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小坂正則の個人ブログ

私たちは南海トラフ巨大地震を防ぐことは出来ないが被害を少なくすることは可能だ

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私たちは南海トラフ巨大地震を防ぐことは出来ないが被害を少なくすることは可能だ
小坂正則
「南海トラフ巨大地震 ~歴史・科学・社会~」石橋克彦著書 から学ぶ



「原発震災」という言葉を生み出して、福島原発事故のような取り返しのつかない巨大原発事故が地震や津波の影響で近い将来必ず起こるであろうと警告し続けてきた地震学者の石橋克彦神戸大学名誉教授の最新作をさっき読み終わりました。
そこで、この著書の感想文を書こうと思ってペンを取ったのではないか、キーボードに向かったのです。やはり、「ペンを取った」の方がかっこいいなア。
この著書は専門家用に作ったわけではないと思います。素人にも理解できるという前提で書いたのだろうと思うのですが、私の能力では、前半から中盤の「歴史」と「科学」の章は歯が立ちませんでした。残った章は「社会」しかありません。でも、雰囲気だけは何とか感じることが出来たような気がします。地震歴史学という分野は1つ1つ過去の文献を漁りながら、その信憑性も忖度しながら、地震の規模や揺れを検証していくという、実に地味な作業なのですね。「大変な作業を積み重ねておられるんだ」ということだけは分かりました。
次の「科学」ですが、入門程度の話は理解できました。何せ「プレート型地震」という地震研究は1970年代から始まったんですね。まだわずか40年しか経っていないんです。だから地震研究は、正にこれから始まるといっても言い過ぎではないのかもしれません。つまり、40年前後に作られた老朽原発が地震に耐えられないのは当たり前で、日本は世界でもまれの4つか5つのプレートがぶつかっている列島だというのに、この「プレートテクトニクス理論」がもう少し早く分かっていたら、こんな国に原発など作らななったのではないでしょうか。しかし、自民党安倍政権は事故があっても、世界一の地震国だと分かっていても再稼働するというのだから、そんなこともないのでしょうか。
プレートとプレートの間も一定にくっついているわけではなく、強くくっついている場所を固着域またはアスペリティーと言うそうです。NHKの特集「メガクウェイク」で見た覚えがあります。堅い箇所が次々に剥がれて地震が起こると言ってました。地震は地球の表面を覆っている様々なプレートが少しずつ動くエネルギーなどによって地下の岩盤と岩盤の間に歪みを生み、それが耐えられなくなった時に放出されるエネルギーが起こす揺れのこと。地震にも様々な種類があるのです。プレート内地震とプレート外地震にスラブ地震やアウターライズ地震に直下型地震などです。そして東海地震や南海トラフ地震のメカニズムをここでは説明してくれます。

南海トラフ地震の被害想定

最後に「南海トラフ地震と社会」というテーマです。どんなんに英知を結集しても地震を防ぐことも、全く無傷で地震をやり過ごすことも出来ないでしょう。でも、出来るだけ被害を少なくすることは可能です。311東日本大震災はとてつもなく大きな地震と津波でした。しかし、今度必ず来るであろう「南海トラフ地震」は、それを遙かに上回る巨大地震だと言われているのです。
そのために私たちは何をいま準備すべきかを石橋さんは訴えているのです。石橋さんも参加している「中央防災会議」のワーキンググループで南海トラフ地震の被害想定を出したそうです。すると、死者は3万人から32万人。被害額が220兆円(東日本の10倍以上)地震直後の断水人口が3440万人(東海・四国)だそうです。停電が2710万人。震災後3日間の食料と飲料水不足が3200万食と4800万リットル。この膨大な物資をどこから運んでくるのでしょうか。負傷者を手当てする病院も被災していて、いまでも患者で病院はどこも手一杯なのに、そうして何万人もの重傷患者を看ることができるでしょうか。電気もガソリンも医薬品も満足にない状態で、きっと多くの患者が静かに見捨てられるのでしょう。

近代史上最大の巨大地震を前に原発もリニアもやめなければならない

上の被害想定の数字には1つの大きな欠陥があります。原発事故による被害は考慮されていないのです。もし、浜岡原発や伊方原発が稼働中に南海トラフ地震が起こったら、これに輪をかけたように放射能災害が加わるのです。もう、その時点で、為すすべを私たちは失っているでしょう。放射能被害がなくても、手も足も出ないほどの大災害で、ものも人も足りずに大混乱を起こしてしまうのに、その上、生きた延びた人間はどこに逃げろというのでしょうか。あまりにも非現実的です。安倍政権が行おうとしていることは「南海トラフ地震」がまるで起こらないとでも思っているかのようです。「巨大地震が起こらない」とか「原発だけは無傷で済む」と考えている経営者に学者や政治家がいるとしたら、彼らはみんな狂っています。(狂っているなどと石橋さんは書いてません)
石橋さんは言います。「浜岡と伊方の再稼働は無謀である」と。「浜岡原発と伊方原発はどれだけの揺れが襲ってくるか想定できないからだ」と。また、「それ以外の地域の原発も、余震や誘発地震で大きな揺れが襲ってくる可能性がある」と。「リニア新幹線は糸魚川静岡構造線や伊那谷断層帯、清内路峠断層帯、阿寺断層帯などの日本列島第一級の活断層を貫く」と。


「地震に備える」ことの意味


地震はこれだけではないと石橋さんは言います。首都直下地震や富士山巨大噴火なども想定するひつようがある。また、これまで100年から150年の間隔で起こってきた南海トラフ地震によって多くの犠牲者が出たが、彼らはすぐに復興した。彼らの生活は自然的・自給的・自立的であった。ところが今の暮らしは「顔の見えない他者」に無限に依存することを余儀なくされている。
「原発に象徴される科学技術至上主義と、市場原理・自由貿易至上主義によって繁栄している社会が、人類史上初めて超巨大地震の試練を受けるのだといえる(311は序の口だった)。いまの日本社会システムが、被災者を1人も切り捨てることなく試練を乗り越えることが出来るだろうか。」と。
被害を少しでも少なくするためには三大都市圏への一極集中を止めなければならばならない。(略)つまり「国土強靱化」とは、一言でいえば「地方の再生」であろう。これは三大都市圏の集中を是正することと表裏一体であり、地震対策は別としても、日本列島における人と富の異様な不均衡を改善するものになる。小規模分散型で組み合わせたエネルギーの自給が重要である。食料の地産地消も強力にすすめるのがいい。
さらに地域経済を域内循環型で活性化させ、仕事場を確かなものにすることも重要である。事業者に雇われて働き、震災で息詰まって解雇されるというケースが多いが、解雇されない雇用形態(略)従業員が全員経営者という「労働者協同組合」(ワーカーズコープ)などを地域にどんどん広げるべきだ。
そして最後に「巨大な津波にたいして巨大な堤防で対抗するのではなく、(略)大自然を畏敬してその摂理に逆らわないのが人間の節度というものである。(略)南海トラフ巨大地震に賢く備えるということは、経済成長至上主義と、それによる貧富や地域間の格差を正し、人間本来の豊かさを取り戻すことに通じるものであろう」
私はこの最後の章を読んで、「ここでも私たちがめざしている『緑の生き方』や『循環型の社会システム』が求められているんだ」と、正に我が意を得た思いがしました。

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by nonukes | 2014-07-10 18:20 | 原発再稼働は許さない | Comments(0)

  小坂正則

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