2014年 10月 01日
九州電力による固定買取制度の受付一時中断の説明会に参加して「今こそエネルギー政策の国民的議論を」
九州電力による固定買取制度の受付一時中断の説明会に参加して「今こそエネルギー政策の国民的議論を」
小坂正則
本日10時30分から12時過ぎまで九州電力大分支店で開催された「固定買取制度一時中断」の説明会に参加してきました。まず、驚いたことに、会場に九電大分支店の2階大ホールに入れないほどの人で溢れていました。ざっと見て250人はいたでしょう。後から後から参加者が来て、結局最終的にはロビーで聞いている方などを含めると500人が参加したとニュースは伝えていました。
説明はマスコミやHPに流している資料の説明などで30分を費やして、11時ころから質問を受けてました。最初に発言した方は私の知り合いの方で、太陽光発電事業に昨年から手広くやっていた方です。「先行投資した資金の回収が不可能になるではないか」という、深刻な質問でした。多くの方が「いつ再開するのか。先行者を優先してくれるのか」といった質問が相次ぎました。中には「この説明会は我々にとっては抗議集会なのだ」と気勢を上げる方もいましたが、中には冷静に「この事業で飯を食っている方がたくさんいることは九電も分かっているでしょう。それが全部ストップするということは電車でいえば全線ストップするということと同じなんです。一部運転を止めるというなら、被害は小さいかもしれないが、このような荒療治は企業の倒産などが相次ぐ事態になる」という批判には大変説得力のある発言でした。
この事態を予測できたはずがこんなに大きな問題になるまで放っておいた責任は大きい
さて、私がした質問は「1点は3月に7万件の申し込みがあったといいますが、それから今日までどれだけの申し込みがあったのですか。次に何で今日まで中断するという決定を延ばしてきたのですか。少なくとも3月時点で、一時中断を決めて、そこで説明会を行えば、4月から今日までの方は被害がなかったのではないですか。」
「もう1つは毎日営業所に上がってくる申し込みの申請書の数と規模を本社で集計していなかったのですか。集計作業は毎日やっていなかったのですか。それとも1週間に1度の集計だったのですか。1カ月に一度の集計だったのですか」と聞いたのです。回答として「4月から7月までに2万件の申し込みがありました。営業所へ上がった申し込みの集計は特段やっていませんでした。必要に応じてやってました」というようなニュアンスの回答でした。
「そんないい加減な作業を本社はやっていたのですか。そんなことをやってるから今日のような取り返しの付かないようなハードランディングになってしまうのではないですか。契約をして土地を賃貸した方や土地を購入した方もいるでしょう。損害賠償問題になりますよ」と、私はいいました。
今後九電や国はどう対応すべきなのか。解決策を考える
九電がぐずぐずしていたから、今日のような大きな問題になったのですが、今回の問題を私は2つに分けて考えたいと思います。1つは今までに申し込んでいる方の処遇をどうするかという問題です。そしてもう1つは再生可能エネルギーを今後どうやって効果的に広めていくかという問題です。
今日来ていた方々は死活問題の方もいるでしょうし、会社が倒産する方もいるかもしれません。その問題も大きいのですが、まず、前回私が書いたように、地元の太陽光発電の系統連携を優先して、小さな施設と地元優先で受付を再開することが解決策です。3月に7万件の申し込みということですが、その95%以上が小規模の個人事業者や中小企業の申し込みだと思います。それを再開すれば工務店などの企業倒産も防げるでしょう。10万キロを超えるような超大型の施設はバッテリーなどを設置して負荷平準を自らの資金で行えばいいのです。
次に今後どうするかという問題の方が重大です。
九電の資料によると九州は全国の申し込み量は272万kwで、全国の20%を占めているそうです。しかし、四国は68万kwで、わずか5%です。次いで中国は30万kwで11%です。関西は12万kwでわずか12%です。このばらつきがいかに大きいかが分かと思います。関西電力が12万kwということは関西電力には系統の余裕がいっぱいあるということなのです。東電は37万kwです。全体の14%です。なぜ関西や東京が少ないかといえば、地価が高いため適地が少ないからでしょう。九州は地価が安くて、過疎地が多いし、温暖なので太陽光発電に適しているからです。この問題は各電力会社間の連携線を増強すれば済む問題なのです。
また、それらの増強するお金を誰が負担するのかという問題も残っています。これを電力会社や国がやればいいというかもしれませんが、国がやるということは税金ですし、電力会社は電力自由化が目前に迫っているのにそんな投資はしません。そのルールをどう作るかという課題が1番の問題です。
そして最大の問題は国がどこまで再生可能エネルギーを増やすのかという目標値を示していないことが一番の問題です。「全体で再成可能エネルギーの電力20%をめざすのか」それとも「原発を中心にしていくからこれ以上は太陽光発電なんかやめるのか」という議論を国民的にする必要があるのです。ただ、13年度で全体のわずか2.2%しか占めていないのです。
今こそ国民的なエネルギー政策の議論を巻き起こそう
現在の再エネ料金は国民1戸当たり225円だそうです。最初は150円といわれていたのですが、このまま全量の再エネを電力会社が購入すれば毎月1000円弱を各家庭が負担しなければならなくなるといわれているのです。それは大きな問題です。私たち一般消費者が大企業の利益を20年間負担し続けるというような制度は、もってのほかです。
法人税を値下げしてもらって、内部留保金が336兆円もあって、おまけに法人税を払っている大手企業が、実は3割しかなくて大半の大手企業が法人税を払っていないのに、濡れ手に粟の利益を20年間も保証してやることはありません。
早急にFITの価格の見直しと、この制度に大企業のメガソーラーを排除するということも含めて検討すべきです。だって米国では、太陽光発電の1kwhの発電コストが15円を切っているそうなのです。ですから、FITの制度でなくても、もうすぐ、市場価格で売電できるようになうのです。あと、2~3年もすればそんな時代が来るでしょう。メガソーラーの電力を一般消費者に向けて販売すれば十分成り立つ時代がくるのです。ただ、再生可能エネルギーは優先的に系統に流すことが出来るという優先政策は必要ですが。
このFITという制度をどうするのかという、いわば「日本のエネルギー政策の行く末を決める重要が議論」を資源エネルギー庁のわずか5人の専門委員という、実は企業の代理人や電力会社に近い学者たちが密室で決めることを任せるのではなく、オープンにして市民の意見を聞くようにパブリックコメントや国会審議などを通じて、国民の大半が納得ゆくような落としどころをみつけることを私は求めます。
再生エネ買い取り なぜ中断 政府、計画性なく認定
2014年10月1日東京新聞
東京電力や関西電力、九州電力に続いて、北海道、東北、四国、沖縄の4電力も太陽光発電など再生可能エネルギーの受け入れ手続きを中断する。2012年に施行された再生可能エネルギー特措法は、最大限の普及を目指して電力会社に全量の受け入れを義務付けているのに、なぜ中断するのか。背景を探った。 (吉田通夫)
Q せっかく拡大してきた再生エネの受け入れをなぜ中断するの。
A 太陽光や風力は人の力ではコントロールしにくくて、余ったから発電しないようにする、という急な操作は難しい。季節や時間帯によって発電量が拡大するケースが想定され、電力各社は申し込まれた発電をすべて受け入れると昼間の最大の電力が、管内の需要を一時的に上回る恐れがあると説明している。
需要を上回る電力が電線に流れると、家電や工場の機械が故障したり、あるいは送電設備が故障して大規模な停電を起こす可能性があるという。
Q でも、法律で全量の買い取りが義務付けられているはずでしょ。
A 例外規定があって「電気の円滑な供給の確保に支障が生じるおそれがあるとき」は断ってもいいとされる。各社はこれを断る理由にしている。
Q なぜ、こんなことになったの。
A 政府の計画性のなさが大きな要因だ。
例えば九州など一部の地域で一時的に電気が余って不安定になるなら、受け入れ余力のある別の電力会社に引き取ってもらえばいい。そのために九州や四国と本州を結ぶ送電網を増強するなど広域で電力をやりとりする方策が考えられる。余った電気を蓄電池にためて、足りないときに使えるようにする手もある。いまは蓄電池が高すぎるとしてなかなか実用化されていないが、普及してたくさん作られるようになれば安くなるとの予想もある。
Q いろいろ手はあると。
A 買い取り制度を始めた民主党政権も、引き継いだ自民党政権も計画はどんどん認定してきた一方で、再生エネの受け入れ態勢の整備は怠ってきた。特に安倍政権は原発推進を優先させる姿勢が目立つ。
Q どうすればいい。
A 再生可能エネルギーの発電は電力会社の言うように瞬間的に大きくなる時もあるが、太陽光なら夜は発電できないなどで年間発電量は小さい。震災前は電力全体の1%程度しかなく、震災後の一三年度も2・2%だけ。国際比較でも低い水準だ。
経産省は有識者会議で再生エネの受け入れ策を再検討する。受け入れ策が行き詰まったとして、原発再稼働を急ぐ理由にするのではなく、どうすれば再生エネを拡大できるか官民合わせて知恵を出し有効な策を早急に打ち出すべきだろう。
再生エネ買い取り中断 北海道・東北・四国電も
2014年9月30日 東京新聞夕刊
北海道電力、四国電力、東北電力の三社は三十日、太陽光を中心とする再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づく契約の手続きを十月一日から中断すると表明した。「申し込みの急増により、需要を超える恐れがあるため」と説明している。既に九州電力は二十五日から受け付けを中断。東京電力、関西電力も一部地域で制限するなど、再生エネルギーの受け入れを抑制する動きが広がっており、経済産業省は十月中に専門部会を設置し、改善策を話し合う。
北海道、東北、四国の三電力では、特に太陽光を中心に買い取り価格が下がることが決まっていた直前の三月に駆け込みの申し込みが急増。「一時的に管内の電力需要を上回る可能性がある」としている。買い取った電力をすべて接続した場合、送電網の容量を超え、安定供給に支障が出る恐れがあると判断した。
中断する期間は今後の対応策が固まるまでの「数カ月」と説明。住宅用の太陽光発電は出力が小さいため、影響は少ないと判断し、買い取りを続ける。
太陽光や風力による発電は昼夜や天候によって発電量が大きく変わる。発電量が一時的に需要を上回る可能性がある一方、雨天や風のない日には急激に減る。このため電力が余った場合は、ほかの電力会社に流したり、蓄電池に充電して夜間に送電したりするなど、電力を安定させるための調整が必要になる。しかし、送電網の整備や蓄電池の開発などの対応が遅れている。
こうした事態を受け、経産省は専門家委員会の下に部会を設けて当面の受け入れ量の上限を検証し、将来の受け入れを増やすための方策を検討する。部会は学識者五人程度でつくり、年内に三、四回会合を開く。また、再生エネルギーの固定価格買い取り制度は「電気料金の上昇につながる」との指摘もあるため、専門家委員会は、買い取り制度の仕組み全体を見直す方針。
by nonukes
| 2014-10-01 17:13
| 電力自由化
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