2010年 06月 30日
木質バイオマスのエネルギー利用でCO2削減と新たな雇用を
日本は国土の67%、2500万haが森林で、世界で3番目に森林の面積率が多い森林国です。大分県は森林の面積が全国19位で、県の面積の72%が森林です。しかし、スギやヒノキの木材価格の低迷で間伐などの管理が行われていない人工山が増えています。また、炭や薪などの燃料として利用されていた広葉樹の雑木山(里山ともいう)は椎茸の原木などに使われる以外はほとんど利用されないまま放置されています。
日本の林業従事者は昭和35年には44万人だったのが、現在は4万人弱だと言われています。大分県の森林組合の職員は1026人です。(2005年大分県の資料より)
森林は地球温暖化の原因の二酸化炭素を吸収してくれる貴重な吸収源なのですが、適正に管理しなければ吸収する能力は衰えてしまいます。特に地球温暖化防止京都議定書で決まられた、温暖化ガス6%人削減の中に森林吸収分3.8%が含まれていますが、これは適正に管理した森林という条件が付けられているのです。
しかし、現在の日本の林業は産業として成り立ち得ないほどの壊滅的な状況です。その理由として、国の林業政策の無策が挙げられますが、森林組合に国の林業予算が一元的にばらまかれてきた状況も大きな原因として挙げられるのではないかと思われます。
森林組合は公有林の事業が中心で補助金や交付金に頼っていて、主体的に経営の効率化や経営統合などを行ってこなかったのではないかと思われます。
効率的な林業を行おうとする意欲的な経営者や共同組合、NPOなど様々な新たな林業経営体へ林業予算を効率的に支給するシステムを構築することが強く求められています。次に不在地主や小規模な山主などの林業経営意欲のない地主の山を買収して大規模協同組合方式の新たな大規模林業の育成を目指した政策を国が主導することが強く求められます。
このような現状を打破するためには国の思い切った林業政策の転換と意欲のある林業経営者の育成が欠かせないのです。
オーストリアにもっと学ぶべきだ
オーストリアは日本と同じくらいの国土で、その3/4が山岳地帯で、森林率は約40%です。人口はおよそ800万人で日本の1/10以下の比較的小さな国です。しかし、オーストリアはバイオマスの熱利用が1次エネルギーの12%と森林資源のエネルギー利用が大変盛んな国なのです。それに対して日本の1次エネルギーに対する木質バイオマスのエネルギー利用率は0.1%もないのです。オーストリアは協同組合方式の林業が盛んで、山の一括管理を行っています。だから針葉樹を植林するのも伐採するのも計画的にできるのです。そのため、機械化しやすく効率的に低コストの林業が行われてきたのです。また、製材所も協同組合方式により大型で材をトータルに利用する方式が取られています。だから建築材の利用から端材はチップやペレットに加工して、バイオマス燃料に加工しますから、廃棄物になるものなどないのです。
一方日本の山はどのようになっているのでしょうか。日本の民有林の多くは入り乱れた所有者から成り立ち、自分の山の材を切り出すにも一苦労です。だから機械化もままならず、人力に頼ることが多いのです。林業労働者がチェンソーで材を切るから、死亡事故などの重大事故も絶えません。このような非効率の林業を放置してきた大きな原因は既得権益に安住してきた森林組合や林野庁、農水省の林業政策の無策に尽きると思います。
例えば、日本の山の固定資産税は非常に安くなっていますが、間伐を行わない植林地の固定資産税を10倍くらいに値上げします。ただし、協同組合を作り、共同で山の間伐や経営を行う意欲のある山主の税金は元のままに減額するのです。それだけでも山の共同管理が一挙に進みます。次に製材産業も大規模化と協同組合方式を国の補助政策で進めます。そのようにすれば材をトータルに有効利用できるのです。
手をこまねいているばかりでは林業問題の解決はありません。そこで、私なりの木質バイオマス燃料化計画を、以下のように考えてみました。
公共施設の冷暖房をペレットに替えよう
戦前の雑木山は薪や炭などの燃料として利用されていました。しかし、日本中の山はどこもはげ山にはなりませんでした。雑木の大半は萌芽更新(ほうがこうしん)と言って、切っても切り株から新しい芽が出て、20年から30年もすれば大木になるのです。つまり、山を30等分に区切って、毎年1/30だけ切っていけば30年後には一回りして再度伐採することが出来ます。油田は採ってしまえばやがて無くなりますが、山は再生可能な油田と同じなのです。繰り返して木質エネルギーは利用し続けることが可能なのです。しかも日本は世界で3番目に森林面積比が大きな森林国なのですから、木質バイオマスを利用しない方がおかしいのです。日本は木質バイオマスの資源量は世界でも有数の資源大国なのです。
例えばこのようなことを考えてみませんか。大分県立文化ホール。そこには年間の冷暖房費が2000万円(実際の経費は分かりません)とします。その熱源は天然ガスです。その熱源を木質バイオマス、つまりペレット(木の粉を固めた燃料)やチップ(木を破砕した燃料)のボイラーに変えるのです。すると燃料代は割高になるかもしれません。2400万円かかることになるかもしれませんし、ボイラーも高いでしょう。でも、ペレットやチップを作るためには県内に雇用が生まれるのです。石油を使えば中東の産油国は潤いますが大分県内にはお金はほとんど落ちません。天然ガスなら、ロシアにお金が落ちます。片や木質バイオマスを燃料に使えば県内に雇用が生まれ、その燃料を作るために間伐が促進され、間伐されたままに放置されている林地残材が山から下ろされるようになります。また、人工林や里山が整備されることにより、うっそうとした森に光が射すようになり、多くの植物や動物が繁栄する豊かな自然が蘇るのです。
そこでもう少し具体的に試算してみました。天然ガスは大分ガスの利益になるのですが、2000万円の天然ガスで雇用が生まれるほどの影響はないでしょう。石油にしても、ガソリンスタンドのアルバイトの雇用が0.5人ぐらいは生まれるかもしれませんが、たかがしれています。しかし、ペレット燃料だったらまず、ペレット工場の雇用が1人は生まれますし、山仕事の労働者の雇用も1人は生まれます。だから経済効果は石油や天然ガスに比べて大きいのです。また、この雇用は直接消費地の大分県内に生まれるのです。ましてや、中東やロシアに利益を持って行かれないで済むのです。
例えばこのような現象も生み出すかもしれません。過疎地域の村に住み仕事がないために生活保護を受給している失業者がいたとします。その人に林業の仕事が恒常的に入るとしたら、自治体は生活保護費が不要になるだけではなく、住民税などの税金が入ってくるようになるのです。また、失業していた労働者は働く意欲や生き甲斐を感じることができるようになるのです。このようなことをグリーンニューディールと言うのだと思います。だから県が400万円の持ち出しがあったとしても、結果としてそれ以上の利益が地域に落ちてくるのです。
このような資源(スギやヒノキの間伐材)も豊富で、外的条件(温暖化対策の必要性)が揃っていて、その結果、失業対策にもなり、若者が田舎で暮らせるようになれば、子どもが生まれ、少子化対策にもなる、グリーンニューディールを行わない理由が私には理解できません。
このようなことはヨーロッパでは積極的に取り組まれています。スウェーデンでは総エネルギーの2割をバイオマスで賄っていますし、ドイツやデンマークなどでもバイオマス発電やバイオマス熱利用が積極的行われているのです。
以上のことから、地域に密着した木質バイオマスの燃料工場を積極的に建設し、その利用促進を官民一体となって促進することが重要だと考えます。そのためには、国は環境税の導入を進め、地方自治体は、自ら公共施設にバイオマスボイラーの導入を進め、木質バイオマス燃料への補助金などにより需要喚起を積極的に行うことが必要だと思います。
by nonukes
| 2010-06-30 20:48
| 自然エネルギー
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