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小坂正則の個人ブログ

私たちは何に向かってたたかわなければならないのか

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私たちは何に向かってたたかわなければならないのか
小坂正則

上関の映画で見た光景

確か鎌仲ひとみ監督作品の「ミツバチの羽音と地球の回転」だったと思うのだけど、違うかもしれない。はなぶさ監督の「祝の島」だったかもしれない。
上関原発建設の海上測量を阻止するために漁船に乗って抵抗している祝島の漁師に向かって中国電力の幹部が船上からマイクで訴える場面があった。「祝島の漁師のみなさん。あなた方はこのまま祝島で漁師をやっていても、お先は真っ暗ですよ。このままではあなた方の島の将来はありませんよ。島の人口はどんどん減って、漁業では生活できなくなるばかりですよ。原発を受け入れて将来の発展を考えてはどうですか。そうしなければあなた方の将来はありませんよ」といったようなニュアンスの発言だったと思う。
この発言に対して祝島の反対派の山戸たかしさんが「お前たちに島のことを考えてもらわなくても結構だわ。よけいなお世話だ。俺たちはこの海を守っておれば、自分たちの力で立派に漁業で生活して行けるんだ」と。
この会話の映像を観て私は思った。「これは日本中を覆っている心的世界を見事に言い表しているんじゃないか」と。いみじくも中国電力の幹部の発言の中に「現代の私たち日本人が陥っている社会への恐怖と不安を言い表している」と。
祝島の漁師たちは不安や苦悩は抱きながらも、この中国電力の幹部への回答として「海を守ること」をみんなで選択したから今日まで果敢にたたかって来れたのだろう。
しかし、私たち国民の多くは、中国電力の幹部の問いかけに、キッパリと「NO」といえる人は少ない。経済成長に取り残されることへの不安や恐怖が心の底に居座っているのではないだろうか。

東京都知事選で細川氏が負けた理由はここにあった


舛添や田保神が多く得票した理由は、若者や非正規雇用で働いている人たちが「経済成長してくれたら、私の暮らしも少しは良くなるかもしれない」という期待の現れだったのではないかと思うのだ。細川氏の訴えは彼らの耳には届かなかったのだ。細川氏の思想的な哲学的な訴え「行きすぎた経済成長優先の社会から、もうちょっとゆっくりとした暮らしでもいいのではないか」とか、「暴走した資本主義からゆとりのある生活中心の社会へ」などのいわゆる「脱経済成長」の訴えは若者や多くの有権者には届かなかった。
なぜ届かなかったのか。私たち日本人の大半は「経済成長」という脅迫観念の麻薬中毒患者なのだ。その患者に急激に麻薬を絶つような「荒療治」を行えば患者の病気を一層悪化させるだけなのだ。細川氏の訴えは拒絶反応という結果に終わってしまった。
しかし、私たちが患者であることは明らかである。麻薬を与えているのは国営放送のNHKであったり、「もっと勉強しなければあなたは競争にうち勝つことはできないよ」と。「多くの給料をもらって幸せな生活をしたかったらもっと一生懸命頑張らなくてどうするのよ」と、学校や教師に、あなたの親たちが尻をたたく。私たちは知らず知らずのうちに「競争にうち勝つ」ことや「終わりなき成長神話」という麻薬を小さな子どもたちへと与え続けているのだ。
なぜNHKがニュースの最後にアナウンサーがもったいぶった言い方で「本日の株価が上がっただの為替レートが円安になった」だのと話すのか。国民全員が株取引をやってる株主でもないのに。この国の国民はいつの間にか神社ではなく、兜町の東京証券取引所に神様が祭られていると思うようになったのだろうか。毎日、東京証券取引所に向かって拝んでいる。

松下竜一が私に教えてくれた「暗闇の思想」とは


40年も前に我が師である松下竜一センセが朝日新聞に書いた小さな随筆がある。「暗闇の思想」である。この小文に私たちが、この麻薬から抜け出すための薬が隠されているのだ。彼はこう指摘した。「電気が30万kw足りないから100万kwの火力発電所を建設すると電力会社がいう。100万kwの発電所ができると、今度は70万kwの電気が余るから、電力会社は企業を誘致して電気を売ろうとする。企業が来るととまた電気が足りなくなって、また火力発電所を作らなければならないと言い出す」と。「経済成長のためには少々の公害も市民のみなさんは我慢しなさいと電力会社も国もいう。しかし、火力発電所の出す公害で喘息や病気になっても人々は本当に幸せだと言えるのだろうか」と「電気はある分だけをみんなで分かち合えばいいのではないか。もっともっと経済成長しなければならないとあり地獄のような世界に私たちは陥っているのではないか」と。
松下竜一の「暗闇の思想」は誰から学んだのか。それは何と、海を守るためにたたかった大分県臼杵市の風成という小さな漁村の母たちが、自分たちの海を守るたたかいの中から松下竜一は教えてもらったのだ。
氏は言う。 「いったい、物をそげえ造っちから、どげえすんのか」という素朴な疑問は、開発を拒否する風成で、志布志で、佐賀関で漁民や住民の発する声なのだ。反開発の健康な出発点であり、そしてこれを突きつめれば「暗闇の思想」にも行き着くはずなのだ。
そして最後に彼はこう言った。
冗談でなくいいたいのだが、「停電の日」をもうけていい。勤労にもレジャーにも加熱しているわが国で、むしろそれは必要ではないか。月に一夜でもテレビ離れした「暗闇の思想」に沈みこみ、今の明るさの文化が虚妄ではないかどうか、冷えびえとするまで思惟してみようではないか。私には、暗闇に耐える思想とは、虚飾なく厳しく、きわめて人間自立的なものでなければならぬという予感がしている。

私たちは「緑の成長戦略」こそ訴えるべきだ


祝島の漁師の訴えは50年も前の風成の母たちの訴えだった。それは当たり前の自分たちの生活を守るたたかいの中から自らが生み出した「たたかう人びとの思想」だった。
しかし、普通のサラリーマンがこのような「暗闇の思想」に一気にたどり着くのは困難だろう。だったらどうすればいいのか。わかりやすくかみ砕いてオブラートに包んで薬を飲ませればいいのだ。小泉氏が言ったように「脱原発は経済成長戦略なのですよ。原発はもう古いんだ。これまで原発を進めてきたアメリカのGEの社長が、もう原発は儲からないからやめると言っている。これからは自然を相手にしてクリーンで環境に優しいエネルギーが最も経済成長する産業なのだ」と。
ただし、それへのローッドマップを示す必要があった。どのように経済成長できるのかをもっと具体的に分かり数値を織り込んで説明しなければならない。革新政党は反対、反対という。しかし、それだけでは多くの有権者は支持してはくれない。だから私たちは新しい成長戦略の青写真という「代案」を示さなければならないのだ。エーモリーロビンス博士やレスターブラウン博士のいう「エネルギー削減で経済成長ができる社会」の提案をすべきなのだ。「発送電分離」や「環境税」の導入など社会の仕組みをちょっと変えるだけで夢のような自然エネルギー社会が実現できるのだ。
それが緑の成長戦略という成長神話の患者への処方箋なのだ。それこそが無理せずに豊かな生活を得ることができて、環境にやさしく、化石燃料を削減できて将来への夢を実現できる社会プランなのだ。私たちは「我慢」と「努力」と「忍耐」など必要ではなく、仕組みを少しいじれば楽に脱原発社会を実現できるということを有権者や政治家や資本家へ提案すべきなのだ。
それができるのは、まさに私たちしかいないではないか。都知事選を巡って、やれ宇都宮が悪いだの細川が悪いだのとケンカしている暇があったら、次のたたかいを今すぐ始めるべきではないか。原発に依存して成長を進めようとする連中に対して、我々の緑の経済成長戦略の対案を突きつけて、学者や文化人やマスコミを巻き込んで「緑の成長戦略」の大キャンペーンを今から始めようではないか。それが松下竜一氏の「暗闇の思想」から学んだ私の提案だ。そしてそのような社会へと徐々にでも向かいだした暁に初めて、私たちは「昔は何と無駄なことをやってきたことか」と電気を消した暗闇の部屋の中で松下竜一の「暗闇の思想」の意味を理解することができるようになるのではないだろうか。

Commented by サムライ菊の助でござる^^ at 2014-02-16 21:13 x
大変共感いたしました!腑に落ちないことが腑に落ちた気がいたします。たくさんの方に読んでいただきたく、拡散させていただきました。
Commented by nonukes at 2014-02-16 22:12
サムライ菊の助様
実はこのNHKの話はあなた様から聞いた話を思い出して書きました。だからこれはあなた様のお話を書いたことです。
ありがとうございます。1つ1つ1人1人に話し込んで考えを変えてもらうしかないと思っています。
全ての人を信じてつながることでこの社会を変えていくしかないと思っています。大変な仕事ですが、大変なだけやりがいがあることだと思います。
by nonukes | 2014-02-16 01:36 | 脱原発大分ネットワーク | Comments(2)

  小坂正則