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小坂正則の個人ブログ

「高レベル放射性廃棄物の処分について」学術会議が答申

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2010 年9月、日本学術会議は、内閣府原子力委員会委員長から「高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組みについて」と題する審議依頼を受て、その回答を2011年の9月に出す予定だったそうですが、昨年の3.11福島原発事故を受けて、学術会議も日本のエネルギー政策の動向を見て答申を出すべきという理由で、1年間熟議を交わしたそうです。その結果今年の9月11日の答申となったのです。その答申をアップしていますので、時間の許す方はぜひ一度読んでみてください。内容的にはすばらしいものです。でも、よく考えたら、彼らは原発と核燃料サイクルを押し進めてきた張本人であり、その科学者が第三者のような顔をして「よくもまあシャアシャアとこんな答申出せたもんだ」と、私は思いました。この答申を書いた委員の中にはたった1人だけ反原発学者が私の知る限りはいますが、たぶんそれ以外の大半の方々は黙って見て見ぬふりをこれまでしてきた方々か、積極的原発を推進して来た方々でしょう。
まずは、彼ら科学者と日本学術会議が「福島原発事故を未然に防げなかったことと、これまで原発を無批判に進めてきたことを自己批判して、そこから自らの責任においてこの問題に真摯に取り組む決意である」という前文がなければ、この文章はどこか外国の科学者が書いた文章であるかのような錯覚に私は陥ってしまった。
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核燃料サイクルも原発の稼働も全ては破綻していると学術会議も認めている以下は学術会議による現状認識です。

4合意形成の道を探るための基本的考え方
(1) 「暫定保管」というモラトリアム期間の設定
高レベル放射性廃棄物は増加を続けており、2011 年 12 月末時点で、青森県六ヶ所村と茨城県東海村にて、ガラス固化体合計 1,780 本が保管されている。さらに、同時点で、海外に再処理を委託した結果発生したガラス固化体のうち、未返還分が約 872 本分存在するほか、再処理をすれば約24,700 本のガラス固化体が生み出される使用済み燃料が、各地の原子力発電所と青森県六ヶ所村の再処理工場に存在している。また、各発電所等の使用済み燃料プールの容量は、単純計算をした場合、それぞれの発電所をこれまで通り運転をすると約6年で満杯となる計算である(実際には、使用済み核燃料を収容する余地は発電所ごとに異なり、ところによってはまもなく満杯となるものもある)。

一日も早く国は反対派の学者や反対派市民との公開の議論を進めるべきだ 小坂正則

実は私、科技庁主催の「高レベル放射性廃棄物地下処分の公開討論会」にパネラーとして参加したことがあります。そのパネルディスカッションへの参加依頼が中津の作家松下竜一氏へ科技庁から来たのです。松下さんは「おれはそんなのに出ないぞ。小坂、おまえが出ろ」と言われたのです。私も「そんなのに出るのはいやだわ。第一私はほんの少し原発のことをかじっただけで学者と論争など出来っこないから」と言って、逃げようとしたのですが、「じゃあ誰も出ないで推進派に言いたいことを言わせるのか」と、仲間内で議論となり、私が生け贄となって出たのです。そのために3ヶ月間で5〜6冊の本を読みましたし、全国の反対派の学者や仲間に教えを受けました。(2000年10月27日開催)そのときの体験談を「つゆくさ通信」に書いていますが、12人くらいのパネラーがいて、一般公募の参加者が確か2名だったと思うのですが、それ以外は私だけが反対派の論陣でした。偶然にも2人の一般参加者の内、1人が私の仲間でしたが、そんな御用学者との消耗なバトルでしたが、そんな人をバカにしたような9対1の論戦、それも相手は一応学者ですし、こっちは素人です。科技庁としては1人だけ反対派を刺身のつまのように添えておいて、高レベル廃棄物の必要性をアピールできると思って企画したのでしょうが、私たちの仲間が会場からどんどん援護射撃をしてくれたので、思惑道りには行かなかったようです。だからどんなやらせのような話し合いでも私は参加することは全く無駄とは思いません。苦労の割には成果は期待できない場合が多いのですが。
3.11以後、原発中心のエネルギー政策が破綻したことは明白なのですから正々堂々と私たちと公開の場で議論をするべきです。私たち反対派は公開の場であれば逃げも隠れもしません。
ちなみに、その議論はずいぶん長い間、科技庁のHPで読むことができていましたが、私ともう1人の女性に会場から発言する私の仲間と一般参加者で御用学者をコテンパンにやっつけた記憶があります。その議論の内容はまたアップします。


平成24年(2012年)9月11日
日 本 学 術 会 議

2 検討に際しての視点と方法
(1) 合意形成がなぜ困難なのかを分析し、その上で合意形成への道を探る

高レベル放射性廃棄物が生み出されてきたこれまでの原子力政策の問題点は、特定の政策選択により引き起こされる負の帰結を十分に考慮しないで、重要な政策決定がなされてきたことにあり、これがその後の社会的対立の原因になってきた。こうした状況を乗り越えていく手順を考える必要がある。

(2) 科学的知見の適正な取り扱い-自律性の保障・尊重と限界の自覚

そもそも(特に高レベル放射性廃棄物の最終)処分場の実現性を検討するにあたっては、長期に安定した地層が日本に存在するかどうかについて、科学的根拠の厳密な検証が必要である。日本は火山活動が活発な地域であるとともに、活断層の存在など地層の安定性には不安要素がある。さらに、万年単位に及ぶ超長期にわたって安定した地層を確認することに対して、現在の科学的知識と技術的能力では限界があることを明確に自覚する必要がある。

(3) 国際的視点を持つと同時に、日本固有の条件を勘案する

同時に、日本は地層処分を選択している先進国の中では地殻変動が特に活発な国の1つであり、そのような日本固有の特性についても、十分に勘案する必要がある。特に地層処分の前提となる安定した地層の存在の確認には、慎重な精査が必要である。

3 合意形成の困難さの要因
(1) 合意形成の手続きに関する問題点

これらの問題についての基本的方向づけや見通しが明らかにならず、高レベル放射性廃棄物の処分についての方針が改めて明確に示されないまま、同機構による広報等を通じた「関係住民の理解の増進のための施策」や「国民の理解の増進のための施策」を続けても有効とは思われない。
すなわち、これまでの放射性廃棄物の処分問題の取り扱いは、東京電力福島第一原子力発電所事故以前においても、原子力発電をめぐる大局的政策についての広範な社会的合意を作り上げることに十分取組まないまま、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定という個別的な争点についての合意形成を求めるという、手続き的に逆転した形でなされてきた。だが、大局的な政策事項についての確かな国民的判断が行われ、明確な見通しが示されないままに、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の立地手続きを進めることは適切でない。大局的な合意形成を進めた後に個別の合意形成を行う条件を整えることが、合意に基づく解決を促進するために必要である。


(3) 受益圏と受苦圏の分離

「受益圏と受苦圏の分離」は、高レベル放射性廃棄物に対する大都市圏の無関心を引き起こしてきた。この状況で、広く国民の関心を喚起するためには、受益圏と受苦圏の双方を含む形で広範な人々の真剣な議論への参加を促進するように、国民的な協議の過程に工夫が必要である。
さらに、受益圏と受苦圏の関係をこれまでの制度的構造との関係でみるならば、最終処分場の立地にも適用されている電源三法の制度は、多額の交付金をあらかじめ示して誘致を促すという「利益誘導」の外観を呈しているため、地域住民の反発をかえって増幅し、国民が議論のテーブルに就くことを妨げる結果につながっている。短期的な利害のレベルを超えた国民的課題である本事案の議論を前に進めるためには、この電源三法制度の適用をやめることも含め、立地選定手続きを再検討する必要がある。もっともこれは、立地選定の後に、しかるべき補償措置が地域に対してなされることを妨げるものではない。


4合意形成の道を探るための基本的考え方
(1) 「暫定保管」というモラトリアム期間の設定

高レベル放射性廃棄物は増加を続けており、2011 年 12 月末時点で、青森県六ヶ所村と茨城県東海村にて、ガラス固化体合計 1,780 本が保管されている。さらに、同時点で、海外に再処理を委託した結果発生したガラス固化体のうち、未返還分が約 872 本分存在するほか、再処理をすれば約24,700 本のガラス固化体が生み出される使用済み燃料が、各地の原子力発電所と青森県六ヶ所村の再処理工場に存在している。また、各発電所等の使用済み燃料プールの容量は、単純計算をした場合、それぞれの発電所をこれまで通り運転をすると約6年で満杯となる計算である(実際には、使用済み核燃料を収容する余地は発電所ごとに異なり、ところによってはまもなく満杯となるものもある)。

(2) 高レベル放射性廃棄物の「総量管理」

総量管理とは、高レベル放射性廃棄物の総量に関心を向け、それを望ましい水準に保
つように操作することであるが、その含意としては、「総量の上限の確定」と「総量の
増分の抑制」とがあり、その内実がいかなるものとなるかは、原子力政策の選択と深く
関係している。「総量の上限の確定」とは、総量に上限を設定することであり、社会が
脱原子力発電を選択する場合には、その脱原子力発電のテンポに応じて上限が定まって
くる。「総量の増分の抑制」とは、総量の増加を厳格に抑制することであり、単位発電
量あたりの廃棄物の分量を可能な限り少ない量に抑え込むことに他ならない。
2011 年3月 11 日に発生した福島第一原子力発電所の事故により、わが国はエネルギ
ー政策の基本的な見直しを余儀なくされている。今後のエネルギー政策における原子力
発電の占める割合をどのようにするかがその焦点である。日本学術会議ではいち早く、
2011 年9月に、今後のエネルギー政策についての国民的議論の資料とすべく複数のエネ
ルギー政策の選択肢(シナリオ)を提供した。原子力発電利用の撤退から現状維持、推
進までの 6 つのエネルギー選択シナリオごとに標準家庭の電気料金の値上げ幅を試算し
ている[16]。

(3) 科学・技術的能力の限界の自覚と科学的自律性の確保
高レベル放射性廃棄物の処分問題は、科学的認識に立脚してなされるべきである。こ
のためには、施設建設という利害関心が先行して安全性/危険性に関する認識を歪めて
はならない。科学的研究の自律性を維持すべきである。これを担保するためには、研究
の遂行に際して、異論や批判に対して開かれた検討の場を確保することが必要である。
そこでの専門家間の合意形成が、社会的な合意形成の不可欠の前提である。そのために
は、専門家の間に「認識共同体(epistemic community)」[17]が形成され、そこで、13
最も安定性が高く必要な施設建設の候補地となりうる地域について、開放的で徹底した
討論と合意形成がなされることが望ましい。

(4) 合意形成のための討論の場の設置
社会的な関心を喚起し、議論を深め、合意形成の程度を高めていくためには、民主主
義の精神に則って、様々な立場の関係者が排除されることなく討論を尽くすべきであ
る。このためには、討論過程を独立の第三者が公正に管理する場の設置が重要である。
政策論争の一方の陣営が、同時に討論過程の管理者となっているような場合には議論
の公正な管理はできず、社会的信頼と合意形成を得ることが困難である。この点は、こ
れまでの国の原子力政策に対する国民の批判や不信の1つの要因になっている。これか
らの放射性廃棄物問題への取組みにおいては、多様な立場の主体が議論に参加すること
を保障するとともに、討論過程を公正に管理すべきである。


5 議論を深化させ合意を高めていくための政策アジェンダ設定の手順
以上のような考えに基づき、高レベル放射性廃棄物の処分問題について国民的理解を得
ながら合意形成を進めるためには、社会的合意を段階的に高めていく手続きを考えるべき
である。
その際、各段階での議論は、あらゆる立場のステークホルダー(利害関係者)が参加す
るとともに、討論過程の公正な管理を任務とする独立で中立的な主体による公正な運営が
不可欠である。



7 結び
本回答は、国民的合意に立脚して高レベル放射性廃棄物の処分問題を解決するためには、
どのような視点や論点を重視するべきか、どのような国民的協議と政策決定の手順を採る
べきかを、原点に立ち返って検討している。この立場から、全体として留意すべき点を最
後に指摘しておく。
第一に、高レベル放射性廃棄物問題は、原子力政策について総合的に評価・判断する際
に考慮すべき不可欠な論点を構成している。原子力政策の方針を決めた後に、高レベル放
射性廃棄物問題の対処を考えるのではなく、高レベル放射性廃棄物問題を考慮事項に入れ
た上で、原子力政策について考えるべきである。
第二に、高レベル放射性廃棄物の処分に関する現時点での責任ある対処が必要であり、
その観点から適切な法制度的枠組みを再検討する必要がある。高レベル放射性廃棄物につ
いてのこれまでの法制度的枠組みによれば、現在、最終処分地の選定と立地に取組まねば
ならない段階である。しかし現在、この取組みは行き詰まりを呈しており、さらに東京電
力福島第一原子力発電所事故以来、原子力政策全般にわたる抜本的見直しの議論が広く進
められているところである。したがって、高レベル放射性廃棄物の処分についても既存の
枠組みにとらわれることなく、様々な角度からその処分法を吟味すべきである。そのため
には、これまでの法制度的枠組みを固定化して考える必要はなく、制度的枠組みを定めて
いる「特定放射性廃棄物の処分に関する法律」の改正、ならびに、主要な事業担当者であ
る「原子力発電環境整備機構」の位置づけの変更という課題に取組む必要がある。
第三に、放射性廃棄物に対処するために必要な施設の候補地を、科学的根拠と科学・技
術の限界を考慮しつつ、社会的に合意を得る形で選定するには、科学者の認識共同体で開
かれた検討を進めることが必要である。新しい研究組織の設置はそのための1つの有力な
方策であるが、それに留まらず、関連分野の多様な専門家の間に、開放的なネットワーク
を形成し、広く専門家の知識と知恵を結集し、批判的検討を絶えず継続していくような取
組み態勢の構築が必要である。
第四に、わが国各地の原子力施設には、既に大量の使用済み核燃料が存在するのであっ
て、それへの対処は喫緊の課題である。使用済み核燃料を放置しておくのではなく、その
当面の安全な管理と長期的な対処について、積極的な取組みが必要である。この取組みの
ためには、相当の労力と相当の費用が必要になる。そこには、広範な国民が、討論を通し
て認識と関心を共有するための努力も含まれる。高レベル放射性廃棄物問題の解決のため
には、そのような負担が伴うことを覚悟しなければならない。
by nonukes | 2012-10-12 13:26 | 原発再稼働は許さない | Comments(0)

  小坂正則