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小坂正則の個人ブログ

「電力完全自由化関連法案を閣議決定」の中に忍び込ませている大きな問題点

「電力完全自由化関連法案を閣議決定」の中に忍び込ませている大きな問題点
小坂正則
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新聞報道などによると昨日の3月3日に安倍政権は「電力完全自由化の関連法案を閣議決定した」と伝えています。来年の4月から家庭用電力も自由化する計画です。しかし、それを私たちはそのまま喜んではいられません。すでに括弧付きの「電力完全自由化」へ向かっているのです。
すでに現在でも家庭用以外の電力「50キロボルト」以上の契約電力で全体の62%は自由化しています。しかし、実際には全体の約97%が既存の電力会社の電力を購入していて、親電力から購入している企業はわずか3%そこそこなのです。これでは自由化とはほど遠いのが現実です。しかも、家庭用となれば自由化へのハードルはもっと高くなってしまうのです。
電気は保存が出来ません。だからその場その場で需要に応じた供給が必要です。また、送電線は電力会社の所有物ですから送電線を借りて電気を送らなければなりません。そうなると、既存の電力会社に対抗して安い電気を売ろうとしたり、クリーンな電気を売ろうとしても、電力会社の許可をもらって、送電線使用料や様々な制約を課せられて使わせてもらうしかないのです。でも、ライバル会社へに低料金で自由に送電線を使わせたりする企業はないでしょう。ですから、自由化にあたっては新規参入の弱小企業が不利にならないような条件を付けてやる必要があるのです。例えば、通信の自由化などではNTTを地域分割したり、ドコモに対してAUやソフトバンクに有利な周波数を割り当てたりして、新規企業が一定の割合のシェアーを確保できるまで、新規企業を応援してやらなければ適正な競争が行われるための自由化とは言えないのです。

既存の電力会社の原発を優先する力電自由化などあり得ない

さて、昨日閣議決定された「電力完全自由化」の中に、こっそりと入れられた条文があります。それは毎日新聞3月4日によると「大手電力会社は、原発が稼働しないまま自由化すると、経営が悪化すると主張している。そのため自民党は業界に配慮し、需給状況などを検証し「必要な措置を講じる」との一文を法案に盛り込んだ。今後の原発の稼働状況によっては自民党などが、改革の延期を求めてくる恐れがある。」というのです。
つまり、安倍政権が前のめりで行おうとしている「原発再稼働」の延長線にある「原発の維持を守りながらの自由化」なのです。具体的にはどんなことかというと、廃炉費用を全ての新規参入企業からも徴収するという制度です。現在は電力会社は廃炉引当金という形で特別会計で積み立てているのですが、電力自由化したら、販売電力が減るのは分かっているので、その負担を既存の電力会社に追わせるのは可愛そうだとして、新規参入会社にも廃炉費用を負担させるというものです。次に入れられようとしている制度が「原発の電力価格保証制度」です。
これはもっとひどいもので、まるでこれまで「原発の電気は安い」というウソを見事に覆す決定的な証拠のような制度です。電力自由化で電力の販売価格が下がって原発の電気がコスト割れしたら、その分を保証しようという制度なのです。イギリスが導入する計画なのですが、その価格保証の適応金額が1kwhあたり16.5円だというのです。日本も15円前後を予定しているとしています。
ちょっと待ってよ。確か311福島原発事故前の資源エネ庁の発表している公式の原発1kwhのコストは5.3円だったのです。311以後は事故の補償費用や廃炉費用などが加算されて、それでも他の発電方法よりも一番安い8.9円だと発表していたのに、何でいきなり15円に発電コストが上がるのでしょうか。経産省・資源エネ庁は安倍晋三と同じ嘘つきペテン師だったのです。

既存電力会社を優遇するインチキ「電力完全自由化」の仕組み

しかし、そんな原発優遇などは序の口なのです。一番の問題は「託送料」といわれる送電線使用料です。現行の使用料は「特別高圧託送料が2.57円/kWh」「高圧託送料 4.89円/kWh」と言われています。平均すると約3.5円の送電線使用料を新規電力会社は支払っているのです。電気料金に占める託送料金の割合はアメリカでは電気料金の10%未満に対し、日本では20%を超えているのです。現在は電力会社の持ち物ですから、「いやなら使わないでいいのです」と強気の対応をします。そこで、「発送電分離」を2020年に行う予定なのですが、電力会社を発電会社と送電会社に分割するというのですが、完全な資本分割なら平等に託送料を払うようになるので問題はないのですが、送電会社を既存の電力会社の子会社化する案が通ってしまえば、見せかけの自由化しかならないでしょう。例えば、託送料をやたらと高くして、既存の電力会社も新規の会社の支払って、膨大な利益を送電会社が得て、その金でグループ会社が潤うというようなことだって可能なのです。政府案は子会社化案が有力です。
まだまだ不平等があります。それは「30分同時同量ルール」です。新規参入会社は30分毎に需要と同量の発電量にしなければならないのです。それを下回った場合は既存の電力会社からペナルティー料金を取られる仕組みです。その額が何と不足分インバランス料金
変動範囲内(3%以下)だったら8.45円/kWhで既存の電力会社に支払えばいいのですが、変動範囲外(3%以上)だったら夏季で76.49円/kWh。その他季 49.08円/kWh。 夜間でも38.12円/kWhという莫大な料金を支払わなければならないのです。
同時同量制度は新規電力会社をいじめる制度です。発電時期や時間によって、既存の電力会社の負荷追従運転の費用を負担すればいいはずです。
また、現行の62%の自由化で、新規電力企業の販売量がわずか3.5%というのは、託送料や「30分同時同量ルール」だけではありません。現在でも卸電力取引市場というのがあります。ここで余った電力を売りに出して、足りない電力を買うという電力会社間の市場があるのですが、ここで取り引きされる電力がわずか0.6%しか出回っていないのです。なぜかというと、既存の電力会社は自力で負荷調整をするのが原則だし、足りないときは卸し市場を通さなくて、随意契約で電力会社間で売り買いしてるのです。イギリスでは完全に市場を通して売り買いされているそうです。日本でも「電力会社の発電量の30%は市場に出さなければならない」などという数量規則を作るべきです。そうすれば新規企業はそこで調達可能になるのです。

電力自由化とは「自由意思で電気を自由に売り買い出来る社会」の実現

よく、政府は「電力自由化で電気料金を下げる」といいます。しかし、それは結果であって、それが目的ではありません。既存の電力会社は「ドイツの電力自由化で世界一高い電気料金になった。だから日本は過度の自由化をすべきではない」と反論します。また、「電力自由化による値下げ競争で経営が不安定になり、安定供給体制が維持できなくなる」と言って反論します。
電力自由化の目的は「地産地消で電力の有効利用を進めて、地球環境への負担を少なくする」ことと「市場開放で新たなビジネスチャンスを生み出すことでエネルギー産業の発展を実現させる」ことや「自由主義社会では消費者の自由な意思で売り買いできる社会をつくる」ことになどに、その目的があるのです。その結果電気料金が高くなるか安くあるかは消費者=国民の選択の結果です。ドイツがなぜ世界一高い電気料金なのかと言えば、再エネの普及のための負担金と付加価値税により電気料金の半分が税金だからだと言われています。だから高いか安いかは政治の問題なのです。私たちは原発の電気などまっぴらですから少々高くても安全で地球にやさしい再エネ電力で生活したいと思っている人々がそのような「クリーンな電力」という商品を自由に売り買いできる社会を求めているのです。原発の電気が好きな人は原発の高くてダーティーな電気を買えばいいのです。(原発がまだ動いていたらの話ですが)



原発維持へ「必要な措置」の一文 20年発送電分離 法案閣議決定
東京新聞2015年3月4日 朝刊

政府は三日、大手電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」を義務付ける電気事業法の改正案を閣議決定した。今後は一連の改革を実現して、料金の引き下げなどの効果を目指す。改革の内容をあらためて確認するとともに、今後の展開を探ってみた。 (吉田通夫)
 Q 電力事業の改革って、何をどうするの。
 A 今は大手電力会社が地域ごとに発電から送電、小売りまで独占している。「地域独占」と呼ばれ、六十四年間も競争がない。しかし、東日本大震災後の大規模な停電と福島第一原発の事故を機に硬直した仕組みが問題視され、改革することになった。発電や小売りにいろいろな会社が参入できるようにして競争を促すのが目標だ。
 Q 私たちにはどんな影響があるの。
 A 今は首都圏に住んでいたら東京電力、中部圏なら中部電力と契約するしかない。でも二〇一六年四月からまず小売り事業が自由化され、どこから電力を買うかを選べるようになる。ガス会社や携帯電話会社などが参入を表明しており、電気料金とのセット割引などで顧客の獲得を目指す。競争が強まれば、生活リズムに合わせた料金メニューなど、便利なサービスが増える効果も期待できる。
 Q 二〇年に実施する「発送電分離」はどういう改革なの。
 A 電気料金を安くするには発電会社の競争が必要。しかし今は大手電力会社の一部門が送電網の運営を行っているので、自社の発電部門を優遇して後発の発電会社の参入を阻む恐れがある。だから別会社にして送電網を利用する際の料金を明示し、グループの発電部門もグループ外の発電会社も、すべて同じ条件で使えるようにするんだ。ガス業界でも同じ内容の改革を実施するよ。
 Q 改革は進むのかな。
 A 大手電力会社は、原発が稼働しないまま自由化すると、経営が悪化すると主張している。そのため自民党は業界に配慮し、需給状況などを検証し「必要な措置を講じる」との一文を法案に盛り込んだ。今後の原発の稼働状況によっては自民党などが、改革の延期を求めてくる恐れがある。
また、国は大手電力会社の原発を優遇しており、新しい小売会社と契約しても現在の大手の料金制度と同じく、廃炉に必要な費用を上乗せするとしている。これは競争を強めるという改革の趣旨に逆行している。
by nonukes | 2015-03-04 14:38 | 電力自由化 | Comments(0)

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