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小坂正則の個人ブログ

「総合的な学習」で感じた「人間力」形成のために大切なものとは

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「総合的な学習」で感じた「人間力」形成のために大切なものとは
小坂正則

先日、私はある学校で「総合的な学習の時間」の講師の依頼を受けて、90分の講話を行いました。これまで短大では毎年のように講師の依頼を受けているのですが、それ以外の学校での話はこれまでには数回やっただけです。私のこれまでの経験から言えることとして、子どもたちへの「エネルギー」の話などは、若ければ若いほど真面目に聞いてくれるという感想をもっています。短大生への話は元々依頼された先生から「壁に向かってしゃべる覚悟でお願いします」と言われているので、関心のない学生相手でも動じることはありません。それでも何とかして関心を誘おうと、あの手この手で気を引くテーマや質問などしているのですが、結果は学生に聞かなければ何とも言えませんが。
さて、今回は実にシビアな依頼でした。「原発論争」という今日の政治的なテーマを直接学生が議論するという「ディペート」を実際に行ったそうです。そして、その後に私の講評と「ディペードはどうあるべきか」などの話をしてほしいという依頼だったのです。この仕事はさすがの私にも荷の重い作業です。だって、当のディペードを私は聞いていないのですから、講評などしようがないのです。
そこで私は「ディペードとは」という概念論を3分で話し、科学の歴史を5分くらい話し、その後地球の誕生からプレート移動説の誕生とプレート型地震の話と原発の話をしました。ただ、私は最初にこのような前提条件を皆さんにお話ししました。「私は何年も自然エネルギーの普及活動を行っている者です。ですから、私は原発が嫌いです。その私が皆さんの前で中立の立場で話すことの方が無理です。私は原発の批判派として話すでしょうから、そこのところは差し引いて聞いてください」と。「つまり私の話は疑って聞いてほしいのです。私が出す数字などは出来るだけ政府の出した数字を利用しますし、東大の教授の原発必要論の話を中心に説明します。なぜなら、ここに賛成論者と反対論者が2人いて、それぞれが真っ正面からあなた達の前でディペートを行えば、ディペートとはどういうものかを実践的に説明できるでしょうが、そうはいきませんので、ここでは双方の意見とそして共通認識の部分と対立軸を話します。そこで皆さんは、私の話をほんのちょっとでも参考にするか、ここはおかしいぞという疑問点が生まれたら、今度はそこからあなた方自身で疑問点を自ら学習してください。学習の原点は疑問だからです」と話しました。また、「その必要性も後で話しますが、疑問を持つこと、または疑うことこそが科学の発展の契機であり、あなた方の人間力を身につける大きな手段だからです」と。

講話の後に学生の考えがどのように変化したか


私は出来るだけ正確に話すためにあえて、原発必要論者の話をしました。東京大学大学院特認教授で「NPO法人原子力の安全と利用を促進する会」の諸葛宗男氏のプレゼンを利用して、彼の言いたいことをかいつまんで話しました。元々彼は「この事故で原子力発電をやめてしまうのではなく、前向きにこの経験を活かして設計を改善して、世界で最も安全な原子力発電所の実現を目指すべき」という御仁だそうです。
原発推進側の再稼働の必要論は「国費の流出」や「電気料金の値上げで企業が日本から逃げ出して行く」などをプレゼンを見せながら具体的な数字で示しました。そして、「今ある原発が安全だとは私も思わないが、せっかく作った原発なのだから、残った減価償却期間だけでも安全に配慮して動かすべきではないか」という必要悪論なども含めて説明したつもりです。それに対して反対論は福井地裁判決で言い渡された「運転停止で多額の貿易赤字が出たとしても国富の流出や喪失というべきではない。豊かな国土とそこに根を下ろした国民の生活を取り戻せなくなることが国富の喪失だ」という判決文を読み上げただけです。また、いま世界でどのような動きがあるのか。それは再生可能エネルギーの動向や設備費用が毎年下がっている状況なども説明しました。
そして、最後に私は人間力の話をしました。これが私の話の結論だと思っていたからです。
科学が発展してきたのは科学者が「これって本当なのかなあ」とか「こんな不便なことは改善できないのか」とか。「常識だと言われていることが本当なのか」など様々な疑問や疑いが新しい科学の発見や発展を導いてきたのです。「だからあなた方も疑いの目を持ってこの社会や科学を見つめ直してほしいのです。そこから新たな発見や発明が生まれるかもしれないのです」と。

そして人間力を付けるための3つの視点として
①自分の頭で考えて自分の頭で決める。
②全ての情報はまず疑う。疑問にこそ真実の芽があり、新たな発見がある。
③失敗しない者に成功なし。1の成功の裏には99の失敗がある。継続は力なり。

という話の解説をして終わりました。そして、彼らの感想コメントを後からもらったのです。その中から、彼らが私の話を聞いてどう感じたかが分析できました。最初に彼らの中で原発が必要だと考えていた人が約43%(必要悪論も含めて、ない方がいいけどいきなりなくすのは無理だろうという考えも含めて)。反対論者が57%(反対論の中にも中間論も入っています)だったようです。この数字自体は世論の動向とよく似ていると思われます。その理由として、両親などと話した中で「原発はいやだけどなくなったら電気料金が上がるのも困るし、日本はエネルギーのない国だから当分は原発は必要だよね」という必要悪論が占めていたのでしょう。
そして私の話を聞いて考えがどう動いたかを見てみたら、反対論者が65%で、中間論者が35%へと変化し、原発必要論者が0%へと移行したのです。賛成論から反対論へ移行した者が19%で、必要論から中間論へは23%へ移行しました。この結果だけを見たら「してやったり」と皆さんは思うかもしれません。

自分の弱さを理解できる者だけが本当の強さを持つことが出来る

しかし、ここからが私の問題提起の本質に入るのです。実は今回の私の話によって考えが変わった者が実に多かったということが実証されたのかもしれません。私の話の後に自分の考えが変わった者は77%です。もちろん彼らの優しさで、「講師のセンセに私の考えが変わるほどのすばらしい話でした」というお世辞も含まれているということもあるでしょう。でも、それにしてもそれだけ多くの者が90分の講話で考えが変わったということも1つのデータとしてはおもしろい事実ではないでしょうか。ということは逆に原発必要論者が講話したら、その多くが同じように考えが変わったかもしれないのですが。実はその実験をやればもっとおもしろいと思うのですが、残念ながら私にはそんな調査をする機会はありません。つまり、人の考えなどどうにでも操作されるほど曖昧なものだということをこの実験結果が示しているのではないかと思うのです。そこから私の結論として、自分の意見というものの「不確かさ」を皆さんに理解してほしいのです。つまり、「自分は誰かの影響を受けて、今の考えがあり、逆の説得を受ければ、またその考えになびいてしまいかねないほど軟弱な存在なのだ」ということなのです。
私は常に今の私の世界観や哲学はアメリカナイズされた上にできあがった思想であると考えています。そこにはイスラム国家のひとびとの世界観や哲学とは異質のものだと思うのです。ですから、私の考えなど所詮、この国の支配者などによって作られた「借り物の思想ではないか」という疑いを持ってものごとを見つめる作業を行うようにつとめているのです。それぐらいがちょうどいい案配のフリーハンドの発想を持つことが出来るのではないかと考えているのです。「異質な者の存在を認める」ことや「多様性の尊重」ということがこの世界の様々な矛盾を解決に向かわせる鍵だと思うからです。
ですから、私たちは自分という者の弱さを理解して、私は弱い者だから、社会や人の影響も受けやすいので、くれぐれも注意して人の話や新聞やNHKなどのマスコミ情報を聞こうという意識を持つべきなのです。オレオレ詐欺などでよく言われることですが、「自分は騙されやすい人間だと自分のことを理解した者だけが騙されない」と。
そのことを私たちがしっかり持って、騙されない人間力を備えて、初めて私の世界観や哲学を一歩一歩作っていくことが出来るのではないでしょうか。
by nonukes | 2014-09-10 15:09 | 小坂農園 薪ストーブ物語 | Comments(0)

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