2014年 04月 13日
「つゆくさ通信」第124号を発行しました
「つゆくさ通信」第124号を発行しました小坂正則
本日「つゆくさ通信」124号3月20日号を発行しました。1月余り遅れての発行です。
今回は3月8日と9日に開催した今中哲二さんの講演会を開催しましたが、その今中さんの原稿を頂きました。そのほかは4月28日に予定されている「九電本店交渉」へのご案内などです。
また、今回の表紙は東京のイラストレーターの清重伸之さんの作品ですが、これらの作品を額に入れて販売します。小坂邸にこれから陳列しますので、みなさんよろしかったらぜひご覧ください。
また、「つゆくさ通信」の定期購読をご希望の方は下記までお申し込みください。
見本誌をお送りいたします。
つゆくさ通信の概要
定期購読料:年間2000円
年鑑発行:6回(奇数月に発行)
発行元:脱原発大分ネットワーク
問い合わせ先:090-1348-0373( 小坂)
E-mail:nonukes@able.ocn.ne.jp
①川内原発の再稼動を阻止し、全ての原発の廃炉を……………………深江守
②函館市が青森県下北半島の大間原発の建設差し止めを提訴………………小坂正則
③放射能汚染への向き合い方~どこまでの被曝をがまんするか~……今中哲二
④家庭菜園へのすすめno.2…………………………………………………諌山二朗
⑤今中哲二さん講演会報告 …………………………………………………河野近子
⑥私なりの脱原発~裁判を起こした松井やよりさんと武藤類子さん…伊形順子
⑦「情報交差点」~ドミノ倒しにさせてはいけない~「とめなきゃ川内原発」…大原洋子
⑧日本人のいちばん身近な国際問題(2)………………………………清重伸之
⑨情報短信
⑩脱原発運動は「暗闇の思想」と「自然エネルギー成長戦略」の両方が必要…小坂正則
⑪母的脱原発魂 其のなな…………………………………………………安岡カズミ
⑫おくら百人一首 「編集後記」
川内原発の再稼働を阻止し、全ての原発を廃炉に
脱原発ネットワーク・九州 深江 守
九州電力は昨年7月8日、川内原発1、2号機の、7月12日には玄海原発3、4号機の再稼働に向けた申請を原子力規制委員会に行いました。原発の再稼働申請にあたって原子力規制委員会は、電力各社に「想定しうる最大規模の過酷事故とその対応」を求めました。九州電力が想定した過酷事故は、「大口径配管破断による冷却水流出、緊急炉心冷却水注入失敗、格納容器スプレー注入失敗」の3つが重なった時、約20分で炉心が溶融するというものです。
絶対に起こりえないとされてきた過酷事故が想定されましたが、何とその対策は、「格納容器の底に水をため、メルトスルーしてくるドロドロの溶融物を水で受け止める」というものです。当然、水素爆発や水蒸気爆発、一酸化炭素爆発など、様々な可能性が指摘されていますが、それでも「事故の拡大は防げます」という、九州電力。新たな安全神話が生まれようとしています。
起こり得ない事故を想定し、「それでも安全です」
そもそも九州電力が想定している事故は、地震によって引き起こされます。しかも、原子炉施設の中で耐震設計上、最も重要度の高い原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する配管の破断事故です。原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する機器・配管等は、どんな地震に襲われても絶対に壊れないことが求められる機器であり、それは最後の砦である格納容器も同じです。その耐震性は基準地震動540ガル(建設時は270ガルを想定)に耐えられるように設計されています。その配管が壊れるということは、Bクラス、Cクラスの機器・配管等は壊滅状態であり、もはやどんな対策を取ろうが事故の拡大を防ぐ術はありません。
九州電力が想定するような事故を防ぐためには、540ガルという全国的に見ても最低レベルにある基準地震動を見直し、柏崎刈羽原発並みの2300ガルに引き上げるしかありません。
「エイヤッ」と、引き揚げた基準地震動
昨年7月早々にも川内1,2号機、玄海3,4号機の再稼働を申請したにもかかわらず、中々審査が進まない状況の中で、九州電力は基準地震動を「エイヤッ」と620ガルに引き上げました。そのことが評価され、3月13日に開催された規制委員会定例会で「川内原発の優先審査」が決定したとマスコミ等で報道されています。玄海原発についても、ついでのように620ガルに引き上げていますが、「根拠が不十分」と更なる説明を求められています。 それでは、川内原発の620ガルは根拠が明確なのでしょうか。
昨年2月、文部科学大臣を本部長とする政府の地震調査研究会推進本部は、九州電力による川内原発近辺の活断層評価を見直す調査結果を発表しました。そこでは三つの活断層評価が大きく塗り替えられました。①五反田川断層については19km→25km、②甑海峡中央断層(FC)は16km→38km、③甑断層(FA、FB)に至っては18km→39kmとなりました。想定地震規模も①マグニチュード6.9→7.2、②6.8→7.5、③6.9→7.5と格段に大きいものになりました。
さすがに原子力規制委員会もこの指摘を無視することができず、推本の評価を取り入れるよう九州電力を指導しました。
その結果が、「エイヤッと、620ガル」なのでしょうか。
川内川は活断層!?
川内原発建設当時、「川内川推定断層」が問題となりました。橋本他論文(1972年)で、「久見崎地域と月屋山の間には著しい転移量をもった断層の存在が予察される」として、川内川沿いの断層の存在を肯定しています。この問題は、当時、国会でも議論されましたが、「活動性がない」と結論付けられています。
九州電力もその後、海上音波探査等の調査を行い、「川内川推定断層については、同断層の存否は明確でないものの、少なくとも新第三紀以降の活動はないものと判断される」と同様の結論を出しています。いかにも「活動性がない」かのようですが、この結論は、九州大学の下山正一助教らによる「旧汀線高度からみた九州の後期更新世地殻変動様式」(地質学雑誌第105巻第5号/1999年5月)と題する論文により否定されていたのです。
紙面の関係で詳しくは報告できませんが、九州電力の調査によれば、川内川河口の両岸20-30mの高度に、12.5万年前の汀線(なぎさせん/当時の海岸線)が示されています。一方、下山論文によれば、川内川河口の-36.1mの地点にやはり12.5万年前の汀線が示されています。これは国土交通省が行ったボーリング調査の資料を分析した結果得られたものです。この事実は、12.5万年の間に繰り返し地震が発生し、川内川河口に50m以上の落差が生じたことを意味しているのです。
また、1998年3月と5月に起きた鹿児島県北西部地震(M6.5とM6.3)の余震分布図が鹿児島大学北西部地震被害調査研究会(1998)により作成されています。それによると、余震分布が川内川中流域に集中していることが分かります。川内川断層はまさに今、活動している断層と見て差し支えないでしょう。
事故が起きれば、住民は避難できない
さて、原発の再稼働は事故が起きることを前提にしています。そして、事故による大量の放射能放出も想定し、それに備えて広範囲の自治体は避難計画と訓練が求められ、私たち住民には被ばくする覚悟が求められています。
鹿児島県の防災計画では「避難の際は,原則,自家用車両を利用するものとし,自家用車両による避難が困難な住民については,近所の方との乗り合い,若しくは,集合場所に参集し薩摩川内市,関係周辺市町等の準備した車両により避難を行う。」と書かれています。一方、薩摩川内市やいちき串木野市の広域避難計画を見ると、自治会ごとに人口、世帯数、バス避難集合場所、避難経路、避難先施設が一覧表になっているだけです。自家用車両による避難が困難な住民が何人いるのか。そのために必要なバスは何台か。また、そのバスをどのように調達するのか何も書かれていません。泉田新潟県知事は、民間人であるバス運転手の被曝防護ができなければ避難計画は成立しないと指摘しています。
また、環境経済研究所の上岡直見氏は「原発避難計画の検証」(合同出版)で独自にシミュレーションを行い、川内の場合、30㎞からの避難に少なくとも22時間かかるとしています。事故が起きれば、住民は避難できずに、被ばくの脅威にさらされ続けるしかありません。川内原発の再稼働は、何としても阻止しましょう。
4月28日(月)13:00、九電本店にて、地震・活断層をテーマに交渉を行います。ぜひご参加ください。
本日「つゆくさ通信」124号3月20日号を発行しました。1月余り遅れての発行です。
今回は3月8日と9日に開催した今中哲二さんの講演会を開催しましたが、その今中さんの原稿を頂きました。そのほかは4月28日に予定されている「九電本店交渉」へのご案内などです。
また、今回の表紙は東京のイラストレーターの清重伸之さんの作品ですが、これらの作品を額に入れて販売します。小坂邸にこれから陳列しますので、みなさんよろしかったらぜひご覧ください。
また、「つゆくさ通信」の定期購読をご希望の方は下記までお申し込みください。
見本誌をお送りいたします。
つゆくさ通信の概要
定期購読料:年間2000円
年鑑発行:6回(奇数月に発行)
発行元:脱原発大分ネットワーク
問い合わせ先:090-1348-0373( 小坂)
E-mail:nonukes@able.ocn.ne.jp
①川内原発の再稼動を阻止し、全ての原発の廃炉を……………………深江守
②函館市が青森県下北半島の大間原発の建設差し止めを提訴………………小坂正則
③放射能汚染への向き合い方~どこまでの被曝をがまんするか~……今中哲二
④家庭菜園へのすすめno.2…………………………………………………諌山二朗
⑤今中哲二さん講演会報告 …………………………………………………河野近子
⑥私なりの脱原発~裁判を起こした松井やよりさんと武藤類子さん…伊形順子
⑦「情報交差点」~ドミノ倒しにさせてはいけない~「とめなきゃ川内原発」…大原洋子
⑧日本人のいちばん身近な国際問題(2)………………………………清重伸之
⑨情報短信
⑩脱原発運動は「暗闇の思想」と「自然エネルギー成長戦略」の両方が必要…小坂正則
⑪母的脱原発魂 其のなな…………………………………………………安岡カズミ
⑫おくら百人一首 「編集後記」
川内原発の再稼働を阻止し、全ての原発を廃炉に
脱原発ネットワーク・九州 深江 守
九州電力は昨年7月8日、川内原発1、2号機の、7月12日には玄海原発3、4号機の再稼働に向けた申請を原子力規制委員会に行いました。原発の再稼働申請にあたって原子力規制委員会は、電力各社に「想定しうる最大規模の過酷事故とその対応」を求めました。九州電力が想定した過酷事故は、「大口径配管破断による冷却水流出、緊急炉心冷却水注入失敗、格納容器スプレー注入失敗」の3つが重なった時、約20分で炉心が溶融するというものです。
絶対に起こりえないとされてきた過酷事故が想定されましたが、何とその対策は、「格納容器の底に水をため、メルトスルーしてくるドロドロの溶融物を水で受け止める」というものです。当然、水素爆発や水蒸気爆発、一酸化炭素爆発など、様々な可能性が指摘されていますが、それでも「事故の拡大は防げます」という、九州電力。新たな安全神話が生まれようとしています。
起こり得ない事故を想定し、「それでも安全です」
そもそも九州電力が想定している事故は、地震によって引き起こされます。しかも、原子炉施設の中で耐震設計上、最も重要度の高い原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する配管の破断事故です。原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する機器・配管等は、どんな地震に襲われても絶対に壊れないことが求められる機器であり、それは最後の砦である格納容器も同じです。その耐震性は基準地震動540ガル(建設時は270ガルを想定)に耐えられるように設計されています。その配管が壊れるということは、Bクラス、Cクラスの機器・配管等は壊滅状態であり、もはやどんな対策を取ろうが事故の拡大を防ぐ術はありません。
九州電力が想定するような事故を防ぐためには、540ガルという全国的に見ても最低レベルにある基準地震動を見直し、柏崎刈羽原発並みの2300ガルに引き上げるしかありません。
「エイヤッ」と、引き揚げた基準地震動
昨年7月早々にも川内1,2号機、玄海3,4号機の再稼働を申請したにもかかわらず、中々審査が進まない状況の中で、九州電力は基準地震動を「エイヤッ」と620ガルに引き上げました。そのことが評価され、3月13日に開催された規制委員会定例会で「川内原発の優先審査」が決定したとマスコミ等で報道されています。玄海原発についても、ついでのように620ガルに引き上げていますが、「根拠が不十分」と更なる説明を求められています。 それでは、川内原発の620ガルは根拠が明確なのでしょうか。
昨年2月、文部科学大臣を本部長とする政府の地震調査研究会推進本部は、九州電力による川内原発近辺の活断層評価を見直す調査結果を発表しました。そこでは三つの活断層評価が大きく塗り替えられました。①五反田川断層については19km→25km、②甑海峡中央断層(FC)は16km→38km、③甑断層(FA、FB)に至っては18km→39kmとなりました。想定地震規模も①マグニチュード6.9→7.2、②6.8→7.5、③6.9→7.5と格段に大きいものになりました。
さすがに原子力規制委員会もこの指摘を無視することができず、推本の評価を取り入れるよう九州電力を指導しました。
その結果が、「エイヤッと、620ガル」なのでしょうか。
川内川は活断層!?
川内原発建設当時、「川内川推定断層」が問題となりました。橋本他論文(1972年)で、「久見崎地域と月屋山の間には著しい転移量をもった断層の存在が予察される」として、川内川沿いの断層の存在を肯定しています。この問題は、当時、国会でも議論されましたが、「活動性がない」と結論付けられています。
九州電力もその後、海上音波探査等の調査を行い、「川内川推定断層については、同断層の存否は明確でないものの、少なくとも新第三紀以降の活動はないものと判断される」と同様の結論を出しています。いかにも「活動性がない」かのようですが、この結論は、九州大学の下山正一助教らによる「旧汀線高度からみた九州の後期更新世地殻変動様式」(地質学雑誌第105巻第5号/1999年5月)と題する論文により否定されていたのです。
紙面の関係で詳しくは報告できませんが、九州電力の調査によれば、川内川河口の両岸20-30mの高度に、12.5万年前の汀線(なぎさせん/当時の海岸線)が示されています。一方、下山論文によれば、川内川河口の-36.1mの地点にやはり12.5万年前の汀線が示されています。これは国土交通省が行ったボーリング調査の資料を分析した結果得られたものです。この事実は、12.5万年の間に繰り返し地震が発生し、川内川河口に50m以上の落差が生じたことを意味しているのです。
また、1998年3月と5月に起きた鹿児島県北西部地震(M6.5とM6.3)の余震分布図が鹿児島大学北西部地震被害調査研究会(1998)により作成されています。それによると、余震分布が川内川中流域に集中していることが分かります。川内川断層はまさに今、活動している断層と見て差し支えないでしょう。
事故が起きれば、住民は避難できない
さて、原発の再稼働は事故が起きることを前提にしています。そして、事故による大量の放射能放出も想定し、それに備えて広範囲の自治体は避難計画と訓練が求められ、私たち住民には被ばくする覚悟が求められています。
鹿児島県の防災計画では「避難の際は,原則,自家用車両を利用するものとし,自家用車両による避難が困難な住民については,近所の方との乗り合い,若しくは,集合場所に参集し薩摩川内市,関係周辺市町等の準備した車両により避難を行う。」と書かれています。一方、薩摩川内市やいちき串木野市の広域避難計画を見ると、自治会ごとに人口、世帯数、バス避難集合場所、避難経路、避難先施設が一覧表になっているだけです。自家用車両による避難が困難な住民が何人いるのか。そのために必要なバスは何台か。また、そのバスをどのように調達するのか何も書かれていません。泉田新潟県知事は、民間人であるバス運転手の被曝防護ができなければ避難計画は成立しないと指摘しています。
また、環境経済研究所の上岡直見氏は「原発避難計画の検証」(合同出版)で独自にシミュレーションを行い、川内の場合、30㎞からの避難に少なくとも22時間かかるとしています。事故が起きれば、住民は避難できずに、被ばくの脅威にさらされ続けるしかありません。川内原発の再稼働は、何としても阻止しましょう。
4月28日(月)13:00、九電本店にて、地震・活断層をテーマに交渉を行います。ぜひご参加ください。
by nonukes
| 2014-04-13 23:31
| 脱原発大分ネットワーク
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