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小坂正則の個人ブログ

世界の流れに取り残されたトヨタが倒産する日はくるか?

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写真はテスラ社製 電気自動車モデル3

自動車のパラダイムシフトが世界を襲っている
小坂正則

日本人が世界に誇る唯一の会社と言っても過言ではない、世界一の自動車メーカ・トヨタが今大変な危機に直面しているのです。それが今日のテーマである「トヨタが倒産する日」なのです。もちろん株価も順調ですし、「町の修理工場が軒並み姿を消してしまった」と言われるほど、トヨタを筆頭に日本車は故障しません。ショッピングに出かけると、駐車場の三分の一はプリウスかアクアというように文句なしの大衆車として売れに売れているトヨタ車ですし、円安で高収益を上げ続けています。ところが大きくなり過ぎたことで、絶滅した恐竜のような課題がいまトヨタに突きつけられているです。それが自動車のパラダイムシフトです。化石燃料から再エネの転換は誰もが信じられないほど急激な早さで世界を襲っているのです。トヨタの読みはガソリン車からハイブリッドは見事に読みは当たりましたが、ハイブリッドが、この先5年は続いて、その後、燃料自動車へ移行して10年先くらいに初めて電気自動車へ移行すると思っていたのが、5年もしないで一気に電気自動車へ世界の流れが急激に変化しているのです。一度変化が始まれば、倍々ゲームで加速度的に進んで行くのです。残念ながら、2020年に電気自動車を初めて売り出すというトヨタの計画は米国テスラの2周回遅れの状態で、その遅れを果たして取り戻せるでしょうか。確かにトヨタはプラグイン・ハイブリッドという電気で動く自動車も出していますが、電気で動く距離は僅か68キロしかありません。
トヨタがハイブリッド車プリウスを世に出したのが1997年です。それから20年間もその基本構造は変わっていません。エンジンにそれを補佐するよういな電気モーターが稼働するのです。しかし、少なくとも駆動の主役を逆転してモーターで動かして、電池が少なくなったらエンジンで電池を充電するくらいのことはとっくの昔に作っていなければならなかったでしょう。そうすればエンジンも小さくできるし、シャフトも軽量化できて、その分バッテリーをたくさん搭載できたのです。エンジンをだんだん小さくしていけば完全な電気自動車が完成できたのです。
太陽光発電の普及でバッテリーの需要が高まり、パソコンが毎年倍々ゲームのように性能は2倍で価格は半分とい状況がバッテリー業界を襲っているそうです。リチウムイオン電池の大量生産でバッテリーの性能と低価格化が止まらないのです。

新型リーフは自動運転と走行距離550キロ?

日産はこの秋に新型リーフを販売します。予定では2018年の発売開始だったのが、米国テスラに先を越されてしまい、このまま悠長なことをやっていては社運が危ないと、1年前倒しで、自動運転と1度の充電で550キロ走行する電気自動車のリーフを販売するという噂です。価格も270万円から400万円といいますから、プリウスを意識した価格のようです。今販売されているリーフが280キロ走行ですから、一機に2倍の距離を走るようになれば、プリウスからリーフに流れるお客が後を絶たないのではないでしょうか。
エコカーと言えばプリウスという常識がこの秋からエコカーはリーフと言われるようになるかもしれません。それにしても電気自動車までの橋渡しと言われていた「燃料電池自動車」は見る影もなくなってきました。バッテリーの価格と性能の向上が予想以上に進んだ結果、このような見誤りが起こったのです。ちなみに一度倒産の危機を経験した日産は「燃料電池自動車」には手を出さず、電気自動車1本で進めた結果が吉と出たのでしょう。
同じように米国のテスラモーターは2004年に立ち上げて、これまで黒字を1度も出したことがない会社ですが、株価はGEを抜いたこともある優良企業にのし上がったのです。そんなテスラをトヨタは2010年にテスラの株を買って業務提携までしたこともあったのですが、「トヨタがテスラを買収か」と、一時は噂されたこともあったのですが、相手が大きくなりすぎてトヨタの言うことを聞かなくなってしまって、今年トヨタは全株を売り払ってしまいました。さっさと買収して子会社化していたら、トヨタは電気自動車の世界でもトップを走ることが可能だったでしょう。

一歩間違えば市場から見放されてしまう激烈な競争社会

東芝が倒産の危機に陥ってることは皆さんご存じの通りですが、その原因は米国の原発企業ウエスティングハウス社の買収にありました。それはエネルギー・パラダイムシフト(エネルギー需要の劇的な変化)を見誤ったことに大きな原因があったのです。10年先、20年先の需要を読み誤った経営者責任です。原子力で儲かっている時には、「このままの状態がいつまでも続いてほしい」と、誰しも願うものです。しかし、いま絶頂期の産業はやがては新興勢力に駆逐されるものなのです。1926年、豊田佐吉発明のG型自動織機を製造するため、豊田自動織機として生まれた会社が、社長の道楽で自動車を作ったことから、現在のトヨタが生まれたと言われてます、織物世界が一世を風靡していた時に次の時代を読んで自動車会社へと変貌を遂げたのです。そこには確実に時代のトレンド(風潮)が吹き始めていたのでしょう。それでは現在のトレンドとは何か。それは「地球温暖化対策」であり、「再エネ利用」が大きなエネルギーパラダイムシフトであることは誰でもが知っている周知の事実なのです。これに逆らって、原発推進を掲げる安倍政権のように「時計の針を逆に回そう」としても、どだい無理なことなのです。所詮、時代に取り残されて、東芝の社員のように路頭に迷うことになるだけなのです。

エネルギー・パラダイムシフトが電気自動車の背中を押した

7月6日、フランスのマクロン大統領は「2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する」と発表しました。30年後にはフランスからガソリン車もディーゼル車も姿を消す可能性があるのです。しかし、ドイツでは2030年にガソリン車撤廃の法案が上院で可決したそうです。EU・ヨーロッパでは米国トランプ大統領が「地球温暖化対策に後ろ向き」を積極的に利用してEUが環境政策で世界の主導権を得ようとしているのです。環境技術などの世界標準を先取りできれば、その仕組みが世界中で商品化されて莫大な利益を得ることができるからです。それが「再エネの拡大」や二酸化炭素排出ゼロの「電気自動車」社会なのです。政治が一定の方向性を示したら、企業はそれに向かって加速度的に投資と開発を集中させます。それが「CO2ゼロをめざす社会」の実現なのです。
そして、そのためのエネルギーが「再エネ」です。そして、現実的にもこの数年で起きている再エネの中心は太陽光発電なのです。IRENA(国際市営可能エネルギー機関)が2016年4月に発表した再エネ導入状況では2015年末時点で対前年比8.3%の伸び率なのです。これが今年ではまだまだ高くなっていることでしょう。特に伸び率の大きい国は新興国です。中南米が14.5%、アジア12.4%。北米が6.3%や欧州が5.2%と比べて新興国の伸び率が大きいのです。化石燃料代を節約できる再エネの魅力がこのようなリープフロッグ現象(一足飛びの発展)を引き起こしたのでしょう。

電気自動車と再エネの関係とは?

さて、電気自動車とエネルギーパラダイムシフトがどんな関係があるのかとお思いのかたもしるでしょう。これが大きく密接な関係があるのです。テスラ社は昨年、家庭用太陽光発電の電気を貯めるためのバッテリーをの販売開始しました。しかもこれまでは1セットが600万円から300万円もしたバッテリーですが、国の補助政策などもあり、低価格化が進んで、京セラ7.2kwや東芝7.4kwが120万円程度と価格も下がってきました。しかし、テスラは7kwhが36万円。10kwhが42万円、14kwhでも61万円という破格で販売を開始したのです。電気自動車の価格の2/3は電池の価格と言われています。ですから、家庭用のバッテリーなどの大量生産でリチウムイオン電池の生産コストを下げるためにテスラは大胆な価格破壊を行ったのでしょう。これまでのテスラ社の製電気自動車モデルSの走行距離は600キロ以上走るのですが、価格の高くて800万円から1千万円もしたのですが、2017年モデル3の価格は約400万円(350万ドル)で今年の4月に予約が40万台を突破したということです。この数字は冷やかしの予約などではありません。予約金約15万円を前払いしなければ予約できないからです。日産リーフが売れていると言ってもこれまでの累計販売台数は27万台です。その2倍近くの予約をテスラのモデル3は1回で獲得したのです。0~100km/hが5.9秒というとてつもない加速性能で、1回の充電で340キロ以上走るそうです。ちょうど太陽光パネルが2010年から16年までに生産コストが80%下がったと言われることと同じ現象が起きて、電気自動車の製造競争がバッテリーの価格低下をも招いたのでしょう。ちなみにテスラのバッテリーを作っているのはパナソニックです。

太陽光発電と電気自動車は共存共栄の関係

電気自動車が普及すればそれだけ電力需要が増えて、「それこそ原発が必要になる」と安倍政権は浮き足立つかもしれませんが、そんなことにはありません。それはむしろ逆です。太陽光発電が増えるとどうしても負荷変動をカバーするためにバッテリーが必要になるのです。そしてバッテリーが増えれば価格が下がり電気自動車の価格が下がり、電気自動車の価格が下がればまたたたバッテリーと太陽光パネルの価格も下がりお互いに生産量の拡大でコストが下がってくるのです。
日経ビジネスによると、欧米では電力会社から電力を買うよりも自前の太陽光発電で作った電力の方が割安になったといいます。これをグリーッドパリティー現象と言うのですがこれまで太陽光発電などの再エネに対して補助や固定価格買取などの優先政策をとってきたのが、もうその必要がないまでに太陽光発電のコストが下がったそうなのです。だから米国では原子力はシェールガスにも太陽光発電にもかなわなくなって潰れていったのです。
太陽光発電は不安定な発電のため、政府や電力会社は「太陽光発電はもうこれ以上増やせません」と、よく言います。しかし、その負荷変動はバッテリーがカバーします。そして、サラリーマン家庭の自動車利用率は僅か5%そこそこだそうです。地方のサラリーマンは通勤でマイカーを使う人もいますが、都会のサラリーマンは週末しかマイカーを使いません。ですから5%なのでしょう。つまり、電気自動車ユーザーのマイカーはコンセントにつなぎっぱなしで電気自動車のバッテリーは太陽光発電の負荷調整の役目をやってくれるのです。だから電気自動車の電気は太陽光発電で賄い、電気自動車が太陽光発電の負荷変動をカバーするという共存共栄関係が成り立つのです。
トヨタ自動車が1日も早く電気自動車へシフトできることを私は願っています。
そのほかにも部品納入の関連子会社との関係や販売店との共存関係がテスラのような徹底したネットを利用したアフターサービスを行うことができない理由など、トヨタが小回りが利かない理由など上げればまだまだあるのですが、紙面の都合で、この辺で終わります。
by nonukes | 2017-07-19 17:36 | Comments(0)

  小坂正則

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