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小坂正則の個人ブログ

電力自由化とアジアスーパーグリッド

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「日本の科学者」5月号へ掲載した原稿をここに載せます。この5月号は昨年の11月に大分で開催された「自然エネルギーアイランド九州の未来」という講演会の内容を再録したものです。私の話以上に他の方のお話が非常に興味ある内容でした。もし、必要な方は送料込みで600円でお譲りします。売価は税込み600円です。私までお知らせください。なお、この原稿は最終稿ではありません。最終稿をどこに保存したか分からなくなってしまいました。みなさまのご批判をお待ちしています。
090-1348-0373( 小坂)
E-mail:nonukes@able.ocn.ne.jp

電力自由化とアジアスーパーグリッド
NPO法人 九州・自然エネルギー推進ネットワーク
代表 小坂正則
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私が再生可能エネルギーに取り組んだ理由

私は一介の再生可能エネルギーNPOの代表です。再生可能エネルギーの学術的な研究者ではありません。ですから、詳細な技術的可能性についてとか、電力を巡る経済的、法律的な問題に詳しいわけではありません。私はチェルノブイリ原発事故から反原発運動を始めた一市民です。私が「原発反対」を訴えると、私の周りの者から「原発を止めたら電気はどうするのか」という批判をよく聞きました。そこで、私は再生可能エネルギーを自分たちで作って「こうすれば原発に頼らなくても電気などのエネルギーを作ることが出来る」という代替案を示すために2001年に再生可能エネルギーNPOを立ち上げてたのです。
原発の代替エネルギーを作らなければ原発を止めることは出来ません。地球温暖化などの問題から化石燃料を出来るだけ使わずに原発を止めるには再生可能エネルギーを増やすしかありません。そのためには電力自由化によって自由にクリーンな電気を売り買いできる環境を日本に実現させなければならないと考えたのです。そこで「発送電分離」を導入して日本の電力市場に適正な競争と公平な送電線利用を実現させることが必用だと思うようになりました。
新しい技術というものは発明者は偉大ですが、それを経済的に成り立たせる仕組みを考え出すことも偉大なことだと私は思います。ですから、私は国の電力供給の仕組みを変えるという政治的な取り組みと平行して、私の住んでいる大分に再生可能エネルギーを普及させるとう個別実験的な取り組みについても挑戦して来ました。

電気の産直運動を始める

まず、私たちが最初に取り組んだことは太陽光発電を公共施設に設置することです。そしてその電気を県や市などの公共施設に販売することです。これを私は「電気の産直運動」と呼んでいます。電気事業法によって、電力は電力事業者にしか販売は出来ません。そこをどうくぐり抜けるかが1つの課題です。非営利NPOは太陽光発電の設置に当たっては約半額の補助金が国(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構:NEDO)から出ていました。その補助金を使って公共施設に太陽光発電を設置し、電気は無償で施設に供給して、その代わり電気代相当額の交付金をNPOに県や市が交付するという方法をを考えました。もちろん違法ではありませんが、全く問題がないかどうかは司法の判断を受けてはいませんので、私には分かりません。
現在までに公共施設や民間施設など、合わせて10機約138kw の太陽光発電を設置しました。
再生可能エネルギーといえば、みなさんすぐ太陽光発電や風力発電などを思い描くでしょうが、電気だけがエネルギーではありません。太陽熱温水器や薪やメタンガスなども立派な再生可能エネルギーです。ですから、私たちは木質バイオマスの熱利用も進めたいと思ってペレットストーブの販売や薪ストーブ設置業者と協力して、安価な薪の供給などにも取り組んでいます。日本の国土の67%は森林です。日本は世界3位の森林国です。しかも国内林業が疲弊していて、林業の再生に大きく貢献する木質バイオマスのエネルギー利用は日本に取っては最も重要な取り組むべき課題だと私は思っています。木質バイオマスの普及は大分などの過疎地域の市町村の過疎化対策や新規産業の育成や雇用の創出に大きな効果があることから、バイオマス熱利用は、私のライフワークです。しかし今回は紙面の都合上、残念ですがこの話は割愛させていただきます。

孫正義さんのアジアスーパーグリッド構想

私が今回取り上げる「アジアスーパーグリッド構想」はソフトバンクの孫正義さんが立ち上げた「自然エネルギー財団」の構想を元にして書いているのですが、孫さんの構想と違うところはロシアの天然ガスを利用した天然ガス発電を日本の電力会社がロシアで実施して、その電気を日本へ送電するというところです。
それではスーパーグリッドとは何なのか。基本的なことからお話しします。私たちの家庭に来ている電気は交流です。それを電気製品で使う時は、わざわざ直流に直して使っています。自動車のバッテリーは一般的には12ボルトの直流です。それなら一般家庭も自動車のように直流の電気を流せば交流を直流に変換するアダプターなど不要で交流直流変換ロスなど生まないので効率的だと思うのですがそうは行かないのです。
エジソンは1878年に直流電流を使った電灯会社をアメリカに設立しました。しかし、直流電流は電圧をあげたり下げたりすることが困難だったため電力の利用が集中する時間帯には電圧降下によって電灯が暗くなるなどの問題に直面したそうです。そこでエジソンの部下だったステラはエジソンの元を離れて交流電流の電灯会社を始めたそうで、師弟による直流交流戦争が引き起こされたのです。結果はエジソンの直流は長距離送電に不向きだとしてステラが勝利しました。その後、世界中に交流方式が広がって現在に至っているのです。しかし、100年以上の月日が経って、エジソンの昔年の思いが現在に蘇って来たのかもしれません。直流送電の時代が来ようとしているのです。
スーパーグリッドとは、高圧直流電流を送電線に流すことにです。将来的には液体水素マイナス193度で電線を冷却して送電すれば原理的に送電ロスはゼロに限りなく近くなると言われています。ですから直流は送電ロスが交流に比べて遙かに少ないことなどが最大のメリットです。高圧直流電流は1000キロメートル送電してロスは3%と言われています。高圧交流は約10%のロスがあるそうです。
また、直流電流は変圧が難しいという問題も現在では克服されているようです。
この高圧直流送電線を日本列島に縦断させます。そして福岡から韓国へ海底ケーブルでつなぎ、韓国から中国を経由してモンゴルまで延ばす計画が孫さんのスーパーグリッド構想です。そしてモンゴルの砂漠に太陽光発電と風力発電を設置して、そこで出来た電気を日本に送る計画です。この構想の実現には莫大な資金や各国の協力が必要ですが孫氏は2012年5月、当時の韓国大統領・李明博氏(イミョンバク)を訪ね、この日韓海底ケーブル敷設計画への協力を求めたところ、内諾を得たということです。また、モンゴル政府との間ではすでにこの構想に対して全面的に孫氏に協力するという協定も結んでいるそうですし、中国の習主席にもソフトバンクの幹部が直接会って、構想への支持を得ているそうです。ただしこれは国家間の緊張関係が取れていない今日の段階では実現は不可能でしょうが、事業自体はビジネスとして互いの国家の利益になる事業ですから、国家間の軋轢を越えて実現できる可能性は大きいし、私はこの構想は決して夢物語ではないと思っています。 また、孫正義氏のご両親は中国系韓国人だということもこの一大プロジェクトを成功させる大きな力となることでしょう。現在の安倍政権が続く限りはこの構想も実現しにくいかもしれませんが、安倍政権が終われば、一気に実現に向かうかもしれません。
また、この事業だけでも数兆円の建設費用が必要ですが、一般的な設備投資としても決してできない事業ではありません。なぜなら、電力の相互利用はこれから発展する中国にとってはますます必要なエネルギー安全保障だからです。短期的には日本の電力需要を満たすためにモンゴルやロシアから電力供給を受けるのですが、将来的には莫大な電力需要が生まれる中国へ日本の再エネ電気を供給することが出来るようになるのです。

電力危機を救うためにはロシアから天然ガス発電の電力を日本へ

日本は現在、全ての原発が止まっています。そのために天然ガスや石炭などによる代替発電が行われています。それらのコストが政府は年間4兆円と言っていますが、どうもそれは怪しくて、実際は2~3兆円くらいだと言われています。省エネで原発事故前に比べて15%消費が削減されているそうですし、4兆円の内訳は石油換算だそうです。実際は石炭や天然ガス発電のコストは随分低いのですが、それでも確実に国内のお金が海外に出ていることに違いはありません。電力会社の天然ガス輸入コストが1MMBTU(天然ガス25立方メートル)あたり、約20ドルです。米国は2.5~4ドルでEUは12ドル。国際的な価格に比べたら2倍以上の価格で日本の電力会社は購入しているのです。いわゆるスポット価格で購入するので、「足下を見られて高く買わされている」といいます。
アメリカのシェールガスの発見によってロシアの天然ガスの価格も随分下がっているということですが、シェールガスが日本に入ってくるまでには、現地で液化装置の建設などのための時間がかかります。実際に日本に入ってくるのは2年後と言われています。米国現地でのシェールガス価格が1MMBTUあたり約2.5~4ドルとしても液化コストと日本までの船賃などの費用が6ドルといわれていますので、それを加えればそんな極端に安くはなりません。また、米国からの輸入出来る量も限られていますから天然ガス全体のコスト削減効果は数パーセントともいわれています。
天然ガスを熱利用するためには日本までガス本体を運ぶ必要がありますから、液化して船で運ばなければなりませんが、電力利用の場合なら、現地で発電して送電線で電気を送るだけですから輸送コストは格段に安くなります。
ロシアの天然ガス発電の産業用売電価格は1kwhあたり約3円と言われています。この間の円安で少しは高くなっているかもしれませんが、随分安い価格です。しかもロシアの発電所は旧式のタービンを使っていますので、日本の最新鋭のガスコンバインド発電所を建設すれば、もっと安く発電できるでしょう。これまで普通の火力発電所のエネルギー効率は40~50%弱でした。ところが現在のガスコンバインド発電用タービンの材料が改善されて高温に耐えるタービンの開発で1500度の温度に耐えるタービンでは59%のエネルギー効率を実現しています。1600度の熱に耐えるタービンの実用化が出来たことにより、2015年には62%効率の発電所が日本では運転を開始します。このように技術革新によって、日本の天然ガス発電所の発電コストはどんどん安くなっているのです。
北海道出身の元国会議員、鈴木宗男氏がロシア北海道天然ガスパイプラインの設置を提唱していますが、私は、それよりも送電線で日本に電気だけを送る方がコスト的にもやすくつくのではないかと考えます。高圧直流送電線を使ったコストから、1kwあたり1~2円として、5円からそれ以下の発電コストで原発の代替え発電が可能になると思います。

国内に列島横断スーパーグリッド建設の意義

北海道は風が強くて日本で最も風力発電の適地が多いといわれていますが、北海道内での電力需要が小さいため、風力発電の設置規模は29万kwで、東北電力(55万kw)や九州電力(41万kw)などに抜かれて東京電力(35.7万kw)にさえ抜かれています。(2011年度現在)なぜ北海道が風力発電の適地が多いにも関わらず設置が進んでいないのかは、他の電力会社へ送る送電線が脆弱なことなどが原因の1つです。北海道電力と本州間には通称「北本連系」(きたほんれんけい)という60万kwの海底ケーブルで結ばれているだけなので、この細い送電線では北海道の電力を本州へ十分に送ることが出来ないのです。
日本の風力発電は2010年全国ので230万kwですが、世界一の中国は4229万kwで、次いで米国の4000万kwです。ドイツが2700万kwと日本の10倍以上です。日本の風力発電はFITの導入にも関わらず伸び悩んでいます。その主な理由は電力会社がこれまで風力など深夜でも電気を生み出す発電方法は原発と競合するために様々な嫌がらせを行ってきたのです。負荷変動が大きい風力に対して負荷変動を低減させるためにバッテリーの設置を求めたり、解列枠(電力会社が電気が不要な時には風力の系統を切ってしまうなど)の設定など世界に例を見ないほどの設備や条件を求めたことが何よりの証拠です。
また電力会社は地域独占ですから自分の電力供給地域だけで電気を賄おうとしてきた閉鎖性が各電力会社間の送電線を脆弱なままにして来た理由でしょう。ですから電力会社による地域独占の閉鎖性を取っ払う意味でも「列島横断スーパーグリッド」は効果があるのです。
また、日本は東と西では電気の周波数が異なるために北海道から大阪へ電気を送ろうとすれば、周波数を50ヘルツから60ヘルツ変換しなければなりませんのが、直流送電線のスーパーグリッドによって、北海道の電気を九州まで送ることも難なく可能になり、おまけに周波数の問題は解決されるのです。交流への変換はスーパーグリッドの末端で行えばいいのですから、そこで各地の周波数に変換するだけで解決します。

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日本は島国なのでドイツのような脱原発はできない?


これまで日本政府や電力会社が「日本は島国なのでヨーロッパのように電力を周辺の国と融通し合うことが出来ないから再生可能エネルギーの電気の受け入れも限られる」といっていました。ですから、日本の電力会社は風力発電は負荷変動が大きくて最高に受け入れてもわずかな量の「連携可能量」を提示して、それ以上は受け入れないという国際的には全く通用しない言い訳をしていたのです。ドイツでは風力発電の設備容量が7.7%です。それに比べて、日本の再エネ(水力を除く)は全体で1.6%で風力は0.5%です。現在日本で最大に風力発電の電気を受け入れている東北電力でさえ、総出力のわずか1.7%の導入率です。日本の10倍以上の風力発電を受け入れているドイツのようにしてもらうためにもアジアスーパーグリッドの設置で「日本は島国だから受け入れ出来ない」という障害を取り除けば、日本の電力会社もきっと、風力発電の電気をドイツのようにどんどん受け入れてくれることでしょう。
何と昨年の4月18日の正午にドイツでは電力供給量7000万kwの内50%以上の3600万kwを風力や太陽光発電などの再生可能エネルギーの電力で賄ったそうです。そして6月16日には再生可能エネルギーの電力が全電力の61%を占めるという世界最高と思われる記録を樹立したそうです。日本での瞬間記録は電力会社が公表していないので不明ですが、日本の電力会社がいう「周波数を乱すので受け入れられない」という説明はドイツの例を見る限り、全く根拠のない「作り話」であることが分かると思います。
電力事業とは、刻一刻と変化する電力需要に対して、いかに供給量をピッタリと追随させることが出来るかが一番大事な仕事です。ドイツの電力マンは天気予報などを参考にして不安定な太陽光発電や風力の再生可能エネルギーの発電予測に基づいて、30分後の発電量を予測して、その過不足を天然ガス発電などによる負荷追従運転で補いながら電力の安定供給を維持しているのです。ドイツの電力マンは日本の電力会社の人間よりも10倍も20倍も負荷追従運転がうまいのでしょうか。私はそうは思いません。日本の電力マンの方々にもドイツに負けないくらいの電力マンの腕前を見せてもらいたいものです。また、風力などは設置数が多くなると、それぞれ単体では複雑な動きをしていても全体の発電量はフラットな動きになると言われていますから、ドイツではそのような経験が世界最大の割合で再生可能エネルギーの電力を安定供給することができたのかもしれません。
私は日本の電力会社が2%そこそこしか再生可能エネルギーの電気を系統に入れられないとかたくななことを言い張るのなら、ドイツの電力会社に日本へ進出してもらって、日本で再生可能エネルギーの電力をどんどん導入する電力事業を行ってもらえばいいと本気で思っています。
次に政府や電力会社は「ドイツが脱原発を進めることが出来るのはフランスから原発の電気を買ってくるからだ」という話について検証してみましょう。本当にドイツは原発を止めて、その不足分をフランスの原発の電気を買ってきているのでしょうか。
11月10日の時事通信社によると安倍晋三首相は11月9日放送されたBS朝日のインタビューで、小泉純一郎元首相が「原発ゼロ」を主張していることについて、「日本は島国だ。ドイツは(原発を)やめても、原発政策を維持するフランスから電気を買うことができる。日本はそれができない。そういうことも含めて責任あるエネルギー政策を考えなければいけない」と述べ、原発維持の方針に変わりがないことを強調した。」と伝えいます。
そのほかにも日本政府や電力会社は安倍首相のいうようなことを言っていました。
ドイツの2012年の電力輸出入の収支を見ると電力輸出が666億kwhで輸入が228億kwhで貿易収支は1680億円の黒字だそうです。ただ、EUは送電線がつながっているので一時的にフランスの電力が入ってくることはあるそうですが、フランスの原発に電力需要を頼っているということは一切ないそうです。ドイツは電力輸出国なのです。ドイツ日本大使館のHPにはこのように書かれていました。「…ドイツの17ヶ所の原発は国内電力消費の22%を生産していました。今、残っている9ヶ所でもまだ15%を生産しています。これに対して、2010年に、ドイツの電力生産の17%、2011年にはさらに20%が再生可能エネルギー資源で生産されたのです。2020年までに35%、2050年までに50%まで増やす予定です。」とありました。原発を止めても、それを上回る再生可能エネルギーによる発電でドイツはクリーンな電力を海外に輸出しているのです。以前ドイツ大使館のHPにドイツ環境省の声明「ドイツはフランスの原発に電力を依存していません」という記事が掲載されていました。安倍首相はもっと勉強して発言すべきです。
少なくともアジアスーパーグリッドが完成したら安倍首相の「日本は島国なので他国から電気を買うことができないから原発はやめられない」という言い訳は出来なくなります。

再生可能エネルギーは大きな国民負担になるか

現在日本の固定買取制度(FIT)による電力買い取り価格は1kwhあたり40円(税抜き)で始まり、現在は36円(税抜き)です。電気料金への課金は1kwhあたり44銭の負担ですから月額7000円の電気料金使用家庭で約130円です。ドイツでは電気料金が1kwhあたり26ユーロセント(2012年)で、現在の円換算で約36円です。確かに高いと思われます。そして再エネ負担額が5.3ユーロセントということですから、7円以上です。ドイツの電気料金は高いように思われますが、ドイツは環境税などが導入されていますので、電気料金の45%が税金などです。ですから、税金や再エネ負担金などを引けば19.8円になりますから日本の電気料金よりもむしろ割安になるくらいです。
ドイツでは固定買い取り制度の元で2000年には太陽光発電の電気の買い取り価格が60円位していたものが、2012年には18ユーロセントですから、21円から22円まで値下げされているのです。これは10年ちょっとで、太陽光発電の設置コストが3分の1まで下がったことを意味しています。世界中で劇的に太陽光発電の設置コストが下がっていますが、その大きな理由はドイツが真っ先に行った全量買い取り制度の導入で太陽光発電ブームに火がついたことが原因だと言われています。このようにドイツが先導した再生可能エネルギーの導入政策は1つには太陽光発電などの設置コストの低減化に大きな効果を発揮することが出来ました。また、そのことが地球温暖化ガスの発生を防ぐ結果になっとことの効果も忘れてはなりません。そして、もう1つ隠れた効果があります。
それはこれから中国やインドなどの発展途上国と言われている国々が化石燃料の需要を増やすことにより、確実に化石燃料の単価は上がって行くでしょう。そのときに化石燃料への依存度を少なくしておくことは将来のコスト低減を積み立てておくことが出来ているのです。これは今は見えないのですが、大きな将来の子孫へ安全保障の贈り物です。

電力自由化は着実に進んでいるのか


3月1日の朝日新聞によると、「政府は2月28日に各家庭が自由に電力会社を選べるようにする電気事業法の改正案を閣議決定した」と伝えています。また、「今国会で法案の成立をめざし、2016年からガス会社や通信会社なども家庭向けに電気を売れるようになり、電力会社の地域独占が壊れる」と伝えています。これまでの電力自由化により、コンビニ規模の電力消費者には自由化が行われています。全電力の55%が既に自由化されているのです。しかし、実体は自由化などほとんど行われていません。新電気事業者から購入している企業の割合はわずか3.5%(2012年実績)しかないのです。その理由は何なのでしょうか。それは「発送電分離」が行われていないので、新規事業者が既存の電力会社の送電線を使って電気を売ろうと思っても、託送料(送電線使用料)が高すぎて競争出来なかったからです。1kwhあたり3.5円などという託送料を請求されたら商売にはなりません。産業用電力は元々単価が安くて15円から17円なのですから、電力会社よりも安くしなければ、新規の電力会社は電気を買ってもらえませんから、もっと安い価格を設定します。そこから3.5円ほどを電力会社に支払っていたのでは利益が出ないのです。ですから、電力自由化は「発送電分離」が完全に実施されなければ実現しないのです。
まだあります。電力を自由に売り買いする電力市場取引量が小売り市場全体の0.6%に過ぎないので、新規電力会社は急に電力が必要になったときなどに電力を調達出来なかいのです。既存の電力会社は市場で売り買いしなくても随意契約で電力会社間で融通しているので、法律で電力市場での取引を義務づけるようにしなければ市場取引は活性化しないでしょう。
そのほかこんなルールも既存の電力会社による嫌がらせです。新電力の参入障壁になってきたとされる「30分同時同量ルール」です。新規で電力会社は売電先の顧客の需要量に対して発電量を30分単位で一致させる出力調整規則があり、違反すると高額なペナルティー(インバランス料金)が新電力に課せられていることが大きな負担になっているのです。電力負荷調整は全体で行えばいいことで、少なくとも電力供給量に応じて負担しあえばいいことです。小さな発電会社が小さな負荷変動をいちいち調整しなくても大きな需給元が負荷調整を行えばなんてことはないのです。この制度は既存の電力会社による新規事業者への参入妨害行為以外のなにものでもありません。自由化するということは大企業(この場合は既存の電力会社)に大きな負担を求めて、新規参入企業には有利な条件で競争させることが市場での公平な競争を担保することの必要条件なのです。
電力会社や「原発ムラ」による骨抜きの「電力自由化」を許さず、発送電分離や市場での公平な競争の導入などを実現させるには、国が行う審議会への監視と十分に国民的議論を繰り広げる必要があります。

再生可能エネルギーと電力自由化の今後の課題

太陽光発電の設置が急激に増えています。特に家庭の屋根にこれまで設置が進んできましたが、固定買い取り制度が出来て、メガソーラーが急激に拡大しています。日本の再生可能エネルギーによる電気の固定買い取り制度(FIT)の成果と言ってもいいと思いますが、
太陽光発電バブルのような傾向が続いています。そのために大分県湯布院の温泉地ではメガソーラーの建設反対運動も起こっています。
太陽光発電の買い取り価格だけは40円(税別)から2013年度は36円になり2014年度は32円になる予定です。確かに太陽光発電の普及で設置価格は1kwあたり25万円くらいまで下がったようですが、産業用のパネルの大半は中国などの輸入品が占めているようです。自国メーカーの製品でも中国で製造した製品などが増えていると言われています。ドイツでは「Qセル」という太陽光発電製造メーカーが倒産するなど、自国のメーカーや雇用への直接的な効果が十分あったかどうかは疑問です。
今後は風力発電やバイオマス発電とそれに伴って生まれる熱を有効利用したエネルギー効率の高い再エネ事業へ手厚い支援を行うべきだと考えます。また、規模は小さくても分散型で過疎地域に雇用を生み出す可能性の高い小水力発電などへの支援策にも力を入れるべきだと思います。ドイツで普及したような、地域の人々が風車やバイオマス発電事業を協同組合方式で立ち上げられるような仕組みを作る必要があります。地方にエネルギー自立型の産業を興して新たな雇用を作り、地方の人々のお金が地域から逃げ出さずに済む地域自立型経済を作っていくことが大切です。「市民電力会社」のようなものが全国各地に出現することを私は願っています。
by nonukes | 2014-04-16 23:45 | 電力自由化 | Comments(0)

  小坂正則