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小坂正則の個人ブログ

子どもの貧困に私たちはどう対処すべきか

子どもの貧困に私たちはどう対処すべきか
小坂正則
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大連の紅沿河原発はフランスの技術に、中国が国産化した加圧水型軽水炉で、100万キロワット型2基が稼働中、2基が建設中

いま、私は中国の大連にいます。ここ中国は行くたびに人びとの生活が豊かになって、町全体が活気に満ちているようです。若者はみんな小綺麗で日本の若者と見まがうようです。
そんな中国にいて感じることは、日本の子どもたちの貧しさです。もちろん中国にも貧しい人びとはたくさんいるでしょう。農村の町に行けば、いまだに裸足に近いような生活をしている子どもたちもいるのかもしれません。
ただ、そんな貧しい人びとの社会でも周りの人びとがみんな貧しければ、孤立感は感じないのでしょう。それがいいというわけでもありませんが、孤立して生きている子どもの一人といえども見捨てていいわけはないのです。「社会保障は行政の仕事だから、私には何の関係もない」とか「そのためにしっかり税金を取られているんだから、そこまで私に責任だなんて言ってほしくない」という意見もあるでしょう。
でも、親が責任を持って子ども育てられないのなら、親には子育ての責任や義務はありますが、子どもには食えないことの責任はありませよね。日本社会はどこかの市長が、「あなた方の市にはお金がないのです。だからあなた方への支援はこれ以上は出来ません」と言って、「日本がいやならあなたたち外国に行きなさい。この国は自己責任の国なのですから」じゃあありませんが。(橋下元大阪市長の発言)
近ごろ「自己責任」という言葉が一人歩きして、社会からはじき飛ばされた子どもたちの生きる権利を親の自己責任で片付けているんじゃないかと私は思うんです。

服装だけでは貧困は見抜けない

「子ども食堂」が全国に広がっているそうです。近ごろは市役所の福祉課と児童相談所と警察が連携して、家庭の児童虐待などにも早めに介入し、大きな事件になる前に子どもを保護するという積極的介入に行政も変わってきています。子どもの人権を守るという意味では、私もいいことだと思います。昔は町の中にお節介おばさんやおじさんがいて、どこの子は貧しい生活だとか知ってましたが、いまは個人情報だとかプライバシー保護で、行政はそのような情報を一切出しませんから、近所の人が飢え死にしても、新聞報道があるまで誰も知らないのです。
そして「服装だけでは貧困は見抜けない」そうです。みなさん小綺麗にしていても貧しくて三度の食事がちゃんと取れていない家庭などでも見た目だけでは分からないそうなのです。アベノミクスで恩恵を受けているのは一部の人で、日本は子どもの相対的貧困率が15.7%で6人に1人が貧困という現状です。先進国と言われるOECD加盟34カ国で貧困率が10番目に高い国が日本なのです。母子家庭の収入の平均が200万円以下で、その多くが貧困家庭なのだそうです。日本の社会保障制度の不備と非正規雇用の拡大によって、母子家庭の貧困が拡大しているのです。
ですから、大都会の中で小綺麗な子どもたちが、実は飢えている状況が静かに広がっているのでしょう。確かに絶対的貧困率は多くはないでしょうが、飢え死にすることはなくても、悲惨な生活に、心身とも飢えている子どもたちはたくさんいるのです。

子どもは社会の宝だというのはたてまえだけでいいのか

よく、戦前は「子どもは国の宝」とか言っていたそうですね。男の子は兵隊に行ってくれるし、女の子は兵士を産んで増やしてくれるから、国の宝だったのでしょうが、現在の日本は高齢化と少子化で、子どもが減って、この国は絶望的なほどの危機に瀕しているのに、子どもが生まれてくれたことは、私たちにとっては奇跡に近いようなありがたいことなのに、他人の子どもが満足に食事を取ることが出来なくても自己責任で済ませていいんでしょうか。私たちの年金や社会の責任は次世代の子どもに「しっかりと面倒は見てくれ」と要求しておいて、面倒を見てくれる予定の当人には何のお世話もしないなんて、虫のいい話はないでしょう。
親の責任で貧困状態に陥ったとしても、その親元の子どもには何の責任もありません。いまの若者(若い母親など)は「自己責任」という橋下市長のような人間に騙されて、子どもまでが社会に甘えることを知らないのです。子どもが貧困状態に陥らない生活を要求するのは当然の権利です。見えづらい子どもの最低限の生活の実現のためには余計なお世話をして、たった1人の子どもの不幸も見過ごさないセーフティーネットを私たちの社会に張り巡らせなければなりません。その第一歩が私たち自らの心の中に「お節介なほど世話をする」心構えが必要なのではないでしょうか。

包摂的社会の実現に向けて奮闘する人びとに学ぼう

そんな一例を2月24日の朝日新聞ネット版で読みました。ここまで一生懸命に取り組んでいる教師の皆さんの活動を見て、私は自分が恥ずかしくなりました。私は「学校など行きたいときに行けばいい」という考えの人間です。義務教育の学校をあまり高く評価していません。でも、学校が子どもの貧困のセーフティーネットの1つとして機能しているという現実があるんだと、この記事に感動しました。
私たちの住んでいる町や地域で、もっと私たち大人ができることは山ほどあるような気がします。「子ども食堂」もそうですし、母子家庭の母親や子どもを注視して、「どう、困ったことはない」と声をかけることなども私たちにできる1つのセーフティーネットでしょう。大人たちが「お節介なほど世話をする」ことで1人の孤独死も出さない互いが支え合う暖かなコミニュティーが、私たちの町や村に出来ていくといいですね。そのような社会を宮台真司氏は包摂的社会というそうです。




くすんだ服「お風呂、入れてる?」貧困のSOS拾う教諭
朝日新聞2016年2月24日

子どもと貧困 学校で
特集:子どもと貧困



関西のある公立中学校の女性教諭(55)は毎朝、校門に立ち登校の生徒を迎える。声をかけながら、視線は絶え間なく動く。表情、身なりに変わったことはないか。すれ違う際はにおいを確かめる。
子どもの貧困は見えにくい。しかし五感を研ぎ澄ませばSOSをキャッチできる。この女性教諭の身上だ。全校生徒の半数近くがドリルや給食、修学旅行などの就学援助を受けている。

 忘れられない生徒がいる。

2013年夏、秋の運動会に向けて校庭で2年生が組み体操を練習中、途中でやめてしまった5人組がいた。
休み時間、廊下で理由を尋ねた。「あいつと手をつなぐの、嫌や」。言われた少年は髪に脂が浮き、白の体操着は灰にくすんでいた。「お風呂、入れてる?」。少年は視線をそらせた。「風呂、壊れてるし」
少年は中1の時に母親を亡くした。父親と母方の祖母、弟2人、妹との6人暮らし。家計は苦しく、洗濯機も壊れ、制服のシャツはいつも首回りが黒ずんでいた。
「放っておけない」。2年の学年主任を務める女性教諭は職員室に担任、副担任を集め、学校でシャツを洗うことを決めた。放課後に保健室で預かり、体操着で帰宅させる。洗濯機を回し、朝に着替えさせる。そんな日が数カ月続いた。
同僚教諭が少年のケアを役割分担した。同学年の別のクラスを受け持つ30代の男性教諭は友だち役を買って出た。少年は昼休み、いつもひとり自席に座っていた。
「友だちやから。何でも言うて」。最初は「うざい」と返していた少年だが、少しずつ応じるようになった。連日、好きなテレビ番組や音楽について話した。中3の2学期から放課後の教室に残り、つきっきりで苦手の数学を教え、高校に送り出した。
卒業から1年近くたった今年2月、女性教諭は偶然バス停で少年と再会し、数日後に落ち合って近況を聞いた。
「友だちができた」「バドミントン部で楽しくやってる」。ことばを切りながら答える語り口は相変わらずだ。別れ際、「一緒にいてくれて、ありがたかった」と言った。
中学から高校への橋渡しは、教師の大仕事だ。殊に家庭に問題を抱える生徒に果たす役割は大きい。
東日本の中3の少女(15)はこの冬、高校入試の願書を母親に破られた。娘の進路に関心が薄く、押印などの手続きを嫌った。
進路指導を担う50代の男性教諭は少女の自宅を訪ね母親を説得しようとしたが、顔を見せない。手紙を出し続け、応募締め切り直前に受験の同意を取り付けた。
しかし男性教諭の不安は収まらない。「このままの環境で、彼女は高校に通えるのか」
母子家庭で、母親は職を転々とし、生活は一見して荒れていた。ワンルームの床はごみに覆われ、ライフラインは何度も止められていた。
男性教諭は児童相談所に少女の保護を求めた。しかし児相は少女に命の危険はなく、母子分離には及ばないと判断した。少女ははっきりした意思を示さないが、「あったかいごはんがあるのはいいな」と言う。
卒業を間近に控え、男性教諭はもう一度少女の意思を確認し、児相に保護を働きかけるつもりだ。力になりたい。少女の先生でいられるのは、残りわずかだ。(長野佑介、後藤泰良)

■教員の多忙、子どもの貧困も一因

教育現場は多忙だ。昨年12月の連合総研の調査によると、公立小中学校の教員は1日平均で約12時間在校し、校外の労働時間も1時間超に上る。負担を感じる業務は「保護者・地域からの要望等への対応」「児童・生徒の問題行動への対応」が8割前後を占め、「背景の一つに貧困の問題が潜んでいると推測される」と担当者は言う。
文部科学省は学校を教職員と外部の人材が連携する「子どもの貧困対策のプラットフォーム(拠点)」と位置づけ、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの導入を進めている。
大阪府立大の山野則子教授(児童福祉)は「生活指導と授業の両方を完璧にこなせる教員ばかりではない。授業が面白ければ、不登校の生徒も呼び戻せる。生活指導に追われ、授業研究の余力が奪われてはならない」と話す。
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子どもと貧困について、ご意見をお寄せください。メール(asahi_forum@asahi.comメールする)か、ファクス(03・5541・8259)、〒104・8011(所在地不要)朝日新聞オピニオン編集部「子どもと貧困」係へ。
by nonukes | 2016-03-01 15:01 | 小坂農園 薪ストーブ物語 | Comments(0)

  小坂正則

by nonukes