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小坂正則の個人ブログ

4月から始まる「電力小売り自由化」の問題点

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2011年311で津波に襲われた南相馬市のがれきの前に咲いていた一輪のひまわり8月に撮影
4月から始まる「電力小売り自由化」の問題点
小坂正則


「4月からいよいよ家庭部門の電気も自由に買えるようになる」というニュースが流れていますね。皆さんの中には「これで日本も原発の電気にさよならできる時代が来た」と喜んでいる方も多いと思います。
私も電力自由化を待ち望んできた者としては感慨深いものがあります。ただ、あの電力会社と経産省官僚などの、いわゆる「原発ムラ」の人間が自分のクビを絞めるような制度を易々と作るだろうかと思うのです。この電力自由化の制度には必ず隠された大きな罠があるだろうと、私は思うのです。
小ずるい日本の腐った官僚どもが作った制度には必ずといっていいほど、自分たちの利権を守る秘密が隠されているものです。そんな小細工を探ってみたいと思います。

電力会社は送電線使用料をぼったくり

現在大口電力は自由化されていて、全国の60%の電力が自由化されていますが、新電力のシェアは2014年度で僅か4.5%しかないのです。これでは自由化などとはとても言えたものではありません。
そこで、今年の4月から残りの家庭部門が自由化されたので、これで完全に自由化が完成した形なのです。地域独占の電力会社と、それに対抗して参入する新電力とでは象とアリほどの差があります。しかも、象の持ち物の送電線を使わせてもらって商売をするのですから、象が公平に送電線を使わせる訳はありません。最低でも発送電の分離(発電と送電会社を分離する)を行ってから自由化すべきだと私は思っています。象に対しては徹底した強制力で門戸を開放しなければならないのです。具体的には送電線の開放です。これは2020年に行われる予定ですが、ですから現状では自由化などと言える状況ではないのです。
送電部門の分離が4か5年後に行われるとして、その前に新電力会社は息絶えてしまうことを私は大変危惧しているのです。その時、経産官僚や電力会社はこう言うでしょう。「やはり電力自由化は失敗だった」と。まず、現状のふざけた制度をご紹介します。第一に送電線使用料(託送料)がやたらと高すぎます。1kwhあたり、9.71円(東北電力)から7.81円(関西電力)までです。ちなみに東電は8.57円で、九電は8.3円です。この中には送電線の管理費など含まれていると電力会社は言いますが、それが本当かどうかを調べるすべは私たちにはないのです。嘘つき東電(福島原発のメルトダウンを2ヵ月も隠し続けたなどなど、上げればきりがありません)が本当のコストを言うわけもないでしょう。24円で販売する電気の送電線使用料が9円もするのなら、商品の価格に対して送電線コストが37.5%もかかるのです。米国では託送料は10%以下だそうですから、2円そこそこなのです。つまり、電気事業で一番儲かる商売は送電線運用会社なのです。だから私はふざけた自由化だと訴えたいのです。
まだまだふざけた制度があります。「30分同時同量制度」です。これは何かというと、30分毎にその前の需要に供給量を合わせろという制度です。電気というのは刻一刻と需要が変化します。その変化に対して電力会社は供給量を合わせているのです。だから昼間は需要が上がって、夜中は需要は下がります。下がったら発電所を止めたり、揚水発電で上ダムに水を上げて調整しているのです。新規参入会社にもそれと全く同じ調整を行えというのです。もし上回ったら無償で電力会社がもらうけど足りなかったら罰金をもらいますよというのですからひどい話です。原価が11円から12円の電気を50円以上もの罰金を取るというのです。弱小な新規参入電力会社はこんなに取られたらたちまち倒産してしまうでしょう。恐ろしインバランス料金が待ち構えているのです。
この制度がいかに不都合であるかといえば、ヨーロッパにはこんな高額な罰金を取る制度はないのです。だって、電力卸市場が整備されていたら卸市場で電力を購入すればいいのです。確かに極単に暑かったり寒かったら一瞬だけ50円とか100円という価格に跳ね上がることもあり得ますが、普段は安定した価格で足りない分を市場で買い求められます。ところが日本の電力会社は相対取引ばかりしていて市場に電気を流そうとしないのです。
国が強制的に電力会社の電気の2割や3割を市場に出させる必要があるでしょう。これには脱原発派の皆さんからは大変な反論があるでしょう。「そんなことしら既存の電力会社が利するだけで、原発を止められない」と。でも、卸市場に電力を流さないことが自由化を阻害する最も大きな要因なのです。自由化を成功させるには強制的に電力会社に一定量の電気を卸市場に出させることが重要だと私は考えます。その中でどんな種類の電気であるかとう品質明記をさせればいいのです。
また、小規模な電力会社が需要に応じて負荷調整を行う必要など全くありません。それぞれの電力会社が組み合わさってでこぼこの需要はフラットになるのです。もちろん、それでも山や谷はできますが、その分だけは大手の電力会社が負荷調整を行って、それに要した経費を全体で分担すれば済むだけの話です。こんな不当な価格で暴利をむさぼる電力会社はブラック企業です。
電気事業法では部分供給(2つの電力会社から電気を買うこと)という制度は1999年の電気事業法の改正で実施可能となったのですが、これまでに2件の実験が行われただけで現在はゼロです。これなども強制力を持って実施させるべきです。

小坂はなぜ再エネ電力を応援しないか

私はこれまで「電力自由化はガスなどの大手新電力を応援すべきだ」と言ってきました。再エネ100%を唱っている新電力会社を私は応援していません。なぜなら、上のようなルールの中で再エネ100%など無理だからです。もちろん再エネ電力を唱っている会社も全量再エネだとは言ってません。太陽光発電の電気を中心にして販売するのが大半です。でも、現状では太陽光発電が電気を生むのは昼間の数時間だけです。それ以外は卸市場で買うという計画の会社が多いようです。現状では卸市場には買いたいだけの電気は出てきません。買うならうんと高い価格で電力会社から買うしかないのです。作りすぎた電気は無償で電力会社が取ってしまうのですから、それに高い送電線使用料を取られたら、そのうちには「日本ロジテック」のように倒産してしまうでしょう。だから、発送電分離の2020年までは大手のガス会社や石油会社や商社などの新電力に頑張ってもらって、おかしな制度を改善させるたたかいをまずは行うべきだと考えているのです。そして一番重要なことは発送電分離が法的分離(子会社にする)ではなく、所有分離(完全な別会社にする)させるたたかいを私たちが行うことです。電力会社は送電会社に衣替えしてここで甘い汁を吸おうとしているのではないかと私は思っています。なぜなら送電会社は総括原価方式なのです。美味しいところは我がものに独占しようという小ずるい「原発マフィア」たちの考えです。
皆さんの原発の電気はいやだから100%再エネ電気を使いたいという気持ちは分かりますが、ゼロか100かではなくて、20か30くらいの成果を求めることも大事だと私は思います。

電力会社などエネルギー企業再編成が始まる

確かに再エネ100%の電力会社がいいですよね。ドイツのシェーナウのような再エネ100%の市民電力会社が日本にもできることを私も期待しています。でも、それまでにはまだまだ越えなければならない課題があります。ドイツは送電線が一緒の会社や別会社など様々だったから、村の送電線をみんなで買い取って市民電力会社を作ったのです。東京ガスや大阪ガスや東邦ガスの3社は2017年のガス自由化を迎え撃つために電力とガスをセットで販売してガスの顧客を守ろうとしているのです。しかし、日本でガスを一番扱っているのは東京電力で2番目は中部電力です。3番目にやっと東京ガスが出てきます。そんな中で東電と中電はガスを販売する共同出資の会社を設立しました。東電はガス事業に参入しようと狙っているのです。これから電力会社がガス会社を買収してガスと電気の一体企業などができるかもしれません。それに新電力会社は5社程度に再編されるだろうと言われています。激烈なエネルギー販売競争の中では中小零細企業は生き残れないでしょう。

自治体電力会社で福祉電力を実施しよう

私はみやま市や山形県など13自治体が進めようとしている自治体電力会社がこれから一番応援したい電力会社です。私は2012年に「市民電力会社を作ろう」という書籍を出しました。その中でも書いているのですが、大分県でこんな悲しい事件がありました。2001年2月14日、バレンタインデーで世間が浮かれている時に中学3年生がろうそくの火が原因で焼死した事件がありました。この家庭は親子二人の母子家庭でお母さんが帰ってきたらかわいそうだと台所にガラスの灰皿にろうそくを立てていたようだと新聞は書いてます。この家は貧しくて電気を止められていたのです。しかし、母親は九電にお金を払うので電気をつないでほしいと言った後、1時間後くらいに火事になったのです。九電がすぐに電気をつけに来ていたら火事にはならずに済んだかもしれないのですが、もう一つ重要なことが隠されていました。九電の内規で「電気料金を支払わない家庭の電気を止める時は100ワット分だけ電気が流れるようにしなさい」という指示文書があったのに、大分県国東営業所はこの内規違反を行って完全に電気を止めていたのです。だから私は九電株主総会で「九電は中学3年生焼死事件の責任を取れ」と社長を追求しました。自治体が電力事業を行えば生活保護家庭や貧困家庭の内実を知ることが可能ですから、憲法25条の最低の文化的な生活を営む権利を保障するために福祉電力制度ができると考えるのです。そのほか自治体が電力事業を行うことのメリットは山ほどあります。

地方の再生の切り札に電力が使える

その1つが福祉電力の可能性ですが、まだあります。電力産業の国内で動くお金が約8兆円です。九州ではその十分の一ですから8千億円、大分県内では約800億円。この多額のお金を県内で回せたら、どれだけ地方が豊かになるでしょう。市町村でこのお金が回せたら、不況も過疎化も吹っ飛んでしまうかもしれません。そして、電力を地域で生み出すことで、新たな雇用を生み出せるのです。もちろんエネルギーは電気だけではありません。暖房に使う石油の代わりに木質バイオマスを地域で生産できたら、ここでも新たな産業と雇用が生まれて、地域のお金が東京や中東に吸い上げられないで済むのです。街興しの切り札にエネルギーと農業と観光をリンクさせて豊かな地域を再生させましょう。
by nonukes | 2016-03-24 13:25 | 電力自由化 | Comments(0)

  小坂正則