2014年 09月 03日
精神科病院と保安処分
「60歳からの青春 ―精神科病院40年をへて―」の時男さん
精神科病院と保安処分
小坂正則
6月10日NHKのETVで、「60歳からの青春 ―精神科病院40年をへて―」という番組があった。精神病院に入院していた患者の時男さんが、2011年の311福島原発事故で、病院が閉鎖されてしまい、避難所へ移ることになり、そこから社会復帰したという内容だった。時男さんは10代の時に統合失調症と診断され家族の同意で入院させられて、63歳で初めて娑婆に出てきたという。その人は社会復帰可能という医師の診断を10年以上前に受けていたというが、家族は今更彼を受け入れる気はなかったのだろう。両親が死んでしまった現在で独身の彼は、兄弟を頼るしか方法がないからだ。日本には精神障害者や元患者を受け入れる公的機関がほとんどないし、精神障害者の共同作業所やグループホームを作ろうとすると、必ず周辺住民の反対運動が起こって建設できない。周辺の地価が下がるとか、子どもに危害を加えるのではないかという偏見や差別が蔓延しているからだ。
幸いにも彼は精神障害者や元患者たちを支えるNPOが運営するグループホームに入居出来て、生活保護をもらいながら、「やっと青春を取り戻した」と語っていた。
日本には精神疾患で1年以上入院している患者が20万人以上いるという。その大半が社会的入院で、本来入院する必要のない元患者が社会復帰して暮らす場所がないから、病院を出られないという。
精神病院と地域社会が元患者を檻の中に閉じこめている
NHKの説明では「国の“地域移行”への取り組みの遅れや、入院の長期化に伴う社会の中での居場所の喪失などによって、何十年も病院に“住む”しかない状況が、依然、続いているのです。こうした実態は「社会的入院」と呼ばれています。日本国内の精神科の平均在院日数は、他の先進国が1~2週間程度であるのに比べ、283日と圧倒的に長く、「社会的入院」は国際的にも問題視されています。規則の厳しい入院生活から、地域に出て自由に暮らせるようになった時男さん。いま時男さんは、失われた“青春”を取り戻すかのように、毎日新しい発見の中で暮らしています。どうすれば必要のない入院を減らすことができるのか。時男さんの姿を通じて「社会的入院」の問題を考えます。」
精神病院では入院費がほとんど不要なため、一度入った患者の家族は引き取らないで病院へ入れっぱなしにする傾向が強いというし、一番の元凶は精神病院のベットを常に満員状態にしておきたいがために、病院が不要な薬を飲ませたりして患者を作り続けているのだ。日本の精神疾患に対する医療政策が世界とかけ離れている。明らかに病院の金儲けのために患者が犠牲になっているのだ。なぜなら日本には35万床の入院用ベットがあるという。この数は世界一だそうだ。イタリアでは精神疾患の患者は入院させないという政策で、通院やグループホームなどで生活して積極的に社会復帰させるという。日本は厚生省と医師会がぐるになって、精神病院の経営のために入院しなくてもいい、正常な人が自分の意志に反して強制的に約30万人がベットにくくりつけられているのだ。こんな不当な人権侵害事件があるだろうか。
精神病院は保安処分の受け皿になる
1996年に「ライ予防法」が廃止されて、ハンセン病患者の差別や国家による隔離政策が終わったのは、わずか8年前のことなのだ。それまで戦前から戦後一貫して、ハンセン病患者は強制的に不妊手術をさせられたり、療養所へ隔離させられていたのだ。このようなハンセン病患者の人権蹂躙事件は一定の解決がされたが、精神疾患の元患者の人権はいまだに確立されていない。それだけではない。精神病棟はソ連や中国では政治犯を閉じこめておく絶好の留置場として利用されてきたという。それは「保安処分」という形で、社会的な犯罪や殺人などを犯す可能性のある者を国家が強制的に隔離するという方法だ。今でも、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第29条に基づいて精神保健指定医の資格を持つ医師二名以上が診察を行い、入院が必要と意見が一致した場合は都道府県知事によって措置入院させることができる。」とあり、家族の同意があればいとも簡単に強制入院を行うことが出来るのだ。現在、元患者を社会復帰させるという方向で国は自立支援の方向だけは唱っているが、そうなれば精神科病院の経営が成り立たなくなり、軒並みつぶれる病院が出てくるために、病院の施設を社会復帰の場として認めると厚生省は妥協案を考えているというが、それは病棟のカンバンを変えただけで、本当の社会復帰などではあり得ない。自立支援は1人で生活することであり、最低でもNPOなどによるグループホームでの生活が基本だ。そして、精神障害者への不当な人権無視と同時に、これまで秘密裏に過激派といわれる政治犯を精神障害者と偽って拘束し、精神安定剤などの薬漬けで廃人にされた者が大勢いるといわれている。
政府の究極目標は「共謀罪」と「保安処分」だ
盗聴法が国会を通過したときは厳しい運用上の縛りがあった。盗聴はNTTの職員立ち会いの上で、NTTで行い、殺人罪や麻薬取引など凶悪犯罪のみに限定されていた。ところが今年になって法制審議会で、それらの縛りは全て取っ払われて、いつでも警察署内で盗聴できて、重大犯罪の縛りもなくなった。盗聴法の次が、特定秘密保護法であり、これらは全て米国の要求に従って日本にも導入された法律だ。そして特定秘密保護法が出来てしまって実際に運用規定がこれから作られるのだが、実際に罪を犯していなくても国民は何が秘密であるかを知らないのだから、逮捕されても自分が何の罪で逮捕されたかも分からない。また、起訴され裁判所でも自分がどんな秘密を漏洩させたかも知らされないまま裁判長は判決文を読み上げ、刑罰を与えることが出来る暗黒社会。そして戦前にもあった「共謀罪」も来年には国会に上程されようとしている。この共謀罪は実際に犯罪を犯していなくても、これから犯す可能性があり、その謀議を行ったという事案だけで何の事件も起きていないのに事前に逮捕し、刑罰を科すことが出来るという、まさに戦前の「治安維持法」。そして最後の法律が不審者を裁判所が「予防拘束」できる「保安処分」だ。この一連の法律は日本が北朝鮮や中国のような基本的人権のない警察国家をめざしているということを証明している。なぜなら、これらの法律の精神は国民の基本的人権を制限して国家の秩序維持が何よりも最優先するという、自民党の憲法改正草案の精神そのものだからだ。これら一連の不当な精神障害者差別や政治犯を精神障害者に仕立てて拘束する暗黒政治が日本にも迫っているのだ。だから私たちは1日も早く安倍政権を倒さなければならない。
by nonukes
| 2014-09-03 21:49
| 「緑の党」をつくろう!
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