2013年 04月 05日
海外に輸出した原発が事故を起こしたら誰がその責任を取るのか
建設予定地ベトナム・タイアンの美しい海岸線
破滅に突き進む日本政府と原発メーカー
日本の原発インフラ輸出を巡っては、ベトナムで10年に政官民一体型で2基の受注に成功したが、311東電原発事故後、民主党政権は原発輸出に消極的になったことから一時停滞していた。ところが自民党安倍政権が誕生してからは原発輸出がゾンビのごとく一気に復活しつつある。三菱がトルコで、日立製作所がリトアニアで、東芝がフィンランドでそれぞれ優先交渉権を獲得しているという。しかし、日本は311以後、原発から撤退をしなければならないはずで、あれだけの事故を起こした国とその国のメーカーが欠陥原発を輸出することなどもってのほかだ。また、この受注にはおいては契約の中身が公表されていないが大変な問題を含んだ契約だと思われる。
その中身を私は2010年10月31日のブログを再掲する。
最悪の「原発輸出」にしがみつく民主党・東電・東芝
ベトナムの原発事故の責任は誰が取るのか
2010年10月30日
10月31日の朝日新聞に「ベトナムへの原発2基輸出が決まった」という記事が載った。アメリカへの輸出は無理でもベトナムなどアジア周辺国への輸出で東芝は生き残れると考える方もいるかもしれない。しかし、このベトナム輸出契約は大きなリスクが伴った受注なのだ。まず建設費用は全額を日本政府が融資する。しかもベトナムの電力会社の経営が順調に行かなければ融資したお金は返ってこない。そしてもう一つの問題が運転保証だ。韓国もこの受注競争に参加していたが、韓国は60年の保証を提示したと思われる。UAEの受注では4基の建設費が200億ドル(1兆7,000億円)と国際的な相場の30%以上の低価格で、高レベル放射性廃棄物の処分や60年間原発の運転を保証するという無謀な条件で韓国は受注を獲得した。60年間動かすこと自体が無謀なのに、60年間もの長期保証をするというのは狂気の沙汰だ。だって、60年後に建設した企業が存続している保証は全くない。結局政府が全ての責任を取ることになる。日本とベトナムの間で契約した保証期間は定かではないが、もし、長期の保証契約ならば修理費用は全額が日本政府の持ち出しとなって私たちの税金が使われる。そして最大の問題は、この原発がベトナム周辺の国まで及ぶ放射能災害を引き起こしたら、誰がその責任を取るのかという問題だ。東電と東芝に政府の一体となった交渉に成功したと菅首相は得意になっているようだが、新幹線や水道事業とは違って、原発輸出は原発事故による被曝の責任を誰も取れないという問題があるのだ。今回のベトナムへの原発輸出は日ベト両国民への民主党政権による史上最悪の犯罪行為だ。
ベトナムへの原発輸出計画が復活か
2010年10月31日に当時の菅首相とグエン・タン・ズン ベトナム首相との首脳会談がハノイで行われ、ニントゥアン第一原子力発電所の建設で日本をパートナーとすることがズン首相から表明された。ベトナムへの原発輸出にはすでにロシアが受注を決めており、ロシアは破格値の建設費と、潜水艦をおまけに付けるという大盤振る舞いをしたといわれている。そのほかにも中国、韓国、フランスなどが受注競争にしのぎを削っていた。
その後、日本原子力発電(以下、原電)は2011年2月にベトナム電力公社(EVN)との間で原子力発電導入に関する協力協定を結ぶ。当初の計画によると、2011年度中に事業化調査の請負契約を締結し、その後1年から1年半程度かけて調査を行い、建設候補地の地盤調査、環境影響調査の結果のほか、必要な発電容量の試算、原子炉のタイプの選択肢なども提示するとされています(同社プレスリリース「ベトナム電力公社との原子力発電導入に関する協力協定の締結について」 2011年2月16日)。なお、この協定には 2010年10月に設立された官民協力組織「国際原子力開発株式会社(JINED)」(注1)が参加しており、報道によれば、建設・運転・保守に関する詳細な検討を進める上で、中核的役割を担うことになってる。(Wikipedia)
その後、3.11以後一時中断していたようだが、今年1月16日にベトナムを訪問した安倍首相は最初の訪問国ベトナムのハノイでグエン・タン・ズン首相と会談し、両首相は原発建設とレアアース(希土類)開発などで、密接に協力することで一致。
ベトナムへの原発輸出は民主党政権の支援で日本企業が導入可能性調査を受注したが、東京電力福島第一原発の事故で一時は動きが鈍っていた。だが「強い経済」を掲げ、アジアの成長の取り込みを狙う安倍首相も、原発輸出の路線を受け継ぐことにした。経済成長が続くベトナムは2030年までに原発10基をつくる計画。21年までに運転を始める予定の4基のうち、日本とロシアがそれぞれ2基を受注している。 (朝日新聞)
トルコ原発、三菱重連合が受注へ 震災後、初の輸出
トルコが計画中の原子力発電所4基の建設に対し、三菱重工業と仏原子力大手アレバの企業連合が受注する方向で最終調整に入ったことが4日、明らかになった。事業費は220億ドル(約2兆円)以上とされ、官民で受注を働きかけてきた。実現すれば、福島第一原発事故の後、官民による初の「原発輸出」となる。
日中韓とカナダのメーカーが受注を目指して激しく競ってきたが、技術力や信頼性、価格などで日本勢の評価が上回ったもようだ。
経済成長が著しいトルコに現在、原発はなく、2023年までに3カ所での建設を計画。地中海沿岸の1カ所目は既にロシア企業が受注し、黒海沿岸シノップでの2カ所目の建設を4カ国が争ってきた。外交筋は「協議は日本にとって良い方向で進んでおり、優先交渉権獲得を意味する政府間合意の署名に向けて協議を詰めている段階だ」と語った。
安倍晋三首相は4月下旬から5月上旬の大型連休中にトルコ訪問を検討、原発建設推進を確認する方向で調整している。
シノップ原発は総事業費が最大250億ドル(約2兆3200億円)規模で、原子炉4基を建設する。トルコ政府高官は昨年12月、「中国が優勢」と発言していたが、原発輸出に積極姿勢を示す自民党政権への交代が“逆転”の追い風になった可能性がある。
11年3月の東日本大震災による東京電力福島第1原発事故後、日本では日立製作所がリトアニアでの原発建設を事実上受注している。(共同)
経済優先の社会からいのちを優先する社会へ
私たちは核のエネルギー利用に反対しなければならない。その理由は311福島が示したではないか。たかだか電気を得るためにふるさとを捨てなければならないような犠牲を周辺住民に強いて何が経済成長か。子どもたちがガンや白血病の恐怖に怯えながら生きることがどうして幸せか。未来に禍根を残す原発の海外輸出を止めなければならないのは、311を経験した私たち日本人の責務だと私は思う。ベトナムで第2の福島原発事故を起こしたら誰が責任を取るのか。
by nonukes
| 2013-04-05 22:32
| 原発輸出
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