内の石炭火力の段階的廃止のロードマップを示すとともに、途上国への支援はエネルギー効率化と再生可能エネルギー開発を中心としていく。石炭火力輸出への公的支援は速やかな停止をめざす。

3)「原発依存度を可能な限り低減する」、この原点から出発する 
 東日本大震災後に初めて策定された現行のエネルギー基本計画は、その冒頭に「震災前に描いてきたエネルギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減する。ここが、エネルギー政策を再構築するための出発点であることは言を俟たない。」と明記している。
 原子力発電が経済競争力を失い、再生可能エネルギーが価格競争力を高めている世界の現状を認識し、原発への依存度を限りなく低減していく。

3.脱炭素社会の実現をリードし、新たな経済システムを構築する

1)日本の潜在力を引き出し、世界の最前線へ
 日本企業は、エネルギー効率化、電気自動車などの次世代自動車、蓄電池などのストレージ技術、次世代太陽光パネルや洋上風力発電など、さまざまな高い脱炭素化技術を有している。政府がエネルギー転換を実現する新たなビジョンを示すことにより、十分に活用されていない既存技術も含め、日本企業の有する技術力を活かす新たな市場が国内に生まれるとともに、世界市場でさらに大きな役割を果たす足掛かりとなる。
 また、企業が高効率のエネルギーシステムや再生可能エネルギーを選択・利用しやすい仕組みを構築するともに、国際的な評価基準の策定をリードすることも必要である。脱炭素化のルール作りに主体的に参加してこそ、日本経済が今後とも世界のバリューチェーンの中に確かな位置を占め続けることできる。

2)脱炭素化へ責任ある投融資の推進
 脱炭素化に向けてはグリーン金融の役割が欠かせないという認識のもと、エネルギー政策に金融を含める統合的アプローチが進んでいる。石炭など化石燃料への新規出資の停止や投資引き揚げ(ダイベストメント)だけではなく、内外におけるエネルギー効率化、再生可能エネルギー分野への、長期的視点に立った責任ある投融資や保険を普及し促進する政策が必要である。また、環境・社会・ガバナンスに取り組む企業を重視するESG投資が進む中で、国内外のバリューチェーン全体の脱炭素化への投資が促進されるよう、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」などが示した気候変動のリスクと機会に関わる財務情報開示の普及を促進する。
 さらに、政府開発援助における気候変動分野への資金拡大、緑の気候基金(GCF)などの気候変動関連の国際的な資金メカニズムの活用促進を途上国とともに進めることが重要である。

3)地域分散型エネルギーモデルで世界に貢献する
 地域分散型の再生可能エネルギーは、広域的なエネルギーインフラが遮断されても、電力や熱を供給することが可能であり、災害に強い地域づくりに寄与する。今後、気候変動が引き起こす自然災害の頻発が予想される中で、地域分散型再生可能エネルギーの重要性はますます高まっていく。
 日本でも2011年の東日本大震災を経て、地域に根ざした主体による再生可能エネルギー発電事業や自治体新電力などが多数生まれている。こういった動きは、地域が再生可能エネルギーの活用や省エネルギーの促進において主役となるものであり、地域外へのエネルギーコストの流出を減らし、地域を豊かにするものである。電力だけでなく、地域における再生可能エネルギーの熱利用開発も有効な方策である。
 これらをさらに促進するために、既存制度の見直しや、新たな法的枠組みの構築、人材育成やノウハウの共有といった支援を進めていく。さらにこのような取り組みを世界的に普及させるため、各国と連携し、地域分散型再生可能エネルギーの導入支援などの国際協力を推進していく。


by nonukes | 2018-02-20 10:33 | Comments(0)

  小坂正則