2017年 12月 14日
「伊方原発逆転勝利」は広島高裁野々上裁判長によるクリスマスプレゼント
「高裁が伊方原発を止める」という衝撃的な事件が起きました
小坂正則
12月13日(水)は「広島高裁で伊方原発運転差し止め控訴審の決定が出る」ということを広島の原告団長からお聞きしていました。私は大分で行われた「高レベル放射性廃棄物の地下処分意見交換会」に申し込んでいましたので、こちらを優先して広島には行きませんでした。そこで、13時30分に大分の会場で主催者代表の挨拶が資源エネ庁の九州事務所の役人が喋っていた時に、会員の方から携帯電話に連絡がありました。「小坂さん今広島高裁で仮処分に勝ったとテロップが出たよ」と。私は「そうですか。良かったですね。連絡ありがとう」と、言って切りました。その直後、広島へ代表派遣で参加した会員の森山さんから「勝った」という連絡がありました。携帯電話が次々に掛かってくるので、会場を出たら、意見交換会の取材をしていたテレビ局のNHKとOABと新聞記者がたくさん集まってきてフロアーでインタビューが始まりました。
「本日は何か行動はしないのか」と記者に問われたので「5時から街頭でビラ撒きなどの情宣活動を行います」と、答えた後、私は会場には入らずビラを作るために家に帰るころにしました。そして17時からビラ撒きを行いました。
控訴審で原発を止める初めての判断
今回の高裁決定はこれまでの司法の歴史上初めてのことです。「もんじゅ運転差し止め訴訟」では名古屋高裁で勝訴したことはありますが、仮処分で高裁決定が出たことはありませんでした。その意義は実に大きなものでしょう。
判決の主文には「阿蘇山のカルデラ噴火の可能性を十分否定する説明が四国電力の側にはできていない」という理由を野々上友之裁判長は上げています。川内原発の再稼働の鹿児島地裁決定では「カルデラ噴火は事前の兆候を九電は察知して、速やかに核燃料の搬出を行う」という九電の説明を裁判長は良しとしたのですが、今回の四電の説明には「火砕流は伊方原発までほとんど到達しないので軽微な対応でいい」という説明を行っていたようです。「カルデラ噴火の予兆を察知できるか」という問題は藤井火山学会会長が川内原発の再稼働時に「火山学会ではカルデラ噴火を察知できるとは考えていない」と、全面的に批判していたのです。しかし、前規制庁の田中委員長は「カルデラ噴火の可能性は原発が稼働中に起きるという確率は限りなく小さいので無視していい」といい、「そんなことが起これば鹿児島県が吹っ飛んでしまう程の大災害になるのだから原発事故どころではない」と言い放っていました。
しかし、規制庁には「火山影響評価ガイドライン」という審査基準があり、その中で「原発から160キロ圏内にある火山にはそこで想定される最大の噴火への対策を講じる必要がある」というのです。実は9万年前に起きた阿蘇カルデラ噴火が160キロ先まで火砕流が飛んでいったので、規制庁は160キロまでの火山対策が必要としたのです。自分がその対策が必要と言っておきながら、阿蘇カルデラ噴火のような対策が不要と言えば、規制庁の160キロ圏内の対策が必要ということに矛盾します。ですから真面目な野々上裁判長は規制庁の指示通りに「9万年前の阿蘇カルデラを想定した対策が取られていないので再稼働は認められない」という判断をしたのです。至極真っ当な判断です。
「世界中に火山は1500カ所あり、その内の108カ所が日本にある」のです。これは地震にも言えます。国道交通省の下部組織の国土技術研究センターによると、「2000~2009年に世界中で起きたマグニチュード6.0以上の地震の20%が日本とその周辺で起きている」というのですから、日本は世界一の「地震と火山の国」なのです。そんな国に原発が54基も建っているのです。これが狂気でなくて何が狂気と言えるでしょうか。台湾も日本と同じくらいの地震国です。だから原発をやめました。韓国は日本と比べものにならないくらい安定した地盤の国です。ですが、M5程度の中規模地震が原発を襲っただけで脱原発に方向転換しました。日本政府と電力会社は東日本大震災でM9.1の地震が襲ってきたのに原発を止めようとはしません。彼らによって国民は「ゆでカエル」にされているのです。
広島高裁決定は国と電力会社へ立ちはだかる大きな壁
この決定によって、伊方原発だけではなく、玄海原発の再稼働へも大きな壁となり得るし、これから、火山噴火の是非が全国の原発仮処分裁判の大きな争点となるこるとでしょう。特に火山の多い九州と北海道ではより深刻なテーマとして裁判所で争われるでしょう。
そして今朝の読売新聞に「電力会社に衝撃が走る」いう内容の記事がありました。四電は月に33億円の損害ということですから、9月までに300億円以上の損失です。また九電は玄海原発の裁判に影響があり得るし、川内原発でも新たな提訴があり得ると。そのほか全国の電力会社では40件余りの裁判が行われているそうで、それへの影響も大きいと書いていました。
これまで、「被害だけ住民」の私たちは、大分県民の声を大分の裁判長に、その判断を仰ごうという思いで裁判を行ってきましたが、滋賀県の大津市での裁判に続き、広島県の原発立地以外の県での仮処分で出されたことの意義は実に大きなものがあります。「全国どこでも原発被害住民」ということが証明されたのです。
読売新聞によると、野々上裁判長は今月末に退官だそうです。この決定は野々上裁判長による私たちへ最大の「クリスマス・プレゼント」でした。四電によると1週間内に異議申し立てを行うそうですから、今度は反動裁判長の元で引っ繰り返されることでしょう。だから9月30日までで十分です。広島ではまた仮処分を申し立てる予定だと新聞に書いていました。また異議審で引き延ばし戦術をとったとしても半年もすれば次の決定が出ることでしょうから。私たちは「負けたり勝ったり」を繰り返せばいいのです。そうすれば原発の司法リスクが高まり、原発が電力会社の経営上のお荷物となって、やがては原発を諦めざるを得なくなるのです。私たちが今たたかっているのは「原発を動かすかやめるか」ではなく、「直ちに止めるかもう少し動かすか」のたたかいなのです。「どのみち近い内には原発をやめざるを得ない」ことは電力会社の経営者たちにも分かっていることなのです。
1万年に1回の噴火など無視していいのか
この広島高裁決定は川内原発の再稼働の司法判断がはたして妥当だったのかという疑いを生じさせる判断となりました。川内原発周辺160キロ圏内には5つのカルデラ火山があるのです。カルデラ火山の噴火は1万年に1回と言われていますから、「1万年に1回の確率だったら、原発が動いている40年の間には起こらないだろう」と、素人的には考えがちですが、実はそこにこそ落とし穴があるのです。
日本には活断層が2千から3千あるそうですが、見えない活断層がその3倍はあるとも言われています。すると、約1万本近くの活断層がある計算になります。その1万本の活断層が1万年に1回動くとすると、毎年、日本列島のどこかで巨大な地震が起こっているという現実を証明することになるのです。昨年の4月4日と16日に熊本地震がありましたが、その後10月21日に鳥取で震度6弱の巨大地震が起こりました。この10年を見ても毎年ように震度5以上の巨大地震は起こっています。
それでは噴火はどうでしょうか。日本には108の活火山があるそうです。それが1万年に1度大噴火を起こすとしたら、100年に一度は日本列島のどこかで大噴火が起こることになるのです。だったら40年間運転する原発が稼働中に大噴火があってもおかしくはありません。だから再稼働の審査基準としては火山の影響は実に現実的判断材料となるのです。
1万年に1回の原発巨大事故確率
原発推進の国際組織IAEAが1988年に「既存の原子力発電所は、技術的な安全目標として、重大な炉心損傷が発生する可能性を1炉年あたり約1万分の1回以下にすることが求められる」という報告書を出しています。1万年に1回の事故確立にまで安全対策を取るようにという指針ですが、原発は最大で約500基世界中で動いていました。そして米国のスリーマイル原発事故が1979年に起こりました。それから7年目にソ連のチェルノブイリ事故が起こりました。その当時、藤田祐幸さん(故人)や平井孝治さんは「次は日本かフランスで大事故が起こるだろう」と話していました。1万年に1回の事故確率ということは、世界中の500基の原発が20年に1回どこかで大事故を起こすという確率なのです。福島原発事故はチェルノブイリから25年目でした。実に1万年に1回以上の確率で大事故が起こっているのです。次の事故が起こる可能性の大きいのはフランスか中国でしょう。だからフランスも中国も脱原発に大きく舵を切ったのではないかと私は思います。だから日本が二度と再び大事故を起こすことのないように、私たちは全国の原発再稼働を止め続けなければならないのです。
2017年12月13日広島高裁伊方仮処分NHK ニュース9
2017年12月13日広島高裁伊方仮処分テレビ朝日ニューステーション
2017年12月13日広島高裁伊方仮処分 テレ朝モーニング
by nonukes
| 2017-12-14 16:14
| 原発再稼働は許さない
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