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小坂正則の個人ブログ

一体何が起こっているのか「太陽光発電の電力買取申請受付を九電は一時中止」

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一体何が起こっているのか「太陽光発電の電力買取申請受付を九電は一時中止」
小坂正則

2012年7月から始まった再生可能エネルギーによる「電力固定買取制度」(FIT)が始まってわずか2年で日本は大変なことになったのです。これまで2年間でどれくらいの太陽光発電設備が作られたのかというと、毎日新聞9月25日号によると「今年5月現在で1043万キロワットの設備が稼働。今後参入が見込まれる設備を含めると、再生エネの出力は7148万キロワットに達する。経産省の試算では、認定設備がすべて動くと、再生可能エネルギー発電の電力量は全体の20.5%になり、政府がエネルギー基本計画で示した「2030年に約2割をさらに上回る」という。凄まじい勢いで増え続けているのです。原発の全施設が稼働したら5000万キロワットなので、わずか2年で原発の設備容量を上回ったことになるのです。実際に発電量でいえば原発の稼働率が70~80%なのに対して太陽光発電は12~14%の設備利用率なので、100万キロワット原発の10基以上電気を作り出すことになるのです。

このまま太陽光発電がどんどん設置されたら原発はいよいよ動かせなくなる

しかし、そこで今回九電が25日に打ち出した「申し込み受付を一時中止して系統連携も当分見合わせる」と記者会見で発表したことから、これほど急激に太陽光発電の設置が進むとは思っていなかった政府や電力会社が慌てているのです。1つは九電も説明しているように「九電の申し込み量が全て稼働したら春や秋の昼間には太陽光発電だけで供給が需要を上回ることになる」という現実が迫ってきたのです。そして、2つに太陽光発電は元々僻地に作られるので近辺に大きな需要がない場合が多く、送電線の容量が足りないという問題があるというのです。また、九州の需要がなければ他の電力会社に送ればいいのですが、そのためには高圧送電線を設置する経費などを誰が払うかという問題も出てくるのです。そして3に、太陽光発電は負荷変動が大きいので急激に発電量が上がったり、下がったりする変化に応じて天然ガス発電などを動かしたり止めたりして負荷平準を行っているのですが、その容量を超えてしまうというのです。そのような事態になれば大停電が起こる可能性があるのです。
現在は太陽光発電の設置にバッテリーの設置などによる負荷変動の調整施設の設置は九電では求められていないと思いますが、いずれはそういう事態も訪れるでしょう。
毎日新聞によると全ての申請分が稼働したら1260万キロワットになり、エアコンなどの需要のない時期の昼間の九電管内の需要でる1000万キロワットを大幅に上回るといっているのです。しかし、それだけの再生可能エネルギーによる電力が生み出されるのであれば、バッテリーによる調整や水力発電などの負荷追従運転をうまく利用してドイツのように再生可能エネルギーだけで九州管内の電力を一時的とはいえども賄い得るということはすばらしいではないですか。このように大幅な再生可能エネルギーの設置が進むことは、工夫さえ行えば決して悪いことではないのです。だって、そうなれば原発などもう九州に限っていえば出る幕がなくなるのです。
朝日新聞9月22日号には「土地が安く日照時間が長い九州は、太陽光発電が盛んだ。九電管内の太陽光発電の出力は7月末時点で339万キロワット。九電は2020年度に600万キロワットになると見込むが、足もとではそれを上回るペースで増えている。九電のピーク需要は1500万~1700万キロワット程度で、太陽光発電の割合は今後高まる可能性が高い」と。つまり、実際には最大で2割の太陽光発電の電気が入って来ることを想定していたようですが、このままではそれを一気に越えてしまう勢いなのでしょう。

これからは再生可能エネルギーの利用調整が必要

さて、太陽光発電がどんどん増えるのは決して悪いことではないのですが、「九電がこれ以上受け入れられない」と悲鳴を上げるだけではない、新たな問題も生じています。それは景観保護の観点からどう考慮するのかという問題や、再生可能エネルギーという地域の資源を東京の大手資本が奪い取っていくようなメガソーラーの設置がはたして地方の再生の役に立っているのかという問題も考えなければならばならないのです。
現在、一般家庭1軒が150円から200円くらいのお金を固定買い取り制度のために支払っていますが、ドイツではその額が1軒あたり1000円も2000円にも膨れあがっているいるといわれています。日本もやがてそのようになるかもしれません。そうなったら、私たち消費者が大手資本の利益のために20年間も「過剰な利益を保証する」ことがはたして社会正義に反しないのかという問題が出てくるのです。いま計画されている太陽光発電の大半が大手資本のメガソーラーです。メガソーラーも地方にお金が落ちるといいますが、それは雀の涙ほどでしかありません。ソフトバンクのメガソーラー設置による地代は3%で1千キロワットで約300万円です。それくらいなら地方の住民が負担してる額の方が多くなって、結局ここでも国富の流出ならぬ地方の富の流出現象の歯止めにはならないのです。ですから、私は今回の問題解決の手段として系統連携の優先順位を「その地域に住んでいる地元の人間(少なくとも県内の住民)が申し込んだ施設を優先して認める」という系統連携にすべきです。次に3年前までは1キロワットあたり設置費用が40万円といわれていた設置費用が昨年には30万円を切ったといわれていますし、現在は20万円そこそこだと思われます。このような急激な設置費用の値下げが起こったのも、固定買取制度のおかげです。その現状の市場価格に見合った買い取り価格を年に数回でも価格調整を行って、地元の人間の小規模施設やNPOや協同組合など非営利の団体と大企業や営利企業との買い取り価格の差を付けるなどの方法も導入すべきでしょう。

固定価格買取制度(FIT)の見直し作業に市民や消費者の声を反映させよう

また、大規模なメガソーラーには環境アセスや周辺住民の同意を取るなどの規制も必要だと思います。そして太陽光発電だけが伸びて、木質バイオマスに発電の燃料となるスギなどの間伐材の買い取り価格が高騰して採算が合わなくなっているといわれていることなどの問題を解決するために「木質バイオマス」については熱と電力の併給システムを導入して熱も一緒に利用する施設導入への補助や仕組みにするべきです。
また風力や温泉熱利用などの利用促進を進めるための価格引き上げ、もしくは当分の間は太陽光発電以外の発電については価格据え置きを行うべきでしょう。
最後にこの固定買い取り制度をこれからも少ない負担で大きな再生可能エネルギーの普及への足がかりにするためには何よりも国の姿勢を決める必要が一番大切です。いま、地熱や風力や小水力を計画している業者などは、この先この制度がなくなるのではないかと不安でならないでしょう。太陽光発電は1年もあれば設置できますがそのほかの発電施設は地熱を筆頭に、計画から運転まで10年も20年もかかるのです。調査から周辺地域の地権者の同意や計画から運転へ進んだ時に買い取り制度が終わっていたなんてことにならないように政府の目標をきちんと決めるべきなのです。2030年に20%はもうすでに太陽光発電で越えたのですから、2030年30%くらいの目標を立てるべきでしょう。その時には原発をどうするのかという問題は避けては通れません。なぜなら、日本は世界一の人口減少社会が襲ってくるのです。今の需要の20%や30%の再生可能エネルギーで電力を賄えれば、その時代にはその量は全需要の50%などになるからです。早急に原発をどうするか安倍政権は逃げずに決めるべきです。そうしなければ日本の再生可能エネルギー政策は描けないのです。そしてこのFITの議論にも私たち市民や消費者の声を反映させる仕組が必要です。ドイツのFITと日本の大きな違いは地元の人の電力と中央の投資家の電力に買取価格差を導入しなかったことです。繰り返しになりますが、九電管内では地元の小規模施設を優先させるべきです。

九州電力からのお詫びの文章です
「九州本土の再生可能エネルギー発電設備に対する接続申込みの回答保留について」


再生可能エネルギー:九電、買い取り中断 固定制導入で需要超え
毎日新聞 2014年09月25日 

九州電力は24日、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)に基づく太陽光と風力発電の新規受け入れを25日から中断すると発表した。九電管内で計画中の太陽光発電事業の出力が、管内の需要を上回り、電力供給が不安定になる見通しとなったため。急増する再生エネの受け入れを巡っては、北海道電力と沖縄電力でも昨年から管内全域で一定規模以上の太陽光発電の新規受け入れを停止するなど、全国的な課題となっている。
九電管内では、日照時間が長いことや利用可能な土地が多いことなどから2012年7月のFIT導入後に太陽光発電などの導入計画が急増。全国でFITの認定を受けた太陽光発電、風力発電設備の26%が集中している。特に買い取り価格が下がる直前の今年3月には、過去1年分に当たる7万件の申し込みが集中した。
九電が7月末までに買い取り申請を受け付けた太陽光と風力発電の計1260万キロワットがフルに稼働した場合、天候などの変化による急な出力変動に対応できなくなり、安定供給に支障が出る可能性が出ている。電力需要が比較的少ない春・秋季の管内全体の最大需要約1000万キロワットを大きくオーバーし、発電、送電機器の損傷などによる停電の可能性が高くなるという。
九電は年明けにも川内原発1、2号機(鹿児島県)を再稼働させる構えだが、今回の中断決定は「短期的には再稼働を織り込んだものではなく、再生エネの拡大を今後も推進していく」などと説明している。【寺田剛、遠山和宏】
by nonukes | 2014-09-25 16:42 | 自然エネルギー | Comments(0)

  小坂正則

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