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小坂正則の個人ブログ

マイナス経済成長社会を楽しく生き抜く その5 「ドイツが取った脱原発・脱化石エネルギー成長戦略」

マイナス経済成長社会を楽しく生き抜く その5
ドイツが取った脱原発・脱化石エネルギー成長戦略


小坂正則

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東京都知事選を振り返って
東京都知事選が2月9日に行われました。脱原発派候補の宇都宮健児さんと細川護煕さんの2人が立候補して脱原発の票が2つに割れてしまいました。私は細川さんを支持して、ネット選挙を手伝いました。細川さんを推した理由は「小泉さんや細川さんのような保守リベラル勢力が保守の票を真っ二つに割らなければ原発は止められない」と思ったからです。しかし、「両候補の票を足しても舛添候補に及ばない」という結果に終わってしまいました。
今回の東京都知事選を反省するとすれば、「同じようなスローガンを掲げる候補者とその支持者は、今回の失敗を二度と繰り返さないために、事前に十分な話し合いをしなければならない」ということです。今回の選挙は急遽行われたので事前の話し合いが出来なかったことや、細川さんの立候補決意が直前だったことなど、様々な要因が重なったのだと思います。もし、統一候補が実現していたら、「勝てる」というムードが東京都民の中に生まれて、両候補の得票数を上回る結果になっていたかもしれません。その意味からも今回の都知事選は非常に残念でしたが、知事選はこれからも次々に全国で行われるし、来年の統一地方選では全国各地で知事選が行われるから、特に原発立地自治体での知事選や市長選には脱原発を掲げる人々は保守革新の垣根を越えて、幅広い支持を得られる候補をぜひ出したいと思います。

「経済成長が必要」だと思っている患者への妙薬とは

東京都知事選で小泉元首相は「脱原発で新たな雇用が生まれる。ドイツでは再生可能エネルギー産業で38万人の雇用が生まれた」と言いました。そして「脱原発の方法を小泉は提示していないと批判する方がいるが、私に全てのことが分かるはずはないし、私が全てを決めるのは独裁と同じだ。東京都職員や様々な研究者や学者のみなさんの知恵を出してもらったら、原発代替エネルギーの方法はいくらでもある」と演説していました。小泉さんのいうことはもっともなことです。しかし、それでは都民や国民は残念ながら納得しません。少なくとも、最低限の数字を示して、脱原発エネルギー社会のアウトラインぐらいは示す必要があったのではないかと私は思います。
特にこれから原発の「再稼働」が迫っている今日、「原発を再稼働させなければ日本経済が破綻する」という一部経済界の批判に対しての反論をするためにも、脱原発を求める私たちの側にしっかりとした成長戦略を示す必要があったと思うのです。
もちろん「経済成長などしなくてもいい」という意見もありますし、「電気がちょっとくらい足りなくても人が死んだりはしない」というもっともな意見もありますから、経済界の成長神話の土俵に乗る必要もないかもしれませんが、「原発がなければ経済成長出来ない」という経済界の主張を信じている多くの一般市民を説得するためには「脱経済成長」という劇薬による荒療治よりも「原発からのソフトランディング」する方法や「原発に頼らない経済成長戦略」を一般市民に提案することの方が「成長病」患者への効き目は大きかったのではないかと思うのです。

脱原発・脱化石エネルギーは新たな成長戦略
上のグラフを見てください。左の図の上の線はドイツの経済成長(実質GDP)です。真ん中の点線は1次エネルギーです。下の線は温室効果ガスの排出量です。左の図を見てもらえば分かるようにドイツは1990年から20年で約33%の経済成長を遂げていて化石エネルギーは約9%削減しています。そして温室効果ガスも約25%も削減しています。化石エネルギーの消費を削減して、再生可能エネルギーを25%増やした結果、めざましい経済成長を遂げることが出来たのです。再生可能エネルギー産業の新たな雇用が38万人送出したそうです。
右の図は日本の経済成長と化石エネルギーに温室効果ガスの排出量です。日本は経済成長が20%で、化石エネルギーを約10%消費を増やしています。そして温室効果ガスも2010年には90年比では4%増やしていす。このように日本は「経済成長のためにはエネルギー消費を増やさなければならない」という20世紀型のエネルギー大量消費経済から抜け出していないのです。
それに比べてドイツはなぜ、エネルギー消費を削減して、温暖化ガスの排出も大幅に削減して、なおかつ経済成長を進めることが出来たのでしょうか。ドイツは固定買い取り制度(FIT)の導入によって太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを徹底して増やすことに国を挙げて取り組んだから化石エネルギーを削減しても経済成長を進めることが出来たのです。

日本に企業は乾いた雑巾を絞るほど省エネに取り組んでいる?
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日本の企業は「乾いた雑巾を絞るほど省エネに取り組んでいる」とよくいわれます。しかし、近頃の日本の産業界のエネルギー効率はドイツなど西洋諸国に追い抜かれているのです。工場などでは「QCサークル」などの小集団活動が行われていますが、一人一人の労働者の無駄な動きなどを徹底して見直したり、看板方式の導入のような労働者の「努力」と「忍耐」と「我慢」を強いる省エネは盛んですが、肝心な省エネ設備投資が日本では積極的に行われていないので、製造業では米国や西欧諸国に省エネで劣っているのです。
上の図は70年代から製造業の消費エネルギー原単位(単位生産量に対する必要エネルギー量)のグラフですが、日本は80年代からエネルギー効率はほとんど変化していないのです。それに比べてドイツは25%以上削減されていることが分かります。
日本で省エネ投資が進まない理由は税制による誘導や環境税の導入や二酸化炭素削減の義務づけがないなどの理由から積極的にエネルギー効率化や二酸化炭素の排出削減に取り組んでこなかったと考えられます。省エネや再エネに取り組む企業への動機付けがドイツに比べて弱いのです。

原発即時撤退の方が再エネ投資を刺激する
安倍首相は「原発も動かしながら再エネも進める」と言います。しかし、原発を動かせば風力発電や地熱発電など深夜にも発電する再エネの電力は原発と競合することになります。すると、電力会社はこれらの電力を嫌って、風力や地熱を迷惑施設として、妨害を行うでしょう。日本で風力が普及しない大きな理由は、深夜で原発の電力が余って困る時に風力発電はどんどん電気を生み出すので、日本の電力会社は風力発電を極端に嫌って来たのです。このまま再稼働が進められたら間違いなく風力発電の電力の系統連携の邪魔をするようになることでしょう。解列枠の設定(電力会社が電力の不要なときは風車を止めさせる)ことや周波数や出力を安定させるという理由でバッテリーの設置を義務づけるなど海外では不要なことが日本の電力会社は求めているのです。

話は69年もさかのぼるのですが、第二次世界大戦後に日本とドイツがめざましい工業化した理由は何だったとみなさん思いますか。実は工場設備が爆撃でことごとく破壊されて工場を操業したくても機械が壊れているので新しい設備を導入しなければならなかったのです。しかしその結果、大量生産によるコスト削減が実現して日本とドイツが世界1の経済発展を実現したというのです。英国や米国は旧式の設備が無傷で残った結果、日本とドイツに価格競争で負けてしまったのです。
例えば工場の社長はエネルギー効率の悪い、古い機械を使い続けるか新しい機械に替えようかと常に悩んでいます。そして、今買うよりも少し待った方が、もっと安くて高性能の機械が出てくるのではないかと思ってためらっているのです。太陽光を屋根につけようと思っている方が、もう少し待った方が安くなるのではないかと設置をためらったり、パソコンをいつ買おうかと悩む消費者心理と同じですね。しかし、借金して新しい機械を導入する最大の理由は、設備投資をしても利益が確実に確保できる大きな市場が見込まれるということです。そうでなければ設備投資はしません。それが電力自由化による再エネ需要という巨大な市場の出現で実現するのです。
現状のように原発が動かない状態だったら電力不足の状態が続くことから、新規電力事業への参入する企業が全国に出てくるでしょう。風力発電や太陽光発電だけではなく、木質バイオマスなど新たな電力需要が新しい産業と雇用を生み出すのです。また、小水力やメタンガス発電などこれまで採算が合わなかった分野まで普及が進むかもしれません。「原発から撤退」を決意することは経済的に大きな刺激となるのです。ドイツは「脱原発」の政治決断をしたからこそ、化石エネルギーの削減と経済成長を同時に実現できたのです。

(食と農おおいた3月号NO.98への投稿原稿)
by nonukes | 2014-03-20 22:18 | 小坂農園 薪ストーブ物語 | Comments(0)

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