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小坂正則の個人ブログ

福島原発事故費用21.5兆円増額は終わりの始まり

福島原発事故費用21.5兆円増額は終わりの始まり
小坂正則
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どこまで増えるか誰にも分からない廃炉費用

東電福島原発事故から来年の春で6年目を迎えようとしています。そして毎日7千人の作業者が廃炉作業に従事していますが、福島原発の汚染水対策も核燃料の取り出し作業計画も全く何も進んでいません。しかし、事故処理費用だけは着実に増え続けています。これまで合計で11兆円と見積もられていた事故処理費用が21.5兆円かかると2月9日に経産省は試算を公表しました。
その内訳は廃炉費用が2兆円が8兆円、除染費用2.5兆円が4兆円、賠償が5.4兆円が7.9兆円、そのほか除染土壌の中間貯蔵費が1.6兆円で、計21.5兆円だそうです。ただ、この見積もりは現在想定される経費であって、今後増える可能性もあると世耕経産相は話しているのですが、いったいどこまで増えるのかは誰にも分からないのです。

青天井の廃炉費用を国民に求める前にやることがある

経産省は新電力の送電線使用料金に、賠償費用の7.9兆円を負担してもらおうというのが今回の大きな目的なのです。新電力利用者の平均家庭で月額18円程度ですと説明していますが、何と30年間です。この経産省案には様々な問題が隠されています。第一にはいったいいくらの事故処理費がかかるか誰にも分からないことだと言うことです。考えて見てください。最初から巨額の事故処理費がかかると官僚が言うはずはありません。小出しに次々と見積額を上げていくのです。福島原発事故のロードマップによると40年かけて廃炉処理を行うというのですが、その費用が僅か2兆円のはずはありません。最初から50兆円とも100兆円とも言われていたのですが、そこで初めて2兆円から8兆円へと見積額が上げられたのです。あと数年すると次には20兆円と言って来るでしょう。
確かに除染費用と賠償費は一定程度予想がつきますが、これまで人類が経験したことのない核燃料デブリを回収するという廃炉費用は想定が不可能なのです。
このような国民負担を強いる経費捻出案を作るなら、少なくとも「原発は安くはありませんでした」と国民に謝罪することが計画を発表する前に行うべきことではないでしょうか。
誰も謝りもせず、「それでも原発は安いです」と、言う裏で「広く国民負担にお願いしたい」というのは、余りのも虫のいい話ですし、道理の通らないことではないでしょうか。

電力自由化をなし崩しにさせる「託送料金への負担案」

経産省の案には2つ目に次のような問題があります。それは今年の4月から始まった「電力全面自由化」により、曲がりなりにも一般家庭でも自由に電力会社を選べるようになったのですが、「原発がいやだから新電力へ変えた」消費者にも原発のツケを払わさせるなら、この先第二、第三の福島原発事故が起きても電力会社は心配いらないと思って、安易に原発の再稼働を繰り返していくことになるからです。事故が起きたらその費用は国と消費者が見てくれるという安易な考えで原発を推進することは、原発企業のモラル崩壊が生じているのです。そして、「託送料」に原発事故費用を紛れ込ませる方法が当たり前になったら、次は必ず廃炉費用の見直し額もここに入れ込むようになることは間違いないでしょう。だって、送電線使用料は競争のない一番紛れ込ませやすい所だからです。今は新電力の顧客は3%から4%ですが、これがどんどん増えていったら原発企業の発電コストは新電力の消費者がこれまで負担してくれた原発事故費用も残った顧客へ負担してもらわなくてはならなくなって、電力会社は「ますます原発の発電コストが跳ね上がる」という恐怖に震え上がっているのでしょう。しかし原発企業は「原発が一番安い」と、いまだに言うのですから「原発の発電コスト」に廃炉費用や核のゴミ処理費用など積み上げるべきなのです。
実は本心はこうです。「今ある原発は最後まで使って元を取りたい」というだけなのです。「作ってしまった原発は動かせば儲かる」というだけの論理なのです。この考えは後先何も考えないで、「今だけ、金だけ、自分だけ」という無法・無責任な企業論理なのです。
しかも、今回は発表されていませんが、各電力会社の廃炉費用もこの託送料金へ紛れ込ませようという案が検討されていたのです。それはどういうことかというと、全国の30年以上の原発17基の内14基が廃炉積立金が不足しているというのです。(東京新聞2012年6月29日号)そこで、その積立金不足分や、これから廃炉に取りかかる5原発の廃炉費用が見積もりよりも多額になる可能性が高いので、その費用も託送料に紛れ込ませようということがまことしやかに議論されていたのです。さすがに「一気にあれもこれもと託送料に紛れ込ませれば国民の反発を招きかかねない」ことを恐れて今回はやめたのかもしれませんが、またぞろ出てくることでしょう。

なぜいまだに原発の発電コストは一番安いと言うのか

資源エネ庁が2012年以後に出した試算ではなぜか原発は10.1円という試算ですが、これには大きなウソが隠されています。この発電コストは、試算ですから、前提があるのです40年間事故がなくて稼働率80%運転の場合の試算なのです。しかし、現実は大事故を起こしていますし、電源開発促進税という税金を毎年3千億円以上もつぎ込んで、核のゴミ処理費など見えないコストは隠された中で、10.1円は1つのモデルケースの発電単価なのです。
ですから立命館大学の大島教授によると今回の21.5兆円を上乗せした原発のコストは13.1円で、最も高い発電単価だったのです。ですから資源エネ庁の発電コストは隠されたコストを引き剥がした「モデルケース」という国家官僚による「騙しのテクニック」なのです。

脱原発実現のために新電力へ乗り換えよう

今年の4月から始まった「電力全面自由化」によって、一般家庭でも新電力などに乗り換え可能になりました。九州ではグリーンコープ生協も来年から新電力事業に参入します。福岡県みやま市はみやまスマートエネルギーという電力会社を立ち上げました。大分県民も購入可能です。大分県内には「大分新電力」という地場企業もできました。電力自由化のためには問題は山積みですが、何はさておき、まずは「新電力への乗り換え」が大切です。九州管内では2%そこそこしか乗り換えが進んでいません。もうすぐ自由化から1年が経とうとしているのに、大分県内の一般家庭40万軒の2%は8千軒しかありません。これでは九電に取っては痛くもかゆくもないでしょう。せめて2割、3割と新電力へ乗り換えが進んで来ると、ジワジワと電力会社の経営にも堪えてくることでしょう。今回の託送料への紛れ込ませ案などによって電力会社がどれほど不当であるかが白日の下にさらけ出させて、このような企業倫理の崩壊した企業へお灸をすえるためにも、一軒でも多くの方が新電力へ乗り換えることを提案します。
私たち一般家庭の電力消費者は、このような不当な経産省案を潰すために「新電力への乗り換え」という手段が最も効果的な抵抗の方法なのです。



【声明】事故処理・賠償費用の託送料金への上乗せに反対
東電の責任をあいまいにした国民負担増加は許されない

FoE Japan2016年12月09日


FoE Japanは、東京電力福島第一発電所事故の賠償・事故処理費用と、老朽原発の廃炉費用を、あらたに広く国民負担とするための制度改革は、福島第一原発事故の責任をあいまいにし、原発事業者を不当に保護するものとして、強く反対します。
福島第一原発事故からまもなく6年、原発事故の被害は収束するどころか、長期化によりますます深刻化しています。長期にわたって続く汚染への対処は、数十年、百年単位の問題であり、生活を奪われた被災者の苦悩は今も続いています。
そのような状況がありながら、3か月にも満たない、経済産業省の審議会での議論で、原発の事故処理、廃炉を実質的に国民(電力利用者)が支援するしくみを導入することはゆるされません。FoE Japanは、下記の視点から今回の制度改正に強く抗議します。

1.東京電力の経営陣、株主、債権者の責任が問われていない
東電救済のために、すでに「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が設立され、交付金などの形で多くの国税等が東京電力に流し込まれています。今回の制度改革で、託送料金を通じて、賠償費用を 広く電力利用者に担わせることが可能になります。
福島第一原発事故の賠償・事故処理は、東京電力が一義的に責任を負うべきであり、その結果、債務超過に陥るのであれば、破たん処理を行うのが順当です。いままで株主・債権者が利益のみを享受し、経済的な責任から免れるのは、資本主義のルールに反するばかりか、事故を引き起こした東電の責任を国民が広く肩代わりすることは、「汚染者負担の法則」にも反します。東電の法的処理の上で、はじめて不足分を税金等から補てんするべきでしょう。

2.「原発の事故処理・廃炉費用が莫大」が明らかになったいま、まずは政策変更をすべき
今回の議論は、原発の事故処理・廃炉費用が莫大であることを、国も認めざるを得ないくなった事態であると言うことができます。「原子力はコストが低廉」とし、原発を保護し温存していく政策の撤回・変更なくして制度改革のみを議論することは許されません。

3.今後の大事故についても、同様に国民負担にすることができてしまう
今回、原発事故の賠償費用として、「過去にさかのぼって積み立てておくべきだった」という、通常考えられない論理により、「過去分負担金(3.8兆円)」の回収が提案されました。さらに、そのうちの一部(2.4兆円)について、2020年から40年にわたり、託送料金で回収することとされています。
このような論理が認められるならば、今回の制度変更を「前例」として、今後事故が起こった際にも同様に託送料金での回収が提案されることが十分に考えられます。

4.電力自由化の趣旨に反する
そもそも電力自由化のなかで、原子力事業者が負うべきコストを、託送料金を通じてすべての電力利用者が広く負担するしくみを作ることは、原子力を不当に保護することになり、電力自由化の趣旨に反しています。発電事業者が費用を負担しきれないような発電方法は、当然排除されるべきです。

5.国会での議論もない拙速で限定されたプロセスであり、民主主義に反する
東京電力の事故に対する責任、賠償、そして今後のエネルギー政策の根幹にもかかわる重大な議論にもかかわらず、国会での議論もなく、わずか3か月の経済産業省の審議会の議論で原子力事業者救済の制度だけ先につくってしまうという進め方そのものが、民主的であるとは考えられません。広く、国民的議論を行うべきです。

*FoE Japanも参加するパワーシフト・キャンペーンでは、9月21日に声明「『原発コスト安』は嘘だった―国民への8.3兆円負担転嫁ではなく、原発政策の転換を」を発表し、幅広い賛同を募っています。(12月14日提出予定、12日締切)
http://power-shift.org/info/160921/

*11月24日、「託送料金での回収」の是非を問う新電力アンケートの結果を発表しました。
http://power-shift.org/info/activity_161124/

by nonukes | 2016-12-10 12:34 | 福島原発事故 | Comments(0)

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