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小坂正則の個人ブログ

福井地裁樋口裁判長 「高浜原発再稼働差し止め命令」の仮処分

福井地裁樋口裁判長 「高浜原発再稼働差し止め命令」の仮処分
小坂正則
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高浜原発を動かしてはならない理由「仮処分」主文の私なりの解説です
小坂正則

昨年の5月21日に同じ福井地裁で大飯原発3、4号機の差し止め訴訟判決で、なぜ大飯原発は動かしてはならないのかという理由の中で樋口裁判長はこう言いました。「本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」と。しかし、具体的で科学的な議論までは判決の中では踏み込んでいませんでした。しかし、今回はより具体的に、なぜ仮処分を認めるだけの緊急性があるのかという理由を以下のように主文の中で説明しているのです。

1 基準地震動700ガルを超える地震はどこで起きるか分からない

基準地震動とは原発を襲う地震の可能性を想定する上で最大の地震動であり、基準地震動を適切に策定することは、原発の耐震安全性確保の基礎であり、基準地震動を超える地震はあってはならないはずである。
しかし、全国で20か所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの間に起きている。高浜原発の地震想定の方法がこれら4つの原発と同様に、過去の地震の記録と周辺の活断層の調査分析という手法で行われており、活断層の評価方法も大きな違いがないにもかかわらず関西電力が行った高浜原発の地震想定はそれらの地震動よりもはるかに低いのはおかしいではないか。
この基準地震動という論理を作った張本人である入倉孝次郎教授が新聞記者の取材でこう答えている。「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある。」と答えている。だからこの基準地震動は当てにはならないし、いくらでも低い数値を恣意的に作り出すことは簡単に出来る。だから基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っていることになる。つまり基準地震動を超える地震が到来すれば、施設が破損するおそれがあり、その場合取り返しの付かない事故が起きる可能性が高いし、収束を図るには多くの困難が伴い、炉心損傷に至る危険が非常に高い。

2 基準地震動700ガル未満の地震でも危険

高浜原発の運転開始時の基準地震動は370ガルだったが根本的な補強工事などしないで、550ガルに引き上げ、311事故以後の新規制基準になったら、700ガルにまで引き上げた。原発の耐震安全性確保の基礎となる基準地震動の数値だけをこのように次々に引き上げて「安全は確保されている」というのはいかにもインチキだ。
仮に現行の基準地震動の700ガルを下回る地震によって外部電源が失われたり、主給水ポンプが破損し主給水が断たれる可能性もあることは関電も認めている。しかし、外部電源と主給水によって冷却機能が失われたらそれこそ大事故につながる可能性があるではないか。普通はこのような施設も原子炉と同じような耐震設計を行うことが社会常識だろうに、こんな重要な施設が壊れる可能性があることを平気で認めている関電の無責任ぶりに私は理解できない。それに対して関電は安全設備は多重防御で防ぐから第一陣が壊れても第二陣、第三陣が控えているから安心だというが、第一陣をしっかりさせていなければ第二陣、第三陣と次々になぎ倒されていくということなども考えられるのではないか。だから、基準地震動700ガル以下でも冷却機能喪失による福島原発事故の二の舞になる可能性がありえる。

3 地震列島日本に巨大地震が襲ってこない場所などどこにもない

日本列島は4つのプレートの境目に位置しており、全世界の地震の1割が我が国の国土で発生し、日本国内に地震の空白地帯は存在しない。関電は基準地震動を超える地震が来た他の原発に比べて、高浜原発の敷地は他とは違って特別に強固な岩盤の上に立っていると言うが、そんなんは全く当てにならない。そんな証拠もなくウソは言うな。日本中予想しないような巨大地震がどこに来てもおかしくはない。だから高浜原発だけには想定を越える巨大地震が襲ってこないという説明は根拠がない楽観的な関電の希望でしかない。基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険である。

4 使用済み核燃料保管の耐震性も守られてはいない

使用済み核燃料は我が国の存続に関わるほどの被害を及ぼす可能性があるのに、格納容器のような堅固な施設によって閉じ込められていない。使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには膨大な費用を要するということに加え、国民の安全が何よりも優先されるべきであると考えではなく、深刻な事故はめったに起きないだろうという甘い見通しのもとに使用済み核燃料プールの設計も給水設備の耐震性の作られている。

ここまで耐震補強出来るなやって見ろ!膨大な金がかかるぞ

高浜原発を動かすならせめてここまでやらなければならないだろう。
①基準地震動の策定基準を見直し、基準地震動を大幅に引き上げ、根本的な耐震工事を実施する。
②外部電源と主給水関係施設も基準地震動に耐えられるように強化する。
③使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む。
④使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性を最大クラスに引き上げる。
これだけのことは間単にやれると思うかもしれないが、河合弁護士の説明によると、決してそんなことはできないという。なぜなら、基準地震動を1万ガルなどに引き上げたら、原子炉を作り直さなければ達成できないし、原子炉の中は狭くて補強工事は出来ない。これまで基準地震動を引き上げてきたのはコンピューターを使って仮想のシミュレーションで数字を引き上げただけ。外部電源の耐震補強工事をするということは、原発に来ている何千本もある高圧送電線の鉄塔の全てを耐震補強工事をしなければならない。山の中の鉄塔への耐震補強工事など到底できない。
以上の施設の強化と、原子力規制委員会は免震重要棟は必要だというが、5年以内に設置すればいいと猶予期間を設けているが、その間に地震が来たらどうするのか。地震は人間の計画や願いとは全く無関係に起こるものである以上、規制委員会のやり方には合理性がないことは自明である。

ここが最も重要な視点
規制庁は「規制基準」ではなく「安全基準」を作って出直してこい


原子力規制委員会は、原発を再稼働させるための「新規制基準に適合する」との専門技術的な見地からする合理的な審査をしなければならないし、新規制基準自体も合理的説明のできるものでなければならないが、その趣旨は、高浜原発が事故を起こしても周辺住民の生命、身体に重大な危害を及ぼすような深刻な事態には万が一にもならないように、原発の各設備の安全性については十分な審査を行わなければならない。(最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決、伊方最高裁判決)。そうすると、規制庁が行う、新規制基準に求められるべき適合審査は、原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な基準でなければならない。しかし、新規制基準は上記のとおり、緩やかにすぎ、これに適合しても安全性は確保されていない。規制庁の新規制基準は合理性を欠くものである。つまり、規制基準が規制委員会の田中委員長がいうように「この基準は安全基準ではなく、最低の規制基準である」というが、これでは住民の安全は確保されない。規制庁は「新規制基準」ではなく「安全基準」を作って出直して来なさい。それが出来るまでは原告の人格権である「安心して暮らす権利」は確保出来ず、原発の運転は認められない。

6 なぜ今、仮処分を下さなければならないか

高浜原発がもし事故を起こせば原告らは取り返しのつかない損害を被るおそれが生じることになるので、本裁判の結論を待つ余裕がなく、また、原子力規制委員会の設置変更許可がなされた現時点では、本裁判判決の下りる前に再稼働が行われる可能性が高いので仮処分命令の必要がある。


高浜原発3、4号機再稼働差し止め仮処分
毎日新聞 4月14日

 福井県や関西の住民ら9人が関西電力高浜原発3、4号機(同県高浜町)の再稼働差し止めを求めた仮処分の申し立てに関し、福井地裁(樋口英明裁判長)は14日、住民側の主張を認め、申し立てを認める決定を出した。仮処分の手続きで原発の運転差し止めが認められたのは初めて。関電は高浜3、4号機の再稼働を今年11月と見込んでいたが、決定の取り消し・変更や仮処分の執行停止がない限り再稼働できず、スケジュールへの影響は不可避だ。
仮処分は、判決確定まで効力が発生しない訴訟とは異なり、決定が出た段階で効力が生じる。関電側は決定に対して地裁へ異議申し立てができ、その場合は改めて地裁で審理される。

原発事故を防ぐための安全対策などが争点になった。住民側は、今回と同じ樋口裁判長が関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)運転差し止めを命じた昨年5月の福井地裁判決に触れ、「再稼働で住民の人格権が侵害される危険がある」と主張した。一方、関電は「多重防護の考えに基づく対策を講じ、安全性は確保されている」と反論。住民側が主張する「人格権が侵害される具体的危険性はない」とし、却下を求めていた。

高浜3、4号機については、原子力規制委員会が2月12日、再稼働の前提となる原発の新規制基準に基づく「審査書」を決定。福島原発事故後に定められた新基準を九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)に続いてクリアした。先月20日には、地元の高浜町議会が再稼働に同意している。【竹内望】



参考資料

平成26年(ヨ)第31号 高浜原発3、4号機運転差止仮処分命令申立事件

主文


1 債務者(関西電力)は、福井県大飯郡高浜町田ノ浦1において、高浜発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない。

2 申立費用は債務者の負担とする。

理由の要旨

1 基準地震動である700ガルを超える地震について

基準地震動は原発に到来することが想定できる最大の地震動であり、基準地震動を適切に策定することは、原発の耐震安全性確保の基礎であり、基準地震動を超える地震はあってはならないはずである。

しかし、全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来している。本件原発の地震想定が基本的には上記4つの原発におけるのと同様、過去における地震の記録と周辺の活断層の調査分析という手法に基づいてなされ、活断層の評価方法にも大きな違いがないにもかかわらず債務者の本件原発の地震想定だけが信頼に値するという根拠は見い出せない。

加えて、活断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉孝次郎教授は、新聞記者の取材に応じて、「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある。」と答えている。地震の平均像を基礎として万一の事故に備えなければならない原子力発電所の基準地震動を策定することに合理性は見い出し難いから、基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っていることになる。

基準地震動を超える地震が到来すれば、施設が破損するおそれがあり、その場合、事態の把握の困難性や時間的な制約の下、収束を図るには多くの困難が伴い、炉心損傷に至る危険が認められる。

2 基準地震動である700ガル未満の地震について

本件原発の運転開始時の基準地震動は370ガルであったところ、安全余裕があるとの理由で根本的な耐震補強工事がなされることがないまま、550ガルに引き上げられ、更に新規制基準の実施を機に700ガルにまで引き上げられた。原発の耐震安全性確保の基礎となるべき基準地震動の数値だけを引き上げるという対応は社会的に許容できることではないし、債務者のいう安全設計思想と相容れないものと思われる。

基準地震動である700ガルを下回る地震によって外部電源が断たれ、かつ主給水ポンプが破損し主給水が断たれるおそれがあることは債務者においてこれを自認しているところである。外部電源と主給水によって冷却機能を維持するのが原子炉の本来の姿である。安全確保の上で不可欠な役割を第1次的に担う設備はこれを安全上重要な設備であるとして、その役割にふさわしい耐震性を求めるのが健全な社会通念であると考えられる。このような設備を安全上重要な設備でないとする債務者の主張は理解に苦しむ。債務者は本件原発の安全設備は多重防護の考えに基づき安全性を確保する設計となっていると主張しているところ、多重防護とは堅固な第1陣が突破されたとしてもなお第2陣、第3陣が控えているという備えの在り方を指すと解されるのであって、第1陣の備えが貧弱なため、いきなり背水の陣となるような備えの在り方は多重防護の意義からはずれるものと思われる。
基準地震動である700ガル未満の地震によっても冷却機能喪失による炉心損傷に至る危険が認められる。

3 冷却機能の維持についての小括

日本列島は4つのプレートの境目に位置しており、全世界の地震の1割が我が国の国土で発生し、日本国内に地震の空白地帯は存在しない。債務者は基準地震動を超える地震が到来してしまった他の原発敷地についての地域的特性や高浜原発との地域差を強調しているが、これらはそれ自体確たるものではないし、我が国全体が置かれている上記のような厳然たる事実の前では大きな意味を持つこともないと考えられる。各地の原発敷地外に幾たびか到来した激しい地震や各地の原発敷地に5回にわたり到来した基準地震動を超える地震が高浜原発には到来しないというのは根拠に乏しい楽観的見通しにしかすぎない上、基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険である。

4 使用済み核燃料について

使用済み核燃料は我が国の存続に関わるほどの被害を及ぼす可能性があるのに、格納容器のような堅固な施設によって閉じ込められていない。使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには膨大な費用を要するということに加え、国民の安全が何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しのもとにかような対応が成り立っているといわざるを得ない。また、使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性もBクラスである。

5 被保全債権について

本件原発の脆弱性は、①基準地震動の策定基準を見直し、基準地震動を大幅に引き上げ、それに応じた根本的な耐震工事を実施する、②外部電源と主給水の双方について基準地震動に耐えられるように耐震性をSクラスにする、③使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む、④使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性をSクラスにするという各方策がとられることによってしか解消できない。また、地震の際の事態の把握の困難性は使用済み核燃料プールに係る計測装置がSクラスであることの必要性を基礎付けるものであるし、中央制御室へ放射性物質が及ぶ危険性は耐震性及び放射性物質に対する防御機能が高い免震重要棟の設置の必要性を裏付けるものといえるのに、原子力規制委員会が策定した新規制基準は上記のいずれの点についても規制の対象としていない。免震重要棟についてはその設置が予定されてはいるものの、猶予期間が設けられているところ、地震が人間の計画、意図とは全く無関係に起こるものである以上、かような規制方法に合理性がないことは自明である。

原子力規制委員会が設置変更許可をするためには、申請に係る原子炉施設が新規制基準に適合するとの専門技術的な見地からする合理的な審査を経なければならないし、新規制基準自体も合理的なものでなければならないが、その趣旨は、当該原子炉施設の周辺住民の生命、身体に重大な危害を及ぼす等の深刻な災害が万が一にも起こらないようにするため、原発設備の安全性につき十分な審査を行わせることにある(最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決、伊方最高裁判決)。そうすると、新規制基準に求められるべき合理性とは、原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な内容を備えていることであると解すべきことになる。しかるに、新規制基準は上記のとおり、緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない。新規制基準は合理性を欠くものである。そうである以上、その新規制基準に本件原発施設が適合するか否かについて判断するまでもなく債権者らが人格権を侵害される具体的危険性即ち被保全債権の存在が認められる。

6 保全の必要性について

本件原発の事故によって債権者らは取り返しのつかない損害を被るおそれが生じることになり、本案訴訟の結論を待つ余裕がなく、また、原子力規制委員会の設置変更許可がなされた現時点においては、保全の必要性も認められる。
by nonukes | 2015-04-15 01:11 | 原発再稼働は許さない | Comments(0)

  小坂正則

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