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小坂正則の個人ブログ

私たちは放射能汚染と向き合って生きて行かなければならない

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私たちは放射能汚染と向き合って生きて行かなければならない
有機農業研究会「食と農おおいた」原稿
小坂正則

「食と農おおいた」の100号記念に読み切りの原稿を書くようにと、諫山事務局長からお達しがありましたので、私は「未来は有機農業にしかない」という明るい話を書こうと思っていました。ところが、近頃、私の周りで、放射能汚染食品に対する考え方に、偏って凝り固まった考えの方が多くて、彼や彼女らの考えに一定の理解を示していた私でもちょっと違和感を持ってしまうことがあったのです。そこで少し整理してみたいと思って上のような暗いテーマになってしまいました。

ここは追加の文章です

その理由とは、1つは私の周りの若い母親が「私はこれでサンマを一生食べられなくなった」と言ったのです。私は「なぜサンマが食べられないの」と聞いたら、「サンマは回遊魚だから放射能に汚染されているからよ。小坂さんも食べてはだめよ」というのです。私は「確かにサンマは回遊魚だけど、だから安全なんじゃないの。危険なのは福島原発周辺の海底に住んでいる地の魚だよ」と。でも彼女は本当に一生食べないつもりなのです。また、私の周りの311以後の世代の反原発運動に参加する母親たちが放射能に敏感なのはいいのですが、私に言わせれば異常なほど敏感で、そのことの方がよっぽど精神衛生上よくないのではないかと思われる女性が多いのです。食品の健康への影響は1ベクレルくらいの放射能汚染よりも添加物の方が私はよっぽどガンや白血病などの健康被害の影響は大きいと思うからです。だからといって、「放射能など笑って過ごせば気にする必要はない」などという長崎大学の山下教授のようなことは言いません。私は「正しく知って正しく恐れる」べきだと思うのです。
3月8日に京大の今中哲二さんをお呼びして講演してもらった時に、彼は「放射能とどう向き合うか」という話の中で、「折り合いをつける」と話されました。「折り合いをつける」とは我慢値を自分で判断して、各自が納得して選択するべきだと言うのです。納得するためには「汚染値を公表する」ことが大原則です。だから不安がって何も食べないという決断も政府に対する不信感の現れなのでしょうが、日常生活に支障を来すような拒否反応は、子どもたちの食生活の栄養バランスなどに大きな影響を与えかねないのではないかと、むしろ不安になるのです。


お母さんたちが恐れる汚染食品の責任は全て政府にある

チェルノブイリ原発事故の直後に私たち世代のお母さんたちは、日本にも襲ってきた放射能におびえて野菜はよく洗って食べたり、牛乳は大丈夫なのかと言って、日本中がパニックになったことを覚えています。それでも当時は輸入食品の放射能汚染が問題の中心でしたので、国産品の食品の放射能汚染はそんなに問題ではありませんでした。
ところが今回の福島原発事故により放出された放射能は東日本を中心に全国にばらまかれてしまい、チェルノブイリの比ではない膨大な汚染をもたらしたのです。原発事故直後の政府の取った避難対策や食品汚染への取り組みなどが、あまりにも消費者や国民をないがしろにしたものだったため、「国民は政府のいうこと信用しない」という状況が尾を引いて、今日でも政府が「安全」といっても信用しない消費者が多いのです。
とにかく政府は一貫して何事もなかったかのように「安全です」と、しか言ってこなかったのですから。後でガンに冒されても政府は責任を取るわけでもなければ、病気になった者がバカをみるだけなのです。甲状腺ガンの疑いのある福島県内の子どもたちが90人もいるという現実に、福島の子どもたちは不安を抱えて生涯生きて行かなければならないのです。また、これからますます甲状腺ガンの子どもたちが福島だけではなく東日本を中心に出てくることでしょう。100万人に1人か2人という発生率と言われている甲状腺ガンが、なぜ福島の18歳以下の37万人の子どもの内に90人以上いるのか。ということは一般的な罹患率の300倍なのです。
なぜこのように「甲状腺ガンの子どもたちが多いのか」という疑問に対して、福島県医師会は「理由は分からない」や「全員の検査をしたから見過ごされる数が上がったスクリーニング効果だろう」とかはいいますが「原発事故由来の甲状腺ガンは4年後にしか出て来ないので福島原発事故のせいではない」と、それだけは確信を持って言うのです。
チェルノブイリ原発事故では4年後に甲状腺ガンが多発したことから医学界ではこのように言われているのですが、それは4年経ってから世界中から医者が調査に入って子どもたちの甲状腺ガンを発見したから「4年後に患者数が増えたのではないか」と言われているのです。4年間ガンが出ないという根拠ではないのです。また、本来なら原因が分からないなら原発事故の影響かもしれないではないですか。だって分からないのだから。ところが彼らは自分の都合の悪いことだけは確信を持って分かるといって、それ以外は分からないと言って逃げるのです。これは犯罪者心理の矛盾した論理です。福島原発事故以外に何が考えられるでしょうか。素人の私でも予想がつきます。犯罪者はよく自分の都合のいいような言い訳をするものです。学者としての良心など彼らには微塵もないのでしょう。何の罪もない子どもたちをガンに陥れた責任は東電と福島県と政府にあります。そしてウソをついて国などの責任逃れに手を貸す福島県医師会は共犯者です。

放射能に汚染された食品から私たちは逃げられない

日本政府の「安全宣言を信用しろ」と、言われても私は信用しません。彼らはこれまで一度たりとも国民の生命や健康を考えて情報を発表したり、全ての生データを出したことなどないからです。チェルノブイリ原発事故の後に宮内庁から原子力資料情報室という反原発の研究室に問い合わせがあったそうです。「天皇の食べる食品の汚染度を測ってもらえないか」と。なぜ宮内庁が厚生省や東大の研究室に相談しなくて「反原発の拠点」に電話をして来たのかといえば、宮内庁は政府を信用していないからでしょう。
しかし、だからといって私たちが過度に恐れて「日本近海の魚は食べられない」とか「放射能が1ベクレルでも出たシイタケは食べれない」と恐れることは間違っていると私は思います。 冷静に汚染値を見て食べるか食べないかを判断すべきなのです。政府は福島の食品を定期的に測定しています。しかし、その数値は公表していません。また、100ベクレル以上の基準を超えた汚染米も100ベクレル以下の米と混ぜたら流通可能という矛盾もあります。ですから政府に取って放射能汚染問題とは「風評被害」対策だけなのです。「いかにして値崩れの起きた農産物の価格を引き上げるか」だけが政府の取り組むべき課題なのです。だから安全宣言キャンペーンのために汚染値を測定しているのです。
しかし、消費者は仮に100ベクレル以下だったというのが事実だとしても、実際には何ベクレルだったのかが知りたいのです。知った上で自らが判断すべきなのです。福島やその周辺の地域の放射能が大量に降ったところの農産物は全量検査をすべきです。そしてその数値を商品に添付すべきです。そのためにお金がかかったとしても、それによって消費者の信頼を得られるのです。それが事故を起こした政府の責任です。
そして消費者はむやみやたらと恐れるのではなく、「自分はこれくらいなら受け入れられる」という判断基準をきちんと各自が持つべきです。そのためにも全てのデータは公表すべきなのです。
「福島の農産物を食べて支えよう」という運動が事故直後からありました。私は「本当に汚染値をちゃんと測っているのだろうか」と疑問に思いました。でも、汚染値が低かったら、私は食べます。
私は以前東ドイツの元環境大臣が大分に来たときに聞きました。「先生は実際どの程度の汚染値だったら食べてもいいと思いますか」と。先生は「10ベクレル以下だったらまあ、食べてもいいのではないかと思うが、これは相対的な比較の問題なのだ。放射能に「しきい値」(これ以下なら安全だという数値)はないのだから、食品が全て100ベクレル以上に汚染しているのなら、10ベクレルの基準値は無意味だ。どれだけ汚染の少ないものを選べる環境にあなたが住んでいるかだ」と。「そして子どもにはできるだけ汚染値の少ないものを与えなさい」と。
私の農場の土壌のセシウム濃度は1kgあたり5.7ベクレルです。そして乾しシイタケの値は1ベクレルの限界値以下でした。でも、ゼロだというわけではないでしょう。大学の研究室の測定器だったら0.1ベクレルの汚染値だったかもしれません。日本中、いえ世界中の大地は放射能に汚染されているのです。ちなみに私の農地の汚染物質はチェルノブイリや大気圏核実験の放射性セシウムでした。福島由来のセシウムではありませんでした。
大分の干しシイタケから放射能が出た影響で、干しシイタケが値崩れを起こしているそうです。全国でも乾しシイタケが売れないそうです。100グラム3千円くらいで売られていたものが千円以下で売られています。

核というパンドラの箱を開けてしまった代償

だから放射能が出たからと騒ぐのではなく、どれだけの汚染値で、どれだけなら食べるかという自分の基準値を私たちが持つべきなのです。私は60歳を越えているので、100ベクレル以下の食品だったら安心して食べるでしょう。福島の農産物も食べます。だからといって皆さんに食べるべきだとは言いません。ただ福島の農業を支えることも大切だと思うからです。
私たちは他国のみなさんから見たら原発事故による放射能汚染の加害者です。日本国民は世界中に大量の放射能をばらまいた責任があります。世界中の国々の貧しい人たちに、私たちが食べない放射能汚染した食べ物が回って、貧しい国の子供たちの口に入るかもしれないのです。チェルノブイリ原発事故の時にも同じような議論がありました。先進国といわれる国が370ベクレル以上の汚染穀物を拒否したら、その輸入を拒否された汚染穀物はどこに行くのかと。それは必ず最貧国の子どもたちの食糧として流通したでしょう。チェルノブイリ原発事故で小麦や大麦が焼却処分されたというニュースを私は聞いたことがないからです。私が食べない汚染食物は世界中の誰かが必ず食べるのです。ですから私たちは好むと好まざるとに関わらず、放射能と向き合って、これからも生きていかなければならないのです。それは人類が核というパンドラの箱を開けてしまったことの代償なのでしょう。
by nonukes | 2014-07-03 11:30 | 小坂農園 薪ストーブ物語 | Comments(0)

  小坂正則

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