2014年 10月 22日
九電による電力買取一時中断発表の大騒動は一体何だったのか
記者会見する九州電力の平田宗充常務執行役員=21日午後、福岡
九電による電力買取一時中断発表の大騒動は一体何だったのか
小坂正則
九州電力が9月24日に記者会見で「再エネ電力の受付と回答保留」を発表して、九州管内で10月1日以降に行った説明会には、どこの会場にも溢れんばかりの人が押し掛けて、マスコミや世論の大きな関心を集めた事件となった「固定価格買い取り制度」だったが、昨日、九電は9月24日までに申し込んだ、小規模の太陽光発電施設である低圧連携分は窓口を再開すると発表したものです。
それなら9月24日の発表時点で、初めからそのように分けて発表しておれば何の混乱も起きることはなかったのです。このような混乱を起こして、あとで火消しに躍起になる九電の失態と無能ぶりは今に始まったことではないのですが、悲しくなってくるほどに中身のない対応でしかありませんでした。
私はこの件について10月10日に九電本社のお客様本部に電話で問い合わせました。「50キロ未満の低圧連携の申し込み件数と全体量はどれくらいなのか」と。すると、「それぞれの施設の規模と件数は把握していませんが、低圧と高圧の件数と規模は分かります」と、クリモトと名乗る社員は説明しました。「7万件の応募の内、68000件が低圧連携で、その規模は約300万kw。高圧は3000件で850万kwだ」と。
しかし、昨日の九電の説明では「50kw未満の太陽光発電が再開したのは1万1129件の計32.1万キロワット。再生エネの種類別では大半が太陽光で、風力や地熱、小水力が計5件ある。残る50キロワット以上の大口案件など約56000件、約1154万kw分は、今月16日に始まった経済産業省の有識者会合の結論を待って、年内にも受け入れ方針を示す」というものです。クリモト氏の説明と大きく異なる理由は大規模施設を50kwごとに分割して申し込んでいる方が53000件で270万kw(1件当たり50kw)ということなのでしょうか。大規模施設を作って、高圧変圧器を設置しなくて低圧で売電するなど邪道な方法です。そんな法律の網の目をくぐり抜けるような不当な売電を認めた経産省が悪いのです。一般的な小規模事業者の慎ましい太陽光発電施設は1件あたり、わずかの28.8kwと小さな施設だったのです。
小規模太陽光発電は最初から系統連携には何の問題もなかった
つまり、九電や経産省は9月24日の時点で「50kw未満を除く、メガソーラーと大規模施設を分割して小規模施設のようにカモフラージュして申し込んでいる者の買い取りは一時中断する」と発表すればよかったのです。
九州管内のでは新築の家を作った方で、10kwを越える太陽光発電を設置したオーナーが1200件あったそうです。彼らは新築の家が出来たが、電力を売れないままローンを払い続けていると新聞記事にありました。そのような50kw未満の小規模施設の方11129件の申し込みは問題なく再開することが出来るようになったのですから、これで大企業の太陽光発電メーカーは別として中小零細企業が倒産するようなことは回避されると思います。
そして、わずか32.1万kwの系統連携で、全体量が330万kwに達しても何の問題を起こることはないでしょう。
メガソーラーなど大規模太陽光の買い取価格は大幅に下げるべきだ
小規模施設の問題は解決したというよりも始めから何の問題もなかったわけですから、問題は大規模太陽光だけです。この高圧3000件850万kwと分割低圧53000件で270万kwの申し込み分だけが問題として残るのです。分割低圧は認めないという方針を国は出していますが、それは当然の変更要件でしょう。そして残りの56000件、1154万kwの買い取り価格は大幅に下げて、30円以下でもいいのではないかと私は考えます。そして、これは国も決めているそうですが、申し込んだ年の価格が保障されるのではなく、運転時の年の買い取り価格が20年間継続するというふうにすべきです。
また、3月に申し込んだ申請分も実際には動きだすのは今年度か来年度になるわけですから、その価格も動き出した時点の買い取り価格にすべきです。要はドイツのような国民負担が大きくなることは出来るだ避けて、国民負担を出来るだけ少なくて、その上で再エネを普及させる方法を模索して行かなければならないと思います。ドイツでは2011年に標準的な1家庭の負担が1000円で2012年には1500円。今年は1980円の国民負担へと高騰しているのです。
そして、負荷変動に対するバッテリーの設置や負荷調整運転の義務化など、設置者の責任とすることは当然のことでしょう。再エネの買い取り費用を国民が払うのか大企業が払うのかという問いへの回答は自ずとハッキリしています。それは大企業が払うべきなのです。そして、価格競争を作り出すことによって、コスト削減が実現して、ドイツのように13円から20円でも利益が出るようにコスト削減競争が起こり世界中に太陽光発電が普及するのです。そうなれば原発など自然に淘汰されてしまいます。
九電、再生エネ小口買い取り再開 出力50キロワット未満
【共同通信】2014/10/21
九州電力は21日、再生可能エネルギーの買い取り手続きを中断している問題で、出力50キロワット未満の小口について買い取り手続きを再開すると発表した。再開対象は、中断を発表した9月24日までの申し込み分に限定。中断に事業者の不満が大きかったことを受け、発電規模の小さい一部の申し込みは電力の安定供給への影響が比較的少ないと判断し一部再開を決めた。
今後手続きが進められる件数は1万1129件、発電容量は32万1千キロワット。50キロワット未満の太陽光の場合、一般住宅やマンションなどの屋上のほか、遊休地に取り付けられる例が多い。
by nonukes
| 2014-10-22 12:13
| 電力自由化
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