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小坂正則の個人ブログ

「放射能の恐ろしさは農薬の比ではない」

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「放射能の恐ろしさは農薬の比ではない」
だから川内原発の再稼働は許されない
NPO法人 九州・自然エネルギー推進ネットワーク
代表 小坂正則

 今回は連載の「マイナス経済成長社会を楽しく生き抜く」はお休みします。鹿児島県の川内(せんだい)原発が日本最初の再稼働の原発になりそうなので、この原発を動かすことがいかに危険きわまりないことであるかということを知ってほしいからです。
 「福島第一原発の事故から3年。未だ故郷に帰れない原発避難者は13万人」とNHKは3月8日に伝えてます。有機農業者の自死もありましたが、「福島第1原発事故による体調悪化などが原因で亡くなる『震災関連死』死者が福島県民だけで2月19日現在で1656人」と日経新聞は伝えています。原発事故による被害は経済的にも50兆円とも100兆円とも言われていますが、福島県民を中心に東日本の住民と農業者の生活をズタズタに破壊したまま、原発事故は未だ何も解決していないのです。
 皆さんの行っている有機農業や低農薬や無農薬の野菜や果物を作るということは、大変な手間暇をかけて行う安心・安全な農業だと思います。しかし、農薬よりももっと恐ろしい放射能という毒が福島第一原発事故で環境中に大量にばらまかれました。農薬は時間が経てばほとんどが分解しますが、放射能は無毒化するには恐ろしいくらい長い時間が必要です。セシウム137の半減期(放射線を出す能力が半分になる時間)が30年ですから、60年で25%の毒性が残ります。90年で12.5%。120年で約6.25%。150年で3.1%180年で1.56%。210年で0.78%。240年で0.39%。280年で0.2%。310年で0.1%です。300年経たなければ1000分の1にならないのです。一旦セシウムに汚染された野山は300年間は放射能から逃れられないのです。地上最強の猛毒といわれているプルトニウムは耳かき1杯で100万人を殺すことが出来る猛毒といわれていますが、このプルトニウム239の半減期は2万4千年です。10分の1になるには8万年かかるのです。そのプルトニウムも3号炉の燃料として使われていたので大量に放出されました。

小坂農園の放射能はどのくらい

 先日、京大原子炉実験所の今中哲二助教の講演会を開催しました。そのついでに小坂農園に立ち寄った今中さんは、びわ畑の土を持ち帰ってセシウムの汚染濃度を計ってくれました。その結果、土壌1kgあたりセシウム137が5.7ベクレル。1平方メートルあたりでは240ベクレルでした。福島原発事故で出たセシウム134は検出限界値以下だったそうですから、福島原発事故由来のものではなくて50年前に米ソや中国が行った大気圏核実験と28年前に起きたチェルノブイリ原発事故由来のものだそうです。
 大分の干し椎茸からセシウムが出たという話を聞きましたが、大分の干し椎茸も原発事故の影響で値崩れを起こしています。福島原発事故の影響は大分の私たちにも決して人ごとではありません。ただ、日本中の山や田畑は少なくともいくらかの放射能に汚染されているのです。ですから、いたずらに放射能に対する恐怖心を持っても仕方ありません。私たちは冷静に出来るだけ被曝をしない生活を心がけながら、放射能汚染した大地と向き合って生きていくしかないのです。しかし、日本に住む私たちはこれ以上の放射能を世界中にばらまいてはならないと思います。

原発事故が起きたらどこに逃げればいいのか

 九州電力の鹿児島県薩摩川内市に立地している川内原発は原子力規制委員会で優先的に再稼働審査が行われています。そして安倍首相は「世界最高水準の安全基準に合格した原発は動かす」と言っています。しかし、規制庁は「我々は安全を保障するものではなく、原子炉の運転に際して最低の規制基準を審査するだけだ」と言っているのです。だから「世界最高水準の安全」などという安倍首相の話は真っ赤なウソなのです。
 米国の規制庁(NRC)は機器の安全性が担保されていても「避難計画」が出来ていない原発は運転許可を出さないのですが、日本の規制庁は「避難計画は当委員会の審査対象ではない」と言って審査していません。それでは誰が「避難計画」と「原子力防災対策」を審査するのでしょうか。国は「地方自治体が一番実態に即した避難計画を作ることが出来る」といい、立地自治体は「国に全てを任せている」と互いに責任をなすりあっています。つまり日本の原発は「避難計画」と「防災対策」についての審査機関はなく、どんなにずさんな避難計画でも作ればOKなのです。
 なぜ「原子力防災」や「避難計画」を審査しないのかといえば、30キロ圏内の周辺住民全員を安全に避難させるなど出来ないからです。健康な方は自分で逃げ出せたとしても、独居老人や寝たきりの介護老人や病人などを大量に搬送する手段がありませんし、それを受け入れる施設もないのです。
 静岡県は浜岡原発の周辺31キロの住民86万人が一斉にマイカーで逃げたら、全員が避難するまでに31時間かかるといいます。しかし、その中には独居老人や入院患者などは含まれていないのです。彼らは一時待機してもらって、後で、バスを迎えによこすという計画です。でも、原発が爆発した後、原発近くの病院にバス会社はバスを出してくれるでしょうか。運転手を確保出来ないでしょう。また、病院の勤務医や看護師は誰が残り、患者の面倒を見るのでしょうか。食材は誰が届けに行き、食事は誰が作るのでしょうか。福島事故ではガソリンなど支援物資を福島に運びたくても運送会社が運んでくれなかったといいます。労働者は「安全な環境で働く権利」があるからです。生命の危険をさらしてまで仕事を強要する法的な根拠が使用者にはないのです。自衛隊員にお願いするのでしょうか。再稼働の前に被曝してでも働かなければならない労働者の義務や保障などを法律で明確にする必要があるでしょう。アメリカには事故時に突入する決死隊を「ジャンパー」といって、決まっているといいますし、軍隊の一部にはそのような隊員がいるそうですが、自衛隊にはそんな隊員はいません。日本は全てが未整備なのです。
 おまけにこのシミュレーションは地震で道路が壊れたり建物によって寸断されたりしないという前提です。実際には道路は陥没したり倒壊した建物で通行不能な場所が至る所にあるでしょう。また、雪が降っているかもしれないし、津波が襲ってくるかもしれないのです。狭い国土に住民が密集している日本では住民全員を安全に避難させる「避難計画」など作れないのです。福島原発事故前にも「避難計画」はありましたが、全く機能しませんでした。今回の「避難計画」は対象範囲が10キロから30キロに拡大しただけで、中身は以前と全く同じです。絵に描いた餅なのです。

新たに浮上した川内原発の火山対策

 鹿児島県の川内原発160キロの範囲には桜島をはじめ39もの火山があり、6つのカルデラ(火山噴火で出来た山の残骸)があります。川内原発は日本一の火山に囲まれた原発なのです。朝日新聞5月11日、社説「原発と火山噴火の驚異を直視せよ」と、「川内原発の再稼働審査には火山対策がほとんど取られていない」と指摘しています。また4月29日、日本火山学会は「原発と火山活動について」という委員会を開催したのですが、委員から「現在の地震や地殻変動の観測態勢では、大規模な噴火の規模や時期を事前に正確に把握することは難しい」といった意見が出ました。川内原発の敷地周辺では数万年前の火砕流や溶岩が堆積した痕跡が残っているのです。つまり、直下型地震のリスクがゼロではないように、火山噴火のリスクもゼロではないのです。火山の御用学者は「最長60年の原発稼働期間中に巨大噴火が発生する可能性は高くない」といいますが、それはあくまでも確率論です。「1万年に1回の噴火だから心配する必要はない」といわれても、リスクはゼロではありません。福島原発を津波が襲うリスクも決して高くはなかったのです。1000年に1度の巨大地震と津波を国や東電や御用科学者が「想定外」という一言で、まるで他人事のように済ませましたが、今回の川内原発も周辺のカルデラ火山の噴火があった時には「想定外」で済ませるつもりなのでしょうか。
 火山国であり、世界一の地震国である日本に原発を動かすことなど狂気の沙汰なのです。
 この国は地震国で火山国である限り、いつどこで噴火や巨大地震や津波があっても、それは想定外ではないのです。わずか1000年や1万年という時系列は地球の歴史から見たら、ほんの一瞬の出来事でしかありません。私たちが福島原発事故を教訓とするなら、1万年に1回の噴火も科学的に想定しなければならない防災対策の範囲ではないでしょうか。
 最後に小泉元首相が先日こう話していました。「原発が動かなければ日本の経済はつぶれると言うが、もう1年近く、1機の原発も動いていないのに日本経済はつぶれていないではないか」と。


この原稿は「おおいた有機農業研究会」の通信「食と農おおいた」の5月号に寄稿した私の原稿を転載したものです。
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by nonukes | 2014-05-23 05:25 | 小坂農園 薪ストーブ物語 | Comments(0)

  小坂正則