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小坂正則の個人ブログ

ガス会社が電力会社によって潰される

ガス会社が電力会社によって潰される
小坂正則
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上の題を見て皆さんは「何を言ってるの。ガス会社が電気も売って儲かっているんじゃないの?」と、疑問に思う方もいるかもしれません。ところが、事実は全く逆なのです。今年の4月から「ガスの全面自由化」が始まりました。一定の条件さえ揃えば都市ガス会社のガス管を使ってガスを自由に売ることができるようになったのです。この自由化は電力自由化とセットで行われたエネルギー自由化政策の一環です。
昨年の4月から電力自由化で私たち一般消家庭の電気も自由に電力会社を選ぶことができるようになりました。しかし、全国で既存の電力会社から新電力に乗り換えた一般家庭は約5.4%(4月8日朝日新聞)だそうです。工場などの高圧電力は約10%が電力会社以外の新電力などに変えているのに比べたら、一般家庭の電力の乗り換えが進んでいないのです。東京や関西では東京ガスと大阪ガスが宣伝を盛んに行っているので東京ガスへの乗り換えが新電力の中ではトップなのですが、新電力間の競争も激しくて、東京ガスへの乗り換えは70万件で東電管内の2300万件の3%しかありません。東京ガスは100万件をめざすと述べていますが、その目標に到達したとしても4.3%にしかならないのです。

電力会社がガス料金を大幅値下げ攻勢

私たち大分市民には分かりませんが、首都圏では東京ガスの電力乗り換えコマーシャルや社員の家庭訪問などが繰り返されているそうです。なぜそれほど東京ガスが電力販売に力を入れているかと言えば、実は「ガスと電力もセット割」で自分たちの会社のガスを守るために社員一丸となって東電とたたかっているのです。今年の4月から始まった「ガスの全面自由化」で、首都圏でLPガスを販売する「日本ガス」が東電と組んで都市ガス販売に乗り出しています。東電の電気と自社のガスでガス料金は東京ガスより1割以上安いし、携帯電話などのセット割りで最大3割値引です。東京や名古屋や大阪では都市ガス会社が電力自由化で電力会社の顧客を奪うたたかいを昨年から始めています。それは「ガスと電力のセット割」で長年の顧客をガス会社に囲い込むためだったのです。ですから東ガスの電気料金は東電よりも1割も安くしているそうです。そこに東電が「ガスのたたき売り」で参入して来ようとしているのです。東京ガスと日ガス+東電との仁義なき戦いが首都圏では始まっているのです。
「電気料金もガス料金も安くなればいい」かもしれませんが、ことはそう単純ではありません。東電による「ガスのたたき売り」で、東京ガスが潰れでもすれば、東電が電力もガスも支配する社会が到来するかもしれないのです。あの傲慢な電力会社がガスも支配してライバル企業が姿を消せば今度は独占価格で値上げを行うことでしょう。東電幹部がこんな話をしていました。「東京ガスなど怖くはない。いざとなれば東ガスを買収すればいいことだ」と。

電力自由化は大きなウソが残っている

九州電力も「西部ガスよりも電力ガスセットで11.1%値引き」(30A家庭)という広告を打っています。「今年7月から東京ガスに対抗して東京電力はガス料金を大幅値下げして反転攻勢をかける」と記者会見で喋っています。もともと都市ガスも燃料の天然ガスは電力会社が一番輸入しているものですから、大口顧客の東電などは東ガスよりも安く輸入できるでしょう。それを安く売るというのですから、下手をしたら東電によって東京ガスが潰されるかもしれないのです。潰されないまでもこれからガスと電気の販売競争の消耗戦が始まることでしょう。
電力自由化で、顧客を奪われた電力会社に取っては、ガスの自由化は反転攻勢の絶好のチャンスなのです。それも我が方に大いに有利なチャンスなのです。どんなチャンスかと言えば、まず規模の違いがあります。東京ガスの年間売り上げが2015年度で約4千億円です。片や東電の年間売り上げは約6兆円です。企業規模も東電は東ガスの15倍なのです。だから資本力でもガスと電気は大企業と中小企業が同じ土俵で相撲を取るようなものなのです。しかも、最も大きな問題は「託送料」などの共通使用する送電線とガス管などのインフラ管理と運用方法に大きな違いがあるのです。電力は貯めておくことができないので、「同時同量ルール」(30分毎の消費量に系統電力量を合わせるルール)が適応されています。つまり、新電力会社は30分毎の販売電力量に合わせて電力を自社で調整する必要があるのです。系統量がマイナス10%以下だったら大きなペナルティー料金を取られるのです。その罰金は送電線を管理する電力会社の利益となります。それに比べてガス管はガスタンクにいくらでも保管が可能ですから、自社の販売量のデータによってガスを送ればいいのでここではペナルティーが発生することはほとんどあり得ません。
つまり、ガス管を管理運営するガス会社にはガス管を持っているメリットはほとんどなくて、電力会社の持つ送電線は発電会社や売電会社などに比べて各段に安定していて十分な利益を永遠に生み出す魔法の杖のような存在なのです。だから発送電分離が不十分な「電力自由化はインチキ自由化だ」と、私は言い続けてきたのです。

原発がある限り電力会社は国が保護

日本の「電力自由化」は欧米に比べてインチキだという理由は、送電線の所有や管理を電力会社の子会社にさせる「法的分離」という方法です。「完全自由化」は発電会社と送電会社を完全に資本関係を断ち切った別会社にする「所有分離」にしなければ完全分離ではありません。そうすれば電力販売競争が平等にできるのですが、2020年に実施去れる日本の「電力自由化」の計画では送電会社は電力会社の子会社です。すると、子会社に余計な経費を積ませたり、NTTとドコモもような関係で、子会社の利益で親会社が生き延びるということができてしまうのです。すでに福島原発事故の後始末の費用も新電力の託送料に2.5兆円上乗せすることが決まりました。このようなことがこれからもどんどん生まれてくるでしょう。これは国や経産省による原子力を進めるためにの電力会社への過保護政策以外の何ものでもありません。
それにこのようなことも行われています。電力自由化のために平等に送電線を使えているかなどを監視するための中立的な組織が『電力広域的推進機関』と言う組織が各電力会社管内にできています。そこで送電線会社が公平に電力系統を行わせているかなどをチェックしているのですが、その組織は経産省の下部組織ですから、電力会社優先意識が残っています。また、「電力事業に関わる検証規定」という法律の中の附則第74条2項は以下の文言です。
「政府は必要があると認めるときは、原子力政策をはじめとするエネルギー政策の変更その他のエネルギーをめぐる諸情勢の著しい変化に伴って電気事業者の競争条件が著しく悪化した場合、または著しく悪化することが明らかな場合における競争条件改善措置、安定供給を確保するために…必要な措置を講ずる」と、あるのです。つまりは原子力は特別扱いですよと明言しているのです。だから既存の電力会社は「原子力を持っている限り国は決して悪いようにはしない」と、高をくくっているのです。

再エネ電力優先が電力自由化の目的のはず

「電力自由化」の目的は20兆円の電力産業のイノベーションを起こして新たな雇用を生み出すことと、電力料金価格を引き下げると。そして再エネ電力を普及拡大させて二酸化炭素を削減することが大きな目的なのです。しかし、今回の電力自由化では再エネ優先策を進める気配が一向にありません。むしろ逆に原子力の電気が余れば太陽光発電などは系統から切り離すことが公然と行われています。本来の電力自由化は「再エネ電力を優先して系統に流す」ことでなければなりません。しかし、現行の系統監視組織には再エネ電力優先の考えが見えません。監視委員会を公開し透明化させる必要があります。

ガスなど新電力へ今すぐ電力を乗り換えよう

NTTの独占だった電話事業が市場開放したときや航空事業自由化時には新規参入企業を優先的に保護して大企業を不利になるような条件を課して市場開放を無理してでも行わせたものです。電話線の一部を低料金で使わせることや羽田空港の利用を新規参入航空会社に優先的に使わせる等々の保護政策を行ってきました。そうしなければ大企業と中小企業は対等には競争ができないのでっす。ところが電力自由化は全く逆で、既存の電力会社をとにかく至るところで過保護なほど保護しまくっています。その最大保護が「発送電のインチキ分離」です。それだけではありません。原子力の価格保証制度も経産省内には案があるそうです。電力自由化で原子力が赤字になりそうなときは原子力だけは価格を保証しようというのです。
そんなことされたら日本から原発は永遠になくすことはできません。1日も早く原発を一掃するためにも原子力優遇政策を撤廃させなければなりません。だからこそ、私たちは「原発の電気はいりません」という消費者の意思を電力会社や国に示す必要があるのです。その最大の手段が「新電力への乗り換え」という行動なのです。
ところが、なかなか電力乗り換えが進んでいません。最新情報では全国で5.4%です。九州管内では3.4%です。これから電力会社による「ガスとのセット割」という巻き返しが繰り広げられるでしょうから、この数字が増えるかどうかは微妙です。「原発の電気など1ワットもいらない」という私たちの意思を示し、原発の電力会社を徹底的に叩くためには、都市ガスを使っている市民はガス会社に、都市ガスの来ていない私のような田舎に住む者は生協電力や地元の新電力に今すぐ乗り換えで、国と電力会社の「原発依存社会を続かせよう」というあくどい企みを打ち砕いていきましょう。
by nonukes | 2017-04-08 14:05 | 電力自由化 | Comments(0)

  小坂正則