2013年 12月 26日
日本人は民主主義を捨てたがっているのか?想田和弘を読んで
日本人は民主主義を捨てたがっているのか?想田和弘を読んで
小坂正則
12月23日の夜、たまたまTBSのニュース23をつけたら、キャスターの膳場貴子女史のもと、毎日新聞編集委員の岸井成格氏(きしい しげただ)にゲストのミッツ・マングローブとニューヨーク在住の映画監督、想田和弘氏が安倍政権の今年1年で行った危ない時代の出来事を話していました。特定秘密保護法案が国会に上程されてから、岸井さん発言のボルテージがどんど上がって、聞いている私の方がちょっと心配になっていました。もちろん岸井さんの発言がおかしいといっているわけではありません。「そんなにハッキリものを言うと番組を降ろされてしまうのではないか」と、心配になったのです。
もちろん毎日新聞の編集委員の発言ですから、番組プロディユーサーと話す内容は綿密に検討しているでしょう。特定秘密法案が成立しそうになったころマスコミ各社、特にTBS岸井さんと朝日放送報道ステーションの古舘伊知郎さんは頑張って反対の論陣を張っていました。全く政府の広告塔だったのがNHKでしたが。法案が通った夜は自衛隊の歌姫の特集などやって「特定秘密保護法」の問題など何もないかのような番組編成だったのに、私はNHKの国営放送ぶりに腰を抜かしそうになりました。
TBSニュース23に出ていた映画監督の想田和弘氏の話と彼の人柄を一目見て「この人は信用できる」と思いました。今まで私は想田和弘氏という人物を知らなかったのです。「選挙」という映画や「選挙2」という映画がおもしろくていろんな賞をたくさん取っているというのは聞いていたのですが。
そして、彼の著書に「日本人は民主主義を捨てたがっているのか?」という岩波ブックレットがあることを番組の中で岸井さんが話していたので、私は題名を忘れる前に、ネットで注文したのです。そしたら、2日目の昨日には自宅に届いて、今日、読み終えました。とても素晴らしくて読んでいる私の心が凛々しくなるような感動を受けたので、ぜひ皆さんにも読んでもらいたいと思い、下手な感想文を書くことにしました。
なぜこれほどまでに橋下徹が支持されるのか
想田和弘さんの著書「日本人は民主主義を捨てたがっているのか?」は日本の民主主義が崩壊に危機にさしかかっていると、私たちに警告しています。「僕の脳内では、民主主義に対する危機を察知するセンサーが作動し、アラーム音がどんどん大きくなりつつあります」といいます。そして「今まで民主主義だったからこれからもそうであり続けるとは限らない」といいます。危機感を持つ最初のきっかけは橋下徹大阪市長の台頭です。
このブックレットは3部構成になっていて、第一章では、なぜ橋下徹が支持されるのかを分析しています。橋下徹のメディアを使った巧みな宣伝手法で社会構造を単純化して「市長は会社でいえば社長のようなものだ。社長の命令を社員が聞くのは当たり前だ。だったら市役所の労働組合員は市長のいうことを聞かなければならない」とか「市長のいうことを聞くのが嫌なら市役所を辞めてほかの会社に就職すればいい」とかいって、労働者の基本的人権や労働組合の権利などを徹底的に無視する。
私も橋下徹ほど全体主義のファシストはいないと思っています。この男は言葉を巧みに操ってフレーズで大衆の感情に訴えることで共感を得ようとしています。その手法は「大阪がこれほど税制が破綻した原因は労働組合が仕事をしないからだ」と決めつけて、労働組合を潰せば大阪市の財政はよくなる」とか「市職員の給料が高いから大阪市民の生活が苦しいのだ」のような単純化した対立構造をでっち上げるのです。だから生活が苦しい民衆は「私の生活が苦しいのは市役所の職員が悪いからだ」とか「私もこんなに苦しいのだから市職員の給料も下げるべきだ」というやっかみや、自分と同じように他人も苦しむべきだとう攻撃心を聴衆に植え付けるのです。これがファシズムを生む温床です。
安倍政権を支えているのは誰か
それは橋下徹と石原の率いる「日本維新の会」や「みんなの党」です。そして自民党改憲案は「国民の基本的人権が制限され、個人の自由のない、国家権力がやりたい放題できる、民主主義を捨てた全体主義の国」と要約できるといいます。改憲案は現行の憲法13条「~生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については公共の福祉に反しない限り、~」が自民党案では「~公益及び公の秩序に反しない限り~」と改正されるのです。
現行憲法21条集会、「結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」が自民党の改正案では第2項を設けて、「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害する目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは認められない」とあるのです。
「公共の福祉」というのは他人の権利を侵害しない限りは私の自由は保障されるのですが「公益及び公の秩序に反しない限り」は国家が許す範囲でしか自由は与えませんということを憲法が宣言しているのです。だから公の秩序を乱すような危険な思想の自由などは認めないし、秩序を犯す可能性のある活動や結社は認められないと宣言していのです。その時々の政府の都合の悪い団体や思想や活動は禁止できるのです。このような憲法は戦前の大日本帝国憲法そのものです。そして、そのような危険な軍国主義の申し子のような安倍政権の危険性をマスコミは全く無批判で今日まで来たのです。そして衆参絶対過半数を獲得した自民党はしたい放題の強行採決を繰り返しとているのです。
憲法は私たち国民の不断の努力によって守られる
最後の章では「熱狂なきファシズム」にどう抵抗するかと彼は問います。彼は「まさか一度政権を投げ出した安倍が返り咲くなど考えもしなかったし、安倍政権を国民が信任するなどあり得ない」と思っていたそうです。しかし、民主党のゴタゴタによって、不満を持った国民によって自民党の圧勝を許してしまったのです。そして麻生財務大臣が7月のシンポジウムで失言したという「ファシズムはこっそりやればいい」というのが自民党の本音なのだから、私たちは粘り強く「声を上げ続けなければならない」といいます。
そして「国民は政治に対しても消費者の態度で臨んでいるのではないか」と問いかけます。それを彼は「消費者民主主義」といいます。有権者は政治の消費者であって常にお客様でしかない。政治の主体になりきっていないのではないかと疑問府を付けるのです。
だから「投票に行かないのも諸費者が商品を買わないのと同じように買いたい(投票したい候補者)がいないから投票に行かない。という論理が成り立つのです」と。政治参加は消費行動ではありません。消費者には責任は伴いませんが主権者には責任が伴うのです。
では「どのようにして全体主義とたたかうのか」という結論に向かいます。
「生活習慣病への対策といえば、毎日の生活習慣そのものを見直し、体質を改善することが重要です。だから民主主義の「体質改善」をする必要があるのです」といいます。
「私たちが消費者的病理に陥っていることを認識し、1人ひとりが民主主義を作り上げていく、あるいは守っていく主体になる覚悟を決めることが第一歩」そして「月並みに聞こえるかもしれませんが日々の生活の中で自分のできることをコツコツやって行くしかないのです」と。「民主主義という政治システムは、単なる理念や理想ではなく、私たちのライフスタイルに深く入り込み、生活を規定し、可能にさせている、極めて実際的なものだからです。」と。そして自身の映画製作の中で撮影拒否を受けた自民党候補者の話や、上映会の中止を主催者が行って来たことに対して抗議して上映させたことなどから、表現の自由や取材の自由は、私たち1人ひとりが自分で守らなければならないんだと訴えいます。
私も同じような経験をしたことがあります。2011年の5月のことです。九電大分支店へ申し入れに行ったのですが、申し入れに行く前の時間帯にトキハデパート前で「九電にみんなで原発止めてと申し入れに行こう」というビラを撒いていました。私はハンドマイクで訴えていたと思います。すると、いかにもうさん臭そうなオヤジが私のそばに寄ってきて「あなたはここでビラを撒くんだったら道路使用許可を取ってるのですか」といいます。私は「なんでビラを撒くのに許可がいるのか。また、あなたは私の行動にいちゃもんつける権利はない」というと、渋々「私は大分中央署の者だ。ビラを撒くのだったら道路使用許可を出さないとビラは撒けないのをあなたは知らないのか」というのです。私は「表現の自由は憲法で保障されている。そして、今までここで何度もビラを撒いてきたが、道路使用許可など一度も出したことはない」といい、「ビラを撒いたり、ここで訴えたりすることは憲法で保障された「表現の自由」という国民の権利だから、そんなものは出す必要もないし、今後も一切ださない」といいました。それでも「出せ。出せ」と、しつこくいうので、私は「通行人に妨害になっているなどという著しい違法性があるというなら逮捕でも何でもするがいい」と言ったら、うさん臭い自称刑事は渋々と退散して行きました。(警察手帳を見せなかったので今流行の偽物刑事だったかもしれませんが)
「憲法とはたとえ文面がそのままでも、そこに保障されている権利を主権者が行使しないのであれば実質的に力を失っていくものなのです」と、想田氏はいいます。
「民主主義にとって大事なのは日常の小さな闘いの積み重ねなのだ」と考えていいでしょう。憲法12条に次のように書かれています。
憲法12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。(以下省略)」と想田氏。
私は、こんな世界一素晴らしい憲法をもっている国に住んでいることを誇りに思います。そして私たち1人ひとりが、これを葬り去ろうとする全体主義者の攻撃にも屈せず憲法を守り抜き、この日本国憲法という「宝」を未来の子どもたちに無傷のまま引き継いでいかなければならないと強く思いました。さっそく私は日本国憲法を読み直してみようと思います。
「憲法とはたとえ文面がそのままでも、そこに保障されている権利を主権者が行使しないのであれば実質的に力を失っていくものなのです」と、想田氏はいいます。
「民主主義にとって大事なのは日常の小さな闘いの積み重ねなのだ」と考えていいでしょう。憲法12条に次のように書かれています。
憲法12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。(以下省略)」と想田氏。
私は、こんな世界一素晴らしい憲法をもっている国に住んでいることを誇りに思います。そして私たち1人ひとりが、これを葬り去ろうとする全体主義者の攻撃にも屈せず憲法を守り抜き、この日本国憲法という「宝」を未来の子どもたちに無傷のまま引き継いでいかなければならないと強く思いました。さっそく私は日本国憲法を読み直してみようと思います。
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at 2014-01-13 15:21
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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たいち
at 2014-01-13 15:22
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ファシズムに進むことは良くないことだと思います。しかし大阪市の労働組合が良くないことは確かなことではないでしょうか。 私たちは、どのように行動を変えればよいのでしょうか?
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nonukes at 2014-01-14 17:31
労働組合の中に腐敗や官僚主義の様々な問題があるのは事実です。それらに対してはキッチリと批判しながら、原則的にはしかし、労働者の権利は守られるべきです。大阪市職労に様々な問題がから労働組合は全てが間違っているということになるのはおかしいと思います。
橋下氏はそこをうまく使って維新を売り込んだのでしょう。私たちは労働組でも解放同盟でも間違ったところはキチンと批判して、それでも基本的人権は守らなければなりません。
連合を批判する私はよく地元の自治労の学習会などの講師に呼ばれるのですが、話しの前にこう話します。「あなた方自治労や県教組は労働者の権利と平和を守る最後の砦です。ぜひ労働者の基本的人権を守るために郎度負う組合を守るためにたたかってください。」と。
橋下氏はそこをうまく使って維新を売り込んだのでしょう。私たちは労働組でも解放同盟でも間違ったところはキチンと批判して、それでも基本的人権は守らなければなりません。
連合を批判する私はよく地元の自治労の学習会などの講師に呼ばれるのですが、話しの前にこう話します。「あなた方自治労や県教組は労働者の権利と平和を守る最後の砦です。ぜひ労働者の基本的人権を守るために郎度負う組合を守るためにたたかってください。」と。
by nonukes
| 2013-12-26 02:33
| 小坂農園 薪ストーブ物語
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