2018年 01月 16日
メルケル首相のブレイン、ジェレミー・リフキン氏の警鐘
ジェレミー・リフキン氏の警鐘
「原子力から脱却しないと日本は二流国に陥る」
小坂正則
昨年の暮れに12月14日号の日経ビジネス「原子力から脱却しないと日本は二流国に陥る」というネットニュースを読みました。
私はこの「ジェレミー・リフキン氏」という名前を初めて知りました。ただ、日経ビジネスのインタビューを読んでいて、この間「太陽光発電の発電コストが急激に下がって、中東では3円を切った」という話しをNHKの12月4日の「クローズアップ現在+」や12月17日の同じく「NHKドキュメント」「激変する世界ビジネス“脱炭素革命”の衝撃」という番組を見て知ったのです。この1、2年で太陽光発電の発電コストが急激に下がって、中国を始め、世界中で太陽光発電と風力発電が政府による支えがなくても爆発的に普及していて、「これはもう再エネ革命だ」と感じました。
そんな時に何と偶然にも「ジェレミー・リフキン」という方に出会ったのです。しかも、そのきっかけが日経新聞というのも奇妙な縁です。この新聞社、決して大企業の言いなりの会社ではありませんね。新規産業の育成などにもちゃんと気を配っているんですね。感心しました。
これまで様々な政府の支援で再エネを各国は導入してきました。「固定価格買取制度」によって太陽光発電のでんきなどは消費者が電気料金に課金されて、再エネを普及させてきたのです。日本でも2012年から始まって、今年で6年目です。最初は太陽光発電が1kwhが40円でしたが、来年度から24円で2019年度からは21円です。まだまだ世界に比べたら随分割高です。ドイツは10円そこそこだそうですから。
しかし、6年で半額近くまで下がったと言えば下がりました。それが世界では3円とかという価格なのです。つまり、3円だったら、もう補助金も買い取り価格の保証もいりません。火力よりも原子力よりも最低の発電コストになったのです。
これからはもっともっと下がります。そこで、これからは各家が発電所になって、みんなで発電して、その電気を送電線という公共インフラへ流して、それぞれが共有し合う社会になるのです。そこには石炭火力も原子力も参入のチャンスなどあり得ないのです。もちろん不安定な再エネですから負荷調整のためにはバッテリーや燃料電池の元である水素などが必要です。それは燃料電池自動車や電気自動車がカバーする社会が来るのです。
私が購入してさっき読んでしまった「第三次産業革命」という著書では協働型の経済と教育も分散・協働型
になるべきだと言います。もう、頭がパンクしそうでしたが、大きな感動を受けました。
みなさんもチャンスがあったらぜひ読んでみてください。本当は先に「限界費用ゼロ社会」を買って読んでいたのですが、「第三次産業革命」の方が読みやすかったから、先にこれを読みました。
ドイツのメルケル首相に呼ばれて、2005年から彼女の政策のブレーンだそうです。ドイツが2022年原発ゼロを決めたり、EUが「2030年に1990年比で二酸化炭素20%削減。省エネ20%達成。再エネ20%達成」を2007年に決めたのうです。これも彼の指導のもとで打ち出したそうです。いまドイツは2035年までに55~60%、2050年までに少なくとも80%まで再エネ率を高めるとしています。
これもみなジェレミー・リフキン氏が関わっているようです。
ジェレミー・リフキン氏
かつて半導体産業がそうであったように、再生エネの固定費はいま、指数関数的に下がっています。太陽光や風力発電の固定費もどんどん下がってきている。電力会社が20年などの長期的な電力の買い取り契約を結ぶようになり、1キロワット時(kWh)当たり4セントという場合もあります。太陽光や風力に燃料費は要りません。当然、原発や化石燃料はコストで競争できません。しかも再生エネの固定費はもっと安くなる。それを中国も欧州も分かっていて、導入を進めているのです。
英国で起きた第1次産業革命は、交通が水蒸気で変わり、蒸気で動く印刷機が生まれました。第3次産業革命はデジタル革命です。センサーを付け、データをモニタリングするIoTの上で、「コミュニケーション・インターネット」「エネルギー・インターネット」、そして「輸送インターネット」が進展します。
デジタル化してお互いが接続し、それで社会を管理し動かしていく。ネットワークに誰もが接続できるようになったことで、太陽光や風力を使って自分のところで電気を作り、余剰があったら共有する。太陽光と風力という限界費用がほとんどゼロの安いものを使えるようになるのです。
こういう社会になった時、中央集権的なエネルギーの代表である原子力はどんな意味を持つでしょうか。あるいは化石燃料で競争できるのでしょうか。限界費用がほぼゼロの再生エネを使っているビジネスと、原子力や化石燃料のエネルギーを使っているビジネスが競争できるでしょうか。
ドイツのメルケル首相は第2次産業革命のインフラを使う限り、これ以上の成長はないという私の助言を受け入れ、インダストリー4.0という第3次産業革命へとかじを切りました。脱原発政策も進めています。第3次産業革命には、新しいエネルギーのインフラが必要なのです。
第3次産業革命では生産性が上がり、環境負荷はどんどん下がり、ライドシェアや民泊などの新しいビジネスと新しい雇用の機会を生み出します。日本は電気通信、ICT、自動車、電機といろいろな産業で世界トップクラスにあり、まさにこのインフラを構築するのに必要なものがすべてある。
それなのにまだ依然として原発に頼っている。昔ながらの原子力から脱却できないということが、日本が第3次産業革命を進められない最大の理由だと思います。新しく原発を建設することは非常に愚かなことです。結局は取り残される資産になるからです。第3次産業革命のエネルギーは分散型でなければいけない。日本原子力から脱却しないと日本は二流国に陥るは早く決断を下すべきです。(ここまで引用)
「第三次産業革命」が静かに始まっている
この日経ビジネスではインターネットの発達で「シェアーエコノミー」(共有経済)が始まっているという話なども彼は語っています。民泊サービスや白タクのライドシェアーやユーチューブなど、これまでの既存のサービスから急激にインターネットによる「シェアーサービス」がどんどん広がっていることと再エネの普及は同じ価値観によってなりたっていると言うのです。そのような流れを「第三次産業革命」と氏は言うのです。第一次革命は石炭と蒸気機関の発明と普及です。その後1950年代から第二次産業革命が起こります。それは石油や天然ガスなどによる自動車などの長高重大型の化石燃料を使った産業革命です。それが50年経って、21世紀は再エネと双方向のネットによる協同型の産業革命が「第三次産業革命」というそうです。
第二次産業革命は中央集権的な巨大な原子力発電所で電気を作り、それを遠くから大消費地に送るシステムだったのです。そこでもインターネットが使われていましたが、中央で各地の消費者の動きを集中的にコントロールするための一方向のネット利用です。
ところが、これからは分散型で小規模の発電所がそれぞれがネットでつながって、それぞれがスマートコミュニティーの中で共有して、そこで余った電気を隣のコミュニティーと融通し合うというネット型の流通システムとなるのです。
オバマ政権ができて、オバマは米国南部に巨大な風車を数千本建てて、その電気をニューヨークなど東部の都市に送る計画を打ち上げていました。しかし、リフキン氏はオバマの計画に対して、「それは双方向のやり取りではなく一方向へと進める第2次産業革命の延長線でしかない」と批判していました。そのように巨大な高圧送電線で再エネといえども巨大な発電所の電気を一方向に送るのは第二次産業革命の延長線だそうです。すると、EUが進めようとしているアフリカに巨大な太陽光発電を作って、その電気をEUに送るのも良くないのかと疑問が湧いてきます。確かにアフリカ会議などはアフリカの資源の一方的な収奪だという批判もあるそうです。ソフトバンクの孫正義氏のアジアスーパーグリッド計画もそれでいくと問題なのかと思いますが、かれもそのような再エネの巨大システムが全て悪いとは言っていなようです。バランスなのでしょうか。
ただ、かれもバラ色の第三次産業革命はうまくいけばこのようになるかもしれないが、そこに行くまでには大変な道のりがあると言っていました。決してバラ色の未来がそうたやすく待っているわけでもないのかもしれません。まず、日本では「原子力ムラ」と再エネグループの激しい攻防が始まっています。22日から始まる通常国会でも自民党の原発再稼働を進める勢力と、再エネを系統に入れさせるように電力会社へ指導すべきという攻防もあるでしょうし、日立による英国原発への政府による債務保証の問題も国会で議論しなければなりません。
とにかく、私たちが気を許していたら「原子力ムラ」の勢力に足下をすくわれかねません。立憲民主党を中心に野党の全発ゼロ勢力と私たち市民が一緒になってしっかり国会内外で共にたたかいましょう。
by nonukes
| 2018-01-16 17:35
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