2014年 10月 02日
「固定買取制度一時中断」問題を考える第Ⅲ 「買い取り中断は国の陰謀だ」
上の図が資源エネ庁が出してきた脅しの資料です
「固定買取制度一時中断」問題を考える第Ⅲ 「買い取り中断は国の陰謀だ」
小坂正則
九州電力が太陽光発電などの買い取りを中断するという発表をした9月24日以後、太陽光発電のメーカーや事業者の間で大混乱を引き起こしてます。私のところにもいろんな業者や設置者から、今後の見通しについての問い合わせや相談が相次いできました。
私は昨日のブログに書いたように「なぜ3月の時点でこの事態は予想できたはずなのに今頃発表するのか」という質問に対して、九電は「これまで検討してきた結果、今日まで時間がかかった」という回答や「申し込みの件数や量は日々集計していない」という回答でした。私にはそんなバカなことはないだろうと発言を疑ったのですが、どうもその真意が初めて分かったのです。
いま買い取り中断を発表する理由は「川内原発再稼働」のため
固定買取が決まってわずか2年間の今年6月時点で新たに運転を開始した設備は約1,109.3万キロワットです。しかも全体の申し込み量は約7000万キロワットという規模になってきたのですが、国はこの間、太陽光発電を導入した場合に対策を全く取ってきませんでした。つまりこの事態は電気屋なら誰でも予想できた事態なのになぜ今まで対策を取らなかったのかをまず考えたのです。それは安倍政権は端から再生可能エネルギーなど早く打ちきりたかったのです。そのためにパニックになる事態を待っていたのでしょう。
九電の説明では7月までに系統連携した太陽光発電が340万kwで、これから申し込みがあった分は840万kwだと言っていました。その内訳は言ってませんが、新聞報道などによると全国の申し込みの82%が大型メガソーラーだとうことです。つまり、142万kwしか個人や中小零細業者の分はないのです。これらの小型の太陽光発電は優先して接続しても系統への負荷はほとんどないのです。また、そもそも大型メガソーラーは売電のためには負荷変動が大きいので、そのための施設の設置は義務づけられていたはずです。だからこの発表はありもしない事実を大げさに言っているだけなのではないでしょうか。連携に支障があれば系統しなくてもいいという付帯条文があるのですから、何の問題もないのです。大型メガソーラーにバッテリーやバックアップ発電を義務づければ済む問題なのです。
しかも九電はきっと3月に時点で国へ相談していたはずです。「このままならパンクします」と。しかし、資源エネ庁は「まだ待つように」と指示していたのだと思います。こんな失態を九電が自ら招いたとは考えられないからです。そして「川内原発再稼働」のベストタイミングで「買い取り一時中断」というビッグニュースと一緒に「再生可能エネルギーは皆さんの高負担を招きます。今皆さんが負担している225円がやがて935円まで跳ね上がるのですよ。そんな負担皆さん出来ますか」という脅しです。まあ、脅しといってもこれは事実なのですが、そして「そんな高負担よりも原発を動かした方が安くていいです」よね。というキャンペーンに使いたかったのです。
もうひとつの理由は、太陽光発電がどんどん増えていって、設置価格がどんどん下がっていけば当然買い取り価格も下がりますが、どんどん普及して設置価格が下がってしまって15円などになってしまったら、いよいよ原発の生き残りが不可能になってしまうことを恐れたのです。ですから、九州本州連携線の増強などの議論は一切せずに、とにかく「太陽光発電は高すぎる」と「負荷変動が大きすぎて系統にはもうこれ以上入れられない」というキャンペーンをやって来たのです。これは「川内原発再稼働」キャンペーン以外の何ものでもありません。ドイツでは14%も系統連携出来ていて、日本はわずか2.2%が現状です。もちろんヨーロッパは地つながりで他国へ電力を売ることが出来るので全く同じではないにしてもせめて5%まではこれまでも導入できると言ってきたはずです。今止める根拠はありません。
太陽光発電を入れるための闘いをこれから事業者自らがやっていくことが出来る
昨日の九電の説明会の中で「負荷変動を調整するために一定量を上回ったら系統から切り離す装置やバッテリーを設置する計画のある事業者様には別途連携の話し合いを進めます」という説明がありました。その話を逆手にとって、九電を攻める戦略を立てたのです。確かにある系統線の中で需要がない場所では系統連携してもらえません。そのためには発電が終わった後に一定量を流すことは安定供給の意味からは蓄電池があればないよりもあった方がいいでしょう。それなら、それを付ければ九電の太陽光発電排除は防げるのです。今後はバッテリー業界のめざましい発展が考えられます。特に小規模事業者はそんなに高負担にならずにバッテリーを設置できるからです。そのための事業化を私は私の関連する事業者と組んでさっそく進める予定です。もちろんすぐには出来ませんが、これから九電と話し合いをしてどれくらいの規模のバッテリーを設置すればいいのかを聞いて、そこから針の穴を広げて行きたいと思っていいるのです。
もちろん本来は、九電は小規模の事業者や地元の業者を優先して入れれば、まだまだ相当量は受け入れられるのです。その証拠に、設置規模に対して発電量はだいたい半分からよくて2/3です。現在の申し込み全てを入れても1260万kwの半分なら600万kwだし、多くても800万kwでしかありません。その一部は連携線を通して関電などに送ることが出来ますので、全部入れても問題はほとんどないのです。問題は「原発再稼働」だけなのです。私たちは国(資源エネ庁)の企みにだまされないようにしましょう。1日も早く九電は系統連携を開始して、事業者の倒産や失業者が出ないように早急に対策と、いつから開始するなどという見通しを出すべきです。このままでは本当に九州の設置業者は倒産してしまします。多くのパネルを在庫として抱えている企業は、その支払いから従業員の給料も支払えなくなってしまうからです。
再度提案します
①九州電力は超大型メガソーラーなどを除いて、小規模事業者で地元の業者の申請順に系統連携を1日も早く再開するべきだ。
②国は地元優先のルールを作って、早く窓口を再開するために電力会社への指導を行え。早期対応しなければ九州の中小零細事業者の倒産が相次ぐ可能性がある。
③太陽光発電の買い取り価格が高すぎるので国民負担の軽減のために価格の早急な引き下げを行え。そして太陽光発電以外の風力やバイオマス発電や地熱の窓口を閉じる何の根拠もないのだから、早急にこれらの窓口を再開しろ
④北本線(北海道と本州を繋ぐ系統線)や九本線(九州と本州線)の増強工事を早急に行えば、何の問題もなく全ての系統へ連携できる。ただし、超大型メガソーラーは負荷平準の義務化を明文化しろ。それでなければ、一般消費者が大企業の利益を保証するような仕組みは国民は納得できない。
「太陽光バブル」崩壊 九電・再生エネ契約中断
2014年10月01日 佐賀新聞
九州電力が25日から再生可能エネルギーの新規買い取り契約を突然中断し、佐賀県内で太陽光発電設備を設置する事業者に混乱が広がっている。顧客からの契約取り消しが相次ぎ、接続契約前に着工している物件は資金回収のめどが立たない。業界では「このままでは倒産する会社も出る」と悲観的な見方も出始めた。
九電の発表後、九州一円で太陽光発電の販売・施工を手掛けるSUNシステム(小城市三日月町)には、契約取り消しの申し出が数十件寄せられた。買い取り中断の対象になるのは、顧客との直接契約分だけで数十件。設備販売や住宅メーカーなどからの施工依頼分も含めると、数百件に達する恐れがある。
パネル数千枚分の大型発電設備の設置計画もあり、「仮にすべての商談が白紙になれば、億単位の売り上げが泡と消える」と同社。中断期間がいつまで続くか分からず、「新規の契約は見込めない。マーケット自体が止まる」と先行きに不安を募らせる。
太陽光発電設備は、九電に接続契約を申し込んだ後、融資のめどが立った時点で着工するケースが多いという。九電との契約が済んだ物件の工事で数カ月は食いつなげるが、その後はつぎ込んだ資金が回収できなくなる恐れがある。県内には数百件の関係事業所があり、ある事業者は「年末にかけて倒産が続出する」と予測する。
影響は、住宅メーカーにも広がっている。固定価格買い取り制度(FIT)導入後、各社は九電への売電収入による住宅購入費の負担低減をアピール。全量買い取りの対象となる出力10キロワット以上の太陽光パネル付き住宅を精力的に手掛け、消費税増税後も需要を開拓してきた。
県内や筑後地域で太陽光発電住宅を販売するクローバーホーム(福岡県筑後市)は、買い取りが中断される住宅、分譲地を50件程度抱え、「新規ならまだしも、既に契約を申し込んだ分まで保留にするのはあり得ない。顧客にどう説明すればいいのか」と憤る。
九電への批判が高まる中、10月1日には事業者向けの説明会が佐賀市で開かれる。先の事業者は「送変電施設の容量に余裕がある地域が県内にもある。一斉に買い取りを中断するのは無謀」と指摘しながらも、「太陽光のバブルがはじけた」と諦めにも似た思いを口にした。
=識者談話= 「ベストミックス」構築急げ
国の「電力システム改革に関する制度設計ワーキンググループ」委員の松村敏弘・東京大社会科学研究所教授
接続申し込みが急増したのは、国が定めた買い取り価格が高すぎたからだ。買い取り費用は賦課金として電気料金に上乗せされる。価格の値下げ圧力が強まるのは当然で、今回の駆け込み申請につながった。
ただ、事業者の中には、とりあえず枠だけでも確保しようと申請したところもあるはずだ。九電はこうした歩留まりを早急に検証して受け入れ可能量を見極め、対応を考えるべきだ。
「原発再稼働を見据えた買い取り拒否」との声もあるが、申し込み分は再稼働しなくても受け入れられる量をはるかに超えており、そうした指摘は当てはまらない。直近の解決策としては買い取り可能な上限を設けることなどが考えられるが、発電が安定している地熱やバイオマスなど再生エネルギーにおけるベストミックス(最適な組み合わせ)の早期構築が欠かせない。
出力だけで需給調整している現状にも課題がある。現行の電力システムは逼迫(ひっぱく)時に価格を上げたり、余った場合に下げる発想がない。価格で需給調整ができれば、蓄電池の必要量も減る。電力自由化は、こうした大手独占の硬直したシステムに風穴を開け、柔軟な対応を後押しするはずだ。
再生可能エネ"固定価格買取制度"は曲がり角? 家計負担は月935円に増加の試算
御木本千春 [2014/10/01]
経済産業省は30日、総資源エネルギー調査会第4回新エネルギー小委員会を開催し、「電力会社の再生可能エネルギー導入に向けた対応と課題」に関する会議を行った。
現在の再生可能エネルギーの導入状況を見ると、2012年7月の固定価格買取制度開始後、2014年6月時点で新たに運転を開始した設備は約1,109.3万キロワットとなり、同制度開始前と比べて約5割増加した。制度開始後に認定された容量のうち、運転開始済量の割合は約15%。制度開始後の導入量、認定量ともに太陽光が9割以上を占めていた。
2014年6月末までの認定量が全て運転開始した場合の発電電力量(電源構成比の約2割)について、賦課金負担の試算を行ったところ、賦課金単価は3.12円/キロワット時、単年度総額は2兆7,018億円となった。現在の賦課金は0.75円/キロワット時、単年度総額は6,500億円であるため、この4倍以上に増加することになる。また、一般家庭の1カ月当たりの負担額は現在の225円から935円に上昇すると見込んでいる。
併せて、同会議では北海道電力、東北電力、四国電力、九州電力の4社が、買い取りの申し込みが急増し、発電電力が需要を超える計算となるほか、送電線の容量を上回るおそれがあるなどとして、10月1日から新規契約を一時中断することを発表。また、沖縄電力も新規契約を制限していることを明らかにした。
by nonukes
| 2014-10-02 13:17
| 電力自由化
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