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小坂正則の個人ブログ

マイナス経済社会を楽しく生き抜く その4「スモールビジネス革命」

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マイナス経済社会を楽しく生き抜く その4
「スモールビジネス革命」

小坂正則

「ソーシャルビジネス」という言葉を皆さんも聞いたことがあると思います。「社会的企業化」とも言いますね。つまり一般的な利潤追求のためだけに事業を起こすのではなく、社会貢献を目的とした事業を起こすことを「ソーシャルビジネス」というのです。しかし、これは行政が税金でサービスを提供することではありません。あくまでも独立採算で社会貢献事業を起こそうという民間事業です。非営利活動法人(NPO)の事業などもこの部類に入りますがNPOだけではありません。株式会社でも立派な「ソーシャルビジネス」はあります。例えば不動産会社というのはどこにでもあります。不動産業というのは家賃の1月分を不動産手数料として借家人から不動産会社はもらうわけですから、家賃が高いほど儲けが大きいのです。だから不動産屋はどこも高額のアパートを斡旋したがるものです。しかし、格安のアパートを探している方は若者などには多いのに、格安アパートは少ししかありません。そこで格安アパートを専門の不動産業を若者がはじめたそうです。これなども立派な「ソーシャルビジネス」といえるでしょう。格安アパートを探している方への社会貢献事業だからです。

「耶馬溪ノーソンくらぶ」は大分を代表するソーシャルビジネス

大分県内でも有名な「耶馬溪ノーソンくらぶ」を紹介したいと思います。耶馬溪の農協支店が撤退したために、今まで農協で買い物をしていた周辺のお年寄りの購入手段が途絶えたため、農協支店跡を買い上げて「ノーソン」というお店を住民が開いたのです。また、地元の農産物を販売する直売所も兼ねていて高齢者の買い物と交流の場としても社会貢献している「コミュニティービジネス」です。このように地域住民が撤退した後に自分たちでお店を開業して、日常生活用品を確保する事業は過疎地域では全国でも展開されています。このような事業を立ち上げた人たちの目的は、決して金儲けではありません。買い物難民を救済する目的の「社会貢献事業」です。しかも、それが税金で維持されるのではなく、独立採算で維持されるというところが重要なのです。
政府も「新しい公共」という仕組を全国に広げています。「新しい公共」というのは「初期投資は国や自治体が面倒を見るが、維持管理は住民自らの知恵とお金で行ってくれ」というものです。これまでは福祉施設など自治体が作って、その維持管理に毎年、何千万円とかかっていたのを独立採算で維持管理を行ってもらうという、これも新たな「コミュニティービジネス」です。
これまで行政は過疎化対策などのために各種補助金や過疎地域のバス事業に交付金などを出して過疎によるライフラインを守ってきました。しかし、地方自治の財政は年々少なくなるばかりです。だから過疎地域のインフラ整備やライフラインの確保へ潤沢な予算措置が望めない時代に住民へサービスを維持する新たな方法なのです。
耶馬溪の「ノーソン」は「マイナス経済成長社会」を先取りした事業です。しかし、私たちはこのような少子高齢化現象によるソーシャルビジネスの必要な社会を悲観していても仕方ありません。なぜなら私たちがいくら悲観しても現実は避けては通れないからです。それに「ピンチはチャンス」とよく言われますよね。つまり、大きな問題に直面した時に初めて人間はハタと我に返って、「これは何とかしなければ」と主体的に物事を考えるようになるのです。それは住民自治の始まりです。自ら考え、その課題に挑戦するということが、お金では買えない貴重な社会貢献事業に出逢い、人々は人生の充実感を得ることができるのです。

地域の個人商店や中小企業も地域貢献企業です

『スモールマート革命:持続可能な地域経済活性化への挑戦』という書籍があります。著者「マイケル・シューマン」(明石書店2800円+税)。この本は「全国展開の企業(グローバル企業)に対して地域の中小企業がどれだけ地域社会へ貢献しているか」といいうことを実証的に説明している本です。著者は世界最大の小売店、ウォルマートで買い物をしたら、そのお金は地域には還元されずに中央に集められてしまうだけだというのです。全国展開の企業は様々な減免を自治体から受けて、税金を払わず、最低賃金の非正規雇用で、そこで働く労働者もギリギリの生活を維持するだけがやっとで税金もあまり払えません。だから地域への貢献度は少ないでしょう。それに比べて、地場の企業は、その利益の大半を地場で使い、そこの従業員は地場で消費し、税金も払います。だから地場企業の方が地域で回るお金の量が全国展開の大企業に比べて何倍も大きいのです。
そして、「その地域では生産していないものはどうするのか」という問いに対しては、「商店が地域の企業であるか。次に資本が地域の資本であるか。そこに融資ししている銀行が地域の銀行であるかなど、地域性がどれだけ高いかで買い物の対象順位を決めろ」というのです。
日本は中央集権国家ですから、地方交付税という形で政府から地方へ税金のおこぼれをもらいます。しかし、地方自治体は入ってくるお金よりも出て行くお金の量の方が多いのです。その出ていくお金を減らすことが「持続可能な地域経済」を維持し発展させる鍵だというのです。
だから、地域の中小企業や個人商店などは地域のお金をできるだけ外に出さないという社会貢献を知らず知らずのうちに行っているのです。だから広い意味では地場企業は全て「ソーシャルビジネス」だといえるでしょう。

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地域経済活性化には大企業誘致ではなく地場企業を育てる

全国どこの自治体でも大企業の誘致に血眼になっています。大分でも土地を整地してやり、おまけに格安でその土地を払い下げ、固定資産税も減免するという形で企業誘致をしています。しかし、各地の激しい誘致合戦のあおりを受けて企業誘致は買い手市場です。だからこっちは10年間固定資産税減免だと来れば、こっちは補助金10億円付けるなどの破格の待遇で企業誘致競争をしているのですが、いざ不況になれば、サッサと非正規社員の首を切って大企業は逃げ出して行きます。結局、地方の人びとの税金を食い逃げするのが大企業なのです。
それに比べて、地場の社長はどこにも逃げることはできませんから、潰れるまで地元で踏ん張って努力するのです。そんな地場企業を自治体が支えてやることこそが地方自治体の仕事です。具体的には地場企業の商品を優先的に購入することや、市民へ購入を促す仕組を作るなど。大分産のスギ材で作った家には補助金を出すなどという仕組もいいでしょう。ただ、お金のかからない方法だってあります。例えば大分産の材で作った家には県知事が地域貢献を理由に表彰状や盾をあげるなどは、わずか5000円くらいでできる地場商品奨励事業です。
また、電力という事業は大変利益率の高い商品です。だって、原料からお客様へお渡しする商品まで、加工がほとんど不要な商品だからです。電力会社は1kwhを10円くらいで購入した商品を24円で売るのですから儲けは膨大です。大分県内で消費される電力は年間約94億kwhです。金額にして1600億円くらいでしょう。その半分を地場の企業が作って販売したら年間800億円の売り上げになります。トキハデパートの売り上げが年間584億円だといいますから、その1.5倍の売り上げになるのです。その800億円の大半が大分で消費されるのですから、その波及効果は4倍として3200億円にもなる可能性があります。
例えば大分市の臨海工業地帯には10万kwを越える太陽光発電が設置されています。ソフトバンクの孫さんも全国の自治体を組んでメガソーラーを設置していますが、その実態はこうです。
1万キロワットのメガソーラーの場合、4.5万坪の土地と建設費30億円が必要ですが、年間電気料が4億円の収入があります。そして地元の地主に落ちる地代は電気料金の3%の1200 万円です。それだけ聞けば大きな利益のように思えますが、自治体へは固定資産税などの減免をソフトバンクは要求しています。その事業を自分たちで行えば、利益は丸々地元企業に転がり込んで来て、税金もしっかり払ってもらえるのです。おまけに地方銀行は赤字続きの企業でなければソーラー事業へ簡単に融資してくれます。完全融資で行っても、利子分を引いて、年間利益が土地を貸す事業に比べて一桁上が見込めるのです。年間1億円は入ってくるでしょう。だからどうせやるなら地元の企業に再生可能エネルギー事業をやらせるべきなのです。ただ、由布市ではメガソーラーの建設反対運動なども起きています。だから私は太陽光発電事業を積極的に推奨しているわけではありません。「みすみす東京の企業や中国の投資会社に儲けさせるくらいなら自分たちで儲けろ」と言っているのです。
by nonukes | 2014-01-11 15:40 | 小坂農園 薪ストーブ物語 | Comments(0)

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