2014年 11月 20日
『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』を読んで考えた
『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』を読んで考えた
小坂正則
普天間飛行場と宜野湾市の周辺
辺野古基地周辺の豊かな海
先日、私の友人のO女史から「『日本なぜ‥』はおもしろい本よ。ネットで1/3は無料で読めるのよ」と教えられました。私は何の気なしに、少しだけネットで読んだのだけどやはり買って読むことにしました。なぜ沖縄にこんなに米軍基地が多いのかということが書いてあって、よく言われる、「日本の国土の0.5%の沖縄に74%の米軍基地がある」ということや、沖縄県の実に18%が米軍基地やその関連施設だということに、私は改めて「基地の中の沖縄」ということを考えさせられました。
そして、普天間基地はまさに宜野湾市の中心市街地のまっただ中にあって、米軍機が低空飛行を繰り返しているというのに、米軍機が全く飛行しない空域があるといいます。それは米軍の家族などが暮らすキャンプ上空なのだそうです。米国の法律では米国民の暮らす上空を米軍機が低空飛行することは許されていないそうだから、米国兵士の家族にとっては、米軍機が上空を飛ばないことは当たり前の権利だったのです。しかし、日本国民にはそんな権利はない。沖縄県民は日米安保条約と地位協定によって、米軍兵士の性犯罪差などに対して、犯人は米国へ送られて、無罪になるという差別的な対応を取られてきたのです。そんな差別的な犯罪捜査は沖縄だけのことではないのだけど、何せ日本の大半の基地が沖縄に集中しているのだから犯罪も多いのです。
先日行われた沖縄県知事選挙で翁長知事が誕生したことは辺野古への米軍基地建設にNOの答えを出した素晴らしい結果だったし、沖縄県民の米軍基地撤去を求める怒りの現れなのだと思います。また、沖縄県民のほっぺたを札束でひっぱたくような日本政府のやり方に対して、翁長新知事の言葉を借りれば「保革の対立を越えて、この闘いは沖縄県民のアイデンティティーの勝利だ」と、いうことにつきます。本土の私たちはこの結果を重く受け止めなければならないのです。
安倍政権や官僚の一方的な沖縄に基地強制する政治はおかしいと思うが、「じゃあ米軍基地の負担を誰が受け入れるのか」と問われたらどこでも受け入れに同意する地域はないだろうと思います。
日本国憲法を上回る日米密約の裏憲法がある
「普天間基地の移転先は海外か最低でも県外」を公約に掲げて誕生した鳩山政権は沖縄県民に夢と希望を与えてくれました。そして鳩山首相は普天間の移転先に鹿児島徳之島を考えていて、2010年4月6日に外務官僚と防衛官僚を秘密裏に官邸へ呼んで、打ち合わせを行ったというのです。そして鳩山首相は「この情報だけは絶対に外に漏らすなよ」と念を押した翌日には朝日新聞の夕刊一面に秘密会合の中身がすっぱ抜かれたそうです。彼らは鳩山首相よりも米国に忠誠を誓っていたのです。「鳩山首相は悔しくてしょうがなかった」そうです。民主党が自民党政権を倒した時の民主党の党首は小沢でした。その小沢は東京地検によって政治資金規正法で摘発されて結果は無罪だったのに、党首を辞めたため小沢首相は誕生しませんでした。米国は小沢氏を嫌っていたため、検察官僚は小沢氏を失脚させたのです。敗戦後は米国CIAから多額の政治資金が自民党へつぎ込まれたそうです。また社会党を分裂させて、民社党を作ったのもCIAだといわれているのです。全学連の学生運動にもCIAの資金が流れていたそうです。つまり、日本の戦後政治には陰に日向にCIAの資金と政治工作が大きな影響力を与えていたのです。ですから今日でも日本の官僚や、自民党の国会議員の大半は「何が何でも全ては米国のための政治を行う」という考えなのです。
米国内では飛行禁止のオスプレイが日本中どこでも自由に飛べて、総理大臣も「日本の民家の上は飛ばないでくれ」とは言えないのです。それは日米地位協定や密約で「米軍の行動の自由は日本国憲法を上回る」からなのです。
まだあります。有事の際には日本の自衛隊の指揮命令権は米軍に帰属するという密約があるそうです。「その密約を表の法律にするために、集団的自衛権の行使を安倍政権は実行しようとしている」と、筆者はいいます。
民主党の「2030年代に原発ゼロ」も米国によって潰された
それでは原発はどうなのか。「日米原子力協定は米軍基地を日本に差別的に押しつけていいる日米地位協定とそっくりな法的構造を持っている」と筆者はいいます。つまり「「廃炉」とか「脱原発」とか、日本の政治家がいくら言ったって、米軍基地の問題と同じで、日本側だけでは何もきめられないようになっているのです。条文を詳しく分析すればアメリカ側の了承なしに日本側だけで決めていいのは電気料金だけだ」と言うのです。「2012年9月に野田政権崩壊の直前に民主党のエネルギー政策を閣議決定しようとして、9月5日に外務省の藤崎一郎駐米大使が米国エネルギー省のポネマン副長官に会って、翌6日に国家安全保障会議のフロマン補佐官に面会し、政府の方針を説明したところ、「強い懸念」を表明され、その結果、19日の閣議決定を見送らざるを得なかった」というのです。日本の決定的な政治的方針は全て米国の了解を取り付けなければ、自分たちだけでは意思決定は出来ないのです。このような状態を独立国といえるとは私は思いません。私にいわせれば「日本はいまだに米軍の占領国だ」と思います。
だから、民主党の失敗を轍にして安倍政権は原発の再稼働や原発を海外に売り歩こうとしているのでしょう。ただ、米国が安倍政権に対して全幅の信頼を寄せているわけではないでしょう。要は米国の一番の目的は米国の利益を優先すればいいのです。米国が日本を守ってくれるなどというのは幻想です。米国にとって日本よりも中国の方が政治的にも経済的にも大きなウエートを占めているでしょう。
ソ連が崩壊して東西冷戦構造が壊れてしまって、共産主義の恐怖がなくなった今、日本を共産主義の防波堤にするという米国の世界戦略は終わって、また、中国の軍事力の増大に比較して米軍が世界の警察として振る舞う力が弱まったいまは日本の自衛隊に米軍の肩代わりをさせようとしているのだと思います。そのためにも集団的自衛権の行使が米軍にとっては必要なのでしょう。
憲法9条の欠陥などの指摘はちょっと私には荷が重すぎるかも
この著者の矢部宏治氏がこの書籍で訴えたかったことは、日本国憲法9条の欠陥を指摘しているのです。そのために昭和天皇の敗戦直後の政治的な駆け引きなどを米国の公開された文章などからひもといています。そこのところもかなり興味を持って読めるところなのですが、ここでは省略します。日本は敗戦国です。そして国連とは戦勝国が集まって敗戦国の後始末を行うために作った国際組織です。だから日本は「敵対国」として規定されているのです。だから敵対国の自由は規制されているのは当たり前なのです。そして日本国憲法は米軍のマッカーサーが部下に命令して作らせた憲法です。私には誰が作っても中身がよかったらそれでいいのですが、筆者は誰が作ったかが重要だといいます。そして、9条の一項は国連の理想を掲げたもので、二項「陸海空、その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」は敗戦国の再軍備化をさせないために米国が作った再軍備禁止条項だというのです。私もこの二項は実際には矛盾するとは思います。一切の戦力を保持しなくて、交戦権を認めないというのは自衛隊の軍備を認めないからです。
ここで、フィリピンの取った選択が大いに参考になると私も以前から思っていました。筆者もフィリピンを参考にすべきだといいます。フィリピンも素晴らしい憲法を持っているそうです。
フィリピンは国家の政策を推敲する手段としての戦争を破棄し、広く認められた国際法の原則を自国に法の第一部として取り入れ、全ての国との平和、平等、正義、自由、協力、友好という政策を堅持する(1987年フィリピン共和国憲法第二条第二項)
確かにフィリピン政府は南沙諸島で中国が複数の浅瀬の埋め立てを拡大し大がかりな建設工事を進めていることに対してフィリピン軍は軍事的な衝突を避けて、遠巻きに警戒警備を行っているだけです。そして話し合いによる解決を模索しています。しかもアキノ政権は米軍基地を国内から完全撤退させたのですから、日本政府が見習うべき素晴らしく賢い政府です。今回、中国の威嚇に対抗するために米軍基地の駐留を認めたが、それとて、フィリピン政府が出て行けと言えば米軍はいつでも出ていかなければならないし、駐留のために米軍は多額の土地利用料をフィリピン政府に支払わなければならばならばいというのです。日本と比べものにならないほど賢いフィリピン政府の選択でしょうか。金をもらって、米軍に中国軍の警戒と警備をさせているのですから。
天皇制は今後どうあるべきか
あとがきで、筆者は「私は政治的には中道・リベラル派の人間で、現在の明仁天皇、美智子皇后のおふたりに対しては、大きな尊敬の念を持っている」といい、「沖縄、福島で起きている重大な人権侵害、官僚や政治家たちによる立憲主義の否定に、間接的ながら、はっきりと遺憾の念を公式に表明されているのは、国家の中枢においてはおふたりだけだからです」と言っています。また、11月16日に孫崎さんの講演を聞きました。そこで話されたのですが、「昨年の12月23日の天皇誕生日の会見で明仁天皇は「戦後日本は平和と民主主義を守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いております」と言ったのです。しかし、NHKは「平和と民主主義を守るべき大切なものとして、日本国憲法をつくり」を削除して伝えていたそうです。集団的自衛権の行使や憲法改正などによって戦前の全体主義国家へこの国を変えようとしている安倍政権の企てに先頭で反対しているのは明仁天皇だ」という孫崎さんの意見に、私も同感です。だから私は現行の天皇制には賛成です。私は学生の頃は「天皇制は廃止すべき」だと考えていました。でも今はちょっと違います。「皇室の民営化」を唱えています。イギリスのように宮内庁を民営化して、自力で皇室を運営するのです。皇居見物料金を取ってもいいでしょうし、伊勢神宮の拝観料を取ってもいいでしょう。雅楽などもお金を取って見せればいいし、皇室のペンダントやマスコットも売り出せばいいでしょう。そして、天皇が神ではなく人間なのだから、人権を与えなければならないと思うのです。筆者は宮内庁の民営化は唱えてはいませんが、天皇に人権を与えるべきだとは言っています。私も天皇に参政権も与えるべきだと思っています。とはいっても、被選挙権を与えると天皇の国政との関係が壊れるので、選挙権だけを与えればいいのです。そして、投票日には国民に向かって天皇が訴えるのです。「有権者の皆さん。投票には行きましたか。投票は国民の権利であり義務なのですよ。あなたが投票に行かなければ民主主義は守れないのですよ。まだ投票に行ってない方は今からでも投票所へ行って、誰かに投票しましょう」と言ってもらうのです。そして、住居の自由や就職の自由や結婚の自由も与えるのです。それによって初めて日本の近代的な天皇制がより自由で民主的になり、国民の信頼も一層高くなり、天皇制も長く続くことでしょう。
まあ、どっちにしても読み応えのある書籍です。一朝一夕に読める本ではありません。さらっと読むだけなら読めるかもしれませんが、中身を理解するには、私は10年かけてこれから読みこなしていこうと決意しました。皆さんもぜひ一回お手にとって読んでみてください。
日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか
矢部宏治・著
定価¥1,200(本体)+税
発売日2014年10月24日
発行集英社インターナショナル(発売:集英社)
ISBN978-4-7976-7289-3
判型四六判
小坂正則
普天間飛行場と宜野湾市の周辺
辺野古基地周辺の豊かな海
先日、私の友人のO女史から「『日本なぜ‥』はおもしろい本よ。ネットで1/3は無料で読めるのよ」と教えられました。私は何の気なしに、少しだけネットで読んだのだけどやはり買って読むことにしました。なぜ沖縄にこんなに米軍基地が多いのかということが書いてあって、よく言われる、「日本の国土の0.5%の沖縄に74%の米軍基地がある」ということや、沖縄県の実に18%が米軍基地やその関連施設だということに、私は改めて「基地の中の沖縄」ということを考えさせられました。
そして、普天間基地はまさに宜野湾市の中心市街地のまっただ中にあって、米軍機が低空飛行を繰り返しているというのに、米軍機が全く飛行しない空域があるといいます。それは米軍の家族などが暮らすキャンプ上空なのだそうです。米国の法律では米国民の暮らす上空を米軍機が低空飛行することは許されていないそうだから、米国兵士の家族にとっては、米軍機が上空を飛ばないことは当たり前の権利だったのです。しかし、日本国民にはそんな権利はない。沖縄県民は日米安保条約と地位協定によって、米軍兵士の性犯罪差などに対して、犯人は米国へ送られて、無罪になるという差別的な対応を取られてきたのです。そんな差別的な犯罪捜査は沖縄だけのことではないのだけど、何せ日本の大半の基地が沖縄に集中しているのだから犯罪も多いのです。
先日行われた沖縄県知事選挙で翁長知事が誕生したことは辺野古への米軍基地建設にNOの答えを出した素晴らしい結果だったし、沖縄県民の米軍基地撤去を求める怒りの現れなのだと思います。また、沖縄県民のほっぺたを札束でひっぱたくような日本政府のやり方に対して、翁長新知事の言葉を借りれば「保革の対立を越えて、この闘いは沖縄県民のアイデンティティーの勝利だ」と、いうことにつきます。本土の私たちはこの結果を重く受け止めなければならないのです。
安倍政権や官僚の一方的な沖縄に基地強制する政治はおかしいと思うが、「じゃあ米軍基地の負担を誰が受け入れるのか」と問われたらどこでも受け入れに同意する地域はないだろうと思います。
日本国憲法を上回る日米密約の裏憲法がある
「普天間基地の移転先は海外か最低でも県外」を公約に掲げて誕生した鳩山政権は沖縄県民に夢と希望を与えてくれました。そして鳩山首相は普天間の移転先に鹿児島徳之島を考えていて、2010年4月6日に外務官僚と防衛官僚を秘密裏に官邸へ呼んで、打ち合わせを行ったというのです。そして鳩山首相は「この情報だけは絶対に外に漏らすなよ」と念を押した翌日には朝日新聞の夕刊一面に秘密会合の中身がすっぱ抜かれたそうです。彼らは鳩山首相よりも米国に忠誠を誓っていたのです。「鳩山首相は悔しくてしょうがなかった」そうです。民主党が自民党政権を倒した時の民主党の党首は小沢でした。その小沢は東京地検によって政治資金規正法で摘発されて結果は無罪だったのに、党首を辞めたため小沢首相は誕生しませんでした。米国は小沢氏を嫌っていたため、検察官僚は小沢氏を失脚させたのです。敗戦後は米国CIAから多額の政治資金が自民党へつぎ込まれたそうです。また社会党を分裂させて、民社党を作ったのもCIAだといわれているのです。全学連の学生運動にもCIAの資金が流れていたそうです。つまり、日本の戦後政治には陰に日向にCIAの資金と政治工作が大きな影響力を与えていたのです。ですから今日でも日本の官僚や、自民党の国会議員の大半は「何が何でも全ては米国のための政治を行う」という考えなのです。
米国内では飛行禁止のオスプレイが日本中どこでも自由に飛べて、総理大臣も「日本の民家の上は飛ばないでくれ」とは言えないのです。それは日米地位協定や密約で「米軍の行動の自由は日本国憲法を上回る」からなのです。
まだあります。有事の際には日本の自衛隊の指揮命令権は米軍に帰属するという密約があるそうです。「その密約を表の法律にするために、集団的自衛権の行使を安倍政権は実行しようとしている」と、筆者はいいます。
民主党の「2030年代に原発ゼロ」も米国によって潰された
それでは原発はどうなのか。「日米原子力協定は米軍基地を日本に差別的に押しつけていいる日米地位協定とそっくりな法的構造を持っている」と筆者はいいます。つまり「「廃炉」とか「脱原発」とか、日本の政治家がいくら言ったって、米軍基地の問題と同じで、日本側だけでは何もきめられないようになっているのです。条文を詳しく分析すればアメリカ側の了承なしに日本側だけで決めていいのは電気料金だけだ」と言うのです。「2012年9月に野田政権崩壊の直前に民主党のエネルギー政策を閣議決定しようとして、9月5日に外務省の藤崎一郎駐米大使が米国エネルギー省のポネマン副長官に会って、翌6日に国家安全保障会議のフロマン補佐官に面会し、政府の方針を説明したところ、「強い懸念」を表明され、その結果、19日の閣議決定を見送らざるを得なかった」というのです。日本の決定的な政治的方針は全て米国の了解を取り付けなければ、自分たちだけでは意思決定は出来ないのです。このような状態を独立国といえるとは私は思いません。私にいわせれば「日本はいまだに米軍の占領国だ」と思います。
だから、民主党の失敗を轍にして安倍政権は原発の再稼働や原発を海外に売り歩こうとしているのでしょう。ただ、米国が安倍政権に対して全幅の信頼を寄せているわけではないでしょう。要は米国の一番の目的は米国の利益を優先すればいいのです。米国が日本を守ってくれるなどというのは幻想です。米国にとって日本よりも中国の方が政治的にも経済的にも大きなウエートを占めているでしょう。
ソ連が崩壊して東西冷戦構造が壊れてしまって、共産主義の恐怖がなくなった今、日本を共産主義の防波堤にするという米国の世界戦略は終わって、また、中国の軍事力の増大に比較して米軍が世界の警察として振る舞う力が弱まったいまは日本の自衛隊に米軍の肩代わりをさせようとしているのだと思います。そのためにも集団的自衛権の行使が米軍にとっては必要なのでしょう。
憲法9条の欠陥などの指摘はちょっと私には荷が重すぎるかも
この著者の矢部宏治氏がこの書籍で訴えたかったことは、日本国憲法9条の欠陥を指摘しているのです。そのために昭和天皇の敗戦直後の政治的な駆け引きなどを米国の公開された文章などからひもといています。そこのところもかなり興味を持って読めるところなのですが、ここでは省略します。日本は敗戦国です。そして国連とは戦勝国が集まって敗戦国の後始末を行うために作った国際組織です。だから日本は「敵対国」として規定されているのです。だから敵対国の自由は規制されているのは当たり前なのです。そして日本国憲法は米軍のマッカーサーが部下に命令して作らせた憲法です。私には誰が作っても中身がよかったらそれでいいのですが、筆者は誰が作ったかが重要だといいます。そして、9条の一項は国連の理想を掲げたもので、二項「陸海空、その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」は敗戦国の再軍備化をさせないために米国が作った再軍備禁止条項だというのです。私もこの二項は実際には矛盾するとは思います。一切の戦力を保持しなくて、交戦権を認めないというのは自衛隊の軍備を認めないからです。
ここで、フィリピンの取った選択が大いに参考になると私も以前から思っていました。筆者もフィリピンを参考にすべきだといいます。フィリピンも素晴らしい憲法を持っているそうです。
フィリピンは国家の政策を推敲する手段としての戦争を破棄し、広く認められた国際法の原則を自国に法の第一部として取り入れ、全ての国との平和、平等、正義、自由、協力、友好という政策を堅持する(1987年フィリピン共和国憲法第二条第二項)
確かにフィリピン政府は南沙諸島で中国が複数の浅瀬の埋め立てを拡大し大がかりな建設工事を進めていることに対してフィリピン軍は軍事的な衝突を避けて、遠巻きに警戒警備を行っているだけです。そして話し合いによる解決を模索しています。しかもアキノ政権は米軍基地を国内から完全撤退させたのですから、日本政府が見習うべき素晴らしく賢い政府です。今回、中国の威嚇に対抗するために米軍基地の駐留を認めたが、それとて、フィリピン政府が出て行けと言えば米軍はいつでも出ていかなければならないし、駐留のために米軍は多額の土地利用料をフィリピン政府に支払わなければならばならばいというのです。日本と比べものにならないほど賢いフィリピン政府の選択でしょうか。金をもらって、米軍に中国軍の警戒と警備をさせているのですから。
天皇制は今後どうあるべきか
あとがきで、筆者は「私は政治的には中道・リベラル派の人間で、現在の明仁天皇、美智子皇后のおふたりに対しては、大きな尊敬の念を持っている」といい、「沖縄、福島で起きている重大な人権侵害、官僚や政治家たちによる立憲主義の否定に、間接的ながら、はっきりと遺憾の念を公式に表明されているのは、国家の中枢においてはおふたりだけだからです」と言っています。また、11月16日に孫崎さんの講演を聞きました。そこで話されたのですが、「昨年の12月23日の天皇誕生日の会見で明仁天皇は「戦後日本は平和と民主主義を守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いております」と言ったのです。しかし、NHKは「平和と民主主義を守るべき大切なものとして、日本国憲法をつくり」を削除して伝えていたそうです。集団的自衛権の行使や憲法改正などによって戦前の全体主義国家へこの国を変えようとしている安倍政権の企てに先頭で反対しているのは明仁天皇だ」という孫崎さんの意見に、私も同感です。だから私は現行の天皇制には賛成です。私は学生の頃は「天皇制は廃止すべき」だと考えていました。でも今はちょっと違います。「皇室の民営化」を唱えています。イギリスのように宮内庁を民営化して、自力で皇室を運営するのです。皇居見物料金を取ってもいいでしょうし、伊勢神宮の拝観料を取ってもいいでしょう。雅楽などもお金を取って見せればいいし、皇室のペンダントやマスコットも売り出せばいいでしょう。そして、天皇が神ではなく人間なのだから、人権を与えなければならないと思うのです。筆者は宮内庁の民営化は唱えてはいませんが、天皇に人権を与えるべきだとは言っています。私も天皇に参政権も与えるべきだと思っています。とはいっても、被選挙権を与えると天皇の国政との関係が壊れるので、選挙権だけを与えればいいのです。そして、投票日には国民に向かって天皇が訴えるのです。「有権者の皆さん。投票には行きましたか。投票は国民の権利であり義務なのですよ。あなたが投票に行かなければ民主主義は守れないのですよ。まだ投票に行ってない方は今からでも投票所へ行って、誰かに投票しましょう」と言ってもらうのです。そして、住居の自由や就職の自由や結婚の自由も与えるのです。それによって初めて日本の近代的な天皇制がより自由で民主的になり、国民の信頼も一層高くなり、天皇制も長く続くことでしょう。
まあ、どっちにしても読み応えのある書籍です。一朝一夕に読める本ではありません。さらっと読むだけなら読めるかもしれませんが、中身を理解するには、私は10年かけてこれから読みこなしていこうと決意しました。皆さんもぜひ一回お手にとって読んでみてください。
日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか
矢部宏治・著
定価¥1,200(本体)+税
発売日2014年10月24日
発行集英社インターナショナル(発売:集英社)
ISBN978-4-7976-7289-3
判型四六判
by nonukes
| 2014-11-20 01:10
| 小坂農園 薪ストーブ物語
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