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小坂正則の個人ブログ

道番組の中身にまで介入する安倍政権と、屈服したテレ朝

道番組の中身にまで介入する安倍政権と、屈服したテレ朝
マスコミ人は安倍晋三の介入からテレビを守れ!

小坂正則

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マスコミを黙らせて強権政治を行う官邸

 3月27日のテレ朝の報道ステーションで、元経産省官僚の古賀茂明氏が番組の中で「私は菅官房長官からバッシングを受け続けてきました。その結果、テレ朝の早川会長によって降格されたため、今日が最後の番組です」と、爆弾発言を行ったことから週刊誌だけではなく、マスコミを巻き込んでの大騒動になったのです。
 そして、これまで自民党や官邸が行ってきた一連の報道番組への介入の実態が明らかになってきました。このような介入がなぜ行われているのかといえば、明らかに今年はこれまでのような政治の世界の流れから大幅に変わって、猛スピードでこの国の進路が変わるからでしょう。それは集団的自衛権の行使容認や日米ガイドラインの変更で自衛隊法を何本も改正する作業を連休明けから短期間で強行することや、原発再稼働など、官邸主導の強行策が目白押しなのです。そのため、報道番組による政権批判をできるだけ事前に押さえておこうという安倍政権のマスコミ工作が昨年の暮れ時分から着々と実施されてきたのでしょう。

官邸支配とテレ朝の屈服が3月27日に暴露

 自民党は昨年暮れの総選挙前の11月20日に、在京テレビ局各社に「選挙報道の公平中立」などを求める要請書を渡していました。このこと自体も大変な問題ですが、それとは別に以下のような要請書をテレ朝へ送っていたのです。(以下は毎日新聞4月10日記事です)
 要請書は衆院解散後の昨年11月26日、自民党衆院議員の福井照報道局長名で出された。同月24日放送の「報道ステーション」について、「アベノミクスの効果が、大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないかのごとく、特定の富裕層のライフスタイルを強調して紹介する内容」だと批判。「意見が対立している問題は、できるだけ多くの角度から論点を明らかにしなければならないとされている放送法4条4号の規定に照らし、特殊な事例をいたずらに強調した編集及び解説は十分に意を尽くしているとは言えない」として「公平中立な番組作成に取り組むよう、特段の配慮を」求めている。(ここまで引用)
 これほど露骨な報道介入を行っていたことに対して、これまでテレ朝は何事もなかったかのように沈黙していたのです。この介入は放送法4条4号を盾にして、「放送免許」という「伝家の宝刀」をチラつかせて脅迫する、まさに「国家権力による直接介入」以外の何ものでもないでしょう。発言内容はこうです。「一部の富裕層に恩恵は及んでいるが、中小企業の中所得層、低所得層は恩恵を受けていない」と言った朝日新聞社の江村発言を「放送法第4条4号」違反と批判することが通れば、これからはアナウンサーやコメンテーターの発言原稿をいちいち官邸に事前に見てもらってチェックを受けなければ番組を作ることが出来なくなるのです。
 こんなことやっている国は北朝鮮くらいでしょうし、「放送法4条4号」とは「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」(条文)は「できるだけ」とあるように、具体的なことを規定しているものではなく、「様々な意見を盛り込むように努力しなさい」という努力義務として「精神的な意味での心得」を言っているのです。小学校の校長が「皆さん仲良くしましょう」や「しっかり勉強しましょう」と言うようなものです。
 それよりも安倍晋三には放送法第三条(放送番組編集の自由)「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」というこっちの方に、「明らかに官邸は違反していることを自覚しなさい」と言っても無理でしょうけどね。憲法を学んでいないそうですから。

アベノミクスの恩恵は受けてないことを実証

 4月17日の毎日新聞1面トップに「安倍政権下で格差拡大」という大見出しで、その実体が報告されています。「全国1741市区町村の納税者一人当たりの年間平均所得についての格差の度合いを示す『ジニ係数』を年ごとに求めたところ、2013年に係数が上昇し、格差が広がったことが毎日新聞の調べで分かった」というものです。円安政策などで株価が上昇した恩恵は一部の株主の所得は上がったし、大企業の賃上げは実施されたが、中小企業や地方の住民まで、その恩恵は広がってはいないのです。毎日のコメントにも「資産所得や株売買などによる所得で、アベノミクスの当然の帰結だ。株式保有者がいる地域がより豊かになり、現状ではトリクルダウンが働いていない。資産所得への課税強化などをしなければ格差は拡大する一方だが、政権にその姿勢は見えない。「地方創生」を言うなら地域間格差の是正策を考えなければならない」(神野直彦:東大名誉教授)と、厳しく批判しています。アベノミクスは円安で消費者の日々の生活は苦しくなって、3%の株保有者には莫大な資産が転がり込んできて、その資産への課税も大幅に減税しているのが実態なのです。
 つまり、11月24日にテレ朝で話した朝日新聞の恵村順一郎論説委員の発言はまったく真実を語ったのであって、それを「事実誤認や誤った報道」と指摘する方が事実誤認だったのです。この誤った安倍首相の発言はTBSでもありました。11月18日のニュース23で安倍晋三は街頭インタビューで多くの方が「アベノミクスの恩恵を私は受けていません」と言ったのに対して、「これはおかしいではないですか」と、番組の編集方法が意図的だと批判をしていたのも間違っていたのです。ただ、このような国民生活全体からみたら、様々な声があって当たり前なのですから、それらを番組の意図で編集報道することこそが「報道の自由」そのものなのです。

テレ朝とNHK自民党に屈服して事情聴取

17日に自民党の情報通信戦略調査会がNHKとテレ朝の幹部を党本部へ呼びつけて、NHKの「クローズアップ現代」とテレ朝の「報道ステーション」で古賀茂明氏が発言したことを取り上げて、元厚生労働相の川崎二郎会長は「真実が曲げられた放送がされた疑いがある」と述べ、これらの番組編集は放送法に触れる可能性があると発言したそうです。
今回の自民党が行った、マスコミ幹部を党本本部へ呼びつける行為自体が放送法第3条の「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」に対する違反行為です。また、第1条の2では「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること」とあるように、この法律の目的は戦前の戦争賛美の報道への反省から「事業者自らが自律的な編集や報道を行い、そこにへ権力による介入を決して許してはならない」という趣旨で作られた法律なのです。自ら進んで自民党へ足を運ぶテレビ局幹部も実にだらしない。なぜなら、呼びつけられたことを自局番組の中で「それがいかに違法で言論への介入であるか」と反論すべきだからです。呼ぶようも呼ぶ方ですが、そこにのこのこ行く方も行く方です。この両放送局はどうしようもないほど完全に安倍官邸に屈服してしまったことを国民の前にさらけ出したのです。その結果を示すように「報道ステーション」の視聴率は、これまで各報道番組の中ではトップを独走していた高視聴率が3月27日の事件以来一気に降下しいるそうです。

テレ朝の報道ステーションが安倍に屈服しても
TBSニュース23の岸井氏は頑張っている


 国境なき記者団による「世界の報道自由度ランキング」で日本はなんと世界53位だそうです。「2001年には180カ国中26位が、民主党政権時代の2010年に11位まで順位を上げたが、その後は年々、下げた。東日本大震災と福島原発事故があった後の2012年、一連の情報隠し批判や特定秘密保護法などにより、一挙に61位まで順位を落とした。韓国よりも下位」だそうです。ガイアナやドミニカ共和国と肩を並べているそうですから、それほど日本の報道は世界から信用されていないのです。イタリアの次に先進国で最低から2番目です。このままでは中国176位、北朝鮮179位にも負けてしまうかもしれません。報道の自由度は言論の自由度と同じです。私たちは日本に住んでいると「日本は割と自由だ」と思っているかもしれませんが、世界からは決してそのように見られてはいようです。
 でも、まだ頑張っている番組もあります。4月16日のTBSニュース23で岸井成格キャスターがテレ朝の『報道ステーション』とNHKの『クローズアップ現代』の関係で自民党が事情聴取を行うということなどに対して厳しく批判する発言をしていました。テレ朝の古舘氏がずっこけてしまった今では、テレビでは岸井さん一人が頑張っているような感じです。また、NHKの『クローズアップ現代』も籾井会長の嫌がらせにも耐えて、原発事故や格差の実態など積極的な調査報道を行っています。今回、やらせ番組製作事件の影響で、この長期番組をやめさせようという動きがNHK内部であるそうです。このように数少ない調査報道や政権批判が自由にできる健全なジャーナリストの活動を私たちは支えなければなりません。
 残念ながら安倍政権の暴走を止める力は国会にはもうありません。今国会で決められる「戦争法案」は時間切れで自動的に官邸の案が全て通ることでしょう。それをくい止める力はマスコミと世論の力だけです。世論の力と良心的なマスコミと数少ない野党の力で安倍政権の暴走を食い止めるためには、私たちは諦めずに声を出し続けるしかないのです。

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NHK、テレ朝 抗議なく受け入れ 自民が事情聴取
東京新聞2015年4月18日 朝刊


報道番組でやらせが指摘されたNHKと、コメンテーターが官邸批判をしたテレビ朝日の関係者から十七日、自民党の情報通信戦略調査会が事情を聴いた。「政権からの圧力」とも指摘される中で、なぜ両局は事情聴取に応じたのか。有識者らからは、自民党への批判だけでなく、テレビジャーナリズムの危機を指摘する声も出ている。 (鷲野史彦、安藤恭子、森川清志)
 東京・永田町の党本部で開かれた調査会。冒頭のあいさつで、元厚生労働相の川崎二郎会長は「真実が曲げられた放送がされた疑いがある」と述べ、「報道は事実をまげないでする」などと定めた放送法を聴取の根拠に挙げた。百人超の報道陣が詰め掛ける中、その後は非公開となり、テレ朝の福田俊男専務から約三十分、NHKの堂元光副会長から約十分、それぞれ話を聴いた。会合後、報道陣から圧力ととらえるかを問われた福田専務は「誤解があったら困る」と明言を避け、堂元副会長はほぼ語らずに立ち去った。
自民党は三月二十七日の「報道ステーション」に出演した元官僚の古賀茂明氏が、自身の降板をめぐり「官邸の皆さんからバッシングを受けてきた」と発言した内容の真偽を、テレ朝の聴取の対象とした。
これに対し、テレビの情報番組などでコメンテーターを務めるジャーナリストの青木理(おさむ)さんは「テレビ局の許認可権は総務相が握っている。与党に呼び付けられる行為自体が、脅しているという圧力になるんじゃないか」と指摘する。
テレビ局は公共の電波を使うことから、総務相から五年に一度、放送免許の更新を受けなければならない。放送法に違反した場合、一時的な停波や免許取り消しも電波法で定める。
メディア倫理が専門の大石泰彦・青山学院大教授は、今回の自民党の対応について「放送法の一部の規定を取って聴取の理由としているようだが、政治権力の介入を認めないという本来の放送法の精神から外れている」と批判する。
同法は一九五〇年に公布。一条や三条には、戦時中の教訓から、自律などの保障による表現の自由の確保や、何人からも干渉されない、といった規定が並ぶ。
大石教授は古賀発言をめぐり、政権を監視するべきメディアと、政権との緊張関係に、視聴者の疑念が広がっているとみる。
「テレビ局は聴取に応じる前に、放送法の精神に照らして抗議するべきだ。圧力に屈し、さらに非公開で聴取を受けてその内容も自ら明らかにしないとなればテレビジャーナリズムへの信頼を失い、存亡にも関わる事態だ」と問い掛ける。
青木さんも、こう懸念する。「自分は番組の現場で、政権批判をやるな、と直接言われたことはない。でも慎重にいきましょうね、という雰囲気は、テレビ局内に確かにある」
by nonukes | 2015-04-19 12:17 | マスコミと原発 | Comments(0)

  小坂正則

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