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小坂正則の個人ブログ

エネルギー利用の多様性とオール電化

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エネルギー利用の多様性とオール電化
2013年3月11日
小坂正則

今日はエネルギーの多様性について考えてみたいと思います。その理由が3つあります。1つは今日が福島原発事故のあった日の3月11日だということです。もう1つは、私が寄稿している「大分有機農業研究会」のミニコミ誌に、昨日、「多様性」を考えるという文章をかいたのですが、その原稿はエネルギーの多様性については論証していないので、エネルギーの多様性も論証しなければ私的には不十分だと反省したからです。最後の理由は緑の党の会員メーリングリスト(私は緑の党の会員)で、以下のような議論があったからです。
大阪の会員の方からの投稿で、「工場の空きスペースを利用して野菜工場が大阪近郊で始まった」と言うのです。「野菜工場は工場の空きスペースを使うことで低コストで新規産業への進出になり、雇用も確保できるし、そのエネルギーを太陽光などで賄えば素晴らし自然エネルギー産業になる」というような内容でした。私はあきれ果てて、こんなことを緑の党の人間が支持するなど考えられないことだ思いましたが、わざわざ私が反論するまでもなく、多数の方から反論があるだろうと思っていたのです。しかし、そのMLの後には、数名の方から、その意見に賛同する意見が送られてきたのです。自然エネルギーを研究する在野の研究者としては、これについてはエネルギーコストの面からもキチンと批判しておかなければならないと考えたのです。

多様性がなぜ必要なのか

生物的多様性について「有機農研」の原稿より抜粋します。
「多様性」という言葉から連想することに、熱帯雨林地帯の役割を思い出します。生物学的には熱帯雨林地帯が地球上で一番多くの生命がいて、地球上の生き物の生命を維持する源となっていると言われています。様々な生命が混在して、その1つ1つが対立したり助け合ったりして均衡の取れた世界を維持しているというのです。だから「多様性」ということが植物や動物などにとっては最も重要な要素なのです。農業でも単品作物を長く作り続けると連作障害が出て、土地は疲弊し、病害虫にやられて農作物が育たなくなるといわれます。そのために新たな農薬や化学肥料を散布しても、また新たな障害が出てくるというイタチごっこを繰り返しているのが近代農業です。しかし、一番利口なやり方が原始的な混植農法で、一見すると生産性は落ちるように見えますが、長い目で見たら混植した農地の方が高い生産性を長く維持できるといいます。先人の知恵に比べて近代科学は足下にも及ばないのではないでしょうか。有機農業は先人の知恵に学び、植物の多様性を尊重する農業だと思います。同じように人間社会の中でも多様性こそが最も必要なのではないかと思うのです。(社会学的な多様性の文章は省略します)

エネルギー利用の多様性を確保する

そこでエネルギーについていえば、電力会社は、よく「ベストミックス」といって、自然エネルギーもいいが、化石燃料も原子力もそれぞれ必要だといういい方をします。しかし、これは原子力を何とか維持したいがために自然エネルギーだけじゃ不安だから原子力も必要なんだというロジックです。しかし、エネルギーという場合には、電力を生み出すための方法としてどんな発電方法を採用するかという議論と、そもそも電力ではなく石油や石炭や天然ガスなどをそのまま使う方が効率的ではないのかという議論を分けて考えなければならないのです。
電力の発電方法を何で行うかという議論では、事故の危険性=安全性や供給安定性やエネルギーコストの低減性や普遍性など様々な観点から一番利用しやすいエネルギーや採算性などから、どのようなエネルギーを供給し、利用すべきかを議論するものだと考えます。
しかし、エネルギーといえばよく電力を最優先に議論しますが、電力はエネルギーのほんの一部でしかありません。電力は全エネルギーのわずか25%にすぎません。石油や石炭など1次エネルギーの45%が電力を生み出すために使われてはいるのですが、電力は半分以上が廃熱として利用されないので実質のエネルギーとしては25%だけなのです。また、原子力は電力の30%ですから、「原発が止まって大変だ」と電力会社やマスコミは騒いでいますが、エネルギー全体から見ればわずか7.5%のエネルギー供給問題を大騒ぎしているに過ぎないのです。「原発問題とはエネルギー問題ではなく、電力会社の経営問題でしかない」のです。

エネルギー利用の多様性を議論する場合に重要な視点とは、電力が得意な分野、例えば照明やパソコンを動かすことやモーターを使う洗濯機や冷蔵庫などと、部屋を暖めることやお湯を沸かすなど、電力以外のエネルギーの方が効率的な作業ができるものとの棲み分けが必要なのです。それがエネルギー利用の多様性を確保することだと思います。

オール電化はエネルギー多様性に最も反する方法

電気でお湯を沸かすと発電の際にエネルギーの50%以上を廃熱として捨てて電気を作り、それを送電線で送るのにまた10%のロスが生じ、そこではじめてお湯を電熱器で沸かすのですが、そこでもロスがあります。そうすると、最初に投入したエネルギーの10~20%そこそこしか利用できないことになります。それなら直接ガスでお湯を沸かせば、ガスを運ぶエネルギーロスは生じますが、それでも輸送ロスは30%そこそこでしょう。だから電気でお湯を沸かすということはガスに比べてエネルギーロスが非常に大きいのです。
しかし、オール電化の最も大きな問題は昼間の電力需要のピークをかさ上げすることにあります。電気は石油やガスとは違って貯めておくことが苦手です。電池に貯めたり揚水発電で下のダムから上のダムに水をあげたりして貯めることは出来ますが、非常に建設コストがかかることと、それで再生した電気の30%はロスとして消えてしまいます。だから電気は総量ではなく瞬間の需要こそが問題なのです。つまり、需要のピーク時に対応することが出来るように発電所を用意しなければならないのです。つまり、需要の山が急峻であればあるほど無駄な発電施設が必要になって来るのです。そのピークを押し上げる悪さをオール電化は行うのです。だからオール電化は不要な発電所をどんどん作ることにつながるのです。
そんな無駄でコストがかかるオール電化をなぜ電力会社は一生懸命販売して来たのでしょうか。それは原発をどんどん動かしていたころは深夜の原発の電気が余ってしょうがなかったので、深夜電力を安く販売して深夜の需要を作っていたのです。しかし、現在原発がほとんど止まってしまって、深夜でも石油や天然ガスで発電しているので、原発の余剰電力の利用ということが出来なくなってしまい、電力会社にとってもオール電化のメリットはなくなってしまったのです。
オール電化のウソはまだあります。これまで電力会社は「オール電化はco2を出さない」といってましたが、そんなことはありません。深夜でもガスや石炭など焚いて発電するので発電時にはco2は昼間と同じほど出します。
オール電化のウソはまだまだあります。「オール電化で光熱費は年間10万円お得」というインチキ広告を九電は出していました。それは2008年10月15日に公正取引委員会から排除命令を受けて、やめました。

深夜電力料金がどんどん値上がりするのでオール電化は大損

エネルギー効率とエネルギー価格はイコールではないので、「オール電化は光熱費が安くなるのでエコだ」と、勘違いをしている方がたくさんいました。前述したように電力はガスや石油に比べてエネルギー効率は悪いのですが、深夜電力を捨て値で安く販売していたので利用者は光熱費が若干安く感じられていたのです。「光熱費が下がったからエコだ」という方が環境派と称する方の中にもたくさんいました。しかし、その勘違いも終わり近づいています。
東電では深夜電力料金が1kwhあたり9.72円が昨年からは11.82円(21.6%の値上げ)に大幅値上げされました。しかし、これは原発の再稼働が条件です。「再稼働がない場合は再度、電気料金を30%以上の値上げする」と表明しています。すると深夜電力でお湯を沸かして昼間使うとうメリットはガスや灯油に比べてますますなくなるでしょう。100万円以上かけてオール電化にしても、その元を取ることは今後はますます不可能になります。

エネルギーの多様性とはシンプルな暮らし方に尽きます

太陽光発電で電気を作り、その電気で野菜工場を動かすという発想は「チェンソーでバターを切る」という発想と同じです。そんな無駄なことをしなくても、日本では太陽はサンサンと降り注いでいるのですから、畑に種をまいて、そこで野菜を作るのが一番エネルギーコストもかからずにおいしい安全な野菜が出来るのです。このような一番環境負荷をかけないシンプルな方法を適正技術といいます。
私はペレットストーブを販売しています。よくお客さんがペレットストーブを導入したいと私の事務所の展示室に見学に来ます。そこで私はこのように提案します。ペレットストーブを50万円で導入するのでしたら、まずは「貴方の家の窓をペアガラスにしてからペレットストーブを導入してください。それでなければいくら環境にやさしストーブといってもエネルギーの無駄です」と。
「太陽光を付けているから私の家はいくら電気を使っても環境にやさしい」という方がいますが、それは本末転倒の考えです。「プリウスは燃費がいいからどこにでも遠出が出来る」とか、「液晶テレビは省エネだから大型のテレビを買った」などと同じことです。
「スーパーで安売りしていたから食品を大量に買ってきて腐らせてしまった 」などと同じですね。「本当に必要なものを必要なだけ使う」という考えがエネルギー多様化の考えには必要なことだと思います。環境負荷をかけないで効率的にエネルギーを使うという考えの基本はまず省エネすることです。太陽光発電を設置して電気を作るよりも、同じ電気を白熱球からLED電球に代えることや省エネ冷蔵庫を導入することで削減できる電力の方が太陽光で電気を産み出すよりも低コストで出来るのです。このことを田中優さんは「節電所」と名付けていました。

自然エネルギーなら何でもいいのか

私は自然エネルギーの積極的な推進者です。だから化石燃料を使うよりも原子力よりも自然エネルギーを増やすことに積極的ですが、原発の電気を全て自然エネルギーに替えることを当面行おうとは思ってはいません。まずは電気でしか出来ないことは電気にしてもらうけど、電気よりもエネルギーコストが低い仕事は電気以外の石油や天然ガスや木質バイオマスなどにやってもらうべきだと考えています。お湯を沸かすことや冷暖房などです。
これまで電気の30%が原発だったのなら、その分は節電や他のエネルギーに替えてもらい、残りの70%の電気をこれから30年かけて少しずつ自然エネルギーに替えていくべきだと考えているのです。
それだったら原発を動かさなくても今すぐ達成できます。現に日本では原発は2基しか動いていないのに電気は充分足りているのです。いま取り組むべき一番必要なことは「発電効率のいい天然ガス発電方法に転換すること」です。古い天然ガス発電所や石油火力発電所などはエネルギー効率40%そこそこですが、ガスコンバインド発電では59%のは発電効率を達成しています。それに変えただけで20%以上の電気をこれまでと同じ燃料で発電できるのです。そうすれば年間3兆円もの燃料代を電力会社は支払わなくて済むかもしれません。そして、「本当にこんなに照明は明るくなくてはならないのか」を問い直すべきです。バリに先般旅行しましたがバリのお店はどこも夜は薄暗くて、ホテルの部屋には蛍光灯電球1個あるだけです。レストランでも薄暗くてメニューが読めないくらい暗いのが当たり前です。日本の空港に降り立ったら、まぶしいくらいの照明でした。日本の照明ももっと目にやさしい、ムードのある照明に落とすべきです。
私たちの暮らし方をもういっぺん見直して、本当に必要なものと、そうでないものを取捨選択して、「本当に豊かな生活」を楽しむ心のゆとりを持ちたいと私は思います。
by nonukes | 2013-03-13 14:35 | 脱原発大分ネットワーク | Comments(0)

  小坂正則

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