2012年 01月 25日
西日本新聞に当NPOの特集記事が掲載されました
西日本新聞1月8日号掲載
大分市西部の高崎山。山肌に張り付いたビワ畑の中に、NPO法人「九州・自然エネルギー推進ネットワーク」の事務所がある。国産材で造った建物の屋根には太陽光発電が付けられ、眼下には紺碧の別府湾が広がる。代表理事の小西正則さん(58)は、自然エネルギー自給率「日本一」として最近、注目される同県で、2001年4月から普及を図って活動を続けてきた。昨年3月の東日本大震災以降、その思いをさらに強めている-。
年の初めの「くらし特報」面は、「3・」を踏まえて自然エネルギーの活用に取り組む人々を紹介する。
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「雇用が生まれ、限界集落の解決につながる」
事務所の前に積んだ薪を手に、小坂さんは木質バイオマス発電の価値を力説した。間伐材などを粉砕、圧縮して固めたペレット燃料を使うペレット・ストーブや薪ストーブは、木材という生物資源(木質バイオマス)を使う。それが山里を過疎から救うというのだ。
大量生産で安く、規格も統一された海外の木材に押され、国産材は需要が低迷。高く売れずに林業は疲弊し切っている。だが、製材所の規模を拡大し燃料生産も行うことで、木の利用価値を高めれば地域にお金が回る。雇用にもつながる。
「石油を使えば中東、ガスならロシアが潤う。木質バイオマスなら地域社会にお金が落ちる」
バイオマスは燃やすと二酸化炭素(CO2)が出るが、それを成長過程で大気から吸収した分として差し引き、ゼロと計算する「カーボンニュートラル」が国際的な共通認識だ。つまりエネルギーを石油などの化石燃料から木質バイオマスに代えれば、CO2排出が押さえられ、地球温暖化防止にも貢献できる。同県日田市のペレット・ストーブ利用客の場合、年間消費量は2㌧。同じ熱量を生む量の灯油を燃やすと2・5㌧排出されるCO2が減らせる計算になる。
同法人には造園業者が、薪の原料となる広葉樹の伐採材を無償で運び込んでくれる。業者は廃棄物として処理する費用がかからず、法人も原料調達コストが軽減できる助け合いの仕組みだ。ペレット燃料は、熊本市の工場から仕入れて九州・山口の家庭などに低価格で販売。昨年は100㌧を売り、石油換算で12・5㌧のCO2を削減した。
小坂さんが提案するのは、自治体のホールなどに使う大型冷暖房機器のエネルギーを木質バイオマスに代えること。きっと普及の追い風になるだろう。さらに、山林の固定資産税を上げて売買による規模拡大を図ったり、協同組合方式の運営を誘導したりすれば、森林の管理がしやすくなり、地域は再生に向かって動きだすはずだ。
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小坂さんが取り組む自然エネルギーの普及運動。それは、原発への疑問がきっかけだった。チェルノブイリ原発事故の1986年、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の増設計画を知り、1人で反対運動を始めた。
だが、「原発はなくても電気は足りる」と訴えるだけでは人々を説得しきれない。「自分で電気をつくろう」と「市民電力会社」を構想。その一歩として04年、県の公共施設などに太陽光発電設備「てるてるちゃん」を付ける事業を始めた。
自然エネルギーで発電した電気を大分県に無償提供すれば、電気代相当の交付金がもらえる「県エコエネルギー導入促進条例」のおかげで採算も取れる。国などの補助金に市民の出資も加えて工事費を賄い、年1カ所の割合で計9機を付けた。
さらに、CO2を出さないで発電した電気の価値は、第三者機関の認証を受ければ「グリーン電力証書」として販売できることに着目。09年に九州2番目の認証を受けた。昨年は一般向けに5133㌗、環境省に万8332㌗を販売。「目に見えるCO2削減」を実践した。
「3・11」後、小坂さんは「今生かされているのは偶然。今日を精いっぱいに生きよう」と意識するようになった。ともに行動し、没後も法人の名誉顧問になってもらっている作家松下竜一氏が、現代の豊かさを問い直した著書「暗闇の思想を」が、時代を見つめ直すバイブルになると考え、その思想を自らの行動で表現したいと思う。
小坂さんは1月末にも、これまでの実践をまとめた著書「市民電力会社をつくろう 自然エネルギーで地域の再生を(仮称)」を出版する。そして、事務所の隣には「松下竜一記念館」を開館させる。訪れる人々に松下さんの思いを伝え、誰もが自然エネルギーを学ぶことができる拠点に育てたい。そう願いながら。
by nonukes
| 2012-01-25 22:58
| 林業再生
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